カンつき袖4号ソフトハックル(20220331)
先日に引き続きカンつき袖4号のソフトハックル。
ドライではないからタイガー針製の割と肉厚な針が使える。
ストリップクイルの補強はUVレジン、ロストが激しいから時短verで済ませた。
ハックルはチャイニーズパートリッジの背の茶色系ハックル。
starlingハックルのファイバーは弱く、マス数匹で壊れる(オイカワなら大丈夫)。
なのでファイバーが強い小さな黒いカワゲラ系配色の羽根を使った。
明日また数本作成予定。
大分の麦と放流情報(20220330)
桜が満開のなか、大分の麦はおどろくほど早く生育していた。
なかには紅く色付きはじめた穂もあり、駆け足な季節を感じる。
土手沿いは菜の花がまだ咲き残り、オンシジウムよりどうかすると観賞向きかもしれない。
来年は室内栽培しようかと思うほど。
九州の放流情報は下記。
「渓流解禁2022年 河川情報一覧表【西日本エリア/中国~四国~九州】」
https://www.excite.co.jp/news/article/Tsurinews_tsurinews196331/?p=6
これによると、大分川は2022年度の放流はないらしい!
筑後川水系は4月以降の放流、だから津江川梅野川はまだ早い、ということになる。
大野川は去年秋に稚魚を放っているらしく、とするとまだ望みはある方?
宮崎県と熊本県は例年通りらしい。
小国町内は成魚放流したらしく、けっこう狙い目かもしれない。
釣り場の省略2(20220330)
ウェットで狙う場は水面で決める。
色と形が平坦ならパス、濃淡と乱れの際立つ場所だけを狙う。
でもそんな場はまさにサクラマスの付き場そのものだ。
もちろん九州にサクラマスは期待薄。
でも本州以北なら可能性は十分ある。
例えばサクラマス好ポイントとして、完全な止水やごく浅いチャラ瀬は可能性が低い。
水勢が十分で川底の変化する場こそ釣れる可能性は高く、流れが収束する場や大石まわりはさらに良いとされる。
実際、極端に個体数の少ないサクラマスは河川全体くまなく探るより高実績場に絞った方が良く釣れるらしい(山形県 木村秀幸氏のHP より)。
ウェットはそもそも大型のマスを釣る方法。
この九州で70オーバーの超大物は難しいけれど、ウェットはそんな大物がターゲット。
だからサクラマスやサーモンに準じた釣り方考え方になる。
つまり釣り場を選ぶのだ。
平坦な場を捨て荒々しい場を取る、釣れる可能性の低い場を省略し、より可能性の高い場に絞り込む。
そうすると釣れるだろう場に一つでも多く鈎が入る。
つまりその分、限られた時間でマスに出会える確率が極端に跳ね上がる。
サクラマスが良く釣れる、それはタナ含めポイント絞り込みが正確だったからだ。
ウェットでも同じで、マスをより多く釣るにはポイントの正確な絞り込みが必須。
そんな考え方は「ベイズ推定」そのものだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ベイズ推定
ただの遊びではあるけれど、そこから無駄を徹底的に省く。
一見無関係なサクラマス釣りを参考にしながら。
私はこれまで自然河川の管理釣り場(木郷滝自然釣りセンターや一ツ瀬川冬季釣り場、箒川、会津大川、荒雄川など)を参考に野生マスの釣りを組み立ててきた。
しかもこれら流水管理釣り場は濃密放流だから止水やチャラ瀬で難なく大物が釣れる。
そんな記憶もあり、魚影の濃い管釣り場と薄い野生河川を区別できなくなっていた。
流水管釣りと野生河川は違う、それは雑魚とサクラマスの魚影の違いほどに。
自然河川で個体数の少ない野生マスを狙う。
そのためにもベイズ推定で釣り場をそぎ落とし、ウェットの一級ポイントだけでラン・ルートを組む。
