「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

もう少し感動するかと・・・「風が強く吹いている」by三浦しをん

2017年01月30日 | 小説レビュー
〜箱根駅伝を走りたい―そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく…風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」―純度100パーセントの疾走青春小説。(「BOOK」データベースより)

「まほろ駅前・・・」に次ぐ、三浦しをん第2作目です。

この題材からして「ラストでは涙が止まりません!」的なストーリーしか想像できひんでしょ?

久しぶりに小説で泣きたいと思って、図書館で借りてきました。

まぁ、読む前から「三浦しをんは薄いからなぁ〜」と、一抹の不安を覚えながら読み始めました。

そして読み終えてみて、「やっぱり薄かったぁ〜(^_^;)」でした。

大半が素人の!?たった10人の部員で?あの!箱根駅伝を!目指す!っていう、無茶なストーリーです(^_^;)

物語が展開する中で、少しの裏切りや、どんでん返しなどもなく、予想通りの展開で進んでいき、最後には皆さんご想像の通りに幕が降ります。

10人のキャラクターも、それなり・・・、脇役のキャラクターもそれなり・・・、セリフも描写もそれなり・・・、で、全く胸が震えることなく、エンディングを迎えます。

作者の方も、かなり取材されたようですし、大好きな箱根駅伝をテーマにしているので、オマケで
★★★3つです。

純粋な推理小説「双頭の悪魔」by有栖川有栖

2017年01月27日 | 小説レビュー
〜他人を寄せつけず奥深い山で芸術家たちが創作に没頭する木更村に迷い込んだまま、マリアが戻ってこない。救援に向かった英都大学推理研の一行は、大雨のなか木更村への潜入を図る。江神二郎は接触に成功するが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。川の両側に分断された木更村の江神・マリアと夏森村のアリスたち、双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まる…。(「BOOK」データベースより)


推理小説の大家「有栖川有栖氏」の長編小説「双頭の悪魔」
をようやく読了しました。

まぁ700頁におよぶ大作ですから、読むのに大層な時間がかかってしまいました。

アガサ・クリスティや綾辻行人さんのような推理ミステリーのお手本のような作家さんですが、やっぱり僕はこういう作風は合わないんですかねぇ~(-_-;)

隔離された場所で起こる殺人事件、犯人たりえる可能性は全員にあるが、それぞれの動機はイマイチ不十分・・・さて真相は!?という話。

大学の推理研究会のメンバーと警察が犯人を突き止めていくというストーリーなのです。

「その時間のアリバイは?」、「動機を考えると・・・」、「物理的に不可能」など、それぞれの推理を披露しあいながら犯人に近づいていって、最後には部長の江神氏が「犯人はあたなだ!」と迫り、「ええっ!この人が!?」というオチになるんですが、まぁ途中の展開がしんどかったです。 読んでいて「もうやめようかなぁ~(-_-;)」と思ったぐらい退屈でした。

推理小説ファンの方なら「こいつが犯人か?」、「いや待てよ・・・やっぱりこいつか?」と、自分なりの推理を展開して楽しめるんでしょうが、僕にはそこまで入り込めなかったですね。

よって、★★★3つです。

大文字がクッキリと!

2017年01月24日 | 雑感・日記的な
このところ、メチャクチャ寒いですねぇ(((((((*_*;)

車で下鴨を通っていたところ、昨日の雪がやまはだに残っていて、大文字山の『大の字』がクッキリと浮かび上がっていました!

一瞬のエエ景色を楽しませてもらいましたが、早く春が来て欲しいものです(^_^;)

最後の数十ページは圧巻!「ルパンの消息」by横山秀夫

2017年01月18日 | 小説レビュー
~十五年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人―。警視庁に入った一本のタレ込みで事件が息を吹き返す。当時、期末テスト奪取を計画した高校生三人が校舎内に忍び込んでいた。捜査陣が二つの事件の結び付きを辿っていくと、戦後最大の謎である三億円事件までもが絡んでくるのだった。時効まで二十四時間、事件は解明できるのか。(光文社より)


横山秀夫さんの作品は5作目となりますが、相変わらず読ませてくれますねぇ〜!

