猫以来、2週間くらい映画を見られなくて、すっごく久しぶりに見たけど、
この映画で生き返った。
ペギー・グッゲンハイム(1898~1979)のドキュメンタリーです。
アートとファッションのドキュメンタリーはできるだけ見るようにしてます。
楽しいし面白いし、大体、ものすごく元気が出るから。
ほんと出たわ!まだしばらく生きるぞ。
ニューヨークにあるグッゲンハイム美術館はペギーの叔父の
ソロモン・R・グッゲンハイムの美術館で、フランク・ロイド・ライトの設計。
ペギーは奔放なはぐれものだったので、この叔父とも常に仲良しだったわけではないようだけど
どちらも近現代アートの作品を集めています。
でもその人生はきっと、ペギーの方が面白かっただろうと思う。
祖父が財を築き、父はタイタニックで死んだ大富豪一家にうまれる。
映画の中で、ペギーは人が思うより貧しかった。と言われてたけど、そこに
「遺産が45万ドルしかなかった。」と続きます。戦前の45万ドルって…
富豪の世界の「貧しい」ってよくわかんないな。笑
ともかく、その遺産でギャラリーを始めたところからコレクションが始まるんだけど、
戦争でお金が必要で作品を売りたいアーティストもたくさんいて、
数百ドルで買ってあげた作品が、今は数十億単位になってたりする。
20世紀は戦争の時代だったけど、その分ドラマも多かったんですね。
今を生きる人間としては、ドラマがなくても退屈でも、平和が百万倍いいのはわかってるけど
しかし歴史として、他人事としてみると、戦争に翻弄された20世紀は面白いものだなぁ。
アート作品の値段の上がり方ということで、映画「ハーブ&ドロシー」も、思い出しました。
のふたりは郵便局員と図書館司書で、富豪でもなんでもない人たちですが、
この人たちのコツコツ集めたコレクションの値段に驚いたんだった。
投機としての芸術作品やそのマーケットを単純に否定はしないけど
マーケットでの価値についてだけ見ると、わたしは、なんだかなぁという気持ちになります。
ハーブとドロシーはそういうことには無縁に、好きな作品を小さなアパートに集めていました。
ペギーもアート好きのコレクターなわけですが、
ギャラリーを経営したりビジネスとしての側面もあって、先を見る目も持ち、
決してお金のことを考えない人ではなかったでしょうね。
ただ、何しろ元々が富豪ですから、損をしても鷹揚に芸術家を庇護したこともあったでしょう。
20世紀アートにとって重要なパトロネスでした。
美しくはなかったので、芸術家のミューズにはなれず、
パトロンになった、みたいな描かれ方は事実かもしれないけど、それほど醜くもなかった。
若い頃の写真は普通にきれいです。
そしてミューズにはなれなくても、パトロネスとなり、たくさんのいい男と寝た人生。
やっぱり、お金があるっていいなー。笑
お金があるだけではなく、知性やバイタリティに審美眼、そして魅力もあったのでしょうが。
しかし、ペギー、
20世紀の綺羅星のような現代アートの巨匠たちと、一体どんだけと寝たんや!と驚くけど、
同じことを男の芸術家がしても何も言われないけど女性がすると炎上するのは、
この頃は今よりもっとひどかっただろうなと思う。
軽やかに気ままに才能のある芸術家たちと寝て生きたい人生を生きた彼女。
映画はそこを強調するものではないけど、そういうところもとても面白かった。
ジョン・ケージの妻は知ってたの?「彼とは一度だけだからもういいじゃない。」
「彼からベッドの上で買った絵は一枚だけよ。」「あの彼とも一度だけ。」
「あの彼とは寝てないけどキスはされたわ。70歳くらいでも立つのに感心したわ。」
などなどの、その相手がそれぞれみんな、誰でも知ってる巨匠ばかり!すごい。
ペギーの子どもとの関わりもちょっと興味深い。
この個性の強い母親の元に生まれた娘は、どうもあまり幸せな人生ではなさそうだった。
ペギーは奔放だし富豪なので育児に実際に手をわずらわせたことは少なかったのだろうけど、
それにしても親子の距離が離れていてあまりに他人事。
富豪は大人や子供や親ではなく、ずっと富豪という人種でしかないのかもなぁ。
うんとお金持ちの人の物語は、知ってることでも不思議な話が多い。
ペギーはすごく興味深い女性だけど、わたしは彼女には特に共感も好意もない。
彼女の声、姿、話し方などには、まるで違う世界の人の遠さがある。
でも、それぞれの人生をカラフルに生きた女性の話を見たり聞いたりすると、
本当に枯れ木に花が咲きそうな気持ちになります。
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