「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

究極の師弟愛『春琴抄』by谷崎潤一郎

2017年12月23日 | 小説レビュー
〜九つの時に失明し、やがて琴曲の名手となった春琴。
美しく、音楽に秀で、しかし高慢で我が侭な春琴に、世話係として丁稚奉公の佐助があてがわれた。
どんなに折檻を受けても不気味なほど献身的に尽くす佐助は、やがて春琴と切っても切れない深い仲になっていく。
そんなある日、春琴が顔に熱湯を浴びせられるという事件が起こる。火傷を負った女を前にして佐助は―。
異常なまでの献身によって表現される、愛の倒錯の物語。
マゾヒズムを究極まで美麗に描いた著者の代表作。「BOOK」データベースより


とっても薄い小説なんですが、文字が小さく、昔言葉で、句読点も少なく、さらに難解な漢字が多くて・・・、読了するまで大変な時間を費やしました。

友人から薦められて、谷崎潤一郎氏の作品を初読したのですが、とても美しい日本語表現を使われます。

特にこの『春琴抄』では、美しい単語、表現、描写など、どこを切っても哀愁と刹那的な雰囲気が漂っています。

霞か靄がかかったような雰囲気で、中盤ぐらいまでは読むことに時間がかかりました。

読み進めるにつれて、段々と慣れてきて、事件後あたりから、春琴の心の氷が溶けていくように、最後の方には気持ちよくなっていました!今更ながら、これは名作ですね!

「マゾヒズムを究極まで美麗に描いた・・・」と、紹介されていますが、マゾヒズムというよりも、『究極の師弟愛』という感じですね。

ドロドロした感じはなく、むしろ佐助から春琴へ身も心も捧げた、潔癖で完全無比の愛し方です。
そして、二人が『同化』してからは、穏やかな陽だまりのような温もりさえ感じ、エンディングでは爽やかな木漏れ日を感じます。

まるで実話のように思える物語で、谷崎氏の筆力に感嘆しました。

また、心のゆとりがあるとき、春先の日当たりの良いカフェで、一人静かに読んでみたい作品ですね。

★★★☆3.5です。

無味乾燥『氷菓』by米澤穂信

2017年12月18日 | 小説レビュー
〜いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。
あるはずの文集をないと言い張る少年。
そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。
何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。
さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。「BOOK」データベースより


ふ〜ん・・・( ´△`)
と、まぁ、あまり感想と言えるものを書ける要素がないですねぇ。

序章の謎解きも今一つ、『氷菓』の意味や、引っ張った割には真相のタネ明かしも今一つ、最後のオマケも不発・・・。

何とも締まりがなく、序盤から中盤にかけてのセリフ回しもイマイチ。

何故にこの作品が話題を呼び、アニメ化、映画化されているのか全く理解できません。

米澤穂信氏の書く文章と、僕の波長が合わないだけではないと思いますが・・・、
★★☆2.5ですね。

良かったよぉ『こうふくあかの』by西加奈子

2017年12月17日 | 小説レビュー
〜結婚して十二年、三十九歳の調査会社中間管理職の俺の妻が、ある日、他の男の子を宿す話。
二〇三九年、小さなプロレス団体に所属する無敵の王者、アムンゼン・スコットの闘いの物語。この二つのストーリーが交互に描かれる。
三十九歳の俺は、しだいに腹が膨れていく妻に激しい憤りを覚える。
やがてすべてに嫌気がさした俺は、逃避先のバリ島で溺れかけ、ある光景を目にする。
帰国後、出産に立ち会った妻の腹から出てきた子の肌は、黒く輝いていた。
負けることなど考えられない王者、アムンゼン・スコットは、物語の最後、全くの新人レスラーの挑戦を受ける。「BOOK」データベースより


『こうふくみどりの』と、微かに繋がっている作品とのことですが、ストーリーが繋がっているというよりは、共通するキーワードがあるという感じです。

それは「アントニオ猪木」ですね。

『こうふくみどりの』よりも、こっちの方が好みですね。一気読みでした。

主人公が中年男性で、「人から、どのように見られているか」といことが気になって仕方ない性格というところも共感できました。

現代と約30年後の日本との物語が交互に語られるんですが、途中で繋がっていることに気付きます。

一見、ありえないようなストーリーなんですが、まるで伊坂幸太郎氏の作品を読んでいるような心地よさがあります。

最後にタネ明かしが用意してあるんですが、スッと腑に落ちる内容で納得です。

自分が主人公の立場なら、受け入れられるかどうかわかりませんが、何となく「わかるかも、その気持ち」と共感できます。

読んでいて、心がけホンワカと温かくなるような物語です。

★★★☆3.5です。

ホンワカやね『ビタミンF』by重松清

2017年12月16日 | 小説レビュー
〜炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説があるのなら、ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい。
そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった。
Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune…〈F〉で始まるさまざまな言葉を、個々の作品のキーワードとして埋め込んでいったつもりだ。
そのうえで、けっきょくはFiction、乱暴に意訳するなら「お話」の、その力をぼく(著者)は信じていた。「BOOK」データベースより


