「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

オチは想像の範囲内『夜の国のクーパー』by伊坂幸太郎

2018年03月30日 | 小説レビュー
~猫と戦争と、そして世界の秘密のおはなし。「BOOK」データベースより


大好きな伊坂幸太郎氏の作品を久しぶりに読みました。
とても不思議な世界観で、しょっぱなから、かなりの緊張感を持って読み始めました。

おとぎ話なんですが、色んな伏線が絡み合っていて、面白いです。ネコ目線の語りと、人間の語りとで、間接的に「ある国」の現状が明らかになっていきます。

オチとしては後半に入ったあたりから想像がつきますが、伏線も回収されていますし、「戦争と統治」についてなど、考えさせられる部分も多くあります。

伊坂幸太郎氏の文章は相変わらず読みやすく、読後感も爽やかです。

巻末のあとがき、解説も「なるほどねぇ~」と納得させられます。

★★★3つです。

とても良い本です。『泣き虫しょったんの奇跡』by瀬川晶司

2018年03月23日 | 小説レビュー
~あきらめなければ、夢は必ずかなう!中学選抜選手権で優勝した男は、年齢制限のため26歳にしてプロ棋士の夢を断たれた。
将棋と縁を切った彼は、いかにして絶望から這い上がり、将棋を再開したか。
アマ名人戦優勝など活躍後、彼を支えた人たちと一緒に将棋界に起こした奇跡。生い立ちから決戦まで秘話満載。「BOOK」データベースより


2018年秋に映画化のニュースをテレビで見て、「このキャスト(主演:松田龍平、そして、野田洋次郎、永山絢斗、染谷将太、渋川清彦、駒木根隆介、新井浩文、早乙女太一、妻夫木聡、松たか子、美保純、イッセー尾形、小林薫、國村隼・・・etc)なら観てみたいなぁ~」と思ったので・・・、早速、小説を借りてきて読みました。

将棋の世界では藤井聡太さん(15歳)が、現在6段で、公式戦通算成績は71勝11敗。自身2度目の公式戦16連勝を飾って、破竹の勢いで活躍中です。

少しマメ知識ですが、将棋のプロ(いわゆる棋士)になるには、大変厳しい試練を勝ち抜かなければなりません。『聖の青春』を読んだときにも触れましたが、奨励会というプロ育成の組織に入る試験を受けて、合格した者の中から半年に2名ずつしかプロになれず、26歳の誕生日を迎えるまでにプロになれなければ奨励会を退会しなければなりません。

そこで、退会する人たちは、将棋一筋に26年間の人生の全てを捧げてきた人が、突然、将棋以外の道を歩まなければならいということは、解説にも書いてある通り、「身ぐるみを剝がされて、真冬に外に放り出されるようなもの」とのことです。

著者の瀬川晶司さんは、まさに奨励会を26歳で退会し、今後の人生を一から始めるということで、大学に入り、NECのコンピュータ関連会社に就職し、第二の人生を歩み始めたのですが、そこで将棋と再会し、もう一度、プロになる為に、多くの仲間たちと共に、将棋連盟という組織を動かし、61年ぶりとなる異例中の異例のプロ編入試験を勝ち抜いて、35歳にしてプロ棋士となられました。

現在も、プロ棋士として頑張っておられますが、やはり将棋界もご他聞にもれず、若い棋士がグングン出てきますので、どうしても目覚しい活躍は出来ていないようです。

しかしながら、瀬川さんの挑戦は、世の中に大きな旋風を巻き起こし、「夢は諦めなければ、きっと叶う」ということを体現した素晴らしい方です。

小説の内容というか、実話なのに、とても読みやすく、瀬川さんの揺れ動く感情が、見事に表現されています。最大の恩師ともいえる「苅間澤先生」との再会が叶わなかったのが残念ですが、今野さんとの電話のくだりは涙なしでは読めません。

とても素晴らしい作品でした。あらためてプロと呼ばれる方々の凄さを垣間見た気がします。

★★★☆3.5です。

わかるけど、お腹一杯『カエルの楽園』by百田尚樹

2018年03月21日 | 小説レビュー
~国を追われた二匹のアマガエルは、辛い放浪の末に夢の楽園にたどり着く。
その国は「三戒」と呼ばれる戒律と、「謝りソング」という奇妙な歌によって守られていた。
だが、南の沼に棲む凶暴なウシガエルの魔の手が迫り、楽園の本当の姿が明らかになる…。
単行本刊行後、物語の内容を思わせる出来事が現実に起こり、一部では「予言書」とも言われた現代の寓話にして、国家の意味を問う警世の書。「BOOK」データベースより


まぁ、百田尚樹氏の作品なので、ある程度の予想しながら読みましたが・・・。
平和ボケしている日本人に警鐘を鳴らす意味で上梓されたんでしょうが、いささか思想が偏りすぎているので、読んでいてしんどくなりました。

