「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

恐るべき17歳!「黒冷水」by羽田圭介

2017年10月30日 | 小説レビュー
〜兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠を仕掛けて執拗に報復する兄。
兄弟の果てしない憎しみは、どこから生まれ、どこまでエスカレートしていくのか?
出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」を、スピード感溢れる文体で描ききり、選考委員を驚愕させた、恐るべき一七歳による第四〇回文藝賞受賞作。「BOOK」データベースより


2015年に『スクラップ・アンド・ビルド』で、芥川賞を受賞。又吉直樹の『火花』との同時受賞で、ある意味において注目された作家さんです。

素直じゃない僕は、『スクラップ・アンド・ビルド』を読む前に、デビュー作である本作が気になって読みました。

乙一さんもスゴいですが、羽田さんも恐るべき17歳ですね( ; ゜Д゜)

まぁ、17歳のリアル感が出ていて、なかなか読みごたえがありました。

高校生と中学生の兄弟が織り成す、陰湿な冷戦が主題なんですが、途中から「この兄弟は、どこまでいってしまうんやろう・・・(^_^;)))」と心配になってきました。

最後の10頁ほど余したところでエンディングを迎えてしまい、「んっ・・(*_*)?」と思って頁をめくると、あっと驚く仕掛けが施されており、「なかなかやるやないか?17歳(^_^;)」と感嘆しました。

スラスラと読めてしまう見事な文章力と展開で、一気読みしてしまいます。

オチに、もう一工夫あれば、星が半個増えたかも?
★★★☆3.5です。

なかなか深いよ『海の見える街』by畑野智美

2017年10月27日 | 小説レビュー
~この街でなら、明日が変わる。海が見える市立図書館で働く20、30代の4人の男女を、誰も書けない筆致で紡ぐ傑作連作中編集。「BOOK」データベースより


とても読みやすく、優しい物語です。海の見える街にある図書館で働いている4人の男女の恋物語をそれぞれの視点で語られる4編からなる連作短編集です。

1話が終わった時に、「これで終わりか?」と思いきや、しっかり繋がっているんですね。

実は、とても評価の高い小説でして・・・。
まぁ、小さな街の狭い空間の中で、年齢の近い男女が恋に落ちていくという話だけなら、それほど話題に上ることもなかったかと思われますが・・・、

4人の男女それぞれが歩んできた道のりの中に、暗い過去やトラウマを引きずっており、それが各々の人格形成や人生の選び方、言動・行動に反映されています。

別々の世界で暮らしていれば、決して交じり合うことが無かったはずの個性的な4人ですが、この街の図書館で共に働き、時間と悩みを共有することによって、緩やかに心が開かれていきます。

春香ちゃん以外は、見た目もパッとせず、性格も引っ込み思案な男女ですが、「密室効果」?ともいうべき境遇と、「この人なら・・・。」と、誰にも打ち明けた事がない暗い過去を話せる穏やかな心の持ち主たちと出逢えたことが幸いたのかもしれません。

「はいはい、そらそうなるわな」という展開ですが、そこに、こじつけのような強引さはなく、自然な形でフンワリと描かれており、「最後は誰と誰がどうなるんやろ?」と、物語に引き込まれていきました。

この物語は、4人の不完全で不器用だった人たちが、恋愛を通じて、大きく成長し、お互いに尊重しあいながら、新たな人生を切り開いていくという、結構深くてメッセージ性が強いストーリーなんですよね。

その証拠に、4人の中で一番危なっかしくて、一番心配だった春香ちゃんが、友だちの拓也君に対して言う言葉がいいんです。

拓也君のお父さんが友達の少ない人らしく、「お父さんには親友が一人しかいないんだ。一人いれば十分なんだって・・・、」とのこと。
それを踏まえて、春香ちゃんが拓也君に、「その一人に出会うまで、いろんな人と接しなさい、・・・(中略)その一人が見つかったら、大切にしなさい。自分より相手が喜ぶことを考えて大切にしなさい。」 と、(*´-`)

ドーンと盛り上がる場面や、「ええっ!!」と驚く、どんでん返し等はありませんが、爽やかに心地よいエンディングには納得でした。

心が荒んでいる時には、手に取りたい1冊ですね。
★★★☆3.5です。

次期チャイナセブン

2017年10月25日 | 雑感・日記的な

「中国新指導部が発足=「後継」常務委入りせず-習氏2期目始動、権威強化」


お隣の中国の新体制が発足しましたね。習近平国家主席、李克強首相以外の5名は総入れ替えでした。

今年の6月に「次期チャイナ・セブン(中国中共中央政治局常務委委員7人)は誰だ!」で、新体制を以下の通り予想しました・・・。


さて、いよいよ本年10月に、「十九大(中国共産党第19回全国代表大会)」が開催され、次の5年を担う中国の最高権力機関である第19期中央政治局常務委員7人(チャイナ・セブン)が決まります。

