sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:メイド・イン・バングラデシュ/燃え上がる女性記者たち

2024-05-19 | 映画


会社に搾取されている女性が労働組合を作ろうと奔走する話ですが、
男たちが腐ってるし組織も役所も腐ってて、つらい気持ちになりながらも
絶対挫けない女性の強さに感銘を受けます。
自分にはない強さだなぁと思うと、自分が恥ずかしくもなる。

この映画の中の状況は経済的に労使問題的に人権的にとにかく悲惨なんだけど、
歯向かっていきなり殺されたりする世界観ではないので、疲れすぎずに見られました。
でも、社会も、役所も家庭も、何もかもが彼女らの敵か、
妨害をする敵でなくても批判的で非協力的だったり、事なかれ主義で非協力的だったり、
同じ労働者であっても臆病だったり諦めていたりで、味方がとても少ない中、
ヒロインの諦めなさが、ただただ眩しい。
思うところはたくさんあって、この一見優しい夫はこの後理解を深めてくれるのかとか、
おそらくまだ大人というには若すぎる従姉妹の子のこれからはとか、
そもそもヒロインはこのあとどうなるのかとか、
どんよりした気分になってもしかたないくらい問題はあるのに、
同時に希望を感じてしまうのは外野のの観客としてのお気楽な傲慢さなのか。
わたしよりずっと大変なこのヒロインに勝手に少し元気をもらってもいいですかね…

ずっと前に、ルワンダのジェノサイド時にレイプで生まれた子供と母親の写真展があって、
とても美しい写真ながらすごい衝撃を受けてたんだけど、
その写真集に坂本龍一が「こんなヘビーな本なのに、不思議に心がゆったりした。
きっと子供たちの目が、めちゃくちゃ美しくて、それに救われたんだと思う」って書いてたのを、
安全なところから勝手に救われてんじゃないよ!と腹が立ったのを思い出してしまうのです。
他人の不幸や悲劇の消費、ですよねぇ、それ。
それ以来、離れた安全な世界から勝手に癒されたり救われたり希望を感じたりすることの
傲慢さを忘れないようにしようと思ってるんだけど、
この映画はやっぱり元気をもらっていい作品かなとも思う。
あと予告編でも見られますが、貧しくても女性たちの纏う服の色が鮮やかでとてもきれい。
映画の中身に関係ないけど、わたしももっとカラフルな吹き雨が着たくなりました。

このあと今度はドキュメンタリーの「燃え上がる女性記者たち」という映画を見たけど
こちらも素晴らしい素晴らしいドキュメンタリーだった。
インドの最下層カーストの女性だけで運営される新聞社が、
IT化でスマホを導入し配信し始めた頃からの5年ほどの記録。

環境に負けない、状況に立ち向かう女性たちだけど、
理解のない夫に給料を奪われて殴られる女性記者もいれば、
家事をまずやるべきだと苦情を言う夫(でもここでは多分ものすごく特別優しいくらいの人)に
はっきりキッパリ強くいい返す記者もいる。
この映画はIT化で大きく世界に発信できるようになった転機を描いているけど、
この新聞社の最初の、そもそもの立ち上げの時の記録もあれば見たいものだなぁと思う。
きっとここに描かれてないもっとたくさんのすさまじい苦労があっただろう。
カーストの話で、ある老人が言う「階層というものは自分に言わせると二つだけだ、獣か人間か」という言葉や
勇気はどこから来ると聞かれて「自分の心よ、それしかない」と答える女性記者の言葉が心に残りました。
あと宗教原理主義者はどんな宗教でも怖い。
(ヒンドゥー原理主義者を操る政党が選挙で大勝する様子が描かれていた)

この日本の映画は続けてみると、あとでなんとなく話が混じってしまうけど
それでもいいからどちらも見てほしい映画です。