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凄まじい中国の近代史『ワイルド・スワン 上・下巻』byユン・チアン 、土屋 京子 (翻訳)

2021年11月10日 | 小説レビュー

『ワイルド・スワン 上・下巻』byユン・チアン 、土屋 京子 (翻訳)

~15歳で著者の祖母は軍閥将軍の妾になる。中国全土で軍閥が勢力をぶつけあう1924年のことであった。続く満州国の成立。直前に生まれた母は、新しい支配者日本の苛酷な占領政策を体験する。戦後、夫とともに共産党で昇進する母。そして中華人民共和国の成立後、反革命鎮圧運動の只中で著者は誕生する。中国で発禁処分となった衝撃的自伝!(上巻)

~迫害を受け続ける家族。思春期をむかえた著者は、10代の若者が遭遇する悩みや楽しみをひとつも経験することなく急速に「おとな」になった。労働キャンプに送られる両親。著者にも、下放される日がついに訪れた。文化大革命の残虐な真実をすべて目撃しながら生き、「野生の白鳥」は羽ばたく日を夢見続ける。親子3代、70年にわたる運命の記録!「BOOK」データベースより

『ワイルド・スワン』は、1991年に発表された中国人女性作家ユン・チアンの自伝的ノンフィクションであり、全世界で1000万部を超えるベストセラーになったそうです。日本語訳は講談社から土屋京子さんの翻訳で1993年1月に出版されたんですって。

1993年といえば、僕が22歳の頃ですから、少し小説とかを読んでいた頃なので、この『ワイルド・スワン』というタイトルは知っていましたし、何となく『纏足』のイメージしかなく、「纏足された可哀想な女の子の話」というぐらいで、どのような話か全く知りませんでした。

文庫版の上下巻合わせて1,100頁超えの超大作であり、親子三代が紡ぐ中国近代史の生々しくも凄まじい思想闘争の歴史を語ってくれている作品です。読むのに大変な時間がかかりました。

中国共産党設立時の毛沢東思想の激しい部分が強調されていて、「共産党員でなければ人ではない」というような話や、党の幹部として優遇された生活を送っていた人が、ある日突然、批判の対象となり、隣人や部下から吊し上げられ、糾弾され、あからさまな暴力を振るわれ、監禁され、最悪の場合、拷問死さえしてしまうというような恐ろしいことが現実にあったことが本当に生々しく語られています。

ユン女史の自伝的ノンフィクション作品なので、完全に史実と一致しているかというと、それはわかりませんが、かなり現実に近いものがあったと思います。

現在も中国本土では発売禁止本として指定されている作品であり、中国共産党、毛沢東思想を否定する内容になっているので、中国当局がナーバスになるのも頷けます。

それにしても、「ホンマにこんなことがあったんか?」と思いたくなりますが、思想教育ということは本当に恐ろしいですね。国の末端まで行き届く教育によって、昨日の友が今日の敵となってしまうんですから。

共産党思想の恐ろしい面ばかりが強調されていますが、中には手を差し伸べてくれた温かい人たちとの交流や家族の絆などが描かれており、読み応えと読後感は良いものがあります。

現在、世界の中心ともいえる中国の近代史として、読んでいただく価値はあると思いますね。

★★★☆3.5です。

 


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2 コメント

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はじめまして (ゆう)
2022-09-01 10:33:59
ワイルドスワン、懐かしいです。発売されたときに読みました。私も22歳でしたw
長くて読むのに時間がかかったことを一番に思い出します。読後、たまたま中国人女性と友達になり、私の10歳上くらいなのですが、リアルな話はもっと残忍でした。公の場では言えませんが、彼女の口から出てくる話で思想教育の恐ろしさを実感しました。
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ありがとうございます。 (shu)
2022-09-02 09:16:59
ゆうさん
ご丁寧なコメントをいただきありがとうございます。
>たまたま中国人女性と友達になり、
そうなんですね...。戦争体験でもそうですし、文章で読むのと、実際の方からお話を聞くのとでは全然違うのでしょうね。

これからも、若い世代の方々に伝えていけるような図書を紹介していきたいと思います。
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