Paul McCartney & Wings- Jet
竹下通りの路地に原宿ルイードというキャパシティ150ほどのライブハウスがかつてあった。あるグループのステージを観るためにやってきた私は、ステージから2本出ている花道の脇にある席に座った。
軽快な音楽に合わせてダンスが数分行われたあと、数秒の沈黙を挟んで一曲目が始まった。
♪ジェット!新しい世界を作ろう♪
そんな歌いだしで始まったドライブ感溢れる曲だが、私の知らないその曲は、おそらく洋楽のカバーである事はわかっていた。根拠は特にないが、このグループがステージで歌う曲でカバーであるならば、高確率で洋楽のカバーであるという予想が出来ていた。
そのステージを見てからしばらく経ったある日、その曲が予想通り洋楽のカバーで、ポール・マッカートニー&ウイングスの「JET」という曲だとわかった。高校時代に同級生にファンクラブに入っているくらいビートルズが大好きな友人がいたので、一般的なレベル以上にビートルズの知識がある私は、ポール・マッカートニーがウイングスというバンドをビートルズ解散後に結成していた事は知っていたが、アルバムなどは持っていないのでウイングスの曲は詳しくない。奥さんがバンドに参加しているとか、以前にラジオで流れていて知った美しいバラード「MY LOVE」を知っている程度だ。
ちなみに、その友人のおかげでビートルズが解散後の今もファンクラブがあるのだという事を知った時は、とても驚いたものだった。
そんな訳で、「JET」を聴きたくなった私は、ポール・マッカートニー&ウイングスのベストを買う事にした。他の曲も聴いてみたい。ビートルズ解散後も大ヒット曲を持っているポール・マッカートニーの事だから、きっと良曲がたくさん収められているに違いない。
その期待は当たっていた。ポール・マッカートニー&ウイングスはポップでちょっぴりサイケでメロディアスだった。
歌詞カードにあった解説によると「JET」は発売当初、ビートルズの初期の頃を思わせる軽快なサウンドで好評を博したとあった。なるほど、この曲から感じる高揚感は確かにビートルズの初期曲に通じるかもしれない。そんなことを思いながら聴いた。
私にポール・マッカートニー&ウイングスのCDを購入させる機会を与えてくれたそのグループは、いろんなアーティストのカバーをやっていた。映画音楽、ファンク、ディスコ、モータウン、ブギ、歌謡曲などなど。私はそれらの原曲のCDを集めるのが楽しくなり、そして色んなアーティストを知る事が出来た。
今時のアイドルは、アイドルに憧れてアイドルになる子が多いせいか、カバーといえばアイドルの曲が多いような気がしている。でも、昔は音楽趣味の入口に成り得た時代があったのだ。今もそういう流れがもっとたくさんあったら良いのになと思う。