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う~ん…。『しろいろの街の、その骨の体温の』by村田沙耶香

2021年07月31日 | 小説レビュー

『しろいろの街の、その骨の体温の』by村田沙耶香

~季節が変わるごとにたくさんの転校生がやってくるニュータウンで、クラスの立場も性格も、正反体の女の子と男の子が出会う―。学校が嫌いだった人たちへおくる、教室の物語。「BOOK」データベースより

 

『コンビニ人間』『殺人出産』『生命式』という、人間の常識をぶち破り、新しい価値観、新しい普通を生み出し続けている、村田沙耶香さんですが、僕の好きな作家さんの一人です。その村田さんの作品の中でもレビュー上位にあるのが、この『しろいろの街の、その骨の体温の』なんですね。 タイトルからも、何となく村田さんの世界がふわ~っと広がるような気がして借りてきました。

主人公の女子「結佳」が小学生から中学生に上がるまでの成長の過程を描いています。学校、クラス独特の階級制度が敷かれている残酷な現実の中で、下位グループに所属している結佳が、思いを寄せる男の子「伊吹」との微妙な関係が書かれています。

相変わらず村田さん独特の「薄気味悪さ」は漂っているものの、何とく間延びした感じで、ダラダラと進んでいきます。

結佳の感情が歪みすぎていて、もちろん感情移入は出来ないんですが、ストーリーとしても、惹かれるものが少なく、本当にダラダラと読み終えました。

最終的にハッピーエンド?と言える内容なんですが、それもまた、「う~ん…?」という感じで、あまり良い感想は得られませんでした。

村田さんの作品としては、初めての不合格点でしたね。

★★☆2.5です。

 


『愛するということ』byエーリッヒ・フロム、鈴木晶 (翻訳)

2021年07月16日 | 小説レビュー

『愛するということ』byエーリッヒ・フロム、鈴木晶 (翻訳)

~人間砂漠といわれる現代にあり、〈愛〉こそが、われわれに最も貴重なオアシスだとして、その理論と実践の習得をすすめた本書は、フロムの代表作として、世界的ベストセラーの一つである。「BOOK」データベースより

 

212頁の単行本ですので、一気に読めるはずですが、とっても忙しい6月を過ごしていたために、なかなか読了できませんでした。

タイトルの、「愛するということ」の通り、様々な愛についての解説があり、指南があり、まとめがあります。

こういうハウツー本のようなものは、一気に読んでしまわないとだめですね。

第一章から始まって、起承転結のような形になっているため、承る部分なんかでモタモタしていると、「そもそも?」って何回も頁を戻る破目になり、あまり頭に入ってきません。

特に中盤の「神への愛」のあたりになると、信仰心の薄い僕には、読んでいて共感できる部分が少なく、少しダレてしまいました。

すごく考えさせられる内容でした。どこから切り出せばいいかわからないので、解説ページのようなものが無いかとWebで探していたところ、

NHKの『100分de名著』という番組の2014年2月のシリーズで取り上げられていました。

~「愛するということ」はノウハウ本ではありません。愛の本質を分析した思想書です。1956年に出版されて以来、世界的なベストセラーとして読みつがれてきました。

著者のエーリッヒ・フロムは、1900年、ドイツでユダヤ人として生まれました。フロイトの流れをくむ精神分析家であると同時に、ファシズムを非難し、人間性の回復を説いた社会思想家として知られています。

この書でフロムは人間とは死を知っている存在だとしました。そしていつか死ななければならないという自意識が、孤独への恐怖を生んでいると考えました。この孤独の恐怖を解消するために人は他者との一体化をめざす。それが愛の本質だとフロムは言います。

 番組では、愛を通して人間の本性を学びます。そして人はどのように孤独と向き合うべきか、よりよい人生を送るためのヒントを探っていきます。

と、タイトルに書いてあり、とても分かりやすく解説してあるので、抜粋しますね。

「第1回 愛は技術である」

現代人は資本主義市場での“好都合な交換”に慣れているため、相手が条件にあうかどうかばかりを気にしている。そして“恋愛市場”のどこかに運命の人がいると思っている。果たしてそれは正しいのだろうか?フロムは、相手が見つからないのは、その人に他人を愛する力が足りないからだと言う。第1回では、愛には技術が必要であることを学ぶ。

「第2回 傷つくのが怖い」

ユダヤ人として2度の世界大戦を経験したフロムは、ファシズムの心理と恋愛には共通点があると考えた。他者と一体化したいという願望の対象は、個人間の関係にとどまらない。民族や宗教など様々だ。人間は自分を集団に融合させることで、孤独を忘れようとする習性があるのだ。第2回では、愛を通して人間の負の側面を見つめる。

「第3回 生身の人間とつきあう」

愛とは本来“与えること”にある。それはギブ・アンド・テイクが保証されているものではない。しかしそれでも与えなくては始まらない。なぜなら人は、与えられたことで変わるからだ。フロムは様々な角度から、どのような人間関係を築くべきかを詳細に語っている。第3回では、成熟した大人の愛とは何か?そのあるべき姿について考える。

「第4回 本当の愛を手に入れる」

フロムは、現代人は自我を抑制して生きざるを得ない状況に置かれており、常に大きな孤独を抱えていると言う。現代人は精神的に極めてもろい存在なのだ。しかし正しい愛のためには、自我の確立が欠かせない。また愛が社会全体に及ぼす影響を知り、社会を変えていく勇気も忘れてはならない。第4回では、本当の愛を手に入れるための心構え語る。

 

これを読むだけでも読み終えた気になってしまうと思うぐらい、とてもよくまとめられて構成されています。

愛に迷っている人も迷っていない人も、是非手に取って読んでみてください。

★★★☆3.5です。


読みやすい作品です。『周公旦』by酒見賢一

2021年07月13日 | 小説レビュー

『周公旦』by酒見 賢一

~太公望と並ぶ周王朝建国の功労者にして、孔子が夢にまで見たという至高の聖人に、著者独特の大胆な解釈で迫る。

殷を滅ぼし、周を全盛に導いた周公旦の「礼」の力とは何か?果たして彼は政治家なのか、それともシャーマン?そして亡命先の蛮夷の国・楚での冒険行の謎とは。無類の面白さの中国古代小説。新田次郎文学賞受賞作。「BOOK」データベースより

 

『墨攻』『後宮小説』に次ぐ、酒見賢一氏の三作品目です。とても評価が高い作品なんですが、極めて地味な内容です。

周公旦という人物が、言葉少なく淡々とした政務をこなすタイプの忠臣なので、武王が健在な頃には、それほど目立つ雰囲気はなく、他の武将、官吏の方が面白いキャラクター設定であり、前半は読んでいて、引き込まれる感じはありません。

しかし、次代の成王に疎まれて、国外逃亡し、命からがら未開の僻地『楚』に入り、地方の蛮族たちとの命がけの交渉をし、呪術的な能力を駆使して、楚の蛮族たちの懐に入り込み、そして楚を一つの国として立ち上げる礎を築いたのですね。

物語としても中々の展開でしたし、周公旦の胆力というか、生き抜く力には感嘆しました。

酒見氏の文章は相変わらず読みやすいですし、中国の三国志以前の歴史の一端を知る意味でも読んで損はない作品です。

★★★3つです。