「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

新しい作風!名作の予感!「名探偵に薔薇を」by城平京

2016年12月27日 | 小説レビュー
~怪文書『メルヘン小人地獄』がマスコミ各社に届いた。その創作童話ではハンナ、ニコラス、フローラが順々に殺される。やがて、メルヘンをなぞったように血祭りにあげられた死体が発見され、現場には「ハンナはつるそう」の文字が……。不敵な犯人に立ち向かう、名探偵の推理は如何に? 第八回鮎川哲也賞最終候補作、文庫オリジナル刊行。


「メルヘン小人地獄」というタイトルを聞いて、あなたはどんな物語を想像されますか?

いきなり、このメルヘン小人地獄のおどろおどろしい物語から、本編がスタートしていきます。

サスペンス系のミステリー小説かな?と思って読み始めましたが、段々と「んっ?これは?」と、自分の見通しが甘かったことに気づきます。

目次を見れば、2つのタイトルが記されており、「これは短編が2つ収録されているんやな」とわかりますが、一部が終わって、二つ目の物語に入ると、「おや?繋がってるやん!」となります。
しかし、一部と二部では全くと言ってエエほど性格の違う物語になっていて、「この作品は、もしかして凄いのではっ!」と驚かされます。

二部のクライマックスからエンディングに向かっていく展開では、どんでん返しの繰り返しで、本当に面白く、ぐんぐん引き込まれます。

惜しむらくは、解説にもあるように、エンディングの種明かしが「まぁまぁ、そら最後はそこに落とすかな・・・」と、なってしまうところだけが少し残念です。

もし、ラストが驚愕の展開になっていれば、かなりの評価を付けたのに(´д`;)

限りなく4つに近い
★★★☆3.5です。

初!池井戸潤「果つる底なき」by池井戸潤

2016年12月24日 | 小説レビュー
~江戸川乱歩賞受賞の金融ミステリー! 「これは貸しだからな。」謎の言葉を残して、債権回収担当の銀行員・坂本が死んだ。死因はアレルギー性ショック。彼の妻・曜子は、かつて伊木の恋人だった……。坂本のため、曜子のため、そして何かを失いかけている自分のため、伊木はただ1人、銀行の暗闇に立ち向かう! 第44回江戸川乱歩賞受賞作


「倍返しだっ!」でおなじみの池井戸潤ですが、今まで読んだことがなかったんですね。

たまたま図書館にあった「果つる底なき」を借りて帰って来ました。

ご多分に漏れず、銀行モノですが、とても読みやすく、おもしろかったです。

ストーリー展開や、どんでん返しも、それなりに楽しめましたし、良い小説でしたね。

手形のこととか、融資の仕組みなどもわかりやすく書いてあり、少し勉強になりました。

また、時間があれば、他のシリーズも読んでみたいと思います。

★★★3つです。

シリアスなのにホノボノ「食堂かたつむり」by小川糸

2016年12月18日 | 小説レビュー
~おいしくて、いとおしい。同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、恋と同時にあまりに多くのものを失った衝撃から、倫子はさらに声をも失う。山あいのふるさとに戻った倫子は、小さな食堂を始める。それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった。巻末に番外編を収録。


図書館で予約注文している小説が中々こなくて、家にあった「食堂かたつむり」を読むことにしました。

中学卒業後、田舎を飛び出し、都会で料理人として10年あまり修業をしていた女の子が主人公です。

インド人の彼と充実した生活を送っていた彼女でしたが、突然トラブルに遭い、泣く泣く実家に出戻り、そこで再会した温かい田舎の人たちと料理を通じて交流しながら、徐々に活力を取り戻していくというストーリーです。

人の死や、別れなど、書き方を変えればシリアスな人間ドラマが描ける題材ですが、小川さん流に、美味しそうな料理のレシピと、おだやかな人たちのセリフによって、ゆる〜く描かれています。

まぁ、ゆる系の小説なので、劇的な変化も、ある程度こなれて、ツラツラと進んでいき、最後にはある意味でのハッピーエンドを迎えます。

「まぁ、こんなもんでしょ」という感想で、
★★★3つです。

正統派叙述ミステリー「仮面山荘殺人事件」by東野圭吾

2016年12月14日 | 小説レビュー
~8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた8人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに1人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。7人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった……。(「BOOK」データベースより)


東野圭吾氏の作品なので期待しながら読みました。

山荘で起こる殺人事件、監禁、自殺・・・等々、本来なら「次は誰が!?」、「犯人は!?」とドキドキ、ハラハラのはずが、全体的にフワフワしていて、あまり緊迫感がありません。