釣り場の省略、次の五ヶ瀬アタックはこの考えで短時間により多くのポイントを流そう。
ウェットでは特にこの切り替えは大切だと思う。
釣り場の省略1(20220329)
省略できるものとできないもの。
仕事や義務は省略できないものがほとんど、でも遊びや趣味ならどんな省略も許される。
その意味で自分のウェットを考えてみる。
フライの開始がロッドリールラインを買ってキャス練始めた高2の冬だとして、本格的に再開したのがほぼ10年前から。
それまで渓流は純粋な餌師だった私、もちろんキャッチキル、活餌で釣った魚だから持ち帰って食べるのは当然だった。
入渓する河川に合わせ3.5mから6.3mまでの安い清流竿を使い、チャラ瀬から淵までくまなく狙った。
オモリをチャラ瀬では外し淵では追加、道糸もボサでは縮め大場所では追加した。
なつめオモリ1.5号の提灯釣りでエノハを釣ったりした。
その頃の記憶があるからか、ウェットタックルで河川を見渡すとチャラ瀬も淵も狙えば全部釣れる気がする。
もちろんウェットタックルはそんな万能ではないのだけれど。
昔の記憶が今の眼の前の判断を狂わせる。
河川の魚全部釣りたければ万能餌釣りにもどればいい。
でももし擬似餌ウェットで釣りたければ、その限界はわかっておくべき。
つまり釣りの組み立てで、省くべきは省くのが必要。
今回の五ヶ瀬11−14日目で、ウェットにまったく反応しなかった淵で餌師お父さん方が粘りに粘って続々釣り上げていた。
ウェットは決して万能ではなく、釣れる可能性は餌釣りの1/3程度。
ウェットを選んだ時点で釣りの可能性は限られるのだ。
つまり釣れる可能性で場の取捨選択をすることになる。
餌なら釣れるかもしれない場、ドライなら確実だろう場を、ウェットなら割り切って省略してしまう。
そしてウェットで確実に釣れる場だけを狙っていく。
確かに餌やドライに近い方法ならウェットで釣れるかもしれない、でも効率は悪く釣れる確率も低い。
"ウェットで釣れるかも"という甘い期待は、ただの願望だ。
私の釣り勘から"そこはダメだ"と分かっているのに。
釣れる可能性から取捨選択するのは釣りの省略そのもの、不確実さを切り捨てるのだ。
大人は勘に従い、子供は願望で行動する、そのどちらが正解か迷う余地はない。
ウェットならウェット場に専念する覚悟がいる。
不確実な願望に手をつけず次の人に残しておく。
私に釣れる可能性が低いなら次に託す方がいい。
でもそうして手をつけず素通りすることで私は次に場に早く入れるし、次の方はその処女地を堪能できる。
「何が何でも釣り尽す」貪欲さは、もはや漁であって遊びや趣味ではない。
ほどほどを知る、分をわきまえるのは多分大事なことだ。
湯布院オイカワで五束を目指すのは強欲さ?
あれは限られた区間と時間で自分の限界突破が目標。
技を極め1秒千刻みで集中し取り組んでいる。
登山家の故長谷川恒男氏「前人未踏の初登頂」が私の場合「湯布院冬のオイカワ五束」になる。
ずいぶんバカバカしいほどの小物ぶり、でもそれが釣りモノの少ない真冬の私の目標の一つだ。
カワゲラの成虫(20220328)
日之影で見た多分カワゲラ(オニチョロ:キンパク)の成虫。
ウィングはブラウンマラード、節足がダイドイエローのギニア、腹部が黒フロスと金ティンセル、尾部が何かの黒ファイバーでタグは金。
TMC200R#12程度に巻く。
たぶんカネマラ・ブラックの亜型。
これとホスキンス(モンカゲのイミテート)をマルチドロッパーに揃え水面を流してみたい。
梅雨入りまでの期間限定。
去年の記録を読み返すと、新緑以降はグリーンフェザントも良かったらしい。
そろそろこれも量産へ。
五ヶ瀬水系14日目(20220328)
0500起床0600宿発、0615日之影着、やはりまだ強い白濁り、足元は見えずアタックは危険。
