「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

いろいろあってここにいるんやね『寝苦しい夜の猫』by山内 健司 

2021年04月29日 | 小説レビュー

『寝苦しい夜の猫』by山内 健司 

~お笑いコンビ『かまいたち』の山内健司による初の著書は、自らの半生を綴ったエッセイ集。
M−1のこと、コンビのこと、恋愛のこと、家族のこと、猫のこと…など、山内のお笑いの源がどこにあるのか読むうちにきっとわかるはず!かまいたちのコンビ結成エピソードもここに!(出版社より)

 

うちの次女が「かまいたち」の大ファンで、地上波のテレビでは「かまいたち」が出ている番組は全て録画していますし、YouTube動画や、過去の漫才・コント集なんかも相当観ています。

その次女が、Amazonで購入して、「面白かったぁ!」と言っていたので、僕も借りて読んでみました。

僕も「かまいたち」は大好きな芸人の一人ですし、先日、朝の番組「ボクらの時代」に、山内と「アインシュタイン」の稲ちゃんと、「ハライチ」の岩井が出ていた時にたまたま観たんですが、山内の芸に対する情熱や考え方などを見て、「一発屋じゃなくて、じっくりと売れてきて、冠番組を持つ芸人というのは、相当なセンスと努力が必要で、ようやくここまで登って来たんやな。」と感心させられました。

本書を読んでみて、その考え方や山内自身の生い立ち、そして相方・濱家はもちろんのこと、両親や兄弟、奥さん、愛猫との素敵な関係などが相まって、「人間:山内健司」の魅力再確認の本です。

一時は教員を目指して奈良教育大学を卒業しているだけあって、文章も上手ですし、芸風とは違って癖がなく、とっても読みやすい本です。

★★★☆3.5です。


所々残念です。『検察側の罪人(上・下)』by雫井 脩介

2021年04月28日 | 小説レビュー

『検察側の罪人(上・下)』by雫井 脩介

~蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。

最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。正義のあり方を根本から問う雫井ミステリー最高傑作!「BOOK」データベースより

雫井脩介氏の作品は、『火の粉』、『仮面同窓会』、『望み』、そして『犯人に告ぐ 上・下』に次ぐ5作品目になります。

どの作品も良く練れていて、ハズレの少ない評価の高い作家さんです。

本作は、木村拓哉と二宮和也のダブル主演で映画化されている作品でもあり、とても楽しみにして読みました。

こういうミステリー作品にとって、タイトルはとても重要で、「誰が犯人で、どんなトリックが!?」というのがミステリー作品を読むうえで読者の興味を引き続けるはずなんですが、本作のタイトルは『検察側の罪人」という、どストレートなタイトルの為に、読み始めの段階から、「最上検事か沖野検事のどちらかが犯罪に手を染めるんやろな。まぁ最上やろな」と、簡単に予想が出来たため、ドキドキ感はあまりありませんでした。もう少しタイトルを捻っても良かったのかな?と思います。

それでも、雫井氏の筆力によって、結末がわかっていても、敏腕検事がどのようにして犯罪を犯してしまうのかというプロセスは読んでいて面白かったです。

しかし、いよいよ最上が最後の一線を越えようとするあたりから、雫井氏の筆が鈍り始め、「ここから足が付くな」という単純なミスによって、そこから計画が破綻し、捜査の手が伸びるという展開が稚拙で、少し残念に思いました。

東野圭吾氏なら、もっとうまくやってくれたのではないかと思うと、雫井氏の評価がそこまで高く成らない理由についても納得するものがありました。

もちろん結末は予想通りでしたが、松倉が無罪放免されて、沖野が謝罪する場面にムカつきが止まりませんし、凄腕弁護士の白川雄馬のキャラクター設定やセリフなどがチープで、物語の締め方も残念です。

上下巻をまとめ上げる力は中々のものですが、「雫井ミステリー最高傑作!」というほどでないと思います。

★★★3つです。


それなりでした。『つきのふね』by森 絵都

2021年04月22日 | 小説レビュー

『つきのふね』by森 絵都

~あの日、あんなことをしなければ…。

心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき―。

近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編。「BOOK」データベースより

 

森絵都さんの作品は初読です。『カラフル』『DIVE』などの作品の評価が高く、「いつかは森さんの作品を読みたいね」と思っていました。しかし、上記の二作品ではなく、何故かこの『つきのふね』を選んでしまいました

こちらの評価も高かったんですが、読んだ感想としては、それほどでもなかったです。高校生とか中学生が読むと共感できる部分もあるのかも知れません。

クライマックスに向けて、そこそこの盛り上がりも見せますが、期待していたほどではありませんでした。

★★★3つです。


常識を揺さぶる快作!『生命式』by村田沙耶香

2021年04月11日 | 小説レビュー

『生命式』by村田沙耶香

~文学史上、最も危険な短編集。自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる12篇。「BOOK」データベースより

 

村田沙耶香ファンと言っても過言ではない私にとって、『殺人出産』『コンビニ人間』で、今回の『生命式』が、三作目となります。

本の帯にも書いてある通り、「文学史上、最も危険な短編集。脳そのものを揺さぶる12篇」で、まさに、アナタの頭の常識について、強く揺さぶられることでしょう。

「村田沙耶香さんって、どんな人なんかな?」と思ってネットで調べてみると

とても上品な感じの普通の女性ですよね。でも頭の中の構造はキレッキレ!の先駆的天才異端者です!※誉め言葉として受け取って下さい。

色々な方のレビューにも、『この作者は徹底して「普通とはなにか?常識とはなにか?」という問いを続けているのだと思う。』、『自分の価値観が根底から覆る衝撃の短編集。』、『価値観は誰が決めているのか』などなど、村田沙耶香さんの作品が、すごく高い評価を受けていること自体が、『多様性の社会』と言われている昨今の世界情勢を映しているのかも知れません。

私自分は、いわゆる常識的な普通の人間だと思っています。しかしながら、その『常識的』や『普通』などは、そもそも誰が決めているんでしょうか?

