サッカー日誌 / 2011年07月03日


北欧対中米、スタイルの違い


女子ワールドカップ観戦日誌(5)

6月28日(火) <C組>
スウェーデン 1対0 コロンビア(15:00 レバークーゼン)
米 国 2対0 北朝鮮(18:15 ドレスデン)

★小さな町に立派な施設
 日本の初戦を見た翌日、ボーフムからケルンに移動した。ホテルにチェックインして、すぐレバークーゼンへ出かける。ケルン中央駅から電車で約15分である。
 レバークーゼンの町は製薬会社のバイエルで有名だ。「バイエル・レバークーゼン」という名の伝統あるクラブもある。レバークーゼン・ミッテの駅から緑の並木の小道を小川に沿って15分ほど歩くとスポーツセンターがある。そこにサッカー専用、3万人収容のスタジアム「ベイ・エリア」がある。隣接してサッカーフィールドが4面あり、ほかに陸上競技のトラックがある。スタジアム内にはホテルもある。製薬会社のおかげで、人口16万人の町に立派なスポーツ施設がある。 
 大会3日目の試合はスェーデン対コロンビア。超大型の北欧と小柄な中米ラテンの対戦だった。

★大型対小型、ベテラン対若手
 平均身長はスウェーデンが1㍍73、コロンビアが1㍍63、平均年齢はスウェーデンが28歳、コロンビアが20歳。取材仲間の一人が先発メンバー発表のあと、せっせと計算した結果である。
 試合ぶりも対照的だった。スウェーデンは身長1㍍80のランドストロームに合わせて攻める。ランドストロームは27歳。ドイツのFFCフランクフルトでプレーしている。コロンビアは、パスで攻めようとしながらも、苦しくなると個人のドリブルに頼る。中盤のリンコンとオスピナのボール扱いは巧みで粘り強い。リンコンは前日に18歳の誕生日を迎えたばかり18歳、オスピナは22歳。まだ若い。
 ボールの支配率は、55%対45%でコロンビアが優勢。シュート数は13本対8本でスウェーデンが多かった。

★スタイルは変えられない?
 後半12分にランドストロームがゴールを決め、これが決勝点になった。コロンビアは個人のテクニックに頼りすぎて展開が遅いため、いい形の攻めを作れなかった。
 試合後の記者会見で、このことを聞かれて、コロンビアのリカルド・ロソ監督は「これは男子でもコロンビア人の好きなスタイルで、簡単には変えられない」と答えた。
 スウェーデンは、体格を生かした強引なプレーである。トーマス・デナービー監督は「自分たちの利点を生かそうとするのは当然だ」と話した。
 それぞれの国のサッカーのスタイルは、その国の人間の特徴や文化に根ざし、独自の伝統になっているので、なかなか変えられないもののようだ。
 C組のもう一つの試合は、米国が北朝鮮のがんばりに手こずりながらも、2点をあげて勝った。3連覇を目指す米国が調子をあげていくのは、これからだろう。


レバークーゼンのベイ・アリーナ・スタジアム。



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サッカー日誌 / 2011年07月03日


日本初戦、岩渕真奈の技能と資質


女子ワールドカップ観戦日誌(4)

6月27日(月)<B組>
日本 2対1 ニュージーランド(15:00 ボーフム)
イングランド 1対1 メキシコ(18:00 ウォルフスブルク)

★一転して、ひどい暑さ
 朝、セーターを着てベルリンを発った。ICEの列車の中がしだいに暑くなる。ボーフムに着いたらカンカン照りだった。前の日までは寒かったのに急変したという。
 この暑さに5年前の男子のワールドカップを思い出した。あのときの日本の初戦は、これ以上の猛暑だった。相手はオーストラリア。日本は労働量で中盤を守り、前では大型長身の相手とヘディングを競りあう。攻めは、すばやくパスをつないで走る。一方のオーストラリアは、ボールをゴール前へ放りこむだけである。もともと体格に差があるのに、こちらは体を動かし、向こうはボール蹴りこむだけ。暑さの中で日本は消耗した。逆転負けの原因は暑さだったと、ぼくは思っている。
 今回の女子の初戦も状況はよく似ている。試合のころの気温は32度C。5年前と同じようなことが起きないかと心配になった。

★「なでしこジャパン」最年少
 「なでしこ」が前半5分に先制点をあげた。中盤のこぼれ球を大野忍が拾って、すばやく永里優季に出し、永里がゴールキーパーの頭越しの頭脳的なシュート。動き出しのすばやさ、コンビネーションのよさ、エースの判断とテクニック。日本のよさが生きた立ち上がりのゴールだった。
 ところが、その6分後にハーンのヘディングで同点にされる。ハーンは身長1㍍73。高さを生かした攻めだった。
 1対1のまま、せめぎあいが続いた。後半10分に日本は大野との交代で岩渕真奈を出した。18歳。「なでしこジャパン」最年少である。
 岩渕のテクニックに改めて感心した。ボール扱いが巧みで、すばやく相手をかわす。両チームのプレーヤーのなかで、あきらかにNo.1である。

★決勝FKの反則を誘う
 パスを受ける動きもいいし、中盤からのパス出しもよかった。ただ、味方がうまく応えてくれない。「なでしこ」のなかで、ちょっと異質の感じだった。
 後半11分、岩渕は自分で正面からドリブルで攻め込んだ。速いドリブルを相手は止め切れずにペナルティエリアのすぐ外で反則で倒す。そのフリーキックを宮間あやがみごとに直接、右上隅に決めた。暑さによる苦戦を途中出場の若い岩渕が切り開いた。宮間が「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」(殊勲選手)に選ばれたが、殊勲の半分は岩渕のものである。
 夜にウォルフスブルクで行われた試合で、イングランドがメキシコと引き分け。日本のベスト8進出の望みが、さらに広がった。大型のイングランドは力攻め、小柄なメキシコはドリブル頼り。しかし、両チームとも詰めは大ざっぱである。


試合後、震災支援感謝の横幕をもって場内を一周する「なでしこ」。



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