時間的にそのまま日之影川へ向かう、これで昨日に続き2日連続。
英国館より上、昨日餌釣りのお父さんが入った区間。
0730−1100、3時間半、曇り、気温12度、水温10度。
1)DH10.9ft#1、kencube-SSS#4、フロロリーダー9ft、4本マルチ(ソフトハックル、フロロ0.4号)
6フィッシュ、ほぼ15cmないくらい。
初めの2匹は入渓点付近で連続フィッシュ。
これ幸いと思ったらそれより下が無反応、朝一なのに。
ああ、昨日のお父さんの後だからだか、うーん辛い。
結局昨日私自身が入った場まで1匹追加しただけ。
昨日と同じ場に差し掛かると俄然回復し3連続フィッシュ。
(フライフィッシャーはC&Rだから、その翌日でも釣れる)
こうなったら英国館まで釣り下ろうと決意した矢先、クリッパー/砥石/チタン楊枝/クランプ一式が見当たらない。
うっかり途中で落としたらしく、引き返しても見つからなかった。
これがないと釣りにならず(追記)強制終了、ちょうど11時だった。
その帰路、もう一度だけ日之影町役場裏を確認。
でもやはり白濁り、後1日はこうかもしれない。
水曜以降なら何とかなるか。
橋から見える八峡や下渡も同じく白濁り、下流域もダメらしい。
途中、使わないロッドや釣具を整理し給油と洗車まで済ませて帰宅、16時過ぎ。
燃え尽きるはずの五ヶ瀬年休が不完全燃焼になった。
でもまあ、ウェットの面白さを再確認できた。
ウェット向きなのは水面に変化があることろ。
鏡のような淵や平瀬はドライかリトリーブが面白いけれどウェットではスカ場。
逆に水面に変化が出ているところは水底に岩や窪地があり、そこにマスが付く。
システムバランスが合うと、水面のフライライン操作だけでマスが喰ってくる。
よそ見してもOKな本当に楽な釣り。
ウェットで楽しむなら鏡場はパスし水面が変化する流れだけ狙えばいい。
それを実感できたことが今回の成果。
仕事や嵐で自由は少なかったけれど。
次回こそ五ヶ瀬の難所にアタックしたい。
そして水面が変化する場をよそ見しながら流す。
ガツンギュギュンという激しいテイクがきっとあるはず。
追記)
マルチドロッパーには必須のチタン爪楊枝。
https://www.amazon.co.jp/TISUR-チタン材料-多機能爪楊枝-EDCアウトドア用具-クリスタルチタン/dp/B07M772X3F?ref_=ast_sto_dp&th=1&psc=1
これをクリッパー/シャープナーと一緒にまとめている。
マルチドロッパー絡みが、これさえあれば短時間に解決できる。
必要不可欠な道具だけに失くせばやる気まで失う。
五ヶ瀬は土茶濁り(20220326-27)
20220326土曜(12日目)
朝から雨、窓辺が時々光る。
何の啓示かと見ればイナズマ、絶対うたれちゃダメなヤツ。
私は今日ほぼ一日仕事だけれど、もし釣っていれば大慌てだったろう。
でもカミナリさえなければ雨脚は穏やかで暖かく釣りには最高だけれど。
夕方ちょっとだけ時間ができたので旧日之影役場裏を覗いてみると何かライズしている。
本流筋はやや濁る程度だが日之影川は土茶濁り、そのハザマだ。
ライズの主は型が良さそう。
1)DH12.8ft#6、BBX6号、kencube-SSS#8F、4本マルチ
フィッシュはイダばかり、ライズもたぶん全部イダ、もう何匹釣ったかわからない。
でもキャス練にはなった。
20220327日曜(13日目)
起床0430、宿発0550、日之影着0600、気温12度、曇り。
五ヶ瀬川土茶濁り、さらにひどい状態。
本流筋は断念、明日も難しいかもしれない。
そのまま日之影川へのぼる。
日曜だけれど釣人の姿はまれ、まだ時間が早いのだろうか。
たまたま超人気ポイントが完全に空いていたのでイン。
みなさま昨日の雨を気にしている?
