サッカー日誌 / 2012年09月30日


ソーシャル・メディアと五輪報道


ツイッター対策に追われる新聞

スポーツ政策研究会9月例会
(9月24日 東京・明治大学駿河台)

★IOCが180度の方針転換
 スポーツ政策研究会の9月例会で「ロンドン・オリンピックとメディア」についての報告があった。
 そのなかで「ソーシャル・メディア」の話が出た。ツイッター、フェイスブック、ブログなど個人がインターネットを通じて発信する情報とマスコミの在り方との関係である。
 従来はオリンピックに参加する選手役員が、大会期間中に情報を発信することを、IOC(国際オリンピック委員会)が禁止していた。しかし、4年前の北京大会から緩和されるようになり、ロンドン大会では「ソーシャル・メディアに参加し、自身の経験を投稿、ブログおよびツイートすることを積極的に奨励し、支持する」というガイドラインを出した。180度の方針転換である。
 これにはマスコミ、主として新聞があわてた。一般の人びとは、新聞を読む前にネットを通じて、選手たちの声を知ることができるからである。
 
★シロートの情報発信
 選手にインタビューし、原稿を書き、本社に送稿し、印刷し、翌朝、配達する。そんな手間をかけている間に読者は選手の声を直接、知っている。それじゃ、新聞は何をすればいいのか、というわけである。
 記者は現場で試合を見て、自分の論評を書けばいい。そういう考えもある。
 ところが、多くの人たちがスタジアムで、あるいはテレビの前で、競技を見ながら、その場で自分の感想をネットに打ち込んでいる。
 シロートの「床屋政談」あるいは「井戸端会議」のようなものだから、内容的には取るに足らないかもしれないが、スピードでは、新聞報道よりもはるかに速い。
 専門的な知識と経験のある記者が理路整然とまとめあげた記事も、タイミング遅れで、まともに読んでもらえないのが落ちである。

★マスメディアを信頼
 そこで新聞社も対策を考えている。
 たとえば、取材記者が現場からツイッターで「つぶやく」ことも行われている。「つぶやき」専門の記者を置いているところもある。
 ぼくは思う。「じたばた」することはない。これまで通り紙面に信頼できる記録と評論を掲載すればいい。
 しかし、それでは新聞は売れない。おそらく、新聞社の販売担当者は、そう考えるだろう。売れなければ読んでもらえない。読んでもらえなければ書いてもしようがない。人口減少と活字離れで、新聞の読者は減る一方である。
 オリンピックを大きく報道しても読者は増えないし、広告もとれない。活字メディア受難の時代である。
 それでも、ぼくは衝動的に情報を発信する「ソーシャル・メディア」は評価しない。
欠陥はあってもマスメディアのほうを信頼している。

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サッカー日誌 / 2012年09月27日


ロンドン五輪の報告会(下)


「ジャパン・ハウス」の運営

ビバ!サッカー研究会月例会
(9月21日 東京・東中野テラハウス)

★サポーターに冷たい?
 ビバ!サッカー研究会の9月例会で、ロンドン・オリンピックの「ジャパン・ハウス」運営についての話も出た。
 「ジャパン・ハウス」は日本オリンピック委員会(JOC)などが、大会期間中、ロンドンに開設した施設である。
 参加者から、こんな質問が出た。
 「4年前の北京大会のときは、ジャパン・ハウスを訪ねた一般の日本人に親切に応対してくれたのに、今回のロンドンでは、けんもほろろだったという。どういう事情か?」
 ロンドンで「ジャパン・ハウス」を訪ねた一般の日本人が冷たくあしらわれた。そういう苦情がネット上に出ていたらしい。
 事情は、こうだったようだ。
 北京では一般の日本人に対するサービスが狙いだったが、ロンドンでは、主として2020年オリンピック東京招致のために開設されたものだった。趣旨が違ったのである。

★五輪東京招致が目的
 ロンドンの「ジャパン・ハウス」は、国際オリンピック委員会(IOC)の委員が宿泊しているヒルトン・ホテルの前の建物を借りて開設された。
 オリンピック開催地はIOC委員の投票で決まる。IOC委員に立ち寄ってもらいやすい場所に、東京の開催計画と趣旨をPRするための施設として「ジャパン・ハウス」を開設したわけである。来訪した人への応対や展示は、主としてIOC委員を想定している。
 VIPのホテルの近くだから警備も厳重で、一般の観光客は立ち寄り難かっただろう。たまたま訪ねてきた一般の日本人への対応が十分でなかったことは想像できる。
 IOCは今後の大会への立候補都市のPRを制限している。
 大会期間中、ロンドンでのPR施設は1ヵ所だけ、面積も制限されていた。そういう条件の中で「ジャパン・ハウス」が用意されたわけである

