山本一力著『損料屋喜八朗始末控え』文春文庫
「損料屋」という言葉は時代劇でも聞いた事が無い。作者の説明によれば「夏の蚊帳、冬場の炬燵から鍋、釜、布団までを賃貸するのが損料屋だ。所帯道具に事欠く連中の相手の小商いは、威勢の失せた年寄りの生業であった」とある。
だが本編の主人公、損料屋・喜八郎はまだ30前の若さで眼窩が落ち窪んだ眼光するどく身のこなしが機敏な男であった。
実はこの喜八郎、損料屋というのは“表の顔”であって“裏の顔”は札差である「米屋」の二代目を守る私設調査探偵機関?ともいうべき存在なのであった。
さて、この「札差」というのは何かというと、「武家の切米売りさばきの仲介であったものが後には武家相手の金貸し業が本業となった金融機関」のことを意味する。
「米屋」の先代はいかにも頼りない2代目を案じ、生前から喜八郎にお守り役を頼んだわけだ。これはある意味この業界が弱肉強食の世界であることを示すのだが、実際にこの当時の札差たるや相当にあくどい連中が悪知恵の限りを尽くし陰謀を張り巡らす。
その陰謀から米屋を救うため喜八郎はかって理由あって職を辞した与力のコネクションを使って対抗する。
時代小説でありながらハードボイルドのテイストが濃厚な一風変わった時代小説である。当初この主人公に何か馴染めない、キャラに肩入れできない印象を持ったのだが、難事件を解決してゆくごとにその魅力に惹かれていく。
山本一力は「あかね空」に次ぐ2作目であるが、なかなかどうして奥の深い作家とみた。
「損料屋」という言葉は時代劇でも聞いた事が無い。作者の説明によれば「夏の蚊帳、冬場の炬燵から鍋、釜、布団までを賃貸するのが損料屋だ。所帯道具に事欠く連中の相手の小商いは、威勢の失せた年寄りの生業であった」とある。
だが本編の主人公、損料屋・喜八郎はまだ30前の若さで眼窩が落ち窪んだ眼光するどく身のこなしが機敏な男であった。
実はこの喜八郎、損料屋というのは“表の顔”であって“裏の顔”は札差である「米屋」の二代目を守る私設調査探偵機関?ともいうべき存在なのであった。
さて、この「札差」というのは何かというと、「武家の切米売りさばきの仲介であったものが後には武家相手の金貸し業が本業となった金融機関」のことを意味する。
「米屋」の先代はいかにも頼りない2代目を案じ、生前から喜八郎にお守り役を頼んだわけだ。これはある意味この業界が弱肉強食の世界であることを示すのだが、実際にこの当時の札差たるや相当にあくどい連中が悪知恵の限りを尽くし陰謀を張り巡らす。
その陰謀から米屋を救うため喜八郎はかって理由あって職を辞した与力のコネクションを使って対抗する。
時代小説でありながらハードボイルドのテイストが濃厚な一風変わった時代小説である。当初この主人公に何か馴染めない、キャラに肩入れできない印象を持ったのだが、難事件を解決してゆくごとにその魅力に惹かれていく。
山本一力は「あかね空」に次ぐ2作目であるが、なかなかどうして奥の深い作家とみた。