「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

もう少しやね『盤上に散る』by塩田武士

2019年10月30日 | 小説レビュー
『盤上に散る』by塩田武士

~母を亡くし、家族がいなくなった蒼井明日香は、遺品の中に一通の封筒を見つける。
宛名には母の字で「林鋭生様」。どうやら将棋指しであるらしい。母はこの得体の知れない男に何の用があったのか―。明日香は未知の将棋界で捜索を開始する。
昭和の終わりに忽然と姿を消した伝説の真剣師・林鋭生。冷血非道な男が人生のすべてを賭けた恋!笑いと勝負と情熱を描く圧倒的エンターテインメント!「BOOK」データベースより


『盤上のアルファ』でも書きましたが、『罪の声』を読んで、そしてようやくここに辿りつきました。読んでいくうちに「あぁ~、そやったそやった」と、朧気に思い出しましたが、もう「アルファの記憶が鮮明なうちに読んだら良かったぁ」と、残念に思う作品でした。

もちろん、『盤上のアルファ』に出てくる登場人物はほとんど登場しますし、「真田と静」のその後や、関のオモロイ突っ込みなど、なかなか面白みがありましたね。

新しいキャラクターの明日香と逹也のキャラクターも良く、「塩田さんはキャラの立て方が上手いよねぇ」と唸らされました。

そして、『盤上のアルファ』と同様に、展開とエンディング、そして人間相関図が繋がりすぎていて、「そんなに上手いこといくかい!」と突っ込みたくなりました。

京都や大阪などが頻繁に出てきて、関西弁も多用されており、大変親しみ深く読ませていただきましたし、まさに一気に読ませる「徹夜本」と言えるでしょう!

人探しの面白さはありましたが、シリアスな場面と盛り上げる場面とが、少しだけ物足りなく、「もう少し掘り下げてもいいのでは?」とも思いました。

『盤上のアルファ』と『盤上に散る』を上下巻セットで販売してもいいと思いますよ。

★★★3つです。

感覚を疑うね(-_-;)

2019年10月30日 | 雑感・日記的な
「下着ではなくズボン」 ちら見え、自衛官募集ポスターに批判 
京都新聞ネット版 2019年2月28日 22:22 より


自衛隊の広報活動などを行う防衛省自衛隊滋賀地方協力本部(大津市京町3丁目)が作成した自衛官募集のポスターに批判が起こっている。女性キャラクターのスカートから下着様の着衣が見える描写があるためで、同本部は「下着ではなく問題ない」とするが、「セクハラではないか」などと声が上がっている。

 ポスターは、人気アニメの女性キャラクター3人が、ミニスカート姿で跳躍している様子を描き、「陸・海・空 自衛官募集!」などと書かれている。このうち2人のスカートに下着のような黒っぽい着衣が見えている。

 同本部の説明では、ポスターは若い世代にアピールするため、民間会社と提携して作成し、昨秋に公開した。県内の地方協力本部の地域事務所などに掲示しているほか、同本部のホームページにも掲載している。

 一方、2月ごろからツイッターなどネット上で「セクハラだ」「感覚が狂っている」などの批判が上がるようになった。同本部にも苦情が届いているという。

 京都新聞の取材に、同本部は

「アニメの既存の図柄を使用している。指摘の着衣は、下着ではなくズボンだという設定で、適切な範囲だと考えている。多くの人から評価を得ている」

と説明している。

 近年、全国の自衛隊地方協力本部で、架空の女性キャラを使った広報活動が広がっている。京都地方協力本部は、数年前から女性キャラを使った自衛官勧誘のポスターを作成したり、ホームページに女性キャラを登場させたりしている。徳島や岡山の地方協力本部ではオリジナルの女性キャラを作り、グッズも販売している。

■性的メッセージ含み問題

 大阪大の牟田和恵教授(ジェンダー論)の話 自衛隊が性的なメッセージを含んだ幼い女の子を使っているのが問題。表現の自由とは関係なく、公的な組織が国際的には児童ポルノとみなされ得るようなものを肯定することになる。ズボンとの主張には苦笑しかない。女性自衛官も募集しているはずだが、誰に向けてメッセージを発しているのか。かつて保守的な層は、女性の性的な姿などをまじめな場で扱うことに抵抗が強かったが、感覚がまひしているのではないか。