ご本人のあとがきを読むと、これは横山さんの処女作で「サントリーミステリー大賞佳作」を獲った名作であったものの、発刊されることなく眠っていたそうです。
それを15年ぶりに改稿し、ブラッシュアップしたものだそうです。

ストーリーは、同じ高校に通う不良の三人組が、夜中に校長室に忍び込んで、あるものを盗み出す計画を立てます。
見事に成功させたものの、偶然にも女教師の死体を発見してしまい、事件に巻き込まれます。

当時は、遺書を残した自殺ということで片付けられた事件でしたが、15年の時効が迫る時、「あの事件は自殺ではなく他殺です」という密告により、当時の関係者が記憶の底から呼び戻され、亡くなった女教師や、事件に関わった人たちの過去の傷が掘り起こされ・・・!?

そして、残りの数十ページからは、「ええっ!そうやったんか・・・(T^T)」と、激しくも悲しい真実が暴かれます。

まぁ、横山秀夫さんは「64(ロクヨン)」の感想でも書いたように、人物の描写、深層心理、セリフ回しなどがとても巧みで、感情移入してしまいます。

また、そこかしこに散りばめられた伏線(伏線とは気付かない小さな(?_?))をクライマックスからエンディングにかけて、見事に、実に見事に回収してくれます。

必然的に読後感はスッキリと、晴れやかな気持ちにさせてくれる、とても素晴らしい作家さんの一人です。

『三億円事件』まで絡んでいて、さすがに「そんな上手いこと事件が解決するかい!」と、冷静に考えれば出来すぎのストーリーですが、エンターテイメントなので、それはそれでいいと思いますよ!

★★★★4つです!

しびれたねぇ!おめでとう京都チーム!

2017年01月15日 | スポーツ
雪が降ってなかったら応援に行こうと思っていたんですが、かなりの雪に怯んでしまい、断念してしまいました(^_^;)

家でテレビを観ながら応援していたんですが、今回の駅伝ほど、どこのチームが優勝するかハラハラした大会もなかったでしょう!

駅伝100周年の記念すべき年に、期待に応えて優勝を飾ってくれた京都チームの皆さんに、心から拍手を送りたいです!

薄いね「世界中から猫が消えたなら」by川村元気

2017年01月15日 | 小説レビュー
~僕の葬式。僕の枕元に集まる人はどんな人たちだろうか。かつての友達、かつての恋人、親戚、教師、同僚たち。そのなかで僕の死を心から悲しんでくれる人は、何人いるのだろうか。僕と猫と陽気な悪魔の7日間の物語。(BOOKデータベースより)


とても評判が高く、嫁さんからも「読みたいから借りてきて」と頼まれたので、図書館で借りました。

まぁ〜・・・、薄いです。

脳腫瘍を患って、「余命一週間、もって半年」と宣告された主人公(30歳郵便配達員)が、悪魔と取引をして、自分の寿命一日と引き換えに、世界中から『何か』を消すという話。

設定は面白いですし、愛猫『キャベツ』とのからみもホンワカして楽しめます。

もっともらしいエピソードやセリフが所々に出てきますが、おざなりな表現と設定により、深みが足りません。

でも、物語の意味というか、少し考えさせられる部分もあります。

「世界中から○○が消えてしまったら?」と、自分の周りの物質的なものや人に置き換えて考えてみました。

『世の中に無くてもいいものと、無くなったら絶対に困るもの』という価値観について、少し考えてみる良い機会になると思います。

小説としては薄いですが、テーマとしては良かったので、
★★★3つです。

叙述トリックの最高峰!「殺戮にいたる病」by我孫子武丸

2017年01月14日 | 小説レビュー
~永遠の愛をつかみたいと男は願った――東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔! くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。 (講談社文庫)


