南アフリカW杯 / 2010年05月31日


W杯南ア大会展望(中)


優勝の行くへを占う
南米勢有利、No.1はブラジル

★欧州勢を次々に連破して
 ワールドカップ南アフリカ大会の優勝候補の本命はブラジル、というのが、ぼくの予想である。もとより「当たるも八卦、当たらぬも八卦」だが、多少の根拠がないわけではない。一つの根拠はベスト16以降の組合わせだ。
 ブラジルはグループリーグでポルトガルと同じG組だが、同じ組に有力チームがもう一ついても問題はない。一つの組から2チーム進出できるからである。
 ブラジルはG組を1位で突破すれば、決勝まで進むのではないか。欧州のチームと次々に当たることになるだろうが、ブラジルの選手たちは、ほとんど欧州のクラブでプレーしているから恐れることはないだろう。ドゥンガ監督の采配しだいである。
 アルゼンチンについても、同じようなことが言えそうだが、準々決勝ではドイツと当たる可能性がある。イタリアとスペインも準々決勝でつぶしあう可能性がある。

★「第3の大陸」での優勝
 かつては、ワールドカップは欧州と中南米で、ほぼ交互に開かれていた。そして欧州開催のときには欧州の国が優勝し、米国を含め米大陸開催のときには南米の国が優勝していた。他大陸で優勝したのは、1958年スウェーデン大会のブラジルだけである。
 2002年の日韓共催は欧州でも北中南米でもない「第3の地域」での開催だった、このときは南米のブラジルが優勝した。
 今回は初のアフリカ大陸開催である。日韓共催のときと同じく、欧州勢にとっても南米勢にとっても「第3の地域」だ。他地域で優勝するのは、またブラジルではないだろうか?
 南アフリカは、南半球で冬という点では南米と同じ、時差は欧州と同じである。しかし、今回は開催地域による影響は、それほどはないと、ぼくは考えている。南米の選手たちのほとんどが、直前まで欧州のクラブでプレーしているから時差の影響は少ないだろう。

★グループリーグの見どころ
 優勝を争う力があるのは、まず1960年代以降に優勝経験のある国である。南米ではブラジル、アルゼンチン、欧州ではドイツ、イタリア、イングランド、フランスの6チームだ。そのほかにオランダとスぺインが有力で、この8チームは、それぞれ別の組に入っている。そのほかに欧州・南米などの準有力国が2つ以上入っていれば、ベスト16への「激戦区」ということになる。日本の属しているE組はオランダとデンマークのほかに「第3の有力チーム」はいないから「激戦区」とはいえない。
 グループリーグのカードで興味深いのは、C組初戦のイングランド対米国である。挑戦する立場の米国は急速に伸びているように思う。
 G組のブラジル対北朝鮮も初戦である。優勝候補は最初のころは、まだ調子をピークに持っていく途上である。挑戦者が番狂わせを狙うチャンスだろうと思う。


<お知らせ>
次のサイトにワールドカップ南アフリカ大会についての、牛木のインタビュー記事が載っています。ご笑覧ください。
 Special「日本は初戦がすべて、開催国、南アフリカに注目せよ」
 
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南アフリカW杯 / 2010年05月30日


W杯南ア大会展望(上)


「岡田ジャパン」は勝てるか
あえて3連敗を予想する

★べスト16の確率は20%程度
 ワールドカップ南アフリカ大会で日本代表チームは3連敗する。ぼくは、あえて最悪の予想をしている。
 もともと、日本が勝てる見込みは、数字的にも高くない。
 4チームずつのグループリーグで2チームがベスト16に進出する。4チームの実力がまったく同じで運不運で勝負が決まると仮定すれば、進出できる確率は4つのうちの2つだから、各チーム50%ずつである。合計200%だ。
 E組のなかで、FIFAランク通りオランダが断然上で確率90%だとすれば、残り110%を他の3チームが分け合うことになる。そのなかでデンマークが抜けていて確率70%だとすれば、日本とカメルーンが決勝トーナメントに進出する確率は20%ずつということになる。つまり5度に1度の番狂わせを起こさなければベスト16には進出できない。