0630-0830、2時間、晴れ、気温15度。
1)DH10.9ft#1、kencube-SSS#4、フロロリーダー9ft、3本マルチ(ソフトハックル、フロロ0.4号)
3テイク1フィッシュ2バレ、成魚放流(大物用ネットで小さく見えるが20cm強)。
8時頃からどんどん来場、さすが超人気スポット、0830で切り上げ。
0930-1400、5時間、英国館上、気温17度、晴れ。
2)DH10.9ft#1、kencube-SSS#4、フロロリーダー9ft、3本マルチ(ソフトハックル、フロロ0.25号)
8フィッシュ、居付き(最大は20cm弱)。
ほぼ#16−18相当のストリップドピーコッククイルのソフトハックルを喰った。
英国館より上に成魚放流しなかったらしい。
その後ふたたび日之影役場裏へ。
状況はやはりかんばしくない。
さらにその上。
ここがこれだと明日に響くかもしれない。
せっかくだからついでに竿出し。
1700−1800、1時間、晴れ、気温18度。
3)DH12.8ft#6、BBX6号、kencube-SSS#8F、4本マルチ
2フィッシュ、いつものメンバー(だと思う)。
追記)
今日初めてカンバの瀬右岸に見学で入った。
竹藪をくぐり切り立った岩肌を下りようやく河原へ。
ロッドは畳んで持ち込む必要あり、ちょっと面倒。
当たり前だがここも濁る。
明日は濁りも引く?
いやダメだと思う。
年休が無駄になるかもしれない。
五ヶ瀬11日目(20220325)
4時半起床、5時半宿発、6時現地着、もう明るい。
土曜日は仕事なので今日が年休取得、高千穂入り。
平日じゃないとまず難しい場に入る。
0645-1545、9時間ブッ通し、気温5−17度、水温12度。
岩稜帯ではないのでかなり気は楽、でも3度足が滑った。
1)DH12.8ft#6、BBX6号、kencube-SSS#8F、4本マルチ
9テイク8フィッシュ1バレ、7虹(33、30、25強)1ヤマメ(15強)。
インビクタP>>カネマラ、グリキン、ピーターロス
鹿革は反応抜群だが中央を噛むのか喰い込みが悪い、マスが小さいと口に入りきらないのか。
一荷の写真はやや大場所で脇見した隙にテイクした2匹。
TGショットを交換するために口にくわえでショットケースを探していたらひったくられた。
小さい方(27cm)はピーターロスを、大きい方(33cm)はインビクタPを丸呑みしていた。
この大きい方がマッスルで肉厚、27cmが付いているのをものともせず暴れ回った。
ものすごく重いテイクを寄せてくると水面にアベレージマスが見える。
"何で重いの?"
流れの関係かと思っていると27cmを水面で短冊のようにヒラヒラさせながら淵奥へ疾走していく。
リールが2回逆転、かなりの糸を出された。
27cmは相変わらず水面でヒラヒラしている。
"一荷?"
ようやく気付いた。
それからがまた大変、寄せては走りの繰り返し、27cmは相変わらずヒラヒラしたまま。
何度も失敗しながらようやく2匹ともネットイン。
これがバーブレスの一ツ瀬川ならヒラヒラ27cmは絶対釣り落とした。
33cmに翻弄された27cmを吊り下げたピーターロスがボロボロに壊れていた。
結局この区間で9時間近く釣りつづた。
印象は、必ず出る大場所が全くの無反応、キャッチキルがあったんだろう。
フィッシュは竿抜けや小場所、少し寂しくもあるが致し方なし。
場所替え、五ヶ瀬川水系三ヶ所川、五ヶ瀬町役場裏へ入る。
超渇水は変わらない。
1630−1830、2時間。
2)DH10.9ft#1、DT#3F、フロロ3m、4本マルチ(ソフトハックル)
1ヤマメ(成魚放流20cm強)のみ、他一切なし。
入渓して割とすぐ目の前で小さなライズ、逃すものか。
水面直下をスイング、でもダメ。
再度スイング、でもまたダメ。
再々度スイング、ライズあったピンポイントにステイでバイブ、出た。
尾は奇麗だけれど下顎削れの成魚放流、でも1匹は1匹、ありがたい。
しかしこのあとライズ全くなし、広く流すもスカ、本日終了。
ところで貫原橋の水位計が河川工事後に撤去されていた。
河川映像もあって重宝していたのだけれど残念。
追記)
DH10.9ft#1で使うラインはDT#4Fが最適。
シングルハンドならDT#3Fでも良いがDHなら#4以上が使いやすい。
今日は風が強くメンディングでDT#3Fが煽られ大変だった。
また、リーダーは太めの強いフロロがベスト。
弱いとマルチドロッパーが十分にターンしない。
9ftの0Xから−1Xを試す予定。
追々記)
20220412の午後5時から貫原橋の水位計が回復した。
河川映像がいつもとは違うので設置場所が少し違うのだろう。
でも水位も表示され本当に良かった!