以上

まぁ、どれだけ正当な理由があろうが、適切な範囲だと考えていようが、このポスターが世に出るまでに、色々な人のチェックを経たはずなのに、こういうものが堂々と決裁されたことが残念ですね。

せっかくの「小池真理子力」が生かされていない『虹の彼方』by小池真理子

2019年10月29日 | 小説レビュー
『虹の彼方』by小池真理子

~間に合ってよかった…。
女優の志摩子と作家の正臣。48歳と43歳の女と男が出会い、恋に落ちる。
それぞれに家庭があり、名声がある。この恋が、どれほど周りの人を傷つけるのか、世間の非難を浴びるのか。
わかっていながらも、無防備な子供のように愛し合うふたり。遊びの恋ならどんなに楽だろう。もうもどれない、もう一人では生きていけない。切なさが胸をうつ第19回柴田錬三郎賞受賞作品。「BOOK」データベースより


大好きな小池真理子さんの作品で、とても評判が良かったので借りてきました。
544ページの大作ですが、W不倫に溺れ、完全に


アタオカかっ!」

になってしまった中年の二人が、家庭や仕事という現実を振り切って、果ては上海→杭州にまで逃避行してしまう物語です。

志摩子の章と、正臣の章が交互に展開する描き方で、同じ時間・場所を共有しながら、視点を変えて物語が進行するパターンなんですが、これが中々しつこかったですね

普通に第三者的目線から物語を進めて行ったほうが、簡潔に出来たと思いますし、頭の中や胸のうちに秘めた想いが、くどくどと描かれているので、読んでいるうちに興醒めしてしまいました。
それでも最後まで読みきらせてしまうのは小池さんの筆力の賜物だと思います。

共感できる部分はあまりありませんし、「こんなことあるぅ?」と、物語にダイブすることが出来ませんでした。

中国編も、軽井沢編も、もう少しドラマチックに演出できたんちゃう?とも思いますが、大きな盛り上がりはありませんでした。
二人がもっと攻撃されたり、ピンチに陥ったりするような、ハラハラドキドキ感があればこそ、静かなエンディングを迎える落差が生まれたと思います。

小池さん一流の描写力、表現力、言葉の美しさが生かされない展開に、少し残念な気持ちになりました。

★★★3つです。

読みやすいですよ『もののふの国』by天野純希

2019年10月27日 | 小説レビュー
『もののふの国』by天野純希

~源頼朝、足利尊氏、明智光秀、大塩平八郎、土方歳三…命を懸けた果てなき争いの先に待ち受けていた光景とは?
千年近くの永きに亘り、この国を支配し続けてきた武士。しかしてその真の主役とは、勝者・敗者問わず、あらゆる猛き者をなぎ倒し、咆哮する魂を飲み込んでひたすらに驀進し続けた“歴史”そのものであった。
いま、若き勢いそのままに練達の境地へと飛躍する著者が、その血塗られた戦いの系譜を、一巻の書物の中に極限まで描き切った。
本書は、一篇の娯楽的歴史小説を、この国の叙事詩へ昇華させることに成功した、圧巻の物語である。さあ、覚悟して本書を繙かれよ。そして、その歴史の“声”に耳を傾けよ―。「BOOK」データベースより


『蒼色の大地』by薬丸岳>、『コイコワレ』by乾ルカ、『シーソーモンスター』by伊坂幸太郎に次ぐ、『小説BOC』企画『螺旋プロジェクト』の4作目です。

「螺旋(らせん)」プロジェクトの3つのルール
・「海族」と「山族」対立構造を描く
・「隠れキャラクター」を登場させる
・任意で登場させられる共通アイテム
を見事に日本史を彩る歴史上の有名人物に当てはめて、無理なく物語を構成しています。大塩平八郎と足利尊氏については、教科書程度の知識しかなかったのですが、とてもうまくまとめていたと思います。

日本の歴史の成り立ちの中で、幾たびか起こった内乱には、全て『海族vs山族』の対立があったという設定ですが、とても自然に描かれています。

「初めて会った時から、馬が合わないというか、嫌悪感を覚える」という経験を誰しも持っていると思いますが、その嫌悪感の奥底には「海族」と「山族」の血筋が影響を及ぼしているのかも知れませんね。