★初戦の対カメルーンが勝負
 こういう計算法が正しいかどうか、確率と呼んでいいのかどうかには自信がない。数学の得意な人に教えてもらいたい。ここでは、ただの「たとえ」として見てもらいたい。
 ともあれ、日本はカメルーンに勝たなければ話にならない。だから6月14日の初戦が勝負である。
 日本とカメルーンの勝機は五分五分というところだろう。
 カメルーンの選手は、ほとんどが欧州でプレーしている。一人一人の力量と経験では、日本選手より上である。チームとしてまとまるかどうか、選手の士気(モラール)が高いかどうかがカギである。
 日本は一人一人の力量では劣るが、十分な準備とチームプレーで勝負することができる。それには、サッカー協会の施策と監督の能力がものをいう。

★「ペルドン岡ちゃん」と謝りたい
 しかし、ぼくは協会の方針と岡田監督の方策に疑問を感じている。だからカメルーンにも勝てないだろうと予想するわけである。あとになって結果論で批判したくはないので、あらかじめ「3連敗」の予想を公表しておくことにする。
 1986年ワールドカップ・メキシコ大会の前に、アルゼンチンのビジャルド監督は、マスコミから手厳しく批判されていた。しかしマラドーナを生かしてアルゼンチンは優勝した。アルゼンチンの新聞は「ペルドン、ビジャルド。グラシアス」と見出しを掲げた。「ビジャルド監督(批判して)ごめんなさい。(優勝してくれて)ありがとう」という意味である。
 日本がベスト16に進出したら、ぼくは「グラシアス」と感謝したい。岡田監督の目標通りベスト4に進出したら「ペルドン岡ちゃん」と謝りたい。そういう事態になることを希望してはいるが、そういうケースを予想してはいない。

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サッカー日誌 / 2010年05月29日


ワールドカップ壮行試合(下)


大会直前、準備試合の評価
日本 0対2 韓国
5月24日 埼玉スタジアム

★結果を気にする必要はない
 ワールドカップ開幕直前の「準備試合」の結果は、本番を占う材料にはならない。これは常識である。選手の体調もチームとしてのまとまりも調整途上だからである。
 日本代表の韓国との試合も「準備試合」の一つだった。だから0対2の負けという結果を気にする必要はない。中村俊輔や遠藤保仁の動きが悪かったのも、リーグのシーズンを中断した直後だからやむをえない。
 ただ「壮行試合」だから難しい問題もあった。ホームで57,873人もの大観衆を集め、テレビで放映されるとなると、試合ぶりや勝ち負けはどうでもいいというわけにはいかない。地元のサポーターやテレビの視聴者に納得してもらえるものを見せる必要はある。短い時間帯でもいいから、日本を代表するスターらしいプレーを披露し、ワールドカップへ出陣する意気込みを示して欲しい。

★みごとなパク・チソンの先取点
 日本チームには、それがなかった。だから「準備試合」であることを充分に承知しているはずのマスコミからも、厳しい批判を浴びることになった。
 逆に韓国のほうが「お客さん受け」するプレーを見せた。前半6分のパク・チソン(朴智星)の先取点がそれである。ヘディングの競り合いでこぼれるボールを狙っていて、一気にかっさらってドリブルで守りを置き去りにしてシュートを決めた。その狙い、技術、スピード、シュート力。「さすが、世界トップクラスのマンチェスター・ユナイテッドで活躍するスターだ」というところを見せた。日本のほうに、こういうプレーがあれば、たとえ結果が黒星であっても、お客さんは評価してくれただろう。
 そのあと、韓国は中盤でしっかり守備をして日本の反撃を封じた。親善試合ではあっても、韓国らしい闘志をみせた。

★日本協会のアレンジ・ミス
 韓国は8日前の16日にソウルでエクアドルと壮行試合をして2対0で勝っている。その後の欧州へ向かう途中の日本との試合は、まったくの「準備試合」だったはずだが、相手が積年のライバルとあって、むざむざと負けるわけにはいかなかった。だから、準備試合にしては気合いの入ったプレーをした。日本としては、難しい時期に、難しい相手との「壮行試合」を組んだものである。日本サッカー協会のアレンジが不適切だった。
 ワールドカップ出場メンバーについて、韓国はまず30人の予備登録を発表し、エクアドルとの壮行試合のあと26人に減らし、日本との準備試合のあとに、さらに3人はずして6月1日のFIFA締め切りまでに23人を決めた。岡田監督は最初から23人に絞っていた。  
 韓国の若手には、代表への生き残りをかけるモチベーションがあり、日本選手には、それがなかった。それも影響したかもしれない。

