グラスファイバーとグラファイトの違いとヘラクレス(20190708)
子供の頃に関東グラスロッド 巌水3.8m4000円、紅葉4.5m5000円を使っていた。
先調子の巌水は軽くて使いやすいが短い。
胴調子の紅葉は長いが持ち重りが凄い。
テトラから寒バヤを釣っていると良型イワナと遡上チカ(ワカサギの海版)が釣れたのはこの紅葉。
春先に何故か分からないけれど10cmニジマスが何匹も釣れたのは巌水。
ミドルティーンの頃はグラスヘラ竿4.5mで40アップの本流ニゴイを狙い釣りした。
あの頃は磯竿も全部グラスファイバー。
今でもダイワ飛龍3.3mは健在で、購入してもう40年が経つ。
その頃、釣具屋に行くと「がまかつ」の無料パンフレットがあって必ず持ち帰った。
黒と赤の印象的な塗りがトレードマークな竿、ただし一本数万円以上の超高級品。
この竿が大きくしなり、その先に巨ベラや巨ゴイ、デカチヌや石鯛がヒラを打つ。
そんな写真が満載で、「竿が大物を難なく寄せる」コピーに溢れていた。
つまり手にすれば大物は約束されるという謳い文句。
「何という素晴らしい竿だろう、がまかつのカーボンロッド」
率直で素直な憧れがあった。
子供はグラス、大人はカーボン、そう括り我慢していた。
クランはグラファイトだった。
グラファイト、ということはグラスファイバーなのクラン?
それで調べてみる。
グラスファイバー:プラスチックにガラス繊維を混合して固めたものとある。
グラファイト:炭素から成る元素鉱物とある。
ティムコ社HPにグラスとグラファイトの違いが載っていて、この説明だとグラファイト=カーボンらしい。
このグラファイトには高弾性と中弾性があって、前者は軽くて硬い、後者は重くて”柔らかい”という文脈。
「50tカーボンシートで作成しました」という宣伝は前者の高弾性グラファイトを指すのだろう。
実際そんな高弾性グラファイトつまり50tなカーボンロッドを手にすると、まるで「刀」。
こちらの鼓動を頑に拒む無機質さ。
その点クランは手にした瞬間から対話が始まる。
クランの大きな振動が「さあ行こう、さあ釣ろう」とまるで生き物のように語りかけて来る。
これがキャストに移るとその表情が突然切り変わる。
獲物を前にしたイーグルが躊躇せず無慈悲な殺気の塊りになる、そんな風に。
筋肉の塊のような野太いロッドが緩んだラインを呼び起こす。
急に目覚めたそれは空高く舞い、山の向こうへ飛んでいく。
しばらくして降下し始め、はるか沖の水面に突き刺さる。
烈しい躍動は終わり、ロッドがこの手に横たわっている。
そんな一体感がハイモデュラスなグラファイト=高弾性カーボンにはない。
振れば切り裂き、止めれば静まり、完璧に無愛想なほど無駄がない。
でもその仕事は確実でまず間違いなくラインを遠くへ運ぶ。
なので遠投が必須な場ではカーボンロッド(=高弾性)、遠投しない場ならグラファイト(=中弾性)となる。
もちろん高番手グラファイトロッド(=中弾性)もかなりブッ飛ぶらしい。
ただ重厚なので長時間使い続けると身体にこたえるとのこと。
この情報から、身体に優しい高弾性カーボンロッドか、身体を鍛えながらのグラファイトか、の2択になる。
最近カウンター付のハンドグリップを買って毎日100回を目安に筋トレしている。
3−5kgの鉄アレイにも心惹かれる。
そして重厚なグラファイトロッドつまりクランに似合うヘラクレスを目指すのだ。
クランに似合うヘラクレス?
無駄だ。
出世や金運からかけ離れた、全く無駄な努力だ。
でもしょうがない、それがクランを「使いこなす」ための素養だと思うのだから。
ピアニスト、バイオリニスト、トランペッター、作曲家、画家、彫刻家、そして作家。
手にする道具は違いこそすれ使いこなすための努力は皆一様に惜しまない。
私はアマ釣師、プロ芸術家には到底及ばぬもののハンドグリップは今の基礎練習の大切な一つ。
この重厚なグラファイトロッドを少しでも満足に使いこなせるようヘラクレスを目指している。
でも多分、そこが一番の間違いで無駄の源だとも思えるが。