★パブリック・ビューイング
 「ジャパン・ハウス」では、テレビ中継のパブリック・ビューイングも行われた。
 現地にオリンピックを見に行くと、テレビを見るには都合が悪い。地元のテレビ局(ロンドン大会の場合はBBC)が主として英国選手の出場する競技を放映するからである。
そこで日本選手の活躍する試合の映像を「ジャパン・ハウス」で見せた。音声は日本へ中継されている日本語のものを電話回線で取り込んだ。なかなかの努力ではある。
 しかし、IOCの規則で「五輪招致」のPRを目的とした施設には面積に制限がある。したがって、パブリック・ビューイングを行っても参加人数を制限しなければならない。
 ロンドンの「ジャパン・ハウス」では、パブリック・ビューイングを見る人を現地の日本人会の方々などに限定した。
 そのために、たまたま訪ねた人には「けんもほろろ」になったのかもしれない。

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サッカー日誌 / 2012年09月26日


ロンドン五輪の報告会(中)


入場券は現地で流通している

ビバ!サッカー研究会月例会
(9月21日 東京・東中野テラハウス)

★宿泊とセットのツアー
 オリンピックの入場券は入手が難しい。体育館などで行われるスポーツは入場券そのものの数が少ない。その少ない入場券が世界各国に割り当てられるから、一つの国で手に入れられる数は、きわめて限られる。
 割り当てられた入場券は、旅行社がホテルの予約とセットのツアーにして売り出す。柔道、水泳など日本選手の活躍する競技のツアーは、すぐ売り切れになる。
 ロンドン市内のホテルは、大会期間中は事前には、ほとんど取れない。しかも割高である。
 ロンドン以外の都市で比較的安いアパートを借りる手もあるが、その場合は、入場券は別に手に入れなければならない。  
 しかし、特別なルートを持たない一般の人が入場券だけを手に入れる方法がない。
 高額でもホテルと入場券がセットになったツアーに申し込むほかはない。

★バレー女子の銅メダルを見る
 ビバ!サッカー研究会の9月例会に参加した石井啓太さんが、次のような体験を紹介してくれた。
 石井さんは毎年のように、世界のいろいろな大会を見に行っている。宿泊も入場券も現地で「行きあたりばったり」で探すことが多い。
 石井さんは、ロンドンでバレーボール女子の三位決定戦を見ることができた。日本対韓国である。
 入場券は持っていなかったのだが、とりあえず会場の近くへ行ってみようと出掛けた。
 会場近くの地下鉄の駅で降りたら、ブラジル人が声をかけてきた。
 「日本人だろう。バレーボール三位決定戦の切符はいらないか?」
 石井さんは、そのブラジル人から切符を買って日本の女子バレーが28年ぶりにメダルを取った試合を見た。

★現地では余ってっている?
 ブラジルは女子バレーボールで決勝に進出した。しかし、そのブラジル人は、準決勝で敗れた場合に備えて三位決定戦の切符も用意していた。それが不要になったわけである。
同じ日にサッカーの男子決勝戦があり、ブラジルがメキシコと対戦した。石井さんにバレーボールの券を売ったブラジル人はウエンブリ―に出かけた。つまり、サッカー決勝の切
符も用意していたわけである。
 オリンピックでは多くのスポーツが行われる。発行される入場券の総数は膨大である。しかし、多くの競技が短期間に同時に行われるから、1人が見に行ける競技は限られている。このブラジル人のように、二重、三重に切符を用意している人もいる。
 だから、現地では入場券が結構、余っていて、妙な形で流通しているのではないかと考えた。

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サッカー日誌 / 2012年09月25日


ロンドン五輪の報告会(上)


スポーツ大会観戦の旅行術

ビバ!サッカー研究会月例会
(9月21日 東京・東中野テラハウス)

★競技のない町を拠点に
 ビバ!サッカー研究会の9月例会は「ロンドン・オリンピック報告」だった。現地に出かけた会員のうちの3人に、それぞれの見聞を語ってもらった。8月は夏休みにして例会を開かなかったので閉幕してから40日も過ぎているが、貴重な体験は聞いておきたい。多少の時間差は問題じゃない。
 最初の報告は、サッカーライターの鈴木智之さんだった。
 鈴木さんは、英国中部の町、バーミンガムを拠点に主としてサッカーを見て回った。ロンドンから鉄道で約1時間半。リバプールまでの中間にある産業都市で、マンチェスターと並ぶ英国第二の都市である。
 サッカーは、英国内の各地で行われた。だから鈴木さんはロンドンではなく交通の便のいいバーミンガムに宿をとったのだが、ロンドン大会だからといって無理にロンドン市内に泊まることはない。大混雑を避けて、競技のない町を拠点にするのも一つの手だな、と思った。