習近平・・・総書記、国家主席、中央軍事委員会主席
李克強・・・全国人民代表大会常務委員長
汪 洋・・・国務院総理
胡春華・・・国務院常務副総理
王滬寧・・・人民政治協商会議全国委員会主席
孫政才・・・副主席、中央書記処書記、中央精神文明建設指導委員会主任
栗戦書・・・中央規律検査委員会書記

と、予想します!自信アリですよ(*^^)v


結果は、↓(序列順)

◎習近平・・・総書記、国家主席、中央軍事委員会主席
◎李克強・・・国務院総理
〇栗戦書・・・
〇汪 洋・・・
〇王滬寧・
×趙楽際
×韓正


素直に感動!『影法師』by百田尚樹

2017年10月24日 | 小説レビュー
〜頭脳明晰で剣の達人。将来を嘱望された男がなぜ不遇の死を遂げたのか。
下級武士から筆頭家老にまで上り詰めた勘一は竹馬の友、彦四郎の行方を追っていた。
二人の運命を変えた二十年前の事件。確かな腕を持つ彼が「卑怯傷」を負った理由とは。その真相が男の生き様を映し出す。『永遠の0』に連なる代表作。「BOOK」データベースより


「自称・読書家」を名乗りながら、恥ずかしいことに百田尚樹作品を初読です(^_^;)

『永遠の0』や『海賊と呼ばれた男』など、絶賛の嵐ですが、何となくミーハーな気がして、今日まできました。

しかしながら、百田尚樹作品の一番目に、この『影法師』を読んで良かったです。素直に感動しました!

時代小説でありながら、大変読みやすく、ストーリーもキャラクターにも一切の無駄がなく、読んでいて気持ちいい「快読作品」ですね。百田尚樹氏の小説が売れるのも納得です。

さすがは売れっ子放送作家らしく、起承転結がしっかりしていて、読ませどころ、泣かせどころを心得た内容です。

「何故、彦四郎はそこまで?」と思いながら読み進めましたが、クライマックスからエンディングに至る過程で、全ての霧が晴れていきます。

美しい友情と思いやりの愛情、有言・不言実行の武士道、現代人が失いつつある「忘己利他」の精神、潔さ等々・・・。今こそ取り戻さなくてはならない教えのようなものが散りばめられています。

是非、映画化を望みます!
★★★★4つです。

時間があれば『ジョーカー・ゲーム』by柳広司

2017年10月21日 | 小説レビュー
〜結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校“D機関”。
「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。
だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく…。
吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞に輝く究極のスパイ・ミステリー。「BOOK」データベースより


短編集なので、色んな小説を読む合間に読んでました。

戦時下における『スパイ』の役割、心構えなど、とても興味深く読ませてもらいました。

身分を隠して敵の懐に潜入する・・・長ければ数年間に渡って。

たとえ、敵に捕まったとしても、拷問や尋問をされても、機密事項は意識の奥底に眠らせて、精神状態をフラットに保つ術を身に付けた、超人集団『D機関』

陸軍中野学校では、実際にこれに近い超エリート集団がつくられていたとのことです。

それぞれの物語に興味深いエッセンスが散りばめられており、なかなか楽しめました。

社会人として、会社やコミュニティの中で生きていく上で、参考になるエピソードもありましたね。

★★★3つです。

周り全員悪人『殺人鬼フジコの衝動』by真梨幸子

2017年10月20日 | 小説レビュー
〜一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。
だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。
「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。
何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?精緻に織り上げられた謎のタペストリ。
最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する…。「BOOK」データベースより


かなり前評判が高い小説なので、出張のお伴に行き帰りの新幹線の中で一気に読みました。

物語の入りかたと、締め方は、なかなか変わってて面白かったです。

しかし、内容は少し薄めでしたね。
いわゆる「シリアルキラー」なら、偏執的な殺し方をしそうなもんですが、今回の「フジコ」は、そうでもありません。

幼少期の「虐待」、学校での「イジメ」によって、性格が歪んでしまったフジコは、ある事件をきっかけとして、「私は生まれ変わる!これからはバラ色の人生が待ってる。母のような愚かな人生は送らない!」と、新たな環境でリスタートします。