平安時代末期~明治までの日本の動乱を描いた物語なので、とても読みやすかったです。

★★★3つです。

ありがとう!『ブレイブ・ブロッサムズ』

2019年10月22日 | スポーツ
「何とか勝利をっ!」、そして後半は「何とか1トライをぉぉ!」と祈り続けた80分間でした(T_T)

しかし、さすがは決勝トーナメントの戦い方を知り尽くしている南アフリカでしたね。

後半に入ると、次々にフレッシュなフォワードの選手を投入して、疲れの見え始めた日本をパワーとテクニックで押し込みました。

試合後のインタビューでも、日本代表の選手は口を揃えて「相手の方が一枚上手でした」と語っていました。

しかし、自国開催とはいえ、ティア1のチームを二つとも撃破して、見事に1位通過でベスト8まで勝ち上がったことは、世界中が絶賛してますよね!

また、選手はもちろんのこと、観客のマナーや、フェアプレー精神など、日本国民の姿も称賛の対象となりました。
とても誇らしいことです

これまで、様々なスポーツが、オリンピックやワールドカップを通じて国民と一つになり、その後の隆盛を見てきました。

ラグビーもようやく、そのスタートに立ったと言えるでしょう!

我々『にわかラグビーファン』が、これからもラグビーに注目し続け、トップリーグの試合会場に足を運ぶなどして、一緒に盛り上げ、強化の手助けをすることが、4年後のフランスワールドカップでの日本の躍進に繋がることしょう!

とても寂しいことですが、福岡選手や田中選手、そしてトンプソン選手などが、代表からの引退を表明しております。

姫野選手、松島選手、坂手選手、松田選手らが、次の日本代表の中心になるとともに、現在、大学生や高校3年生ぐらいまでの世代が、新たな仲間に加わり、大きな夢を持って世界に飛び出してくれることを願っています。

そして願わくば、リーチ・マイケルが、三たび、日本代表の桜のジャージを着て、ワールドカップのピッチに立ってくれることを祈っています
(^人^)

あらためて、日本代表メンバーに心から感謝と賛辞を送るとともに、これまで日本のラグビーの振興に携わってきていただいた関係者の皆様に感謝したいと思います(^_^)

みんなの力を日本代表に!

2019年10月20日 | スポーツ
『だ…大地よ 海よ そして生きているすべての みんな………
このオラに ほんのちょっとずつだけ 元気をわけてくれ…!!!』by孫悟空



いよいよ、運命のラグビーワールドカップ『日本vs南アフリカ』戦まで、あと二時間あまりとなりました!

一億総ラグビーファンともいえる、今日の現象に乗り遅れることなく、我が家も家族総出でテレビの前で応援する準備を整えています!

ドラゴンボールの『元気玉』よろしく、ラグビー日本代表を応援する世界中の人々の力を結集して、ほんの少しでも日本代表をあと押しする力になればと思っています!

「がんばれニッポン!」

とても綺麗にまとめられています『砂の器 上・下』by松本清張

2019年10月20日 | 小説レビュー
『砂の器 上・下』by松本清張

~東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。
被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉を唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。
今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する…。「BOOK」データベースより


『盤上の向日葵』by柚月裕子を読んでから、「そういえば、松本清張って読んだことないなぁ~」と、自称読書家の私としては恥ずかしい思いをして、遅ればせながら、「初・松本清張」を読むことにしました。

『点と線』や『ゼロの焦点』など、数々の名作を世に出している「松本清張氏」ですが、その中でも最も人気が高いともいえるのが『砂の器 上下巻』でしょう。

上下巻なんで、少し怯みましたが、読み始めると一気に読んでしまいました。

昭和35年頃という時代設定にも関わらず、とても読みやすく、緊迫感ある展開で、まさに一気読みの徹夜本とも言えるでしょう。

何となく「こいつが犯人やろ」という方向にミスリードしながらも、「実はこいつやったんか!」というオチにも不自然なところはなく、とても綺麗にまとめられている作品で「さすがは松本清張氏や!」と、感服致しました。

