〜その果てに待つものを知らず、私はあなたを求めた―。
多感な響子は偶然に出会った渉に強く惹かれるが、相手の不可解な態度に翻弄される。
渉に影のように寄り添う友人の祐之介と、その恋人エマ。
彼らの共有する秘密の匂いが響子を苛み、不安を孕んで漂う四角形のような関係は、遂に悲劇へと疾走しはじめる。
濃密な性の気配、甘美なまでの死の予感。『恋』『欲望』へと連なる傑作ロマン。「BOOK」データベースより
読み終えたあとで、ものすごい充実感というか、「小説を読んだなぁ・・・。」と、フゥーっと小さな溜息が漏れるのは、小池真理子さんの作品ならではですね。
石田衣良さんの解説文の冒頭に「興奮して眠れなくなってしまった。この解説を書くために、久しぶりに『無伴奏』を読んのだ。おもしろかった。勢いがついてとまらなくなってしまった。そこで『恋』を読み、それでもとどまらずに『欲望』を読んだ。それがこの明け方である。・・・(中略)
もし、あなたが小池真理子の「恋・三部作」を一冊も読んでいないのなら、ぜひこの『無伴奏』から手に取ってほしい。」とあります。
上記は発刊順なので、その方が正しいのかも知れませんが、僕は『恋』→(二重生活)→『欲望』→『無伴奏』の順でしたが、別にどれから読んでも良いと思います。一つ読めば、また次の小池真理子作品を読みたくなるはずですし、どれを読んでもハズレはありません。
調べてみると、成海璃子、池松壮亮、斎藤工の共演で映画化もされています。
成海璃子は満島ひかりでもいいでしょう!というか、満島ひかりの方がピッタリきますね。(*´-`)
さて、小池真理子さんの作品全体に言えることですが、「恋」それも心の底から人を愛するということは、こんなにも鋭く尖っていて、真っ直ぐで、それでいて氷のように冷たく、透き通っていて、危うくて、脆くて・・・、という言葉を散りばめても書き尽くしても語りきれない、情景描写・台詞・仕草・色・音・その全てが危ういバランスの上に立って描かれています。
よって、読んでいる側は、物語の展開、主人公の行動、言葉、周りとの関わり、伏線の回収などについて、常に「ハラハラ、ドキドキ」というよりも、「ジリジリと焦がれる」ような焦燥感とともに、美しい物語に酔いしれるという複雑な感情にドップリと浸かれることでしょう。
物語の最後の『終章』の中で、勢津子の店を出たあとから、
J.Sバッハの『無伴奏チェロ組曲第1番』
が静かに流れだし、仙台の街に一人佇む響子の姿に、何とも言えない感傷的なイメージとともに、仲の良く笑いあっていた四人のセピア色の映像に切り替わり、ゆっくりとエンドロールが上がってくるような錯覚を覚えました。(実際の映画でも、そんなエンディングなら最高に美しいでしょうね( ;∀;))
とても美しい物語でした。
限りなく4に近い、
★★★☆3.5です。