★アパートメント・ホテル
 鈴木さん夫妻が拠点にした「アパートメント・ホテル」は1泊8000円くらいだったそうだ。寝室、居間、台所などがあって自炊して生活できる旅行者用アパートである。
 2週間~4週間くらいのスポーツ大会を見にいくときは、こういう滞在型の宿を拠点にするのが便利である。
 前年にぼくがドイツに女子ワールドカップを見に行ったときは、フランクフルトで似たようなアパートを借りて拠点にした。借り賃は同じくらいだったが、写真を見ると鈴木さんのバーミンガムの宿のほうが立派だったようだ。
 「なでしこ」が勝ち進んでウエンブリ―に出たので、鈴木さん夫妻もロンドンに出た。市内の便利な場所に借りたアパートが1泊およそ1万4千円。1人当たりにすれば7000円でまず「リーズナブル」である。
 オリンピックでも終盤になると、比較的安いホテルは取りやすくなるようだ。

★入場券は現地でも楽に入手
 オリンピック観戦旅行では、宿泊とともに入場券の入手が問題である。
 鈴木さんは、日本で入場券の手配をして出掛けたが、現地でも楽に手に入れられる状況だったという。サッカーは、多くの都市に分散して行われるうえ、スタジアムの収容能力が大きい。1試合に出る国は2ヵ国だけだから、主なサポータ―も2ヵ国からに限られる。オリンピックのサッカーに関しては、入場券の入手は難問ではなかったようだ。
 ロンドン市内で行われる他のスポーツでは入場券の入手は難しい。体育館は収容人員が少ないし、多くの国の選手が出場するから、応援に来る人も同時にいろいろな国から来る。
 それでも鈴木さんはレスリングの入場券を手に入れて、日本選手が金メダルを獲得するのを見ることができたという。

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サッカー日誌 / 2012年09月08日


「サムライブルー」の準備試合


キリン・チャレンジ2012新潟
日本 1-0 UAE
(9月6日 新潟・東北電力ビッグスワン)

★問題点を洗い出す
 日本代表対アラブ首長国連邦(UAE)の親善試合は日本の辛勝だった。5日後のワールドカップ予選対イラクに備えた「準備試合」だから結果は問題ではないのだが、サッカーライター仲間では「ザッケローニ監督になってからの試合では最低の内容」(田村修一さん)と評価は厳しかった。
 前半、中盤を支配し10本のシュートを放ちながら無得点。
 相手の逆襲に危うい場面もあった。それが、サッカーを見る目の肥えた人たちを失望させたのだろう。
 しかし「日本代表の問題点」を洗い出した試合として意味があったと思う。

★本田圭佑が張り切り過ぎ?
 前半、日本がゴールをあげられなかったのは、本田圭佑が「張り切りすぎた」ためではないか、と思った。
 日本の10本のシュートのうち、5本が本田である。トップ下でパスを出して攻めの起点になるが、そのパスが自分に戻ってきて、自分でシュートする場面を作ろうとする。そういう攻めにこだわっているように見えた。
 ザッケローニ監督は、身長1m94cmのハーフナー・マイクを初めて先発に起用した。しかし、本田はハーフナー・マイクを生かすようなパスをほとんど出さなかった。これは、ザッケローニ監督の目論見に反していたのではないだろうか?

★守備ラインの穴埋めは?
 後半19分に本田に代わって中村憲剛が入ると、攻撃のリズムは、がらりと変わった。25分にハーフナー・マイクのヘディングで決勝点。札止め42,020人の応援を、なんとか納得させる結果になった。
 ワールドカップ予選の対イラク戦には守備ラインの今野泰幸、内田篤人が出場停止である。その穴埋めに伊野波雅彦らを起用したが「合格点」とは言えなかった。
 オリンピックで活躍した酒井宏樹、清武弘嗣が先発で起用された。プレーぶりは良かったと思う。
 いろいろな問題点を見ることのできた試合だった。


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サッカー日誌 / 2012年09月07日


男子メキシコ優勝とマスコミ


ロンドン五輪テレビ観戦記(13)

男子決勝
メキシコ 2-1 ブラジル
(8月11日 ウェンブリー:NHK総合)