死地へアタック(20220321)
日曜夕の仕事明けで五ヶ瀬へ向かう。
ちょうど一週間前、死にかけたあの場所だ。
正直いって怖い。
またあんな目にあうんじゃないかと身体がすくむ。
それでもハンドルを握りアクセルを踏む。
あの場所へまっしぐら進んでいく。
朝一番からのアタック、逆算すると夕食朝食はかなり早い。
途中のコンビニで少し多いくらい余裕をもって購入。
宿についてそれをガツガツ詰め込む、明日のトイレが気になる程。
そしてTVも見ず早めに寝た。
明日はあの場所に入るのだ。
朝の予報は雨天、少し遅く起き、それでも午前5時、まず朝食をとる。
素泊まりだから宿払いも早く、6時過ぎにはまだ暗い河原に立った。
10kgを超える装備を身につけていく。
それは先週とほぼ同じ、唯一違うのは一番重く肉厚なウェーディングステッキ、そしてそれを支えるサスペンダー。
正直、怖い。
先週と全く同じ光景が眼前に広がっている。
ああ、足がすくむ。
でもつまづかないよう、足をしっかり上げ進んでいく。
先週と今日の条件の違いは、食事を十分に摂っていること、そして朝一番のアタックだ。
前回は連日続いた最終アタックがここだったから、その往路で体力全てを使い果たし帰ることさえ難しくなった。
今回は一週間の休養と十分な栄養をとったので、もうしくじることはないはず。
でもアタック開始20分、体調の変化がやはり始まった。
汗が吹き出し、息が切れる。
前回と同じで、あの時はここから急に体力を失っていった。
休憩だ、無理はいけない。
急ぐ理由などない、とくかく休もう。
重い装備を解き、重ね着を脱いだ。
でも眼の前は本流、後が険しい岩場、座るところなどなく立ったままの休憩。
当初5分の予定がこの時点で既に5分が経過、なのでもう5分延長した。
"休憩の10分はけっこう実用的な時間なんだ"
こういうところは先達の知恵に支えらている。
装備を整え再出発、身体と気持ちが少しばかり軽い。
岩場をゆっくりゆっくり進んでいく。
登山の基本は小幅な足取り、これに忠実に従う。
歩くこと25分、ようやく目的地に達した。
前回が30分で入った場に今日は55分、どれだけ慎重なんだ。
こんなに時間かけたら釣りする時間がなくなる、いや今回は実釣より無事帰ることを優先する。
前回の事故の後、右手首小指側に痛みが残り、左胸の痛み(肋軟骨が割れたらしい)は日に日に酷くなる。
ルーフキャリアから落としたロッドは転落の衝撃でスネークガイドが飛んでしまった。
さらに今日気付いたけれど、左胸に入れたスマホも画面が欠けていた。
その後遺症と修理費を考えれば、釣り遅れるなど取るに足らない。
実釣は、格安ロッドの弱腰のせいでキャストミスが続き、釣りにならない。
それでもやや増水した本流に浸かり濡れたままの岩に登ってキャストを繰り返す。
滑った岩角、落ちそうになった岩面、タコ滑りで立てなくなった浅場のゴロタ石。
その全てを再確認しながら。
今日の私の足取りは安定し、岩角と岩面をしっかりグリップできている。
降ろした足の浮石への反応も速く、そもそも足を置く岩の選択も十分だ。
ほぼ2時間の釣りを終え、約30分かかる岩場の復路に取り掛かった。
でも前回はここから本当の悪夢が始まった。
不安定な足首は満足に岩をグリップできず、重心が定まらないから置く足の先すら自由に選べない。
倒れないよう足を置くのが精一杯で、けっして安全に前進する足運びではなかった。
その同じ悪夢がこの私の眼の前に迫る。
あの恐怖を今からまたたどるのだ。
ウェーディングスッフを展開した。
重いけれど肉厚で頑丈な金属の杖。
これを右手に死地へ踏み出した。
登山には「三点支持」の考え方がある。
文字通り身体を三点で支えるのだ。
