「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

ルール無視の超絶小説『生ける屍の死』by山口 雅也

2019年09月30日 | 小説レビュー
『生ける屍の死』by山口 雅也

~ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った。
この怪現象の中、霊園経営者一族の上に殺人者の魔手が伸びる。
死んだ筈の人間が生き還ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか。
自らも死者となったことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、肉体が崩壊するまでに真相を手に入れることができるか。「BOOK」データベースより


「どんでん返しがスゴイ!」みたいな特集に、よくタイトルが出てくる小説です。
ようやく図書館で見つけましたので、期待しながら読み始めました。

読み始めてすぐに、「これって・・・作者は日本人やったよなぁ~?」と、疑問符が浮ぶぐらい、外国の小説を日本人が訳しているのかと勘違いしました。それほど、何となく外国の香がする文章なんですよね。

さて、内容の方ですが、まぁ~ったくの期待はずれも大ハズレ!「せっかく借りた本やし・・・、もしかしたら、最後の最後でとんでもないどんでん返しが用意してあるかも?」と、何とか歯を食いしばって上下巻を最後まで読み遂げた自分を褒めたいです。

結局、大したどんでん返しがある訳でもなく、殺人の動機についても、なかなか理解することが出来ませんでしたし、死んでゾンビになった方が、かえって身体能力が上り、頭も行動もスッキリ!なんてこと自体が受け入れられませんわ(-_-;)
上巻はあとがきまできっちり読んだんですが、下巻のあとがきは読む気になれず、そのまま返却しました。

そもそも、ミステリー小説って、「密室殺人におけるトリック暴き」や、「叙述的に犯人を思い込ませて、最後にどんでん返し」など、常人では考え付かないような結末が用意してあってこそ、「ええっ!!そうやったんか!」って、面白みの度数が上るんでしょ?

この作品は、「死人が蘇る」という、ゾンビ作品なんですが、その蘇りの秘密(その一家の関係者だけが蘇っているのではなく、町でも何件かの蘇りが報告されている)についての記述が全くなく、なぜ次から次へと、その一家の関係者だけが蘇り、普通に暮らしていけるのかという、荒唐無稽すぎて、全く話になりません。

人が1人殺されていて、その犯人は誰か?時間的にも空間的にも無理なとことで、いかにして殺人が行われていたのか?ということを推理したり、展開を読んだりすることが、ミステリー小説の醍醐味でしょう?

そんなルールも何もかも、死人が生き返ってたら全く意味を持たないですよね。

とても評価が高いレビューも多いので、小説としての完成度がとても高いのかも知れません。僕の理解力不足ということでしょうか・・・。

それはそれとして、個人的な評価は、

★★2つです。
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素晴らしい!『日本高校ダンス部選手権 夏の公式全国大会』

2019年09月24日 | 雑感・日記的な
~話題の高校生ダンス。今年も全国から予選を勝ち抜いた50校が晴れの舞台に立ち青春を燃焼させた。
2分30秒のステージに向け彼女らはどんな思い、葛藤を抱え臨んだのか?
3連覇のかかる同志社香里、沖縄カルチャーを表現する浦添、アイデア勝負の市が尾、久米田、堺西など強豪校も登場。
数多くの高校生達の等身大の素顔に迫ったドキュメント。
半年にわたる取材で悲喜こもごもの青春群像を描く。過酷な勝敗の向こうに見えたのは?(NHK番組HPより


9/21(土)の夜、NHKによる、『日本高校ダンス部選手権 夏の公式全国大会』のドキュメンタリー番組を観ました!

全国の高等学校の『夏の甲子園』ともいえる、『日本高校ダンス部選手権 夏の公式全国大会』が開催されていることは数年前から知っていました。

あの「バブリーダンス」で一世を風靡した『大阪府立登美丘高等学校 2015、2016』や、『同志社香里高等学校2017、2018』の連覇が続いているなど、毎年レベルの高い激戦が繰り広げられています。

その陰に隠れて、2015年~2018年まで、4年連続で優秀賞を獲っている『大阪府立堺西高等学校』のダンスにも注目が集まっていました。

たまたまNHKのBS1で放送されていた『勝敗を越えた夏 日本高校ダンス部選手権2019』を観たところ、本当に感動しました。

「同志社香里の三連覇か?、堺西が悲願の優勝か?、2010年以来となる関東勢や全く別の高校が優勝するのか?」と、注目校の取材を通して、ダンスにかける情熱を見事に演出していた、素晴らしい番組構成でした!