また機会があれば、『ゼロの焦点』や、『点と線』も読んでみたいです。

★★★☆3.5です。

間違えたのか?『真剣師小池重明の光と影』by団鬼六

2019年10月14日 | 小説レビュー
『真剣師小池重明の光と影』by団鬼六

~アマ将棋界の強豪、「新宿の殺し屋」といわれた真剣師・小池重明が四四歳の若さで短い生涯に投了を告げ、早一〇年がすぎた。
高段位の花形プロを次々と打ち負かして無類の強さを発揮する一方、人妻との逃避行をくり返した。
真剣師とは賭将棋を生業とする将棋のギャンブラーだが、小池は生まれる時代をまちがえたのかもしれない。
あまりに強すぎて、そしてあまりに純粋に愛を貫こうとして、逝ってしまった破綻の人生だった。
晩年を伴走した団鬼六氏だからこそ書けるエッセイや小説に加え、小池自身が書き残した『自叙伝』を収録し、最後の天才真剣師の実像に迫る。「BOOK」データベースより


『盤上の向日葵』by柚月裕子でも触れましたが、柚月裕子さんが、『盤上の向日葵』を書く際に、「『真剣師 小池重明』を参考にしました。」ということを書いておられたのを読んで、早速図書館で検索したところ『真剣師小池重明の光と影』by団鬼六がヒットしたので、迷わず予約リストに入れました。

すぐに届いたので、さっそく読み始めました。

読んでいくうちに、「これは『真剣師とは?』というより、小池重明という傑物の人となりや人生の悲哀を描いているんやなぁ~。」と感じました。そして読み終わった後に、感想を書こうとしてAmazonで検索したところ、同じ団鬼六さんが書いた『真剣師 小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫) 』という書籍があることに気が付きました

そして図書館のサイトで再度検索したところ、この書籍は在庫になく、やっぱり『真剣師 小池重明の光と影』しか無かったんですね これは間違う訳ですわ

多分、幻冬舎アウトロー文庫の方は、『真剣師とは?』という真剣師の対局における凄まじさや、プロの高段者を次々になぎ倒していく様などが、リアルに描かれていたのだと想像します。

図書館にないので、ブックオフなどで気長に探してみたいと思いますが、この作品はこの作品でなかなか面白かったですよ。

小池重明という真剣師が、まさに『破滅型』の人生を歩み、肝硬変により44歳という若さで逝ってしまうまでの壮絶な人生を故人の回顧録や友人たちの座談会、そして団鬼六氏の愛憎相半ばする小池に対する複雑な思いが綴られています。

将棋を真剣で打てば、序盤の拙さはあるものの、中盤から終盤にかけては、まさに盤石の攻めで相手を圧殺してしまう鬼力を発揮する小池氏でしたが、一方では「お金」や「女」、「酒」に、本能の赴くままに溺れ、翻弄され、挙句の逃避行を繰り返し、破天荒な人生を歩んだ方でした。

そんな小池氏に対する、団氏の愛情あふれる描き方が心に残る作品でした。

★★★3つです。

章の区切り等の編集が悪いのでは?『豆の上で眠る』by湊かなえ

2019年10月11日 | 小説レビュー
『豆の上で眠る』by湊かなえ

~小学校一年生の時、結衣子の二歳上の姉・万佑子が失踪した。
スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。
必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。
喜ぶ家族の中で、しかし自分だけが、大学生になった今も微かな違和感を抱き続けている。
―お姉ちゃん、あなたは本物なの?辿り着いた真実に足元から頽れる衝撃の姉妹ミステリー。「BOOK」データベースより


う~ん・・・、まぁ相変わらず「イヤミスの女王」たる、湊かなえさんの作品です。読後感に爽やかさは全くありません。

ストーリー展開としては面白いですし、どんでん返しも、2回、3回とあり、それなりに楽しめました。

しかしながら、登場人物が女性ばっかりなので、「これ誰が話してんの?」と思う場面もしばしばあり、少し混乱すると同時に、過去の振り返りと現在との境界も定まっていない場面もあって、何となく物語に没入することが出来ませんでした。

よく練られたストーリーであっただけに、編集者の方も、そういうところを注意して編集していただければ良かったと思います。

★★★3つです。