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サッカー日誌 / 2010年05月28日


ワールドカップ壮行試合(中)


本田圭佑と森本貴幸への評価
日本 0対2 韓国
5月24日 埼玉スタジアム

★欧州で鍛えられた「個の力」
 韓国との壮行試合で、注目の選手は23歳の本田圭佑と22歳の森本貴幸だった。これまでは「岡田ジャパン」の主力でなかった若手だが、ここへきて期待が高くなっていた。
 岡田監督は、すばやいパスの組み立てによる攻めをめざしているが、パスだけでは厳しく厚い守りは破れない。ゴール前の相手守備網の中で、激しいマークを振り切ってゴールを狙える「個人の力」が必要である。守りから逆襲を狙う場合も、個人で攻め込んでゴールを狙う速さと力が必要である。
 本田はロシアのチェスカ・モスクワで、森本はイタリアのカターニャで活躍している。タイプは違うが、ともに個人の力で勝負することのできる選手である。欧州の厳しいマークの中でゴールを狙ってきた経験をワールドカップの舞台で生かして、得点力不足の日本代表チームの新戦力になれるかどうか。その可能性を、韓国との試合で見てみたかった。

★本田の課題はチームに溶け込むこと
 本田はトップ下のポジションでの先発だった。3月3日のバーレーンとの試合でトップ下に起用されて1点目の起点になり、終了間際の2点目を挙げている。「夢よ、もう一度」というところである。
 定位置は「トップ下」だが、あるときは岡崎慎司と前線に並んでシュートを狙い、あるときは深くさがってボールを奪ってドリブルで攻め込み、あるときは中盤からパスを捌いて攻めの起点になろうとした。チームの中心として活躍しようという意欲は充分だった。
 しかし、この試合では意欲が空回りしていた。周りの選手、とくに中村俊輔と遠藤保仁の体調が不十分で本田の力を生かせなかったためもあるが、本田自身も「周りを生かすためのプレー」を選択する判断力が鈍っていた。
 本田の課題は、これからの3週間余りで日本代表に溶け込むことだろうと思った。

★森本には点を狙える雰囲気
 森本は後半18分に俊輔に代わって出場した。0対1とリードされ、なんとかして同点に追いつきたい場面だった。岡田監督は森本を「スーパーサブ」として使おうと考えている。それに、ぴったりの状況だった。交代のアナウンスに満員のスタンドがどよめき、期待の大きさを示していた。
 森本のプレーぶりも意欲的だった。森本の周辺にボールが出ると「点を狙えそうだ」という雰囲気になる。終盤には、長谷部誠がゴール前の森本に高いクロスを上げる攻めを狙っていた。ワールドカップで背の高い相手と対戦するときには、必ずしも通用するとは思えないが、ゴール前にいるとボールを出したくなる個性がいい。そこに希望が感じられた。
 本田にしろ、森本にしろ、南アフリカで生かして使えるかどうかは、本番前3週間の岡田監督のチーム作りにかかっている。

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サッカー日誌 / 2010年05月27日


ワールドカップ壮行試合(上)


岡田監督の「進退伺い」発言に仰天
日本 0対2 韓国
5月24日 埼玉スタジアム

★試合後の記者会見で自ら公表
 ワールドカップ直前の準備期間が始まったばかりの時点で行われた壮行試合。日本が韓国に0対2で完敗した後の記者会見で、岡田武史監督の発言に、びっくり仰天した。「韓国に2度も続けて負けて責任問題が当然あるでしょう。それで会長に問いただしました。いや尋ねました。そうしたら続けてやれということでした」。
 この発言を聞いたとたんに翌日のスポーツ新聞の見出しが頭に浮かんだ。「岡田ちゃん進退伺い」。
 しかし、翌日まで待つ必要はなかった、その場で朝日新聞の記者が質問した。「会長に進退伺を出したということは、自信をなくしたということですか?」 岡田監督は、こう答えた。「続けていいんですか? 会長もいろいろ言われますよ、と話したのです。自信をなくしてはいません」。岡田監督自身は「進退伺い」という言葉を使ってはいない。
 
