サッカー日誌 / 2008年03月31日


東京ヴェルディのサッカー講座


★4月から第2、第4金曜日の夜
 「東京ヴェルディのビバ!サッカー講座」を4月から月2回、開講することになった。
 第2、第4金曜日の夜7時~8時半。場所は東京新宿の「読売・日本テレビ文化センター新宿」。新宿駅から歩いて10分、コマ劇場のすぐそばだ。
 東京ヴェルディのフロント・スタッフや前身の読売サッカークラブのOBなど関係者が毎回、入れ替わり立ち代り話をし、ビバ!サッカー研究会を主宰している牛木がコーディネーターをつとめる予定である。
 カルチャーセンターでのサッカー講座は、2000年から首都圏の北千住、船橋、横浜で続けてきたが、これまでの内容は主としてスポーツライターのための文章講座とサッカー好きの仲間による情報交換だった。今度は、ちょっと趣向を変えて、Jリーグ・クラブの協力で、サッカークラブについて、みんなで知恵を出しあおうという趣旨である。
 
★クラブ組織のプロの原点
 ヴェルディを引っ張り出したねらいの一つは、正しい歴史を知ってもらうことである。ウェルディの前身、読売サッカークラブができてから来年で40年になる。その足跡を振り返って本当のことを知らせたい。
 読売クラブは1969年に設立された。その趣旨は、欧州や中南米にあるような地域に根ざしたクラブのサッカーを日本に作り、将来はプロをめざそうということだった。学校スポーツと企業スポーツが全盛で、偏狭なアマチュアリズムが支配していた当時の日本では画期的なアイデアだった。これは現在のJリーグの理念の原点である。
 ところが、「クラブ組織のプロ」をめざしてスタートしたクラブが、Jリーグ発足当時の入り組んだ状況のために、まるで、それに反対しているような誤解を生んだ。その誤解をといて、本来の趣旨をあきらかにしておきたい。

★サポーターの意見をクラブに
 もう一つのねらいは、サポーターの健全な意見をクラブに反映させることである。
 Jリーグができてから、熱烈なサポーターが増えたのはすばらしいが、熱烈なサポーターは、チームの負けが続くと群れをなしてクラブのフロントを批判する。シーズンの初めに、昨年は鹿島で、今年は浦和で起こったことである。
 クラブの経営者に反省をうながす効果があるから、必ずしも悪いとはいえないが、お互いに冷静な分析をしないで話し合うから、必ずしも建設的な結果を生むとはいえない。
 ふだんから冷静に意見を出し合い、お互いに情報を交換する場所があれば、クラブの改革に役立ち、サポーターがより深くサッカーを理解できるようになるのではないか。
 「東京ヴェルディのビバ!サッカー講座」がそのために役だって欲しいと思っている。
 心あるサポーターに参加していただきたいと期待している。

>>>読売・日本テレビ文化センター新宿


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サッカー日誌 / 2008年03月24日


南アフリカの発展を助けよう


ビバ!サッカー研究会3月例会
(3月22日、東京工科専門学校東中野テラハウス)

★ワールドカップ開催は確実
 ビバ!サッカー研究会の3月例会は、南アフリカ出張から帰国した会員の手島直幸さんの報告だった。手島さんは開発コンサルタントとして途上国援助の仕事をしていて、2月下旬から3月上旬にかけてザンビアと南アフリカに出張した。南アフリカでは2年後にワールドカップが開かれる。しかし、いろいろな面で開催能力を心配する声もある。そこで、現地で肌で感じてきた実情を聞かせてもらうことにしたわけである。
 ぼくの考えでは、2010年に南アフリカで大会が開かれることは、戦争や天変地異がない限り確実である。南アフリカ共和国が開催を返上することはありそうにないし、FIFA(国際サッカー連盟)が開催国を変更することも不可能だと思う。
 なぜなら、現地ではワールドカップの準備が進んでいて、それは南アフリカにとっても、世界にとっても、経済、社会、政治に大きくかかわっているからである。