カエルを人間に例えて、『国防論』を語った作品です。
かなりの右よりの論客として名を馳せている百田氏ですから、平和論者のことを思いっきり『愚者』扱いしています。
例えが秀逸というか面白くて、「これはあの評論家のことやな。」、「これはあの国のことやな」とか想像しながら読むのも面白いです。
まぁ、いろんなサイトで、モデルとなった人や国などのネタバレ解説がなされているので、答え合わせをしてみて下さい。

僕は思想的に、どちらにも偏っていないニュートラル=いい加減な人間なので、どちらの考え方にも賛同することは出来ません。本当に「これだ!」という答えはないと思います。

物語の展開が極論過ぎて暴論になっていますが、「確かにそういう考え方や見方もあるよね。」と考えさせられるストーリーです。

しかし、文庫版の巻末に収録されている解説が、かの有名な『櫻井よしこ女史』ではねぇ(-_-;) 贔屓の引き倒しでしょう。コッテリらーめんを食べた後で、生クリームたっぷりの甘いケーキを食べたような胃もたれを感じました(*_*;

こういう内容の作品なら、あえて左よりの方か、もしくは思想的に中立の方に解説を頼んだ方が良かったかもしれません。新潮社の編集の方も、それこそ慎重に判断すべきだったかもしれませんね(^_^;)

寓話なので、とても読みやすく、わかりやすい内容なので、あっという間に読み終えてしまいますが、読んで損したと思う作品ではないで・・・、
★★★3つですね。

孤独とは?縁とは?『起終着駅(ターミナル)』by桜木紫乃

2018年03月20日 | 小説レビュー
〜鷲田完治が道東の釧路で法律事務所を開いてから三十年が経った。国選の弁護だけを引き受ける鷲田にとって、釧路地方裁判所刑事法廷、椎名敦子三十歳の覚醒剤使用事件は、九月に入って最初の仕事だった(表題作「起終点駅」)。
久保田千鶴子は札幌駅からバスで五時間揺られ、故郷の天塩に辿り着いた。弟の正次はかつてこの町で強盗殺人を犯し、拘留二日目に自殺した。正次の死後、町を出ていくよう千鶴子を説得したのは、母の友人である星野たみ子だった(「潮風の家」)。
北海道各地を舞台に、現代人の孤独とその先にある光を描いた短編集を、映画化と同時に文庫化!「BOOK」データベースより


「かたちないもの」、「海鳥の行方」、「起終点駅(ターミナル)」、「スクラップ・ロード」、「たたかいにやぶれて咲けよ」、「潮風(かぜ)の家」の6編が収められている短編集です。どれも内容が濃くて、描写もよく、とてもスラスラと読めましたし、色々と考えさせられる作品ばかりでした。

「海鳥の行方」と「たたかいにやぶれて咲けよ」は、同じ主人公が登場しますので、二つで一つの作品とも言えます。しかも一番面白かったです。
作中に出てくる短歌『たたかいに やぶれて咲けよ ひまわりの 種をやどして をんなを歩く』が、とても深い味わいを醸し出しています。

表題の「起終点駅(ターミナル)」も、佐藤浩市、尾野真千子、本田翼、中村獅堂などで映画化もされてますし、なかなか読み応えのある短編でした。

巻末の解説にもある通り、どの物語も、主人公の『孤独』を巧みに描いています。
エンディングでは、「また次の道へ・・・」と主人公達が歩んでいくところで終わりますので、まさにタイトルどおりの「一つの物語の終わりは、次のステージへと進んでいく始まり・・・というターミナルの話」であったと思います。

僕らの人生も、いろんな人々との関わり、交わりの中で、喜びや悲しみを感じ、後の人生に少なからず影響を与えられます。

孤独を愛する人は多いと思いますが、何らか人との関わり、人の助けなくしては、一人では生きていける訳はありません。

物語の主人公たちも、ある意味では孤独で無縁な人ばかりですが、人との縁や、大切な人への想いを胸に抱きながら生き続けて行きます。

桜木紫乃さんの作品は初めて読みましたが、他の作品も読んでみたくなりました。

★★★3つです。

わかりやすく面白い『隠蔽捜査』by今野敏

2018年03月16日 | 小説レビュー
『隠蔽捜査』by今野敏

~竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。
その朴念仁ぶりに、周囲は“変人”という称号を与えた。
だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。
組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。「BOOK」データベースより