★「将たるの器」ではない
 しかし、ああいう発言をすれば「進退伺い」という言葉がマスコミで大きく扱われ、岡田監督自身にとっても、チームにとっても、さらに日本のサッカーにとっても、悪い影響を及ぼす。そういうことへの想像力が欠けている。それが問題である。
 ワールドカップ準備のための親善試合である。勝敗を問われる試合ではない。サッカー協会の犬飼会長に、自分から責任問題を持ち出す必要はない。
「準備のための試合ではあるが負けたのは悔しい。しかし、あと3週間で勝つチームに仕上げる」と見得(みえ)をきっておけばいい。本番で結果を出せば、批判は沈黙する。会長におもねる必要もない。「チームを預かっているのは、おれだ。会長は黙って見ておれ」というぐらいの気概でなければならない。
 戦いを前に弱気な発言をするようでは「将たるの器」ではない。

★礼儀正しいホ・ジョンモ監督
 韓国のホ・ジョンモ(許丁茂)監督は、岡田監督の前に記者会見をした。こちらは落ち着いた態度でしっかりした内容だった。
「準備を始めたばかりの段階ではあるが、この時点での目的を達することができた」
「大観衆の中での試合を経験し、集中してプレーをすることができた。どのような状況でも、ゆるぎなく自分たちのプレーをできたのが収穫だ」
「守備から攻撃に移ったときに、もうすこし緻密で鋭い攻めができるようにしたい」
「選手たちが、自分自身の判断で自由に動いていいプレーをした。そういうプレーをこれからも奨励したい」
 通訳を通しての会見だが、筋道が通っているから考え方がよく分かった。顔なじみの韓国の記者に対しても、礼儀正しく応対しているのが印象的だった。

 
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サッカー日誌 / 2010年05月24日


オシム監督だったら勝てるか


ワールドカップ南ア大会の展望
ビバ!サッカー月例会
5月21日 東京テクニカルカレッジ東中野

★田村修一さんを迎えて
 ビバ!サッカー研究会の5月例会は「ワールドカップ南アフリカ大会展望」をテーマにサッカー・アナリストの田村修一さんをゲストとして迎えた。
 田村さんの新著『オシム 勝つ日本』(文芸春秋)について話を聞こうと思ったからである。田村さんは2年がかりで、50時間にわたるインタビューをして、この本を書いた。オシムのサッカーについての考え全体を紹介した本で、日本代表と南ア大会だけを取り上げた本ではない。しかし南ア大会を3週間後に控えたときだから、もしオシムが日本代表チームの監督を続けていたら、どうだっただろうかを聞きたいと思った。
 オシムは南ア大会をめざして日本代表のチーム作りを始めたが病気で倒れ、岡田武史監督が、そのあとを引き継いだ。「オシム監督だったら勝てるとは言えない。しかし現在の岡田監督のチームとは違うチームになっただろう」というのが田村さんの意見だった。

★未来のための実験
 ぼく(牛木)も同じ考えだ。客観的に日本サッカーのレベルを見れば、日本がベスト16に進出できる可能性は20%前後だろうと、ぼくは計算している。監督が誰であろうと、それは変わらない。
 しかし、その5回に1度の可能性をめざすのであれば、これまでとは違うやり方を試みるべきではないか。岡田監督がやってきたのは、これまで日本がやってきたのと同じようなチーム作りである。そうであれば、可能性は広がらない。
 オシムは別のやり方を試みようとしていた。それが、途中で挫折したのは、可能性を広げるための貴重な実験を中止したようなもので残念だった。
 仮に、べスト16に残れないという結果になったとしても、新しい試みは、新しいものを日本のサッカーに残す。そのほうが日本のサッカーの未来のためになったと思う。