「ほっほぉ〜〜〜〜(^○^)そうきたか!」と最後のページを読んだときに、あまりに見事に騙された自分に笑みさえこぼれました。

主題は「性的倒錯者による連続猟奇的殺人」です。

プロローグで、いきなり犯人逮捕のシーンから始まるので、とても不思議な印象から物語がスタートします。

1、殺人犯
2、母親
3、元刑事
という三者の視点が順繰りに事件との関わりを持っていきます。

あまり書くとネタバレになってしまいますので控えます。

柔道に例えるなら、「試合時間残り3秒、豪快な一本っ! 背負い投げが決まったぁ!投げられた相手選手も、あまりに見事な投げられっぷりに相手選手も唖然として苦笑い・・・。」、という感じですかね(^_^;)

鮮やかに斬られ過ぎて、読み終わったあとに、少し「ぼぉー(゜ロ゜)」っと、してしまいました。

途中からエロ・グロの連発に気持ち悪くなるので、女性には全く勧められません
(-。-;)

が、プロットの組み立てから、読者をミスリードする技法の巧みさ、笠井潔氏による解説もわかりやすく、読後感も納得です。

★★★★4つです。

猫好きも犬好きも◎「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」by万城目学

2017年01月12日 | 小説レビュー
~かのこちゃんと、猫のマドレーヌ夫人のふかしぎな日常。かのこちゃんの家の老犬、玄三郎にお嫁さんがきた! それは猫のマドレーヌ夫人。外国語(犬語)がしゃべれるおかげで一目おかれるマドレーヌと、ちょっとおかしな女の子かのこちゃんの、ちょっぴり不思議な毎日!【小学上級から ★★★】


職場で「万城目学が好きなんですよ」と話していたら、「それじゃあ、マドレーヌ夫人読んだ?」と聞かれ、「(?_?)・・・?」な僕は、早速、図書館で検索して借りてきました。

まぁ、対象が「小学高学年以上」と書いてあるとおり(^_^;)、漢字にはフリガナがふってあるし、文字も大きく、文章も読みやすく、二時間程で読めました。

でも、さすがは万城目さんですよ!内容が素晴らしい!

主人公の小学一年生の女の子『かのこちゃん』と、その『刎けいの友:すずちゃん』、飼い犬の『玄三郎』と飼い猫?の『マドレーヌ夫人』、そして、かのこちゃんの家族、友だち、猫仲間、犬仲間・・・、いろんなキャラクターが登場します。

文章やセリフが可愛らしくて、思いやりが一杯詰まっていて、猫好きも犬好きも、可愛い娘を持つ親も、みんなみんか楽しめる作品です。

とくに、お茶会のくだりなんか、読んでいて笑顔にならない人はいないと思いますよd(^-^)

万城目さんらしく、ファンタジーに溢れていて、それでいて、しっかりと読者に「心の温もり」を伝える、素晴らしい仕掛けがたくさん用意されています。小さいお子さんと一緒に読んでも楽しい作品だと思います。

★★★3つです。

大興奮!大満足!「ワイルドソウル」by垣根涼介

2017年01月11日 | 小説レビュー
~その地に着いた時から、地獄が始まった――。1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。だが入植地は密林で、移民らは病で次々と命を落とした。絶望と貧困の長い放浪生活の末、身を立てた衛藤はかつての入植地に戻る。そこには仲間の幼い息子、ケイが一人残されていた。そして現代の東京。ケイと仲間たちは、政府の裏切りへの復讐計画を実行に移す! 歴史の闇を暴く傑作小説。


久しぶりに快作に出会いました!高い前評判通りの大作です!
疾走感と緊迫感、壮大なスケール、そしてクライマックスからエンディングに至るまでの爽やかな笑顔・・・。

垣根涼介さんのあとがきを読んでもわかるとおり、筆者入魂の素晴らしい作品です!