★問題は治安と移動手段
 手島さんの話では、いちばんの問題は「治安」のようだ。犯罪率が非常に高く、殺人など凶悪な事件が多い。都市の上流の人たちの住むところは、武装したガードマンに厳重に警護されている。「勝手に出歩くと危ないぞ。タクシーは危険だから乗るな」とおどかされ、信用できる運転手つきの車を借りて行動したという。
 そんな状態では「ワールドカップを見に行ったとき、どうやってスタジアムまで往復したらいいんだ」と心配になった。試合は9都市10会場に分散して行われる。都市から都市への移動も不安である。
 前回のドイツ大会では、ビバ!サッカーの仲間たちでフランクフルトに家を借り、そこを根拠地兼連絡所にして、あちこちの試合を勝手に見に行った。南アフリカでも同じようにしたいのだが、勝手に出歩けないとなると、安全な移動手段を研究する必要がある。
 
★解決のための新しい計画を
 心配がないわけではないが、手島さんは開発コンサルタントらしい前向きの話をした。南アフリカは、かつては少数の白人が多数の黒人を支配している人種隔離政策の国だった。現在は黒人が政権を握り、白人と共存して、アフリカではじめてのワールドカップを開催しようとしている。
 問題はいろいろある。しかし、開催を危ぶむよりも、この機会に困難を乗り越えるために援助し、国の未来へ役立つ道を開いてあげるほうが有益である。そのための新しいプロジェクトを考えて手助けしようではないか、というのである。
 たとえば、安全な交通手段を提供するための援助をし、それが経済発展に役立つようにする方法はないか? サッカーを通じて子どもたちの教育に協力する方法はないか?
 世界のスポーツであるサッカーだからこそ、できることがありそうである。

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サッカー日誌 / 2008年03月23日


主審の指名停止公表に疑問


ゼロックススーパーカップと審判
サンフレッチェ広島 2対2(PK4対3) 鹿島アントラーズ
(3月1日・東京国立競技場)

★審判委員会の決定は正しいが…
 Jリーグ開幕1週間前に行われたゼロックススーパーカップが荒れた。日本サッカー協会の審判委員会は、この試合を担当した主審を、期限を定めないで、当分の間、国内の公式戦には割り当てないことにした。この決定そのものは妥当だと思う。
 ただし、松崎康弘審判委員長が、この処置を公表したことには疑問を感じた。サッカーの慣例とは違うからである。
 試合が混乱したとき、その後、しばらくは、担当した審判員に試合を割り当てないことがある。新聞などに悪いうわさが報じられたようなときにも同じような処置をとることがある。混乱が必ずしも主審のせいではなくても、あるいは黒いうわさが事実無根であったとしても、そういう処置をする。しかし、その処置は公表しないのがふつうだった。これは国際的にもサッカー界の長年のやり方だった。近年はその慣例が崩れているようだ。
 
★割り当て停止は「処罰」ではない
 混乱した試合を担当した審判員を、その後、しばらく試合からはずして冷却期間を置く。これは審判の技量に関係なく、選手やサポーターが先入観として不信の念を持ち、試合がスムーズに運行されなくなるおそれがあるからである。これを新聞等に公表すると、不信の念がますます拡がりかねない。だから公表するのは適当でない。
 これは審判割り当て上の「処置」であって「処罰」ではない。
 試合をうまくコントロールできなかったのは主審の不手際ではあるが、技術的なミスであって、法律違反でも、規則違反でもない。だから「処分」という用語も適当でない。
 選手が重要な場面でペナルティキックをはずしたら、それは、その選手の技術的ミスである。しかし、そのために、その選手を出場停止にすることはない。それと似たようなものである。
 
★今回、公表した理由は?
 今回の審判についての「処置」を、記者会見まで開いて公表したのにも理由があっただろう。その理由を知りたい。
 一つの大きな原因は「マスコミの発達」ではないかと想像した。
 現代では、テレビで試合を見る人が非常に多い。しかも、スローの再生映像で、同じ場面を繰り返し見る。審判不信の念は、とっくに広く広がっている。「処置」を公表しても、しなくても影響はあまり変わらないという考えもあるだろう。
 日本では、サッカーを取材する記者が急速に増えた。そういう人たちが、荒れた試合の原因と責任を追及する。その圧力のために、試合運営上の「処置」や審判技術向上のための対策を審判員会の内部だけで行うわけにはいかなくなった。
 これは「スポーツとメディア」についての研究課題の一つになるかもしれない。