しかし、「三つ子の魂百まで 」といわれているように、そう簡単に人間性や性格が変わるわけもなく・・・。

何とか「幸せになりたい」と願いながら、結局「母と同じような人生」を歩んでしまいます。

まさに「負の連鎖」「負のループ」です。

そういう負の連鎖を断ち切るには、自身の努力がもちろん必要ですが、何よりも周りの環境によるところは大きいでしょう。

それにしても、フジコは殺しすぎです。本当に簡単に人を殺し、簡単に処理してしまいます。

そのあたりが、あまりに現実離れし過ぎていて、面白味に欠けました。

最後の方も、誰かと話しているのか?頭の中の妄想なのか?区別が付きにくかったです。

とにかく出てくる人物が悪い人ばかりで、全く救いようがない小説でしたね。
後味も悪いです。
★★☆2.5ですね。

日帰り横須賀出張(^_^;)))

2017年10月19日 | 雑感・日記的な
今日は、朝8:02発の新幹線に乗って出張に行って来ました。

新横浜→横浜→横須賀中央と電車を乗り継いで行って来ましたよ。

横須賀初上陸やったんですが、想像していた街とは幾分様子が違いました(^_^;)

いまをときめく、小泉進次郎の選挙事務所がありましたよ。

雨の降りしきる中で、バタバタと仕事をこなし、また同じ経路で20:05に京都駅に帰ってきました。

まさに12時間の出張でしたね。

疲れましたわ(-。-;)

剥き出しの恋愛『ツ、イ、ラ、ク』by姫野カオルコ

2017年10月18日 | 小説レビュー
〜森本隼子、14歳。地方の小さな町で、彼に出逢った。
ただ、出逢っただけだった。雨の日の、小さな事件が起きるまでは。
苦しかった。切なかった。ほんとうに、ほんとうに、愛していた―。
姫野カオルコの新境地、渾身の思いを込めて恋の極みを描ききった長編小説。「BOOK」データベースより


『リアルシンデレラ』で惚れ込んだ、姫野カオルコ女史の二作目です。

『ツ、イ、ラ、ク』
このタイトルと表紙を見て、「ハイハイ、あんな感じやろうね・・・」と、想像しながら読み始めましたが、自分の想像力の足りなさを実感しました(ToT)

物語の始まりは、小学校二年生の女の子たちの日常で、軽いイジメや、軽い恋愛の真似事のような出来事がつらつらと続きます。

「んで、この子達が大人になって、それぞれの人生の歩みのなかで、大事件(殺人や自殺、はたまた不倫や略奪愛など)が起こって・・・」なんて想像しながら読みましたが、またまた裏切られました(ToT)


さて、皆さんが恋愛というものを実感したのは高校生ですか?大学生ですか?それとも社会に出て20代の頃に激しく燃え上がるような大恋愛をしましたか?

しかしそれは、歳を重ねるにつれて、自分自身に衣や鎧を纏うように、色々な経験を積み、知恵もつけていき、いつの間にか頭の中で計算しながら恋愛というものをしていたのかも知れません。

本当の本物の恋愛って何でしょうか?身を焦がすような剥き出しの愛とは・・・?

「小学生から中学生の頃に恋い焦がれた、あの子への真っすぐな想いやったのかも知れんなぁ・・・。」

ということを思い出させてくれる小説でした。

文中に、「恋とは、するものではない。恋とは、落ちるものだ。どさっと穴に落ちるようなものだ。・・・(中略)
「アッ」。恋に落ちるとは、この「アッ」である。こんなことはめったにないのである 。」
とあります。


物語の中で、様々なタイプの男女のキャラクターが登場します。それぞれに良い持ち味を発揮してくれるのですが、徐々にその中の一人『隼子』が際立っていきます。

この隼子と河村が、まさに恋に「落ちる」のではなく、「墜ちて」しまった物語でした。

ここでようやく、タイトルの『ツ、イ、ラ、ク』=(墜落)の意味がわかります。

墜落していった二人はどうなってしまうのでしょうか?目まぐるしく変わるキャラクター達の視点で語られる内容にはグイグイと引き込まれて、あっという間に530頁を読みきってしまいました。

そして、熱く激しい恋物語には、爽やかなエンディングが用意されており、静かに幕が降ろされます。


巻末の斎藤美奈子女史の解説にあるように、「姫野文学は、いつもある種の『異化効果』をもって描かれてきました。『異化』とは、日ごろ慣れ親しんでいる現象に別の角度から光を当てることで思いもよらなかった側面が浮かび上がる、くらいの意味ですが、姫野文学に親しんできた読者なら『その感じ』がすぐにわかってもらえるでしょう。」とあります。

また、「中学生の恋愛が描かれているからといって、その小説が中学生向けではあるとは限りません。(中略)おそらく『ツ、イ、ラ、ク』をもっともよく理解できるのは、三十代、いや四十代以上の大人でしょう。」ともあります。

姫野文学は、まだ二作目ですが、その意味はひしひしと伝わりました。いまジャストタイムで読むことが出来て良かったと思います。

★★★☆3.5です。