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普通って何やろ?と、『コンビニ人間』by村田沙耶香

2019年06月02日 | 小説レビュー
『コンビニ人間』by村田沙耶香

~36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。
「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。「BOOK」データベースより


いやぁ~!快作快作!あんまり期待せずに読み始めたんですが、夜中の0:00~2:00までかかって一気読みしてしまいました!土曜日で良かったです(^o^;)

さて皆さん、「これって社会の常識や」とか「それが普通やろ!」とか、我々は日常的に口にしたりしていますが、この本からは「『普通』って何なんや!?」って、頭をガチーン!!と殴られたような、目が覚めたような気持ちになりました。

世界には色んなジャンルのマイノリティがおられますが、そういう異端児って、世の中の多数派からは、自分の物差しの範疇を超えた謎の存在として、敬遠され、遠ざけられたりすることもしばしばあります。

周りを見て、自分と同じような価値観を持っている人といると安心しますし、そうでない人を排除しようとしたりもしますよね。

個性的な人が、その才能を開花させ、例えば芸術面とかで突き抜けてしまうと、「天才や!」、「偉大や!」となる訳です。

例えば、岡本太郎とか、忌野清志郎とか、甲本ヒロトとかね。

ブルーハーツの曲にも「~どこかの偉い人ぉ~テレビで喋ってるぅ~今の若い人には個性がなさすぎるぅ~僕らはそれを観てぇ~一同大笑いぃ~個性があればあるで、押さえつけるくせにぃ~」と。

自分の才能や個性を発揮できる、その道や場所を見つけられた一握りの人は幸せです。もちろん、そこに至るまでの努力の結果なんですけどね。

この物語の主人公である、惠子も小さい頃から「変わった娘」として、家族や同級生、先生からも、その心の裡を中々理解されず生きていて、苦しんだ経験から「自分の考えや言葉を口にすることなく、周りに合わせて自分を押し殺していれば何の問題も起こらない」と、心を閉ざし、コンビニ人間として、与えられた役割を丁寧に一生懸命こなしていきます。

恵子のような人を「自閉症スペクトラム症」と定義付けることが出来るかも知れません。

ネットで調べると・・・、

~アスペルガー症候群と高機能自閉症は、両方とも自閉症スペクトラム症の中に包括される障害です。自閉症スペクトラム症の特徴としては、社会的コミュニケーションにおける困難さや、興味や活動の様式が限定されていることが挙げられます。
アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラム症の中でも、言葉や知的の遅れがない(IQ70以上)障害です。
特徴としては、遠まわしな表現や比喩を使った表現、表情やしぐさから相手の感情を読み取ることに困難さがあるため、自分の話ばかりしてしまったり、相手が傷つく言葉を悪気なく伝えてしまったりするなどの困りごとがあるといわれています。
その他にも、一度決まったルーティンが崩れたり、新しい環境へ適応が必要になったりするなど変化に対する抵抗が強くあるともいわれています。

とのこと。


東田直樹さんの『自閉症の僕が跳びはねる理由』を読みましたが、作中に、「出来れば僕らのような人を見かけても、奇異の目を向けないで、そっと見守って欲しい」と書いてありました。

本書の内容は、かなり過激で片寄った登場人物が出てきますが、恵子の周りの人々が色々な立場から話す言葉や、行動に対して、「あぁ~、俺もこっち寄りの考えかも?」と、納得させられてしまいました。

自分は普通の人間だと、思っていますし、恵子のような人がいると、やっぱり距離をおいてしまうかも知れません。

しかし、この本を読んでから、改めて「世の中には色んな人がいはるんやし、自分の価値観での『当たり前』を押し付けたらアカンよな」と思いました。

Amazonのレビューを読んでいると、賛否両論で、特に『否』の方の意見はかなり辛辣ですが、「あぁ~、やっぱりこういう考えて方の人もいはるんやなぁ」と、また考えさせられました。

いずれにしても、とても読みやすい文章ですし、芥川賞とか何とか、先入観なく、色んな人に読んで欲しい作品です。

久々の
★★★★4つです。


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