他の高校の映像はなかったのですが、全国大会に出場する高校のすべてが素晴らしい出来であったかと思われます。

僕は個人的に、準優勝の「堺西高等学校」さんのダンスが、パーフェクトの出来だと思いましたし、女子高生の団体演技として、「あれ以上の技術の高さを求めるのは難しいやろ?」と思うぐらい、完璧なパフォーマンスでした。

優勝した帝塚山学院さんもメッセージ性が強く、ダンスも素晴らしかったですが、僕個人としては、堺西さんの見事な放射の動き、シンクロ率の高さ、繊細かつダイナミックなダンス、全体のバランスなどなど、どこをとってもパーフェクトでしたよ!

本当に「何でぇ!なんで堺西が優勝とちゃうのよっ!」と、テレビに怒鳴ってしまったぐらいでした。

また、機会があれば、いつかダンス全国大会を見てみたいものです。
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算数でここまで描けるか!『天地明察』by沖方丁

2019年09月20日 | 小説レビュー
『天地明察』by沖方丁

~江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。
ミッションは「日本独自の暦」を作ること―。
碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!早くも読書界沸騰!俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。「BOOK」データベースより


『十二人の死にたい子どもたち』での僕の評価はイマイチでしたが、今作は、2010年に『吉川英治文学新人賞』と、本屋大賞をダブル受賞した話題作ですし、2012年に映画化されており、主役の「安井算哲」を岡田准一、ヒロインの「村瀬えん」を宮﨑あおいが好演。そのほか、水戸光圀を中井貴一、保科正之を松本幸四郎、村瀬義益が佐藤隆太、関孝和が市川猿之助、建部昌明を笹野高史、伊藤重孝が岸部一徳などなど、脇役陣も豪華です。



『吉川英治文学新人賞』は、僕好みの作品が多く、第27回/2006年「隠蔽捜査」:今野 敏、第26回/2005年「夜のピクニック」:恩田 陸、第25回/2004年「アヒルと鴨のコインロッカー」:伊坂幸太郎、「ワイルド・ソウル」:垣根涼介 ※2004年は大当たり年ですね!!
そして、第23回/2002年は「パイロットフィッシュ」:大崎善生と、もう大好きな作品ばかりですね!

さて、映画の評価は、それなりみたいですが・・・(^_^;) しかし、この小説は面白いですよ!時代小説ですが、合戦や仇討ちなどは、ほとんど語られず、「算数(算学)」や、「囲碁」が主題となっているので、「盛り上がっていくんかねぇ~?」と、思いながら読み進めました。

読み進めていくうちに、主題は何であれ、いっぱしの男たちが、これほどまでに熱く語り合い、人生の目標(ロマン)、夢を抱き続けながら、力を合わせて乗り越えていく様は、とても美しく、熱量を感じますし、筆者の筆力に感心します。

とにかく登場人物がとても格好いい!というかシブい!実在の人物に対するキャラクター設定が巧みですし、とても惹きつけられます。
台詞回しや、独特の間の取り方など、緊迫感溢れる場面や、滂沱の涙を流す場面、悔しさに打ち震える姿など、臨場感もたっぷりです。

主人公が何度も挫折を繰り返しながらも、成功への階段を一段一段上っていく姿は、とても尊く、輝いています。

「さぁ~クライマックスやでぇ~!魅せてくれよぉ~!」と、大いなる期待を抱きながら読みましたが、どうも最後は淡々とし過ぎていて、少し肩透かしでした。

さらなる「どんでん返し」が控えているとはいえ、詔勅が下る場面なんかは、もっともっと緊迫感をもって、その場の空気感を表現してもらいたかったので残念です。

細かいことは気にせず、物語にどっぷり浸かって読んでみてください。良い作品だと思いますよ。

★★★★4つです。
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間違いなく読ませる『虚ろな十字架』by東野圭吾

2019年09月13日 | 小説レビュー
~中原道正・小夜子夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。
数年後、今度は小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。
中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。
一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていた―。「BOOK」データベースより