最後に「あっ!」と驚く大どんでん返しが待っていますが、それもある程度予想できるようなところもあり、ミステリーとしては「こんなもんでしょう」という感じです。

1990年に発刊された作品なので、あとがきにもあるように、このようなトリックを真似た作品も多々出ていることでしょう。

その当時はとても新鮮で魅力的な叙述トリックも、ある程度慣れてしまった我々世代にはつらいとことがありますね。

★★★3つです。

何にも・・・「もう二度と食べたくないあまいもの」by井上荒野

2016年12月12日 | 小説レビュー
~気がつかないふりをしていた。もう愛していないこと。もう愛されていないこと。直木賞作家が美しくも儚い恋の終わりを描いた傑作。(「BOOK」データベースより)


「だれかの木琴」という作品が良いとの評判を聞いて、井上荒野女史の作品を探していたところ、図書館にこの本があったので、タイトルにも惹かれて借りてみました。

しかし、読み始めてすぐに後悔しました。こんなに面白くない短編集は初めてで・・・。

やはり、ある程度の評判とかを参考にしてから本を探した方が間違いはないですね(^_^;)

短編って、ストーリーに厚みを持たすことが難しいと思うんですよ。
それを差し引いても底が浅く、薄く、上っ面だけの描写や表現がしばしば登場し、感情移入も出来ません。

修飾語の使い方も微妙で、取って付けたような味の悪さに加えて、物語の締め方も放ったらかしで・・・。

まさに「もう二度と手に取ら・・」と言わずにいられません。

東野圭吾氏、伊坂幸太郎氏、道尾秀介氏などによる、思わず唸ってしまうような「ひねり」、「伏線回収」、「大どんでん返し」などに慣れすぎてしまっているのでしょうか?
何とか力を振り絞って最後の最後まで読み遂げましたが、本当に面白みの無い短編集でした。

★1つです。

小説を読み続けて2年!

2016年12月11日 | 雑感・日記的な
2014年9月に「イニシエーションラブ」を読んで、「ミステリー小説って面白いやん!」と、小説を読むことが一番の趣味になって早2年が経ちました。

読んだ後に記録を残す意味でblogにアップした記事数も130冊になりました。1年で60冊程度ですね。

その都度、評価を★で付けています。

過去に読んだ作品の中で、blogにアップした作品を加えた中から、★★★☆3.5以上のものをアップしたいと思っています。

あと20冊読んで150にするのか、200冊まで待つのか、もう少し考えたいと思います。

やっぱりいい!『マリアビートル』by伊坂幸太郎

2016年12月09日 | 小説レビュー
~酒浸りの元殺し屋「木村」。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」「檸檬」。運の悪い殺し屋「七尾」。物騒な奴らを乗せた新幹線は疾走する! 『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。「BOOK」データベースより


グラスホッパーの続編?というか、グラスホッパーに出てきた人物が再登場するので、「あぁ〜、あの時の!」と声を上げたくなります

さて本編は、東京発→盛岡行の新幹線「はやて・こまち」の車両に乗り合わせた、殺し屋たちの間で繰り広げられる頭と身体を駆使したバトルの物語です。

たくさんのキャラクターが登場しますが、それぞれのキャラが立っていて戸惑いません。物語も交差しますが、とても綺麗に整理されているので、道に迷うことなくエンディングにたどり着けます!

ただのハードボイルド活劇に留まることなく、「何故、人は煽動されるのか?(ルワンダ虐殺事件)」、「何故、人を殺してはいけないのか?(酒鬼薔薇事件)」などが引用されており、とても考えさせられます。

グラスホッパーは、わりとシリアスに物語が進行し、最後にも「う〜ん・・・」と、考えさせられましたが、マリアビートルは、内容もポップで明るく、「機関車トーマス」の逸話にも和まされ、ラストでは晴れ間が差すような気持ちにさせてくれます。

伏線回収も見事で、スピード感もあり、ジグソーパズルが出来上がる映像を早送りで見ているように気持ちよく綺麗にまとめられています。

さすがは伊坂幸太郎氏!素晴らしい作品です。

★★★☆3.5です。

描写だけがリアルであとは・・・『私の男』by桜庭一樹

2016年12月04日 | 小説レビュー
~落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。
孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。
そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。
内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。「BOOK」データベースより


前から読みたかった作品です。浅野忠信と二階堂ふみの主演で映画化もされています。

さて内容ですが、文体自体は読みやすく、「現在~過去へ・・・この二人の奇妙な関係はこのようにして生まれて、絆が深まってきた。」という感じで、謎を解き明かしていくストーリー仕立てになっています。

二人が絡み合うシーンの描写は目に浮かぶように描かれていてスゴいと思うのですが、肝心の物語の伏線回収や脇役たちの人物設定が中途半端で、「絡めてみたけど放ったらかし」感が否めません。

花が生まれるきっかけとなった事件や、淳吾と両親との関わり、死体の処理など、チョロっと簡単に書かれていたりしていて、もうちょっと踏み込んで内容を濃くしてもらいたかったですね。

ただ単に語り部を変えて過去を遡っていくだけでなく、時系列を交差さしたり、人物を交差させたり、「そうやったんや!」と思わせるような仕掛けが欲しかったですね。

あとから直木賞受賞作品と聞いて、少なからずショックを受けました

★★2です。