とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

しづやしづ・・・

2013-06-08 06:09:46 | 日記
しづやしづ・・




「静御前」上村松園
 この作品は前掲の絵とは違い躍動感が漲っている。松園は繰り返し静御前を描いたと言われている。



 出雲の阿国像

 これは京都の出雲の阿国像であるが、これと同じ像が阿国の出身地である出雲市大社町の吉兆館にも最近建てられた。私は先日初めてその像に対面した。カメラを忘れたので写真は撮れなかったが、実物を見ると小顔の美しい顔立ちで、私はしばらく佇んで見とれていた。


 笙子さんが郁子さんからの誘いを断ってから数日後、突然、喜多川さんから電話がありました。私は少なからず驚いて緊張して話を聞いていました。


 ・・・それでね、畝本さん、結局笙子さんは承諾してくれました。

 えっ、舞台に立つんですか。

 さっきも言いましたように亡くなったお母さんの霊を慰めるために・・・。

 お母さんの霊・・・。

 ええ、静御前の絵を描いたのもそういう気持ちを整理するためだったようです。

 それで、もう一人の阿国になるということに・・・。

 いや、それはダメでした。舞台で静御前の舞をしたいと仰るのです。

 ええっ、静御前の・・・。

 そうです。しかも、湖笛のメンバーとしてではなく。

 と言いますと・・・。

 時代設定とシナリオの構成が難しいですが、郁子さんの阿国の舞台の中に静の舞を挿入するということですね。

 相当な覚悟ですね。

 ええ、夢の中に何度も静御前の姿が現れて、・・・しずや、しず、と唄いながら舞い始めるらしいです。

 「しづやしづ しづのをだまき くり返し 昔を今に なすよしもがな」というあの歌ですね。

 ああ、そうです、そうです。

 しかし、今、笙子さんは子どもが・・・。

 ええ、そうらしいですね。ですから、落ち着かれてからということになりますね。

 そうですか。笙子さん、そこまで・・・。

 母恋しですね。母は偉大ですね。・・・私は、笙子さんの舞い姿を想像して聞いていました。


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