初めて東野圭吾氏の作品に触れたのが。2014年10月07日、『さまよう刃』でした。ストーリー展開に衝撃を受けたのはもちろんですが、東野圭吾氏が描く、ヒューマンミステリーの魅力に取り憑かれ、それから早5年・・・、今作が記念すべき30作目でした。

本当に間違いの無い、ハズレのない作家さんといえば、東野圭吾氏がナンバーワンでしょう!今作も例外ではなく、非常にスラスラと、そしてグイグイと引き込まれ、一気に読了しました。

「日本の死刑制度の是非について」、読者に問いかける内容であり、殺人被害者と加害者の両側からの視点を簡潔にわかりやすく、そして真摯に捉えた作品でした。

人の命、人生、そして遺族の人生をも奪ってしまう殺人。その重罪を犯した被告人は裁判にかけられ、

少し調べてみたところ・・・。
 ~殺人罪は、死刑から懲役5年までという幅広い法定刑が定められています。
 さらに、刑法第66条に、「犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、
 その刑を減刑することができる。」という酌量減刑の規定がありますから、
 執行猶予付の判決が出ることもあります。
 平成28年版犯罪白書によりますと、平成27年の地方裁判所における殺人罪
 (314件のうち)の死刑・懲役等の科刑状況は、死刑が2件、無期懲役が7件、
 15年を超え30年以下が44件、3年を超え15年以下が167件、3年以下が94件
 です。死刑の割合はかなり低く抑えられていることがわかります。

「弁護士法人デイライト法律事務所HPより」

様々なケースがあるのでしょうが、人の命を奪っておきながら、殺人罪で告訴されながら、死刑宣告を受けたのが314人中2人(0.006%)です。これでは、被害者遺族の感情は報われません。

今作は、8歳の一人娘を無残にも殺されてしまった夫婦のその後の生き方、感情の起伏などが詳細に綴られています。

そして、一つの殺人事件の裁判だけでなく、更なる悲劇を生んでしまった、もう一つの殺人事件の裏側に隠された過去の大きな秘密について、様々な伏線を張り、そして最後に一気に回収するという、東野圭吾氏一流の展開が読者を引き付けます。

オチとしてはそれなりですが、ここまで引っ張る筆力・展開力はさすがですね!

日本の刑罰制度について、大いに考えさせられる作品でした。

★★★☆3.5です。
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3つのルールに縛られすぎたか?『蒼色の大地』by薬丸岳

2019年09月11日 | 小説レビュー
~運命に抗え。時は明治。海賊と海軍の戦争が生む狂気の中を、少年少女は疾走する。「BOOK」データベースより


『シーソーモンスター』by伊坂幸太郎、『コイコワレ』by乾ルカに続く、「螺旋(らせん)」プロジェクトの三作目です。

薬丸岳さんの作品は、『天使のナイフ』『友罪』に続く、これまた三作目です。
どちらも、犯罪と向き合う非常にシリアスな好作品であったので、「螺旋(らせん)」プロジェクトの題材をどのように仕上げてくれるのか大いに期待しながら読みました。

しかし、結果は残念でした(-_-;)

キャラクターを活かしきれていませんし、それぞれの想いが描ききれていません。ストーリーも安直で、内容としては評価に値しません。

ハードカバーの386ページですが、読み応えはありません。というか、文章が上手なのでサラサラと読み終えました。

さしたる盛り上がりもなく、エンディングも今ひとつ・・・。小説としては面白くありません。

「螺旋(らせん)」プロジェクトの3つのルール

・「海族」と「山族」対立構造を描く
・「隠れキャラクター」を登場させる
・任意で登場させられる共通アイテム

を物語に盛り込むことに執心し過ぎて、本質を見失った感がありますね。

★★☆2.5です。

予約している、あと二作、『死にがいを求めて生きているの』by朝井リョウと、『もののふの国』by天野純に期待したいと思います。

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短編あたりがちょうどいい『最終便に間に合えば』by林真理子

2019年09月08日 | 小説レビュー
~OLから造花クリエーターに転進した美登里は、旅行先の札幌で7年前に別れた男と再会する。
空港へ向うタクシーの中、男は昔のように美登里を誘惑してくるが…。
大人の情事を冷めた目で捉えた表題作に、古都を舞台に齢下の男との甘美な恋愛を描いた「京都まで」の直木賞受賞2作品他を収録する充実の短篇集。「BOOK」データベースより