知人のオススメである「今野敏」氏の警察小説です。オススメだけあって、一気に読みました。とっても読みやすく面白い小説でしたね。

この『隠蔽捜査』シリーズは、7まで出ている人気シリーズらしく、それも納得ですね。それに僕好みの「吉川英治文学新人賞」受賞作品というのも良いですね。

主人公の「竜崎伸也」は、始めの方は「なんか難しいオッサンやなぁ~」と、あまり好ましくないキャラクターとして登場しますが、読み進めるうちに「はっはぁ~ん・・・、これは、なかなかの好人物や」と評価が上がっていきます。

ブレない信念、警察官僚としての誇り、鋭い洞察力・判断力・・・、どれを取っても警察庁に勤めるキャリア官僚として素晴らしい仕事ぶりです。

物語としては、序盤の静かな立ち上がりから、徐々に事件が拡大していき、クライマックスでは手に汗握るやりとりがあり、最後には爽やかなエンディングを迎えます。

仕事を中心にというか、仕事以外のことは考えていない竜崎の性格によって、家族との確執が生まれますが、僕も父親として、娘たち、嫁さんとの接し方、問題が起こったときの対処の仕方など、色々と考えさせられる部分がありました。

それにしても、「こんなにうまいこといかんやろ!?」と思う点も多々ありましたが、警察機構が良くわかり、とても楽しめる内容だったので、よしとしましょう!

次の『果断』も予約しますよ。

★★★☆3.5です。

囲碁道場に通ってます!

2018年03月15日 | 囲碁
毎年、春の恒例行事となっている、4月に開催される囲碁の大会『宝酒造杯 』に向けて、とうとう碁会所デビューをしました!

毎週土曜日の午前中、しっかり講義を聞いて、対局をして、また講義を聞いてという講座です。

3月一杯まで、みっちり授業を受けて、少しでも棋力をアップさせて、宝酒造杯に自信を持って臨めるように、頑張りますp(^^)q

衝撃度数(30)「夏の沈黙」byルネ・ナイト

2018年03月14日 | 小説レビュー
〜テレビドキュメンタリー制作者のキャサリン。49歳の彼女は順風満帆の生活を送っていた。
手がけたドキュメンタリー番組が賞を獲得、夫は優しく、出来がいいとはいえない息子も就職して独立している。
だが、引っ越し先で手にした見覚えのない本を開いた瞬間、彼女の人生は暗転した。
そこに登場するのは自分自身だ。しかもその本は、20年にわたって隠してきた、あの夏の秘密を暴こうとしている!
圧倒的なリーダビリティ、巧緻きわまりない伏線、予測不能の展開。
発売を前に25か国で発売が決定した、大型新人の驚異のデビューミステリ!「BOOK」データベースより


う〜ん・・・(-_-;)
この、とんでもない紹介文を読むと「これは、アレックス以上の秀作!大どんでん返しの連続か!」と期待せずにはいられないですよね(^_^;)

前半の導入部分からは、「この主人公(キャサリン)は、過去にとんでもない過ちを犯してるにも関わらず、それをひた隠しに隠して、幸せな日々を送っている大悪党」という印象にリードされていきます。

そして、それが家族や世間に暴露されて、家庭も仕事も崩壊してしまいます。

まぁ、そこまでは良いとして、あっと驚く真相や、どんでん返しの連発は無く、ある意味でのハッピーエンドに持っていかれます。

展開も滑らかですし、日本語訳も無難です。

期待値が大きすぎたのもありますが、並のミステリー小説でした。

★★★3つです。

少し中弛みはあるものの『蒲生邸事件 上・下』by宮部みゆき

2018年03月12日 | 小説レビュー
~予備校受験のために上京した受験生・孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われた。
間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。
雪降りしきる帝都・東京では、いままさに二・二六事件が起きようとしていた―。
大胆な着想で挑んだ著者会心の日本SF大賞受賞長篇。「BOOK」データベースより


宮部みゆき作品ということもあり、評価も高かったので借りてきました。
図書館で受け取る際に、子どもっぽいイラストが載っていたので「これは、もしや子ども向けでは!?」と心配しました。

が、文春文庫で出ていたものが、青い鳥文庫で一部改稿されて、小学生でも読めるように振り仮名が付けられたり、イラストが入ったりした模様・・・(^_^;)。

しかしながら、上下巻で、かなりボリュームがあり、途中少し中だるみするんで、読むのに時間がかかりました。

ストーリーについて、何の先入観もなしで読み始めたんですが、「SFミステリー」で「タイムトリップもの」です。
僕の好きなジャンルではないので、若干興味がそがれましたが、頑張って最後まで読みきりました。

面倒くさい場面も沢山あったんですが、クライマックスは、なかなか面白い展開でしたし、謎もスッキリ、伏線回収もスッキリ、そして、色んな登場人物の人生について、最後の最後まで丁寧に語ってくれました。

残念ながら、始めっから終わりまで、主人公に感情移入できませんでしたが、エンディングはとても爽やかで、気持ちの良い終わり方です。


★★★3つです。