今月ハロプロ界隈にあった色々なニュースの中で、大きなニュースにはなっていないけれど気になったものが、なっちこと安倍なつみさんが久々にシングルを発売した事です。
雨上がりの虹のように―安倍なつみ[PV]
このニューシングルは、「夢をあきらめないで」などのヒット曲を持つ女性歌手岡村孝子さんが書いたものです。
前作はつんくPが曲を出かけていましたが、自分は「さすがなっちと長年仕事をしてきたつんくP。なっちの歌声のおいしい部分をよくわかっている曲作り」と記事を書きました。今回は初めてなっちを手がける方の曲作りだけに、どんなメロディを作ってくるのだろうと興味津々でした。
安倍なつみ 夢をあきらめないで
私は最近、モーニング娘。再評価と題して、昔の曲を聴いたり、動画を観たりしています。今も昔も好きなモーニング娘。アルバムの一つが「セカンドモーニング」です。1999年夏に発売されたこのアルバムは、当時のモーニング娘。のエースであり、象徴的存在であったなっちをメインに据えて作られた一枚でした。
モーニング娘。のアルバムというものは、その時代に応じて内容が変化しています。もっと突っ込んだ言い方をすれば、その時のエースによってアルバムの色が決定づけられていると言っても過言ではありません。それゆえに、モーニング娘。のアルバムは一作一作が異なる色になっています。
なっちの持つ色は何か?「笑顔」。そして、いつも笑顔ななっちのイメージとはギャップのある「陰のある歌声」。歌声のトーンに独特の陰があります。セカンドモーニングはなっちの歌声がよく聴こえてくる作品で、「せんこう花火」みたいなソロ曲まであるから、アルバム全体としてのトーンは、なっちの歌声が作り出すブルーな色に包まれた非常に聴き応えのある一枚です。(せんこう花火は大好きな曲です)
時は流れてもなっちの歌声の色は変わらない。ニューシングルでも、どこか陰のあるブルーな歌声が響きます。でも、決して陰鬱な響きを奏でているわけではない事はPVでもわかります。この曲がなっちと同年代の女性たちへのメッセージソングにもなっているからなのでしょう。
メッセージソングというと、どこか握る拳に力を込めてみたいな流れになりがちですが、この曲はその辺りはさりげない。実にさりげなく歌い上げ、良い意味で肩の力を抜いた歌声になっています。まるでなっちが口ずさんでいるのを収録したような、普段着な感じのさりげない空気がそこに表現されているように思います。
ただ、裏を返せばそのさりげなさは「インパクトが弱い」という事でもある。心地よい空気であるがため、意識をしていない人にとっては目の前を流れていってしまうような危うさがあります。まるで、そよ風みたく。
今の音楽界はCD不況などと言われていますから、一枚でも多くCDを売るためにみんな必死になっています。アイドル界も例外ではなく、あの手この手でCDを売っていくために力を込めています。
そういう状況を見せられているから、時には力の抜けた現代の歌も欲しくなったりする。なっちのニューシングルはそういう心境にマッチする作品ではないかなと思うのです。
もちろん、なっちも一枚でも多くCDが売れて、一人でも多くの人に聴いてもらえたらと願っていると思いますが、売上至上主義の真ん中に存在していない者だからこそ、肩の力を抜いたような歌を歌っていけるのではないかとも思うのです。
岡村孝子さんがどこまでを意識して書いたのかは予想出来ませんが、結果としてこのさりげない感じは今のなっちならではの色を示せたのではないでしょうか。
ただ難しいのは、売れなくてもいい訳ではない事。今後もマイペースで音楽活動をしていく事が出来るためのラインというものは、果たしてクリア出来たのかが気になるところ。そういう悩みは、世の「売上至上主義」の位置に立っていない歌手全てが背負っていく課題でもあります。タイトルはまさにそんな心境に対してのアンサーであるようにも思えたりします。