★カリスマ性と経験の差
 もう一つ、カリスマ性の点でオシムは岡田監督と決定的に違う。オシムは外国人で日本語を話せないから、人柄と実績にものを言わせて選手たちを引き付けるほかはない。独特のものの言い方、独特の練習法で「違い」を見せつける必要がある。「オシムの言葉」と欧州での経験が「カリスマ性」を作り出すのに役立っていた。
 岡田監督は日本語で選手たちをまとめることができる。「岡ちゃん」の愛称はカリスマ性とはほど遠いが、仲間として選手に溶け込むのも一つのやり方である。
 ただし、現在の日本のサッカーの状況では、日本人の監督には決定的に不利な点がある。代表選手たちの主力は欧州のトップクラスのチームの監督のもとでプレーした経験があるが、日本人の監督には欧州のレベルでの経験や実績がない。選手たちはそこを比較しながら監督を見る。だから、カリスマ性と経験の差は大きいと思う。

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サッカー日誌 / 2010年05月20日


サッカー仲間が集まる場所を!


石井義信さんの思い出と意見
日本サッカー史研究会
5月17日 JFAハウス会議室

★新田純興さんのマンション秘話
 毎月一度の「日本サッカー史研究会」で5月は石井義信さんを招いた。1970年代から藤和不動産―フジタの選手、コーチ、監督として一つの時代を作り、1980年代後半に日本代表チームの監督を務めた人である。
 「1980年代の日本サッカー」をテーマに貴重な話をうかがうことができたが、テーマ以外にも、いい話があった。「研究会」と名乗ってはいるが、もともとアカデミックな会ではない。もの好きの雑学放談会だから横道にそれた話題も面白い。
 そのなかで、感動的だった話の一つは、新田純興さんのマンション建設にまつわる秘話である。新田さんとは、生前親しくしていただいたが、初めて聞く話だった。
 新田純興さんは大正時代に東大のサッカー部を作った人で、サッカー協会の創設にも重要な役割を果たし、その後ずっとサッカー協会の役員として貢献してきた大先輩である。

★ゆかりの場所に集まれる場所を
 新田さんは東京の神田神保町付近にかなりの土地を持っていた。晩年にその土地にマンションを建てるとき石井さんが相談を受けた。勤め先の藤和が不動産会社だからである。
 新田さんの相談は、マンションのなかにサッカーにかかわった人たちが、いつでも集まることのできる「場所」を作りたいということだった。この計画は実現しなかったのだが、石井さんは、その「志」に感銘を受けた。
 1921年(大正10年)に日本サッカー協会(当時の名前は大日本蹴球協会)ができたとき、新田さんは東大の学生だったが創立の準備を手伝った。神保町にあった新田さんの屋敷に仲間を集めて、イングランドの協会の規約を調べたり、翻訳をしたりしたという。そのゆかりの場所に建てるマンション内に、サッカー仲間の「サロン」を作ろうと考えたわけである。

★アソシエーションの意味
 新田さんは晩年も、毎日のようにサッカー協会の事務所に顔を出していた。しかし、当時、渋谷の岸記念体育館内の一室にあった協会の事務所は、10人足らずの職員が机を並べるのがせいぜいの狭い場所だったから、おおぜいの仲間を集めることは、できなかった。そこで、私財を投じて、その場所を提供しようと考えたのである。
 「サッカー協会は、Association じゃないですか。アソシエーションというのは人々の集まりという意味ですよね。みなが集まって、知恵と力を出し合って、サッカーを盛んにしようというのが新田さんの考えでした」と石井さんは思い出を語った。
 いま協会は本郷に立派なビルを持っているが、大所帯の官僚組織になって、石井さんのような日本代表監督だった人でさえ、めったに中に入ることはない。新田さんの志を受け継いで、先輩たちを暖かく迎え、知恵を借りるような部屋と雰囲気がほしいと思う。

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サッカー日誌 / 2010年05月17日


岡田監督の選んだ23人(下)


小笠原を選ばないのは当然
W杯日本代表メンバー発表(5月10日)