https://www.yamakei-online.com/yama-ya/detail.php?id=24
岩場を渡るとき、右脚左脚で交互に歩を進める。
すると重心移動時に「一点支持」になってバランスを崩す。
なので空いた右手で岩を触れ、2点目の支持を確保して進んだ。
でもこうすると右腕は短いもので、身体を支持する岩までその都度かがみ、腕位置を調整し続けた。
つまり一歩毎に全力スクワットを延々繰り返すのだ。
前回はこれもあって体力を急激に失った。
でも今回はこの右手に丈夫な鉄の杖がある。
岩間に立ち、体重移動時に右手の鉄杖を岩の窪みに突き刺す。
ギャチッ
金属音が甲高く鳴り響く。
その状態で歩き始めた。
するとどうだろう、足が楽に自然と動く。
もし鉄杖が滑ればまた岩に突き立て、その反動で重心の乱れを取り戻す。
もし身体が落下し始めても、鉄杖の突き込みがそれを一瞬止めてくれる。
不安定な体勢はその間に立て直せばよく、人形のように投げ出される危険はかなり減る。
そうして両脚と鉄杖の3点で重心を支えながら岩場を渡っていった。
心底驚いた。
岩間での全力スクワットがまったく必要ない。
それは伸ばした鉄杖の先端が、まるで私の右手の人差し指のように目指す岩角を確実に触れるからだ。
その鉄杖の指一本で重心を支え、前へ進んでいく。
右手人差し指の延長となった鉄杖の先端は、はじめ柔らかく岩角を探り、確実な窪みを見つけるとそれをしっかりホールドする。
その状態ではじめて前へ足を運ぶ。
鉄杖の指、そして足の順に運ぶ、しゃがみ込みのスクワットせずに。
すると岩間で重心上下がなくなり、険しい足場を難なく進める。
なんという楽、この岩綾帯でこれほどの安定は経験がない。
重いウェーディングスッフがまるで右腕のようだ。
物凄く伸びた右腕の先にチョコンと付いた小さな石突きは人差し指の敏感な腹。
ウェーディングスッフが右腕に同化する、今日まで知らなかった初めての感覚。
新しい能力が覚醒した、そんな驚きすらあった。
険しい岩場を次々に安定して渡っていく。
一週間前の不安や恐怖をまるで感じない。
私は突破した。
私はこの死地をとうとう突破した。
これまですっと感じていた岩場への恐怖、それは足だけで進もうとする不安定さそのものだった。
もはや右腕となったウェーディングスッフの先端まで、私の感覚が鋭く通い始めている。
この安定感に死の不安などなく、もし仮に滑落してもこの右腕の鉄杖が補佐してくれる。
とうとう私はこの恐怖を克服した。
一週間前は恐怖そのものだった岩場が、今日は喜びに満ちている。
もちろんド本流の危険な岩綾帯なのに変わりなく、細心の気構えは絶対必要。
しかしもう、恐怖を取り立てて煽る必要はない。
おそらくこの瞬間、死ぬリスクはかなり減っている。
その途中、私は「臨死体験」現場に再び入った。
足の滑ったコケむす岩面、落下始めた高さ、そして左胸に突き刺さった岩の先端。
転落前後の頭の位置を確認すると約2m、しかも下方約150度方向へ頭から転落している。
右足を折りかけた岩角、ロッドリールシートを激しく打ち付けた左頭上の岩角、そして何といっても心臓直下の「ドラキュラの杭」ほどの生々しく突き出す岩の先端。
こうして改めて眺めると、頭の位置に岩がなくて幸いだった。
でもこの「ドラキュラの杭」が私の左胸に突き刺さったのだ。
ビーズフロート、フライボックス、そしてスマホを壊しながら
おぞましい私の臨死体験の現場、あの時もしかしたら失神していたかもしれない。
その直後、痛みも感情も一切なくしていたから。
そんな現場を私はマジマジと見つめた。
右腕の一部となったウェーディングスッフが茂みをかき分け、そもそもの転落点を確かめた。
