改札口から乗客が吐き出されるように出てくるその雑踏の中にあやちゃんはすぐに私を探し当て手を振っていた。
流行りのバギーを押している旦那さんの耳元に「Tetsuさんだよ」とでも言っている仕草が終ると旦那さんの素朴な笑みが私を捉えた。
4年ぶりぐらいに再会したあやちゃんは大人の落ち着きと言うか、母親のそれと言うか、または仕事の疲れからか、学生時代の頃と少し違った雰囲気を私に与えた。
旦那さんのユウジ君とも握手をし、バギーの中を覗けば、外界とは一切関係してない何の心配もしてない無垢な寝顔の可愛い赤ちゃんがいた。
思わず「可愛い!」と声をあげてしまったくらいだった。
この場所が空襲後死体の山だったこと、外国人の観光客が物凄く増えたこと、時代が流れに流れ繁栄してきたことなど、それまでの数分間私が想像していたことなど何のお構いもしない生命がそこに小さく輝くように横たわっていた。
それは人間の健気な姿そのものであり、新しい命がどれだけの救いをもたらすことなのであるかをさとすように存在していた。
{つづく}