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サッカー日誌 / 2008年03月22日


奇妙なレンタル選手の出場禁止


J2 サガン鳥栖 1対0 セレッソ大阪
(3月20日・鳥栖ベアスタ)

★鳥栖のキム・シンヨン選手の不出場
 サガン鳥栖対セレッソ大阪を見た。その前日に鳥栖市文化会館でデットマール・クラマーさんと岡野俊一郎さんの「BIG 2対談」というイベントがあり、それを聴きに行ったついでにJ2の試合を取材したのである。
 地元の佐賀新聞に試合の予想記事が載っていた。そのなかに「金信泳(キム・シンヨン)選手は、セレッソとの契約により、この試合には出場できない」と書いてあった。ぼくは不勉強で、そんな事情があるのを知らなかった。
 東京からいっしょに出かけたビバ!サッカー研究会の仲間に聞いてみたら「キム選手はセレッソからレンタルで鳥栖に来ている選手で、鳥栖とセレッソの契約で、元の所属先であるセレッソとの試合には出場できないことになっている」のだという。
 「そんなことあるのか」と、ぼくは驚いた。
 
★権利侵害と不公正
 一時的なレンタルの選手が、本来の所属チームと対戦するときに、こだわりがあることは想像できる。選手自身が戦いにくいかもしれない。サポーターにとっておもしろくないことかもしれない。しかし「出場禁止」を契約に明記するようなことが「許されていいいのか?」と不思議に思った。
 考えてみる必要のある問題が、いくつかある。
 第一に、選手の本来の権利を雇用者同士の契約で勝手に制限していいのだろうか? 能力不足やケガで出場できないのなら、やむをえない。しかし、本人に関係のないところで、その選手の機会を制限するのは権利侵害ではないか?
 第二に、セレッソ相手のときだけ出場できなくて、他のチーム相手の場合は戦力になるのは、不公正ではないのか? セレッソだけ有利になるのは、おかしいではないか?
 
★スポーツの理念にかかわる問題 
 「公式戦はベストのメンバーで戦うのが原則ですよね。戦力をわざと落として試合をするのであれば入場料を払っている観客に対しても不当なやり方だ」と仲間の一人が付け加えた。
 「でも、前例はあるらしいよ。ヨーロッパのサッカーでも行われているようだし……」という声も出た。
 しかし、これは「よそでやっていることだから許される」という種類の問題ではない。
 できるだけ公正に競技をしようというスポーツの理念にかかわる問題である。
 また、質の高い試合を提供してスポーツの向上に役立てようというプロ・スポーツのあり方にもかかわる問題である。
 そういうことを当然のように契約に明記しているのなら問題だ、と考えた。

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サッカー日誌 / 2008年03月18日


『中大サッカー部80年史』の刊行


日本サッカー史研究会3月例会
(3月17日・東京JFAハウス)

★大学サッカーの将来のために
 『中央大学サッカー部80年史』が刊行された。クロース張りのりっぱな本である。
 町の本屋で売るためのものではなく、中大やサッカーの関係者に記念品として配布し、将来のために資料として残すための本だが、必要な方には残部のあるかぎり実費(3000円)で頒布するということである。
 この本の完成を機会に「日本サッカー史研究会」の3月例会で取り上げ、中大サッカー部OB会長の上野佳昭さんと編集委員長の高橋清助さんにお話をうかがった。興味深い話がたくさん出て、大学サッカーの将来についても考えさせられたことも多かった。
 「日本サッカー史研究会」は有志が集まって毎月1回(原則として第3月曜日夜)に日本サッカー協会のあるJFAハウス内会議室で開いている。サッカーの歴史に関係のある話題を、順不同で取り上げて話を聞く会である。誰でも参加できる。

★時代の流れを見る目で編集
 中大サッカー史編集の苦労話を聞いて感心したことが三つある。
 一つはOBの思い出話を集めて、できるだけそのまま掲載したことである。後世に利用してもらう資料として、手を加えないで生のまま残すのも見識である。
 第2は、そうであっても、読みやすく、理解しやすく構成したことである。現代の若い学生たちに読んでもらおうというという志がある。
 さらに第3には、そうでありながら、歴史を見る目によって編集されていることである。たとえば、1924年(大正13年)以来の関東大学リーグの流れを、戦前の東大・早大・慶大の「御三家時代」、戦後まもなくの「早大一強時代」、1980年代からの教育大(現筑波大)、国士舘大などの「体育系時代」などに分けて考え、その時代背景や学校経営の考えの流れのなかで、自校のサッカー部の歴史を見ている。