『これが直木賞?』というのが、率直な感想です。

林真理子さんには、『愉楽にて』で、うんざりしたんですが、「これだけの名声を得ている作家さんやから、何か光るものがあるはず」と、図書館で借りてきました。

大人の女の様々な感情や恋愛の形を色んなシチュエーションで描いた短編集です。

どの作品もそれなりに読ませますし、感情の揺れ動きを巧みな言葉で綴っています。

時々、鼻につく表現もあり、小さなため息がこぼれますが、これもギリギリのスパイスとして妙な味わいをプラスしていると思いますね。

長編ではしんどいですが、通勤や昼ごはんを食べながら気楽に読むにはちょうど良い作品でした。

★★★3つです。
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相変わらず上手い!『盤上の向日葵』by柚月裕子

2019年09月06日 | 小説レビュー
『盤上の向日葵』by柚月裕子

~実業界の寵児で天才棋士。本当にお前が殺人犯なのか!?
埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが調査を開始した。
それから四ヶ月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦会場だ。世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とは――!?
日本推理作家協会賞作家が描く、渾身の将棋ミステリー!(内容紹介より)


小説って本当に難しいですねぇ~(^_^;) 『蜜蜂と遠雷 by恩田陸』でも書きましたが、同じように2/3あたりまでは、とても素晴らしいです。「これはイッたかも!?」と、またもや期待しながら読み続けました。

僕が、★★★★★5つを付ける小説というのは、「序盤から一気に物語に引っ張り込まれ、心のザワつきを抑えつつも、グイグイと引き込まれ・・・、様々な伏線を張り巡らし、時系列を組み替えたり、叙述トリックを仕掛けたり・・・、キャラクターを存分に暴れ回らせて、クライマックスまで盛り上げて、一気に昇華!または大どんでん返し!があって、伏線もしっかりと回収されて、静かに、そして晴れやかにエンディングを迎える。」という感じです。

柚月裕子さんの作品は『孤狼の血』に続く2作目ですが、相変わらず「やさぐれた中年男」を描くのが上手ですし、登場人物のキャラクターの立て方が抜群です。
タイトルのとおり、将棋を題材に使っているのですが、将棋がわからない人でも大丈夫だと思いますよ。

対局の場面が「△8五飛」、「▲5六歩」というように先手と後手が白黒の駒で表され、マス目の場所は数字(横目盛)と漢数字(縦目盛)の交差点で示されています。
余程、将棋に慣れている方でないと、この表示だけで盤面の戦いを頭に浮かべる事は難しいと思いますが、こういう駒の動きはサラッと読み飛ばしても、その後に描かれている表情や姿勢などで優劣や緊迫感は充分に伝わるので大丈夫です。

ミステリーという点から見ると、若干の物足りなさを感じますが、天才棋士・上条桂介の生い立ちと、事件を追う二人の刑事の捜査状況とが交互に出てきて、点と点であったものが線となり、面を構成していく様は見事です。

全てのキャラクターの作り込み方、表現や描写も良いです。しかしながら、クライマックスに至るまで綺麗な上昇カーブを描いていた感情の盛り上がりが、少しずつなだらかになり、最後は「フッ」と糸が切れたような幕引きでした。

中盤までの期待が大きかっただけに、「もう少し何とかならんかったんかなぁ?」という残念な気持ちと、「まぁ、こんな締め方しかないかもね(-_-;)」という諦念もあります。

序盤から色々と伏線が張ってあって、それを中盤から終盤にかけて忠実に丁寧に回収していき、小さなどんでん返しや驚きの場面も出てくるんですが、最終的に『ここ』に落とすための伏線でしかない、結果ありきの展開に収めてしまったのかも知れません。

柚月さん自身がインタビューで、「棋士・村山聖九段の生涯を描いた『聖の青春』と賭け将棋の世界を描いた『真剣師 小池重明』を読んだのがきっかけです。それまでは、将棋の面白さがさっぱりわからなかったのですが、将棋のために命を削る棋士の壮絶な生き方に圧倒されました。」
また、「私の中にあったテーマは「将棋界を舞台にした『砂の器』」なんです。松本清張先生には及びもつかないですが、親子の葛藤と人間の業を描いた『砂の器』の世界観を投影したかったんです。」
と語っておられます。

