(今日は2本目の書き込みとなります)
予てから、再生可能エネルギーの大切さが言われているにも関わらず、実際には折角の再生可能エネルギーで発電された電力が有効利用されずにいることが指摘されていました。
5月末の毎日新聞電子版で、この件に関する記事が配信されていましたが、6月10日の大阪版夕刊でも掲載されていましたので、その内容を引用紹介します。
九州で、せっかく発電された太陽光など再生可能エネルギーの電力が使われない事態が頻発している。
発電能力(設備容量)で見て、原発4基分もの電力が送電できないまま、無駄になっている日もある。政府は2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)実現を目指し、再エネの主力電源化を目指しているはずなのに、なぜこんなことが起こるのか。そこには二つの「壁」が立ち塞がっている。
再エネの電力がなぜ使われないのか。まず、その仕組みを確認しておきたい。
◆第1の壁: 出力制御 ~原発が優先~
☆電力会社は、電力の需給バランスを保つため、電力使用量が少ない時には、発電会社に一時的に発電の抑制を求める「出力制御」を行う。
例えば春や秋は、冷暖房の使用が減るために電力需要が少ないのに、発送電を続けて需給バランスを崩してしまうと、周波数の乱れなどによって、最悪の場合、大規模停電の事態を引き起こす。
☆そのため、電力会社は、電力が余りそうな日には、①火力発電 ②バイオマス発電 ③太陽光・風力発電 ④水力・原子力・地熱発電――の順に、発電会社に出力を抑制してもらうルールになっている。この順序は、発電コストのほか、発電量の調節が容易かどうかによって決められた。
≪九州の状況≫
・日照に恵まれた地の利から太陽光発電の設置が進み、1000万キロワット規模の発電能力を抱える九州電力管内では、18年10月から、全国で唯一、出力制御が行われている。
・出力制御の日数は、18年度が10月からの半年間で26日、19年度は74日と急増。20年度は川内原発1、2号機(鹿児島県)が約7~8カ月停止したため、60日に減ったが、21年度は95日まで増える見通しだ。ざっと4日に1日はどこかの発電所が出力を抑制される計算になる。特に、原発が4基態勢(出力計414万キロワット)に戻った21年3月19日から、九州の一部が梅雨入りした5月11日まで、この期間の約7割にあたる計37日で再エネの出力が抑制された。
・この時期は冷暖房利用が減り、電力需要は600万~800万キロワット台まで落ちる。原発4基がフル稼働する中では、晴天の昼間は大量に再エネが余ってしまう。なかでも4月18日は過去最大、原発4基分に相当する382万キロワットの再エネを抑制することになった。
・九州内で計17カ所の太陽光発電所を運営するチョープロ(長崎県)の役員は、「毎日のようにどこかの発電所で受け入れが止められ、全滅が続くこともあった。止めても経費はかかるので利益は減る。何より発電した電気を捨てるのも同然なのでもったいない」とあきらめ口調で語る。
・いわば原発が「壁」になる形で、再エネが活用されていないことになるが、改善の余地はないのだろうか。九電の池辺和弘社長は「既設の原発の稼働率を上げていけば、CO2を減らすコストも安く済む。国としてやっていくべきだと思う」と話し、再エネより原発の電力を優先して使う国のルールに沿うという立場だ。
・太陽光は夜間に発電できないデメリットがある。しかし、出力制御が続くと、政府が掲げる再エネの主力電源化は実現が遠のく。再エネ設備の採算が悪化するためで、このままでは九電管内に現在ある300万キロワット超の太陽光導入計画も揺らぎかねない。
また、太陽光と並ぶ再エネの柱と期待される洋上風力発電は、長崎県の五島列島周辺が北海道に次ぐ適地とみられている。しかし、現在のような出力制御が続けば、その芽を摘んでしまう恐れもある。出力制御は、再エネ導入が進む北海道や四国でも、早ければ21年度中にも発生するとみられており、九州だけの問題ではなくなりつつある。
◆第2の壁: 送電連系線の不足
☆再エネを無駄にしてしまう、もうひとつの「壁」は、電力が余った時に、他地域に送電する連系線の不足だ。連系線の容量が十分にあれば、九州で再エネが余っても、電力需要が大きい本州に送電することで、再エネを無駄にする状況を少なくできる。
・このため、政府も連系線増強に乗り出している。国の認可法人「電力広域的運営推進機関」が4月末にまとめた増強案によると、本州と九州をつなぐ関門連系線の送電能力を倍増するほか、九州―四国の連系線を新設し、九州と他地域の間の送電能力を最大3倍にする計画だ。四国と関西、北海道と東京を結ぶ連系線の新増設も行う方針を掲げている。
・日照や風力、広大な敷地に恵まれた地域で発電された再エネを、電力需要の大きい都市部に運ぶ――。
連系線の増強は、再エネを主力電源にする上で必須の課題だが、着工の順番などは決まっておらず、運用開始は「30年代後半」(経済産業省)になる見通しだ。
また、九州だけでも最大1兆円かかる工事費の負担は「各電力会社が受ける利便に応じて負担」という原則は決まっているが、詳細は決まっていない。着工は一番早い連系線でも22年度以降になる見通しで、再エネを無駄にしない状況の確立は、まだまだ先になる。
・再エネに詳しい東京大未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は「国を挙げて『脱炭素』に向かう今、そこに貢献する再エネを出力制御で大量に無駄にするのは不合理だ」と指摘する。なかでも九州は「太陽光の増加に加え、今後さらに洋上風力が入ることを考慮すると、早期着工の必要性は明白だ。国は一日も早く増強か、新設に着手すべきだ」と話されているようです。
表面上は脱炭素を表明しながらも、その裏では原発を優先させようとする日本政府の方針が丸見えですが、比較的再生エネルギーの環境に恵まれている日本が先頭を切って脱炭素と脱原発を両立させるモデルケースを確立するためにも、折角の再生エネルギーによる発電を無駄になどすべきではないでしょう。(まさ)