外は雨が強く降ってきた。
私はその雨を見ているが、心で見ていたのはシアルダーのディスペンサリーだった。
ふと思い出せば、思わず微笑んでしまうディスペンサリーでのこと、それは駅を回り終えてからの休憩時間のことである。
マーシーのルパが作ってくれたチャイを私たちが飲むだが、ある日、私はポットに入っていたチャイをカップに移し飲んでから、少し鼻から息をフンっと出し、彼女にこう言った。
「ルパ!このチャイは甘くない!」
「えぇー、ブラザー{私のこと}。甘くない・・・」
「はぁ、甘くないし、しょうがも入っていない!」
私は冗談っぽく偉そうに言った。
そんなことを言い出すボランティアはまずいない、いないのでルパは一瞬驚く、その驚く表情がとても面白くて、私はそんなことを言い出した。
チャイに文句をつけるのは今回が初めてではない、前回もルパにはチャイにはしょうがを入れるようにと言ったことがあった。
もちろん、彼女もそれを覚えていただろう、だが、ベンガル語で話しているので他のボランティアは唖然としている。
私はそれも楽しんでいて、そして、ルパも何か楽しんでいた。
私と彼女との間には本音を言えると言うか、長い間の信頼信用があり、それはやはり家族のような間柄だからこそ言い合えることであった。
他にも私がディスペンサリーに行き、チャイが用意されていないと、ルパは「ブラザー!あと五分でチャイは出来るから」と言って忙しくし始める。
私はしばらく待ってから、「もう五分はとっくに経っている」とか言って、自らチャイの鍋をかきまぜはじめる。
「あぁ~ブラザー、私がやるから、待っててください」と大声を出したものだった。
そんなルパとのやり取りを思い出す度、微笑みが私にやってくる。
カルカッタとは似ても似つかぬ雨模様を眺めながら、あのディスペンサリーを思う。
その思いは静かに深く祈りに変わっていく。