★専門誌編集長の発言
 ワールドカップ日本代表23人を発表する記者会見はテレビ中継で見た。ぼくの見ていたチャンネルにサッカー専門誌の編集長が登場した。その人の発言には驚いたね。この人はジャーナリストなのか? それともファンなのか? 
 発表前に登場して「選んでほしい」選手の中に小笠原満男をあげ「入っておかしくない」といい、発表後には「選ばれなかったのは残念」とコメントした。小笠原のファン、あるいは鹿島アントラーズのサポーターであれば、気持ちを率直に言うのもいい。しかし専門家としての発言としては、とんだ見当違いである。
 「ぼくが監督なら小笠原を選ぶ」というのであればまだしもである。監督として小笠原を中心にチームを作る構想もありうるからである。しかし、ここは岡田武史監督が誰を選ぶかを論じている場合である。岡田監督のままで小笠原を使えというのだろうか?

★王将2枚は使えない
 岡田監督は、就任当初から中村俊輔を中心にチームを組み立てようとしてきた。俊輔がチームの王将だった。異論はあるだろうが、それが岡田監督の「選択」だった。そこに、もう一枚、王将を加えることはできない。「両雄並び立たず」という。王将は一枚だけでなければならない。
 小笠原はJリーグ・チャンピオンのキャプテンであり、MVPである。いわば鹿島アントラーズの王将である。その小笠原を、この段階で香車か桂馬として使おうとしても、うまくいくはずはない。
 飛車と角として大駒を2枚使う手がないわけではない。ただし、そうするつもりであれば、早い段階から俊輔と小笠原を並べて使ってみるべきだった。それも「一局の将棋」だったかもしれない。しかし、岡田監督はそういう盤面は選ばなかった。

★選ばれなかったのが名誉
 「いまの日本代表ではワールドカップは戦えない」という声は、ぼくの周辺にもある。どうせダメなのであれば、大会まで、もう時間的に余裕のない時点ではあるが、一か八かで駒を総取換えする手もある。
 かりに、そういう手を使うのであれば、単独チームを核とした日本代表チームを編成するしかないだろう。1936年、ベルリン・オリンピックのときの日本代表は早稲田大学が中心だった。1974年、西ドイツ・ワールドカップのときのオランダは、アヤックス・アムステルダムが中心だった。その前例にならって鹿島アントラーズを中心にするのであれば、王将は小笠原だ。ただし監督は岡田武史ではあり得ない。オズワルド・オリベイラである。
 岡田監督が小笠原を選ばなかったのは当然である。小笠原にとって、選ばれなかったのは不名誉ではない。むしろ、その秀でた個性を証明するもので名誉だと言ってもいい。

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サッカー日誌 / 2010年05月16日


岡田監督の選んだ23人(中)


川口能活は「第3GK」でいいのか
W杯日本代表メンバー発表(5月10日)

★レギュラーの座は競争で決まるもの
 ワールドカップ代表発表のとき、ゴールキーパーの3人目に「川口能活」の名前が読み上げられると、ちょっとした「どよめき」が起きた。多くの記者たちにとって意外な選出だったのだろう。
 ぼくは「ゴールキーパーを3人選ぶのなら川口を入れるべきだ」と考えていたから、想定外ではなかった。しかし、岡田監督のコメントは意外だった。
 「川口を選んだ理由は?」と聞かれて、岡田監督は、こう答えた。
 「第3GKという非常に難しいポジションになるが、チームの中で一目置かれる彼の存在感やリーダーシップが、どうしても必要だと考えた」。
 川口をはじめから「第3GK」と決めて選んだのだろうか? レギュラーの座は選ばれたなかで競争して決まるものではないのか?

