「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

なかなかの出来!『ピンクとグレー』by加藤シゲアキ

2016年09月30日 | 小説レビュー
~ステージという世界の魔法、幻想に魅入られた幼なじみの二人の青年の愛と孤独を描くせつない青春小説。NEWS・加藤シゲアキ渾身のデビュー作。「BOOK」データベースより


ジャニーズのアイドルグループ「NEWS」のメンバーである加藤氏のデビュー作品である「ピンクとグレー」を読みました。

「やるな!加藤シゲアキ!」というのが率直な感想です。

とてもよく出来たストーリーで、特に中盤から一気に引き込まれました。

一緒に芸能界に入った幼なじみの親友同士。一人はドンドン売れていき、もう一人は鳴かず飛ばす・・・という、男の嫉妬や葛藤のようなことがリアルに描かれています。

途中までは、「まぁ、こんな展開やろな。」と思って油断して読んでいると、中盤の事件以降、一気に大転回します!

本人による、あとがきを読むと、この本を書き上げる為に、様々な苦労があったことがわかりますし、「色々なことを本当に良く考えているなぁ~。」と感心させられます。

「アイドルが片手間に書いた」なんていう先入観なしに、じっくりと読み込んで下さいね。

次は「傘をもたない蟻たちは」を読むことにしています。とても楽しみです。

★★★★4つです。

一気に読ませる!『後妻業』by黒川博行

2016年09月21日 | 小説レビュー
~金が欲しいんやったら爺を紹介したる。一千万でも二千万でも、おまえの手練手管で稼げや。
妻に先立たれ、結婚相談所で出会った二十二歳歳下の小夜子と同居を始めた老人・中瀬耕造は、脳梗塞で倒れ一命を取り留めたものの意識不明の重体に。
だが、その裏で、実は小夜子と結婚相談所を経営する柏木は結託、耕造の財産を手に入れるべく、周到な計画を立てていた。病院に駆けつけた耕造の娘・尚子と朋美は、次第に牙をむく小夜子の本性を知り…。「BOOK」データベースより


いま上映中の映画「後妻業の女」の原作小説です。

ここ数年の間にニュース等で見聞きした事件を思い起こしますが、巻末の解説を読んで、「筆者の知人が実際に後妻業の女の被害に遭われた」というのを読んで、「そらリアルやわなぁ〜」と、実感しました。物語の登場人物等はフィクションですが、今もなお、どこかで資産家老人を狙っている小夜子のような女がいると思いますねぇ。

黒川博行氏の作品を初めて読みましたが、大阪の地名や関西弁が随所に織り込まれているので、読んでいて情景が浮かび、ますますリアルに感じられます。

映画では、大竹しのぶが好演しているようですが、実際の小夜子は「69歳の色黒の化粧の濃いオバハン」らしいので、大竹しのぶでは綺麗すぎますよね(^_^;)

ストーリー展開もグイグイ引き込まれますし、次々に登場するキャラクターが全員個性的で一癖も二癖もあります。

それでいて、散文的にならず、しっかりとまとめあげ、最後には綺麗にエンディングを迎えてくれます。

また別の黒川作品を読みたくなりました!

★★★★4つです。

心清らかに『僕のメジャースプーン』by辻村深月

2016年09月15日 | 小説レビュー
~ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。
ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。
彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。「BOOK」データベースより


『ツナグ』で有名な辻村深月さんの作品です。オススメ小説やったんで、BOOK・OFF購入シリーズの最後にとっておきました。

500頁超えの長編ですが、スラスラ読めますし、小学生が主人公ですが、感情移入もできますし、良いストーリーでした。

ミステリーというか、学園(小学校)もののヒューマンドラマですね。道徳の時間に教室で観るテレビドラマのようでもあります。

主人公の僕とヒロインのフミちゃんは、小学校四年生なんですが、とってもしっかりとしてます。

中盤から登場する、師匠のような存在の秋山先生との問答が、とても良い味を出しており、綺麗に物語を進行させてくれます。

涙がこぼれるところまではいきませんが、かなりグッとくるシーンや、ドキドキハラハラする展開もあり、最後まで飽きさせません。

最後の最後で色々な霧が晴れていき、スッキリとエンディングを迎えられます。

犯罪者に対する「罪と罰」について、深く考えさせられますし、子どもを教育する上でもヒントとなるようや語りが多く登場します。

いずれにしても、とても完成度の高い作品だと思いますね。

★★★★4つです。

さすが!の冷やし中華「みその橋サカイ」

2016年09月14日 | グルメ
何年ぶりですかね?二回目のサカイでしたが、相変わらずの大混雑ぶり(^_^;)と、相変わらずの美味しさでした!

御薗橋界隈に行かれたら、ぜひサカイで冷やし中華を食べてください。

冷やし中華の原点のような味ですよd(^-^)

美しく深く・・・『戻り川心中』by連城三紀彦

2016年09月09日 | 小説レビュー
~大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に迫いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。
岳葉が真に愛したのは?女たちを死なせてまで彼が求めたものとは?歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。
耽美と詩情―ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。「BOOK」データベースより


『恋文』に続く、連絡城三紀彦氏の作品です。

読み終えた感想は「終わったぁ・・・」という、普通の小説を5冊ほど読み終えたような疲れがきました。

とても美しく、流麗で、一つ一つの描写も台詞も、心の井戸の中に一滴一滴と、雫が落ちていくようにしみわたっていきます。

5つの短編が収録されているのですが、どの物語も美しいミステリーでした。

時代設定が大正時代なので、とても深い情緒的な恋愛小説に感じますが、全ての物語に、あっと驚く結末が用意してあり、ミステリーとしても完成度が高いです。

しかしながら、一文一文、かみ砕きながら読まなければならないので、とても時間がかかります。

しかも、どの話も暗く湿っているので、読後感はスッキリとはいきません。

小説としての完成度は、かなり高く、数多くのレビューも絶賛されていますが、僕個人としては、

★★★☆3.5です。

新しい叙述トリック!「ハサミ男」by殊能将之

2016年09月03日 | 小説レビュー
~美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。
三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。
自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。「BOOK」データベースより


とても不可思議な読後感です。単なるミステリー小説ではなく、叙述トリックの進化版ともいえるでしょう!

読者をミスリードする作品は多々あれど、登場人物までも最後まで騙され続けます。あまり類を見ない作品です。

ハサミ男という題名から、想像する通り、ハサミを凶器に使った連続殺人事件が題材となっていますが、警察がハサミ男を追い詰めて最後には・・・、という単純なストーリーではありません。

何を書いてもネタバレになるので、詳しくは触れませんが、筆者の才能に感服します!

クライマックスでは、若干、登場人物の台詞が紛らわしく、「これは誰が言ってるのか?」と思う部分もありますが、許容範囲です。

そんなにエグい描写もなく、文章も読みやすいので、どなたにもオススメできる作品です。

しかし、2013年に鬼籍に入られ、もうこの方の作品を読むことが出来ないと思うと残念でなりません。

★★★★4つです。