サッカー日誌 / 2016年11月21日


五輪用体育館の建設(中)


代々木体育館の教訓

スポーツ専用にはならない


★水泳競技会として建設
 スポーツ団体は、それぞれ、専用で使える競技場が欲しい。
 そのため、オリンピックなどの機会に、新しい大きな競技場の建設を求める。
 しかし、新競技場が、オリンピックのあと、そのスポーツのために活用できるとは限らない。
 東京渋谷の代々木体育館は、1964年の東京オリンピックの水泳会場として建設された。
 設計したのは、世界的な建築家の丹下健三さんである。
 丹下さんは、設計の段階で「オリンピックの後、この施設をどう使うのだろうか?」と心配していた。
 東京オリンピックの水泳会場として、1万人以上の観客席を作るように求められたが、オリンピックの後に、国内で1万人の観客を集める競技会を想定できなかったからである。
 オリンピックが終わったあと、代々木競技場は、都民のための水泳プールとして開放された。
 冬季にはスケート場になった。

★民間施設との競合
 しかし、うまくいかなかった。
 一般市民の利用には観客席は必要ないからである。
 大きな観客席がムダであるだけでなく、室内空間が大きくなって、空調などにお金がかかる。そのため、使用料が高くなる。
 もう一つの問題は、民間の施設との競合である。
 後楽園や品川に民間経営のプールやスケート場があった。
 税金を使って建設した施設が、民間施設と同じ土俵で経営を競うのは公正でない。
 一方で、官僚から「天下り」した人びとの運営は、民間の施設に比べて、運営が効率的でない。
 その他、いろいろあって、代々木競技場は、都民のための水泳やスケートとしては、充分には機能しなかった。
 その後、コンサート会場などとして役に立ってはいるが、スポーツのためには、期待どおりには使えわれていない。

★両立しない2つの期待
 1964年当時の日本の水泳界には、二つの期待があった。
 一つは、水泳がオリンピックのメーンイベントとなることである。そのために、1万人以上の観客を集める水泳大競技場がいる。
 もう一つは、オリンピックのあとで、競泳で自由に使える室内プールができることである。
 しかし日常的な競技会で使える室内プールに、大きな観客席はいらない。規模は小さくても使用料が安いほうがいい。
 というわけで、オリンピック用の施設と、日常スポーツのための施設は、両立しない。
水泳に限らない。
 多くのスポーツ団体が、日常的な競技会に使える施設を、オリンピックの機会に作って欲しいと考えていた。
 二つの希望を両立させることができないのは明らかである。
 しかし、オリンピックという大義名分がなければ、スポーツ施設を作ってもらえない。そこに矛盾がある。



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