★小野卓爾さんへの評価
 中大のサッカー部は、昭和2年(1927年)の創設である。札幌一中出身の小野卓爾さんが功労者だが、創設当時のメンバーが、ほとんど札幌一中の卒業生だったことは、はじめて知った。札幌のサッカー、北海道のサッカーの歴史も知りたいものだと思った。
 小野さんは中大のサッカーを育て、さらに日本サッカー協会の実力者として戦後の復興に貢献した。その功績でサッカーの殿堂入りしている。
 『中央大学サッカー部80年史』には、中大サッカー部の指導者としての人柄や手腕については、もちろん、しっかり書かれている。
 しかし、戦前の若いころから協会の運営にたずさわり、力を伸ばしすことができた事情は、よく分からない。ぼくにとっては、戦前の小野さんは、謎が多い。
 これは、日本サッカー史の今後の研究課題の一つだろう。

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サッカー日誌 / 2008年03月08日


手の内の読める正攻法


岡田ニッポン、W杯への初戦(下)
W杯アジア3次予選 日本代表 4対1 タイ代表
(2月6日・埼玉スタジアム)

★「なっとく」の選手起用
 岡田武史監督のワールドカップ予選デビューは「なっとく」できるものだった。
 選手起用については、攻撃的中盤の山瀬功冶とストライカーの大久保嘉人の先発に「なっとく」した。2人とも、前年のJリーグで、ぼくが注目した選手である。
 山瀬については前シーズン、横浜F・マリノスの開幕試合でドリブルシュートを決めたとき、この時評で触れたことがある。大久保はヴィッセル神戸で、左サイド前方の攻撃的ポジションで起用されたときのプレーぶりで「一皮むけたかな」と思った。これも時評で触れたことがある。Jリーグで注目した選手が代表チームで起用されると、観戦している立場としては「なっとく」である。
 右サイドバックの内田篤人の起用は予想外だった。しかしプレーぶりを見て、起用の狙いに「なっとく」した。
 
★理解しやすい正攻法の用兵
 下がって守るであろう相手に対して「流れのなか」からゴールをあげるのは難しい。そう考えてセットプレーの練習に念を入れた。これも「なっとく」できる。後半なかば、3対1と2点リードしてから選手交代をした考えも、よくわかる。やることが、すべて「まっとう」で理解しやすい。これは、手の内が読みやすいということもできる。
 現在の段階では、こういうように正攻法で、一つずつ勝ち星を重ねていくことが必要である。いきなり、変わったことを試みて「岡田のサッカー」を主張する必要はない。
 「オシムの路線を継承するかどうか」が話題になったが、監督が変われば選手起用も、戦い方も変わって当然である。ワールドカップ3次予選を戦いながら、しだいに岡田監督の色が濃くなってくるだろう。
 
★意外性のある作戦も必要
 3次予選の相手のレベルは、それほど高くはない。あなどることはできないが、正攻法で対応して十分に成算はあるだろう。しかし、レベルの高い相手と戦うとことになったとき「まともなやり方」だけで通用するかどうか?
 思い出したのは、2002年ワールドカップ決勝トーナメント1回戦で、トルシエ監督が試みた奇策である。サイドバックだった三都主をトップに使った。結果は失敗に終わって批判を浴びたけれども、トルシエ監督は、相手のトルコの強さを知っていて、あえて勝負に出たのだろう。トルコは実際に強かった。韓国も破って3位になった。
 奇策をもてあそぶのはよくないが、相手によっては、意外性のある作戦も必要である。
 まじめな岡田監督に、リスクと批判を恐れずに勝負に出る度胸があるかどうか? これも今後の課題だろうと思った。
 

(お詫び)
 時評の連載をしばらく中断したことをお詫びします。牛木の個人的な事情と手違いによるものです。ご心配をいただいた方もおありのようですが、牛木は75歳の年齢相応には元気にしています。
 
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