早速、『砂の器 上・下 by松本清張』、『真剣師 小池重明の光と影 by団鬼六』を予約リストに入れましたよ。

「あまり将棋のことは詳しくない」という中で、よく調べ、それを見事に文章に仕上げて世に出してくれたことは賞賛に値すると思います。素晴らしい作家さんだと思います。

★★★3.5です。
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全てが中途半端『愉楽にて』by林真理子

2019年09月03日 | 小説レビュー
『愉楽にて』by林真理子

~大手医薬品メーカー九代目、久坂隆之は53歳。副会長という役職と途方もない額の資産を与えられた素性正しい大金持ちで、シンガポールと東京を行き来し、偏愛する古今東西の書物を愛でるように女と情事を重ねる。
スタンフォード留学中に知り合った友人、田口靖彦は老舗製糖会社の三男。子会社社長という飼い殺しの身が、急逝した妻の莫大な遺産により一変。家の軛から自由になるために、女からの愛を求め、京都で運命の出逢いを果たす。
時代の波に流されず、優雅で退嬰的な人生をたゆたう男たちが辿り着いたのは―。「BOOK」データベースより


『日経朝刊連載時から話題沸騰!絢爛たる贅沢な官能美の世界を描く傑作長編』などと、大絶賛の記事を見たので、図書館で予約して借りてきましたが、結果は残念でした

筆者の林真理子さんは、直木賞も受章されおり、選考委員にもなっている高名な作家さんで、エッセイを含めて、おそらく200作品ぐらいは発表されているんですが、実は林真理子さん初読なんですよね(^_^;) ※小池真理子さんは大好きですが・・・(^_^;)

そんなんで書評をするのはおこがましいのですが、今作について勝手に言わせて貰うと、「男心を良くわかってらっしゃるし、もちろん女性心理の描写も秀逸!でも所々で無駄な描写や余計な修飾が多く見られ、興醒めすることもしばしば・・・」という感じでしょうかね。

主人公の久坂は53歳で、もう1人の主人公の田口も同年代でしょう。僕より4つ5つ年上の設定で、時代感覚というか、肌感覚というか、何となく共感できる部分もあれば、「そんなこと思うか?」というようなこともあったりして、あまり没入出来ませんでした。

村上春樹氏の小説に良く登場するような『格好いい大人の男』ではなく、やはり女性目線で描かれているからなのか?何となく『格好悪いオヤジの足掻き』のようなものが見え隠れして、読んでいて気持ちが良くなかったです。

また、時折『京ことば』が登場するんですが、「惜しいねぇ~、あと一歩かな」という感じで、ますます気持ちが萎えました。

日経新聞朝刊の連載から単行本化されたので、パートごとの区切りがイマイチで、「久坂⇒田口⇒久坂」という切り替えも、ハッキリと区別されている感は無く、ダラけてしまった感じもあります。

そしてクライマックス?というあたりから、一気にまとめに入り、エンディングの謎の刺青男の登場も謎のままで、いきなり物語が終わってしまいます。

懐石、河豚、フレンチ、イタリアン、スペインなどの様々な料理や高価なワイン・シャンパン、着物やジュエリー・アクセサリー、女性のスーツやドレスなどの細かい描写、ラインで交わす言葉の一節一節などにも味わいがあり、「さすがは林真理子さん」と舌を巻く反面、「くどいなぁ~」と思うこともしばしば。

それでいて、建物や内装、風景や季節感の描写、光彩や陰影の使い方などには物足りなさを感じますし、「自分の好きなジャンルの描写は丁寧だが、それ以外はおざなり」、「俗っぽく、やや品性に欠ける表現」という印象も拭えません。

男女入り乱れて、いろんな登場人物と交わる、二人の主人公ですが、全員との関係性が中途半端な形で終わっています。

単行本化されるにあたり、例えば編集者の方などと相談しながら、構成や表現にも大きく手を加えられたら、もう少し統一感というか、まとまりのある小説になったかも知れません。

浮世離れした世界を垣間見る事が出来たという点を評価しても、
★★★3つですね。
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