歴史シリーズ完結である。今回のテーマは“朝幕併存と天皇教”である。鎌倉幕府成立時に、源頼朝は天皇家を根絶やしにしなかったのか。世界史の中では類をみない「朝幕併存」という支配体制の核心にせまっている。徳川幕府が大政奉還という形で武家政治に終止符を打ち、天皇を中心とする新体制で明治の時代は進んだ。その帰着が第二次世界大戦、太平洋戦争であったが、アメリカを中心とする連合国側は“象徴としての天皇”を残すことを決めた。
大戦後の米ソの冷戦時代において、日本の地理的要因を分析し、スムーズに米国側の新体制に日本を組み込むためには必要であると判断したのだろう。そこには日本人のアイデンティティーへの深い洞察があったように思われる。先に読んだアフガニスタンの話でも米ソの対立に翻弄されたことが悲劇の最大の要因だが、もう一つにはアフガニスタンの国内での民族間の対立がおさまらず、内乱状態が続いたということも拍車をかけた。
井沢さんは“国家権力=悪”ではないと言っている。 「もし国家権力がなかったら、みんなばらばらにそれぞれが好き勝手なことをして暮らすことになりますが、それは結局、けんかの強い者が勝つ弱肉強食の原始社会なのです。人類は昔から国家をつくってきました。国家は、“家”という字がついているように、ファミリーの発展形です。いろいろなファミリーが、それぞれ一つの法律なり思想、あるいは宗教のもとに団結して一つの組織をつくり、これを運営していく。その際、みんなが勝手なこと言ったら運営できないわけですから、国の最高権力者を決めることがどうしても必要になります。」
それを戦争によって奪い取るという長い時代を経て、今の日本では選挙によって選ぶという時代になっている。近代国家と前近代国家を分ける目安に、“その国家に野党があるかどうか”である。個人であれ党であれ独裁という形態を持っている国は前近代国家である。アフガニスタン、イラク、フィリピンなどの国では選挙による最高権力者の選出にむけ血みどろの戦いがなされていると思う。
日本も60年余り経て、ようやく本格的な政権交替ということを経験した。この1年の混迷は政治家も国民も不慣れからきていることもある。歴史入門を読んでいて、長い時間をかけてそれぞれの民族は自分たちにあった体制を試行錯誤しながらつくってきたし、これからも作り続けるのだと強く思った。
レシャード・カレッドさんは本の中で、オバマ政権の米軍増派はさらに事態を悪化させると懸念している。
アフガニスタンでは、武力のみで解決できないことも多く、そのような時には、民族や部族の長老が集まって協議で治安や紛争を解決することも古くから習慣として行なわれてきました。最新の武器に頼らず、古来の知恵を活かすことも忘れてはならないと思います。私自身、この難題の解決方法は暴力ではなく、対話以外にはないと、かねてから訴えてきました。
大戦後の米ソの冷戦時代において、日本の地理的要因を分析し、スムーズに米国側の新体制に日本を組み込むためには必要であると判断したのだろう。そこには日本人のアイデンティティーへの深い洞察があったように思われる。先に読んだアフガニスタンの話でも米ソの対立に翻弄されたことが悲劇の最大の要因だが、もう一つにはアフガニスタンの国内での民族間の対立がおさまらず、内乱状態が続いたということも拍車をかけた。
井沢さんは“国家権力=悪”ではないと言っている。 「もし国家権力がなかったら、みんなばらばらにそれぞれが好き勝手なことをして暮らすことになりますが、それは結局、けんかの強い者が勝つ弱肉強食の原始社会なのです。人類は昔から国家をつくってきました。国家は、“家”という字がついているように、ファミリーの発展形です。いろいろなファミリーが、それぞれ一つの法律なり思想、あるいは宗教のもとに団結して一つの組織をつくり、これを運営していく。その際、みんなが勝手なこと言ったら運営できないわけですから、国の最高権力者を決めることがどうしても必要になります。」
それを戦争によって奪い取るという長い時代を経て、今の日本では選挙によって選ぶという時代になっている。近代国家と前近代国家を分ける目安に、“その国家に野党があるかどうか”である。個人であれ党であれ独裁という形態を持っている国は前近代国家である。アフガニスタン、イラク、フィリピンなどの国では選挙による最高権力者の選出にむけ血みどろの戦いがなされていると思う。
日本も60年余り経て、ようやく本格的な政権交替ということを経験した。この1年の混迷は政治家も国民も不慣れからきていることもある。歴史入門を読んでいて、長い時間をかけてそれぞれの民族は自分たちにあった体制を試行錯誤しながらつくってきたし、これからも作り続けるのだと強く思った。
レシャード・カレッドさんは本の中で、オバマ政権の米軍増派はさらに事態を悪化させると懸念している。
アフガニスタンでは、武力のみで解決できないことも多く、そのような時には、民族や部族の長老が集まって協議で治安や紛争を解決することも古くから習慣として行なわれてきました。最新の武器に頼らず、古来の知恵を活かすことも忘れてはならないと思います。私自身、この難題の解決方法は暴力ではなく、対話以外にはないと、かねてから訴えてきました。