上下巻で、1000頁に及ぶ大作なんですが、読み出したら一気読みでした。
2004年に本作で、史上初となる、「大藪春彦賞」、「吉川英治文学賞」、「日本推理作家協会賞」の三冠を受賞した作品だというのも納得です。

ただのハードボイルド小説ではなく、明治末期から戦中、戦後にかけて国策として行われた「移民政策」、特に夢を抱いて南米に渡った為に、ある意味では「国家の甘言に騙された」ともいえるような、アマゾンの奥地での凄惨な人生を送ることになってしまった日系一世の話で上巻の大半が占められております。

上巻の終わりごろから、その息子世代が力をつけて、日本国家に復讐果たそうとするエキサイティングな展開に心が奮えます!


ブラジルでの辛く厳しく、暗く、ジメジメとした大変な生活から一変して、下巻の日本編では、サンバやサルサのリズムよろしく、軽快に情熱的に物語が進行します。

登場人物のキャラクターづくりも素晴らしく、性格やセリフにも味があり、感情移入してしまいます。

復讐劇の第一段階が成功したあたりで、「この作品は俺が読んだ小説の中で五指に入るかも!!」と興奮しながらページ捲りました。

これ以降はネタバレになるので詳細には触れませんが、完璧なストーリー展開と爽やかで心地良いエンディングに笑顔がこぼれます。

今まで知り得なかった、ブラジル移民の先達の凄まじい苦難の歴史を知ることが出来たことと、解説の宮沢和史氏が書いている「腑抜けとなってしまった現代の日本人に対する警鐘」、「村上龍氏の『半島を出よ』を読んで感じた気持ちを今一度、奮い立たせよ!それこそ旧きよき時代の『ワイルドソウル』である」というような文章に、再び感銘を受けました。

世界の均衡が不安定になってきている昨今、今一度、日本人として生きる誇りと偉大な先達への感謝、崇敬の念を呼び起こさなければなりません!

とても良い小説に出会えたことに感謝したい気持ちです!

★★★★★5つです!

展開力がスゴい!「天使のナイフ」by薬丸岳

2017年01月08日 | 小説レビュー
~天罰か?誰かが仕組んだ罠なのか?妻を惨殺した少年たちが次々と死んでいく! 生後5ヵ月の娘の目の前で妻は殺された。だが、犯行に及んだ3人は、13歳の少年だったため、罪に問われることはなかった。4年後、犯人の1人が殺され、桧山貴志は疑惑の人となる。「殺してやりたかった。でも俺は殺していない」。裁かれなかった真実と必死に向き合う男を描いた、第51回江戸川乱歩賞受賞作。


年末年始用に図書館から借りてきたんですが、結局、休み明けから読み始めました。

薬丸さんの作品は初めてやったんですが、この方は、沢山のミステリー小説を出しておられるので、少し期待しながら読み始めました。

少年犯罪をテーマにした作品です。新婚ホヤホヤで可愛い一人娘が生まれた途端、空き巣に入ろうとした中学生3人に愛妻を刺殺されてしまった旦那さんが主人公です。

少年犯罪を取り巻く、犯罪被害者、被害者家族、加害者、加害者家族、警察、弁護士、マスコミという関係者達の人間模様がリアルに描かれています。

もっと残忍に、もっとエグく描くことも出来るでしょうが、あえてそういう描写に頼ることなく、セリフ回しや表情等で緊迫感を盛り上げていきます。

3分の1あたりまで読んだときに「ははぁ〜、これはこういうパターンでエンディングまでいくな」と、ある程度の筋書きが見えますが、半分まできたところで、物語が一気に裏返ります!

もう、そこからはページを捲る手が止まりません!

スゴい展開でストーリーが進んでいき、最後にまた大きなどんでん返しがあり、さらに連鎖的にどんでん返しというか、ドミノ倒しのように、事件の真相が明らかになっていきます。

とても綺麗に繋がっていく様は圧巻で「さすがは江戸川乱歩賞受賞作品!」と思わされます。

惜しむらくは、登場人物のキャラクターに深みがなく、もう少し人となりに触れてくれれば、物語にダイブすることが出来たと思うだけに少し残念です。

でも、プロットの作り方、結末の意外性、伏線回収率等を思うとやはり素晴らしい作品であると言えます。

★★★★4つです!