二人の娘の父親であり、夫であり、46歳である僕にとっては、まさに『ビンゴ!』の短編集です。

七つの物語が収められているんですが、どれも中々のハートウォーミングなお話です。

それぞれに、切り口が違って、ドキドキする展開なんですが、エンディングが全て、ホンワカとした終わり方なんで、とても良い話になってます。

なんか身につまされるストーリーばかりで、40代の父親に読んでもらいたい短編集ですね。

★★★3つです。

そこまでする?『カササギの計略』by才羽楽

2017年12月11日 | 小説レビュー
〜僕が講義とバイトを終えてアパートに帰ると、部屋の前に見知らぬ女がしゃがみこんでいた。
彼女は華子と名乗り、かつて交わした約束のために会いに来たという。
なし崩しに同棲生活を送ることになった僕は、次第に華子へ惹かれていくが、彼女は難病に侵されていて、あとわずかな命しかなかった…。
ともに過ごす時間を大切にする二人。しかし、彼女にはまだ隠された秘密があった―。「BOOK」データベースより


いわゆる「当たり外れの差が激しい」と言われる?『このミステリーがすごい大賞』作品です。

んで、この作品はというと、非常に微妙ですが、ハズレですかねぇ(^_^;)

惜しいんですよ!非常に惜しい!物語の設定や展開に、かなりのムチャがありますが、前半は何とか読み続けられます。

脇役などのキャラも、ある程度立ってますし、サイドストーリーもまずまずです。

しかし、ところどころ「ちょっとダルいなぁ〜」とダれる部分や、華子と俊介の会話などに「はぁ〜┐('~`;)┌」となったり、中盤は読むのに力が必要です。

そして、ようやくたどり着いたクライマックスでは、少し緊張感や盛り上がりもありますが、どんでん返し後の「ネタバレ」を俊介が語るところで一気に冷めてしまいました。

最後の最後で「おっ!」と思わせてくれたのが救いですが、全体として、少しダラダラと必要のない描写が入ることによって間延びした感は否めません。

まぁ「なんぼなんでも、そこまでするかぁ?」と言いたくなるような設定なんで、物語にはダイブ出来ませんでした。

初稿から、かなり編集が手を加えて、ブラッシュアップされたと解説にありますが、どうせ手を加えるなら、思い切ってカットしても良い場面が多々あったと思います。

一応、★★★3つ付けますが、かなり甘めの3です。

最後の応援!

2017年12月10日 | 家族・友達
長女が高3なんですが、小学校4年生からバレーボールを始めて8年間、本当に色んなことがありました。

お蔭様で、大きな怪我もなく無事に過ごしてきてくれたことを喜んでます。

12月23日〜の近畿私学大会が本当の意味での最後の大会なんですが、残念ながら僕は仕事で応援に行けないので、会場で長女の応援をすることは最後となりました。

たくさんの思い出と、たくさんの友だちとの出会いを作ってくれた長女に感謝したいです。

あと二週間、全力でやりきって欲しいものです!

引っ張った割には『TENGU』by柴田哲孝

2017年12月08日 | 小説レビュー
〜26年前の捜査資料と、中央通信の道平(みちひら)記者は対面した。
凄惨(せいさん)きわまりない他殺体の写真。そして、唯一の犯人の物証である体毛。
当時はまだなかったDNA鑑定を行なうと意外な事実が……。
1974年秋、群馬県の寒村を襲った連続殺人事件は、いったい何者の仕業(しわざ)だったのか? 
70年代の世界情勢が絡む壮大なスケールで、圧倒的評価を得て大藪春彦賞に輝いた傑作。


う〜ん・・・(^_^;)
なかなか面白かったと言えば面白かったし、アカンと言えばアカンし(-_-;)
評価が難しい作品です。

『TENGU』というタイトルと、導入部の事件、「おっ!これは期待できるかも?」と思いましたが、から、何となく最後までダラ〜っとした展開でしたね。

キャラクター設定、展開、緊迫感、疾走感、そして「TENGU」の正体と彩恵子の過去・・・、どこをとっても、あと一歩という感じでした。

クライマックスからエンディングの描写も含めて、盛り上がりかけたところで水を差されるというか、自分で火消しをしているというか(^_^;)

ストーリーの着眼点や、ベトナム戦争〜9/11同時多発テロまでを繋げていく設定なども、中々のものがあったと思うので、編集者の力不足でしょうかね?

読んで損は無いですが、引っ張った割には、得られたものも少ないです。

★★☆2.5です。

読みごたえあり!『関ヶ原 上・中・下』by司馬遼太郎

2017年12月02日 | 小説レビュー
〜東西両軍の兵力じつに十数万、日本国内における古今最大の戦闘となったこの天下分け目の決戦の起因から終結までを克明に描きながら、己れとその一族の生き方を求めて苦闘した著名な戦国諸雄の人間像を浮彫りにする壮大な歴史絵巻。
秀吉の死によって傾きはじめた豊臣政権を簒奪するために家康はいかなる謀略をめぐらし、豊家安泰を守ろうとする石田三成はいかに戦ったのか。「BOOK」データベースより


(´▽`;A ふぅ〜。二週間かけて、『関ヶ原 上・中・下』やっと読み終えました。

まぁ、誰もが何となく知っている天下分け目の大合戦ですが、さすがは司馬遼太郎氏ですね。とてもわかりやすく描かれていました。

どのようにして、関ヶ原へと歴史が動いていったのか?
約30人ほどの戦国武将のそれぞれの立場で動いていく環境と心情の変化が巧みに描かれています。

もちろん主役は石田三成と徳川家康なんですが、他の武将たちにもスポットが当てられており、より詳しく知ることが出来ました。

いま大河ドラマでやっている、『直虎』も、ようやく井伊直政が家康に取り立てられていくというところですので、これからの働きが楽しみですね。

いずれにしても、関ヶ原の前後で日本の歴史は大きく動いた訳ですから、いろんな歴史小説を読む上での基準になるような素晴らしい作品でした。

★★★☆3.5です。