★「第3GK」は岡田監督の失言
 川口は前年の9月にJリーグの試合で右足のすねを骨折、その後、ずっとプレーから離れ、ようやく練習を始めたばかりである。だから、発表の時点では、体調としては「3番手」だろう。しかしワールドカップの第1戦までには2週間以上ある。その間に楢崎正剛、川島永嗣と競い合って練習し、体調を回復し、ゲームの感覚を取り戻す可能性はある。監督としては「第1戦の時点で、もっとも適当だと判断したゴールキーパーを起用する」というのが本当ではないか。はやい時点で「第3GK」と口走るのは失言である。
 川口自身は、発表を受けて磐田市内で記者会見をした。前日に岡田監督から電話で「キャプテンとしてというか、最年長として力を貸して欲しい」と打診されていたことを明らかにし、その上で「最後までピッチに立つために努力し、自分自身も勝負しに行く」と語った。選手として、みごとな態度であり、まともな発言である。

★チームをまとめられないのか?
 川口を「第3GK」と公表したのは、森本貴幸を、はじめから「スーパーサブ」扱いにしたのと同じような考え方からだろう。11人を固定して考え、そのチームとしての組織力を武器に戦う方針の表れである。しかし、頭の中で考えをめぐらしていても、その考えをもとに軽々しく選手への評価を口にするのは、決戦を前にした監督として失格である。
 さらに言えば「チームのまとめ役」として川口が必要になったのは、裏返して考えれば、現状では「チームをまとめられない」ことの表れではないか。
 オシムやヒディンクのような監督であれば、実績とカリスマ性で選手たちを心服させ、まとめることができる。あるいは、選手たちのなかから、リーダーシップのある選手を生み出すように仕向けることができる。
 岡田監督は、自分の力不足を「第3GK」に補ってもらうつもりだろうか?

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サッカー日誌 / 2010年05月15日


岡田監督の選んだ23人(上)


森本貴幸を加えたのはよかった
W杯日本代表メンバー発表(5月10日)

★ほぼ想定内の人選
 ワールドカップ南アフリカ大会に出場する日本代表チームのメンバー23人が発表された。ほぼ想定していたとおりで大きなサプライズはない。マスコミで「意外」とされた数人も、ぼくが「選ぶべきだ」と考えていた顔ぶれだった。むしろ、岡田監督が「その数人」を加えたことが、ぼくにとっては「意外」だった。岡田監督のもともとの「方針」あるいは「好み」とは違う選手だと思っていたからである。
 「その数人」のうちの一人は森本貴幸である。
 「森本待望論」は以前から一部にあったのだが、岡田監督が視野に入れている気配はなかった。代表発表直前の欧州組視察旅行のときも、チェスカ・モスクワに移って活躍し始めた本田圭佑については「当確」のような発言をしながら、森本は無視し続けているかのようだった。

★「岡田好み」でない?
 岡田監督が森本を招集したのはワールドカップ本番8カ月前の親善試合シリーズのときである。2009年10月10日、横浜日産スタジアムのスコットランドとの試合と、その4日後の10月14日、宮城スタジアムの対トーゴ戦に起用した。
 スコットランド戦では、後半11分に交代出場し、その後に日本があげた2点に絡んだ。ぼくは「この試合は、のちに森本貴幸が登場した日として記憶されるかもしれない」と書いた。トーゴとの試合では先発して前半11分に代表初ゴールをあげた。トーゴは2線級以下のメンバーだったが、それにしても個人の力で守りを崩したゴールはみごとだった。
 この2試合で能力を見せたにもかかわらず、岡田監督は、森本を評価する様子を見せなかった。だから、岡田監督の「好み」ではないのかなと思っていた。チームの組織力で攻める方針だから個人の力で崩すプレーは認めないのかな、と推測したわけである。

★第1戦から先発で起用しては……
 ともあれ、結果として、森本が23人のなかに加わったのはよかった。「途中出場でも積極的にゴールへ向かって行く姿勢を買った」という岡田監督の口ぶりから察すると、いわゆる「スーパーサブ」として使う場面を想定しての選出のようだ。
 しかし思い切って、第1戦のカメルーン戦の最初から岡崎慎司とともにトップに起用してみる手はないだろうか。いまの「岡田ジャパン」には、本番でまともに戦ってゴールを奪えるような雰囲気はない。森本はイタリア・リーグで強力な守備を相手に鍛えられているのだから、その力強さと、鋭いゴール前のテクニックに賭けて、第1戦で「勝ち点3」をかちとることを狙ってみたい。
 23人を集めてから6月14日の第1戦まで2週間ある。その間に森本を「サブ」ではなく、チームのまともな一員として溶け込ませることが、岡田監督にできるかどうかである。

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