もしかしたらこの一帯にトラロープが張られたかもしれない、そんな光景さえ見えるようだ。
その私の臨死体験現場を何枚か写真に納めた。
もしかしたら誰かの役に立つかもしれない。
私の臨死体験、けっして無駄にしてはならない。
ものすごく恥ずかしいけれど、この場に入る誰かのため、詳しく記録した。
ロッド修理2とカンつき袖3号のソフトハックル芯(20220321)
まず壊れたビューラーのスネークガイドの修復。
#7(外径12.2mm)のあまり市販されていない特大スネークガイド、破損した部品にジャストフィットするものはこれ以外は見つからない。
http://www.angle-japan.com/rb-fly-guide.htm
絹糸は青だけれど巻いてエポキシかけたら黒変した。
出来栄えは良くないがこれでまた使えるようになる。
でも折れるのは時間の問題。
次、カンつき袖3号のソフトハックル芯。
エポキシ補強、8本作ったつもりが7本だった。
アイ近くは1mmほどハックル用に空けてある。
このスペースがないとドレスに苦労するので。
先日の1号と今日の3号は3月いっぱいの鈎。
4月からはマダラカゲロウ系が始まる。
プロフェッサーで対応できると思う。
五ヶ瀬10日目(20220321)
0500時起床、0550宿発、0610現地着、曇り、気温7度。
先日の雨のせいかほんの少し濁る。
1週間前に死にかけた場所に十分準備し再度アタック(夕食朝食をしっかり摂るなど)。
前回は30分かかった道のり、今回は休憩10分取って所要時間は55分。
やはり20分で汗が吹き出し息が上がる。
無理せずそこで休憩、いったん装備を解き、上着も脱いで立ったまま10分の小休止。
それから目的地までゆっくり足を進め、結局1時間近くかかった。
1)DH12ft#6/7、BBX6号、TEAL-MSD#5/6F、スイベル4号、4本マルチ
ノータッチ、しかも投げにくい。
ロッドが1万円台の格安版、MSDの重さにロッドが負けるらしい。
ストレッチそのものも決まりにくい。
先日破損したビューラーなら全然大丈夫だったのに。
我慢できず腰の弱いロッドに合わせライン交換。
2)DH12ft#6/7、BBX6号、kencube-SSS#8F、スイベル4号、4本マルチ
ノータッチ、でもやはりこのラインは投げやすい、かなり投げ込んだからか。
でも格安ロッドはやはりこのラインも腰砕け。
失くして初めて分かるビューラーの使い易さ。
(ビューラー以前は気付けなかった)
一応目的の区間を流し終わったので入渓点へ戻る。
この帰路からウェーディングステッキを陸上で使った(使用感などは後日記録)。
この時点で既に12時、ライズの見える旧日之影役場裏をシステムそのままで流してみる。
全部イダ(写真なし)、しかも婚姻色がバッチリ出ている良型ばかり。
日本気象協会の予報では午後から雨、ここでストップフィッシング。
今日は早めに帰り小ヤマメ用の小鈎を準備しよう。
追記)
恐怖感ハンパない本当に死にかけた場に再び入った。
安全対策を十分取った上で再アタックし、全く同じ場、同じルート、同じ装備で危険を再現し、これが確実に回避できるか検証する目的で。
結論は回避可能。
山岳では当たり前の技が、死ぬリスクをひとつ乗り越えさせてくれた。
全く釣れなかったが、その喜びは圧倒的。
この記録は後日。
カンつき袖1号ソフトハックル芯ドレス2(20220320)
残りの3本をドレス、右2本がラビットハーズをちょっと足したもの、この方が良さそうに見える。
starlingのやや大きめのハックルがちょうど良い。
袖1号なので#21相当のウェットソフトハックル。
ついでに去年巻き貯めていたTMC200R#12−14もドレスした。
使うかどうかは未定。