min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

血路―南稜七ツ家秘録

2008-06-24 19:01:26 | 時代小説
長谷川卓著『血路―南稜七ツ家秘録』ハルキ文庫 2005.4.18 発行 780円+tax

オススメ度★★★★☆+α

武田晴信(後の信玄)が諏訪を攻略するためには途中の要害にある芦田満輝が持つ龍神岳城がどうしても邪魔であった。
その龍神岳城の芦田一族内で謀反が起きた。芦田満輝の弟が兄の住む館を包囲し、満輝を始め妻子をも皆殺しにしようとしたのだ。襲撃からからくも逃れることが出来たのは満輝の長男、喜久丸と傷を負った従者ただ二人であった。やがて二人も追っ手に追いつかれ絶体絶命になったところを救ったのは山の民(南稜七ツ家という集団)のひとり市蔵であった。

やがて龍神岳城を手に入れようとする甲斐の武田晴信と喜久丸の仇討ちを手助けしようとする「七ツ家」の間で火花が散らされることになる。
武田晴信には「かまきり」と称する強力な忍者集団がいるのだが、この「かまきり」と「七ツ家」との激闘がこの小説の売りである。

あとがきにも書かれているのであるが、この「七ツ家」とはどうも山窩(サンカ)の流れをくむ山の民の集団で、戦国の世を渡り歩くうちに乞われれば「落とし」(落城寸前の城から城主の妻子を逃す)や物資の密かな運び入れなどを請け負う生業についていた集団であった。
もちろん歴史上そのような集団は存在せず作者の創造した集団ではあるのだが、自由な流浪の民として、誰とも主従関係をもたない独立した集団として極めて特異ではあるが魅力的な集団として描かれている。
武田方の「かまきり」の中にも「七ツ家」の中にも異能を持つ手練れがおり、彼らの織りなす戦いの様はつい山田風太郎の忍法を想起させるが、あそこまで荒唐無稽ではない。

この作家は始めての作家であるが、多少、小説としては荒削りな部分があるものの、戦国時代モノをこのような角度から切り取る手法、発想にはかなり惹かれるものを感じた。
この小説は上記の助けられた喜久丸のある意味成長譚でもあり、つづく「七ツ家」シリーズ第2弾『死地』においても更なる活躍をするようなので是非次作も読んでみたい。