すごくモヤモヤした映画。もやもやもやもや。
精神疾患のため子供と引き離された若い母親が、
会えなくなるくらいならと、まだ1歳くらいの子供を道連れに死のうとして
助かるんだけど、その後もまだ子に執着して子を取り戻そうと施設を飛び出し
・・・という話を
その母親の行動を肯定的な感じに描いてて、レビューとかでも
若い母親側に寄り添ったものが多くて、
なんでこんな歪んだ母性愛?を肯定するの?と、ものすごくもやもや。
精神疾患のある女性の主体性や自由を求める話、というのはもちろんいいんだけど、
子供へのめちゃくちゃな執着を母親の愛や母性として肯定的に描くようなところは、
もう、本当に嫌な気分になる。
暖かい家族の養子になって幸せに暮らせる子どもを、
自分では育てられないからと殺そうとするなんて、愛じゃない、エゴでしかない。
ただ、ラストは、母親はその執着からやっと距離を置いて、
子どもの幸せを考えることができるようになったような終わり方だったので
心底ホッとした。そうでなければ、
この母親を肯定することも好意を持つことも全然できないもんなー。
とはいえ、主人公は女性二人で、もうひとりの方がメインなんですけどね。
この若い母親はメインの主人公に引っ張り回される感じで動く役割の人。
イタリア版「テルマ&ルイーズ」だとどこかで聞いたのでそう思ってみたら、
スケベ男から車を盗んで逃げた場面だけは「テルマ&ルイーズ」感はあったけど
「テルマ&ルイーズ」とはかなり違う感じだったんですよ。
「テルマ&ルイーズ」の主人公女性二人には、ものすごく共感できたし感動した。
それは彼女らに対する世間や男達からの不条理な扱いが、
自分が身近に知ってるものの延長線上にあって、想像しやすかったからだろう。
それに比べて、こちらの映画の主人公は精神病患者とはいえ、
平気で嘘をつきまくり、自分勝手なことばかりして、全く反省はしない人で、
自分や自分たちの社会的モラルから距離がありすぎてうまく想像できないのです。
でもそれは、健常者というマジョリティの論理で、
それで彼女らを裁くのは間違っているのだということはわたしにもわかる。
度を越した虚言癖も、後先考えない奔放さも病気のせいだろうし、
親から迷惑だ、産まなければよかったと言われるつらさ、
誰も自分をわかってくれない孤独・・・。
余裕のあるときに見て、寛容になれたら、彼女らにも共感できると思う。
結局、人間の孤独の話なんだから、どこかに共感はできると思うのです。
ただ、最初に書いた若い母親のしたことだけは、
それでもやっぱり納得できないし、わたしは非難したいかな。
いろいろ言いながら、この監督の映画は、見てみたいとも思わせられました。
あと、虚言癖の方のヒロインの女優さんがすごい。
「アスファルト」にも出てたし、最近も別の映画で見た
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。この人はさすがです。
>トスカーナの緑豊かな丘の上にある診療施設ヴィラ・ビオンディ。ここでは心に問題を抱えた女性たちが社会復帰するための治療を受けている。自称伯爵夫人のベアトリーチェ、やせ細った体のあちこちにタトゥーが刻まれたドナテッラ、ふたりは施設を抜け出し、行き当たりばったりの逃避行を続ける。ベアトリーチェは心に傷を負ったドナテッラを救おうとするのだが……。(公式サイトより)
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