★日本の新聞はほとんど無視
 ロンドン・オリンピック男子サッカーの決勝の記録は、日本の新聞では、ぼくの見た限り、スコアが小さく掲載されただけだった。「世界のスポーツの祭典」といいながら、日本の新聞は、日本選手の活躍しか取り上げない。これがオリンピックのダメなところである。
 多くのスポーツを同時にいっせいに行うから、スペースに限りのある新聞は全部を伝えることはできない。
 日本の新聞が日本選手の活躍を取り上げるのは当然としても、日本に関係がなければ世界のトップ争いも、ほとんど無視されてしまう。

★珍記録、開始28秒のゴール
 サッカーの男子決勝は幸いにしてNHKがテレビで中継してくれた。ぼくは個人的事情で中継を見ることはできなかったが、後になって録画を見た。オリンピックの熱気は冷めたあとだったけれども、なかなか、おもしろかった。
 開始直後にメキシコが先制点をあげる。キックオフ後、28秒台である。
 メキシコがキックオフして、後方でボールを回してから左サイドへ攻め込む。そのボールを奪ったブラジルが、守備ラインで安易にパスをつなごうとし奪い返されてシュートを許した。キックオフから10人がボールを触っただけである。

★メキシコ・サッカー初のメダル
 おそらく、オリンピックの最短ゴール記録だろう。ぼくの個人的趣味では、こういう「珍記録」を、ぜひマスコミが記録しておいて欲しいと思う。
 この超快速ゴールを守って1対0でメキシコが勝てば、これも歴史に残る「珍記録」だと思ったが、そうはならなかった。後半20分にメキシコが2点目をあげ、追加時間に入ってからブラジルが1点を返して2対1で終わった。メキシコは、サッカー初の金メダルである。
 メキシコの本国では熱狂的なお祭り騒ぎだっただろうと思う。しかし、それを伝えた記事は見当たらなかった。

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サッカー日誌 / 2012年09月02日


男子がメダルに届かなかった原因


ロンドン五輪テレビ観戦記(12)

(ロンドン・オリンピックの最終盤になって、個人的事情で、この連載を中断してしまった。妻が入院、死去して時間的にも、精神的にも、余裕をなくしたためである。80歳になる本人の健康に異変があったのではないかと心配してくださった方もおられたらしい。まことに申し訳ない。タイミングは大きく遅れたが、録画を見直して、一応、最後をまとめておくことにする)


男子3位決定戦
韓国 2-0 日本
(8月10日 カーディフ:NHK総合テレビ)

★双方が銅メダルへ意欲
 男子の「ヤング・ジャパン」はメダルに届かなかった。
 3位決定戦については、相手が韓国だったこともあって「ふがいない」という反応もあったようだ。
 3位決定戦が好試合になることは少ないものである。お互いに精一杯戦って決勝進出を逃したあとだ。体力的にも精神的にも燃え尽きている。
 しかし今回は双方に意欲を高められる状況があった。宿敵同士の日韓戦である。またオリンピックでは「メダル」をマスコミが大きく取り上げる。韓国にとっては初の、日本にとっては44年ぶりの銅メダルが、ぜひ欲しいところだった。

★韓国、試合運びの成功
 日本の選手たちも死力を尽くしてプレーしていたと思う。それでもミスが目立ち、連係がチグハグになっていた。各地を移動しながら中2日の連戦の果てだから、疲労が極限に達していたに違いない。
 そういう条件のもとで、韓国が銅メダルを獲得したのは、試合運びの成功によるものだったと思う。
 韓国は、前半は、中盤から激しい出足でつぶしに出た。形勢はほぼ互角だったが、韓国は守りに重きを置いていた。そして38分、トップのパク・チュヨン(朴主永)が典型的な逆襲速攻から、みごとな足技で先取点をあげた。

★日本は精一杯のがんばり
 リードした韓国は、後半は4人のディフェンダーと3~4人のミッドフィルダーでブロックを作り、守りを固めた。攻めは、やはり逆襲速攻。後半12分にゴールキーパーが大きく最前線に蹴ったボールから2点目が生まれた。
 韓国はオーバーエージ枠のパク・チュヨンのテクニックを生かし、日本は準々決勝で足を痛めていた若い永井謙佑を準決勝に続いて起用したが、生かせなかった。用兵と試合運びで、ホン・ミョンボ(洪明甫)監督が関塚隆監督を凌いだ。
 とはいえ、日本のベスト4進出は予想以上の結果である。関塚ジャパンは精一杯のがんばりだったと思う。

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