フリージア工房 国道723号店

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雨の旅の思い出 ~北海道日高十勝~

2008-06-11 21:32:08 | 町と旅
 6月に入り雨の多い毎日になりました。読者の皆さんの住んでらっしゃる町では天気はどうですか?梅雨入りした地域もあるし、ジメジメした毎日が続いている所もあるかと思います。
 この時期はあまり出かけたくはなくなるものですが、雨の旅というのも情緒がある事もあります。以前、梅雨がないと言われる北海道の6月を堪能したくて、この時期に北海道に出かけた事がありました。

 爽やか陽気かと思っていた北海道が、着いてみたら二日続けて雨模様。朝早く苫小牧から日高本線というローカル線に乗った私のその日の予定は、午前中にオグリキャップのいる牧場に出かけ、午後は襟裳岬に行くというものでした。しかし、降りしきる雨に気持ちが負けて、オグリキャップの牧場は諦めました。恨めしげに雨空を見上げたものの、苫小牧を出てすぐ列車が湿原地帯に入ると、グレーの空と広大な湿原のコントラストに息をのみ、更に湿原の向こうに見える製紙工場の煙突の高さと荒涼とした湿原の風景とのアンバランスさに、SF映画チックな非現実さを感じて、雨空の演出に拍手を送りたい気分になりました。
 日高本線の沿線は馬や牛の牧場が多く、雨に濡れた海岸沿いに馬の牧場があったり、緩やかな丘陵に構える牧場に牛が大勢姿を見せたり、野趣に富んだローカル線でした。

 終点の様似という町は漁港の町でしたが強い雨で散歩もしにくい状況で、港の食堂でも入ろうかと思っていた私は散歩は諦め、襟裳岬へと向かうバスに乗りました。
 しかし、雨足はどんどん強くなる一方で、襟裳岬は雨と強風でまともに歩く事さえ困難な状況になっていました。この強風の中、岬へ歩いていく事は危険過ぎるので、私はバス停前の土産物店兼食堂に入り昼食。森進一の「襟裳岬」がエンドレスで流れる店内はシーズンオフゆえに閑散としており、雨空とのコンボで気持ちが落ち込みます。
 こんな強風の中、店にとじ込もっているだけでは面白くないので、次に来たバスに乗り込みました。このバスは次の目的地までは行かず、途中のえりも市街止まりでした。ところが不思議な事に、岬を回りこんで岬の西側から東側に出た瞬間に風は止み、雨も小雨になり更に曇りになりました。私は、えりも町の市街地を散歩して港風情を味わった後、予定通りの広尾行きバスに乗りました。

 バスは黄金道路と呼ばれる海岸道路を進みます。波が高く、地形も険しいため、建設費用がかなりかかったという事で「黄金道路」と呼ばれるようになったというこの道に入った途端、そのような逸話そのものに天候が荒れ始め、高波が波打ち際を襲い始めます。閑散とした車内だったバスは、波から逃げるかのように広尾に向けて疾走していきました。

 広尾は廃止された広尾線の駅舎をそのままバスの待合室に使用していたため、濡れる事なく次のバスを待つ事が出来ました。ちょうど高校の下校時間らしく、高校生で待合室は賑わっています。
 待合室の賑わいとは裏腹に、私が乗り込んだ帯広行きのバスは閑散としていました。それもそのはず、車窓は人家は少なくジャガイモやビートの畑ばかりが展開される風景。それでも、小まめにバス停は設けられていましたが、降りる人も乗ってくる人も少なく、バスは雨の十勝平野をひた走ります。
 実はカントリー娘。の花畑牧場がこの辺りにある訳ですが、とにかく一面畑、畑、畑。そんな畑に囲まれて、広尾線幸福駅跡が見えました。赤いディーゼルカーが一両、ぽつんと畑の中に鎮座していました。

 少し日が暮れかかった頃、バスは突然街の中に入り、高架駅の帯広駅前に着きました。この日初めて都会を見たような気分になった私は、駅前の綺麗なホテルに荷物を預けると、足取りも軽く帯広の町の散歩を開始。
 普段はガイドブックで店探しなどしない私ですが、掲載されていた内の一軒の店が気になっていたので、そこに入り夕食にしました。
 カウンターしかない小さな店でしたが、小洒落た洋食屋のような飲み屋でした。お客さんは居なくて、店の主人が一人立っていました。鮭のカツ丼風のドンブリを食べた私は、ビールを飲みながら店の主人と北海道の話などをしました。冬はなかなかエンジンが掛からないから、早朝の買い出しに出かける前に一旦3時に起きてエンジンを掛けて暖めておく話、若い頃は東京で板前の修行をしていた話、その東京の店を相撲部屋が贔屓にしていて時の横綱大鵬(昔、子供の好きな物の例えに「巨人大鵬卵焼き」という言葉があった)に料理を褒められた話など、楽しい話を色々聞かせてもらい店を後にすると、帯広の夜空は雨が上がり澄んだ紺色になっていたのでした。

 翌日以降は、爽やかな6月の北海道の陽気の下、丘の町美瑛やオホーツクの原生花園などの旅を楽しみましたが、雨空の日高十勝の風景を味わえたからこそ、美瑛や原生花園が鮮やかに感じられたのだと思っています。そう思うと、雨の旅もそれはそれなりに良いものです。

 今回のBGM 6月の雨 / 谷村有美
コメント
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