日本国民全員にアンケートをとって、6割以上の人が賛同する意見が果たして「普通」と言えるのか?多数派とは、いつ、どのようにして構成されるのか?

あまり深く考えることなく、「それが普通やろ?」と言って生きていると、チコちゃんに

「ボーっと生きてんじゃねえよ!」って、叱られそうですね。

いずれにしても、年々、世間の常識というやつに脳が凝り固まっていく年齢になってきた私にとって、村田沙耶香さんの作品は、とても良い刺激になります。

★★★☆3.5です!


本当に気持ちのいい小説です『清明』by今野 敏 

2021年04月10日 | 小説レビュー
 

~神奈川県警刑事部長に着任した異色の警察官僚・竜崎伸也。着任早々、県境で死体遺棄事件が発生、馴染みの警視庁の面々と再会するが、どこかやりにくさを感じる。さらに被害者は中国人と判明、公安と中国という巨大な壁が立ちはだかることに。一方、妻の冴子が交通事故を起こしたという一報が…。益々スケールアップの第八弾!「BOOK」データベースより

 

相変わらず一気に読ませる筆力!今野敏氏の『隠蔽捜査シリーズ第8弾 清明』やっぱり気持ちいい小説です!

この『隠蔽捜査シリーズ』は、推理小説のいわゆる「真犯人は誰だ!」的な内容ではなく、主人公の警察キャリア官僚である、竜崎伸也が、若くして警察庁長官官房総務課長という警察庁の出世街道を順調に走っていた矢先、身内の不祥事から左遷されて、所轄署長として赴任した小さな警察署の署長という立場から、旧態依然とした警察組織を立て直していくという痛快なサクセスストーリーです。

キャリア官僚としての順調な地位を固めていくのではなく、赴任先の署員たちからは白い目で見られつつも、自らの王道を真っすぐに実直に歩む姿に、地方と呼ばれるノンキャリアの警察官たちの評価を悉く覆していき、幹の太いキャリアを積み上げていきます。

今作では、いよいよ県警の中でもトップクラスに挙げられる神奈川県警本部の刑事部部長として就任した竜崎に、隣接する警視庁の刑事部長である同期の幼馴染の伊丹が絡んできて、ともに力を合わせて難解な事件を解決していきます。

対照的な二人のキャリア官僚が、時にぶつかり合いながらも警察という巨大組織を改革していく姿は痛快であり、読んでいて気持ちい小説です。

事件の解決というよりも、凝り固まって複雑に絡み合った警察組織を解きほぐしていく様に惚れ惚れするような気持ちで読み進めていけます。

現在はシリーズ第8弾(正確には10作目)で、いよいよ出世街道の道に復帰の兆しが見え始めた竜崎ですが、この隠蔽捜査シリーズの終着点は、竜崎が警察庁長官になり、伊丹が警視総監になるというエンディングと予想しますね。

いずれにしても、まだまだ続いてほしい作品です。

★★★☆3.5です。

 

 


緊迫感の中にもユーモアが『蜘蛛男』by江戸川乱歩

2021年04月09日 | 小説レビュー

『蜘蛛男』by江戸川乱歩

 

~美術商・稲垣平造と名のる毒蜘蛛のような怪紳士の正体は?

女事務員募集の3行案内にひかれて稲垣のもとを訪れた里見芳枝は、その日から消息を絶った!稲垣のために殺された芳枝の死体は胴・足とバラバラに石膏細工の中にとじこめられてしまった!芳枝と瓜二つの姉・絹枝も稲垣の毒手にかかり、江の島の水族館の水槽内にその死体は浮かべられた!

「青ひげ」このおそるべき凶悪犯人の目的は何?不敵な挑戦状を受けて颯爽と立ちあがったのは義足の犯罪学者・畔柳友助博士とその助手・野崎三郎青年であった!「BOOK」データベースより

 

「小説好き」と公言するのなら、江戸川乱歩を読まずして語れないと思い、「何から読むべきか?」と検索したところ、「明智小五郎が初めて登場するのが『蜘蛛男』です」との記述があったので、『蜘蛛男』を借りてきました。

猟奇的な連続殺人事件が主題となっている作品なのに、どこかユーモラスな筆致で面白かったです。

途中までは緊迫感がありましたが、明智小五郎が出てくると、安心感が出てきて、面白みが減った気がします。

それでも推理小説としての完成度は高く、「さすがは江戸川乱歩!」と思える作品でした。

図書館の司書の人に「蜘蛛男読んだよ!」と伝えたところ「う~ん・・・出来れば明智シリーズより『人間椅子』とかのダークな乱歩を読んで欲しい!」と熱望されました。

機会があれば『人間椅子』を読んでみたいと思います。

肝心の蜘蛛男の評価ですが、

★★★3つです。


年度末~年度初めの繁忙期(;つД`;)

2021年04月07日 | 雑感・日記的な

現在の仕事に変わってから、いわゆる「年度末」とか、「年度初め」などという、俗にいう3月末~4月初旬にかけての忙しさを身をもって感じています。

そのために、本を読んでもレビューを書く気になれず、3冊も溜まっていました。

ようやく落ち着いてきたので、ボチボチとアップしていきますね。