サッカー日誌 / 2008年08月27日


一貫性のなかった男子五輪代表強化


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(11・終わり)

★チーム編成の目的が不明確
 北京オリンピックのサッカーで日本男子は3戦全敗だった。決勝トーナメント(ベスト8)進出の目標は、もともと高すぎたのだが、1次リーグの中でも、ちょっと格落ちだった。
 問題は選手のプレーぶりや反町監督の采配以前にある。
 まず、オリンピック・チームを編成する目的がしっかりしていなかったことである。
 目的は「勝つこと」だったのだろうか? その場合、アジア予選を勝ち抜くことが最優先だったのだろうか? それとも北京の本番でメダルを獲得することだったのだろうか?
 あるいは、U-23の若い選手を強化して、次の日本代表を育てる狙いだったのだろうか。そうであれば「一つのチーム」として鍛えて次のワールドカップに持ち上がるつもりだったのだろうか? あるいは個々の選手に国際経験を積ませることだったのだろうか?
 
★オーバーエージ枠でも失敗
 北京でメダルを取ることが目標であれば、現在の日本サッカーのレベルでは「一貫強化主義」でいくしかない。欧州や南米に勝てるチームを、予選の段階から編成して「一つのチーム」として育て、鍛えることである。
 この方針では、アジア予選の段階で敗退するおそれもある。たとえば背が高い選手は欧米相手には通用しないが、アジア勢相手には有効だというようなことがある。はじめから欧米相手のチーム作りをしているとアジアで取りこぼすおそれはある。
 反町監督は「一貫強化主義」をとらなかった。アジア予選と北京の本番ではメンバーを大幅に入れ替えた。また予選はオーバーエージ枠を使わない方針で戦ったが、本番では23歳以上の選手を加えようとした。しかし、オーバーエージの選手には辞退されてしまった。
 その点でも、今回の男子五輪チーム編成には一貫性がなかった。

★メダルのレベルは格違い
 「一貫強化主義」をサッカーの先進国でとるのは難しい。国内リーグが発達していて、選手を代表チームで長期に拘束できないからである。一つの試合、あるいは大会ごとに、そのときどきで最善のチームを編成して戦うのがふつうである。
 そのためには、一人ひとりの技術・戦術能力が高く、国際試合の経験が多い必要がある。
 そういう選手を育てるために、オリンピックはU-23の選手だけで編成して、タイトルを争う国際試合の経験を積ませるのも一つの考え方ではある。
 ただし、この方針でオリンピックのメダルを狙うのは、ほとんど不可能である。
 北京大会でメダルをとった、アルゼンチン、ナイジェリア、ブラジルは、それぞれ欧州の高いレベルのリーグを経験している若手にリケルメやロナウジーニョのようなスーパースターをオーバーエージで加えていた。日本の五輪代表のレベルとは格違いだった。


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サッカー日誌 / 2008年08月26日


男子はアルゼンチン連覇、迫力満点の決勝戦


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(10)
男子決勝 アルゼンチン 1対0 ナイジェリア
8月21日、北京・国家スタジアム(鳥の巣)

★五輪サッカーの価値を見た
 女子の決勝は好試合だったが、男子の決勝は、さらにすごい試合だった。才能あふれる若いプレーヤーが、暑さと連戦の疲労をものともせず懸命に闘い、すばらしい攻守を展開し、最後まで迫力満点だった。これくらいの試合を全世界のテレビ視聴者に見せられるのならオリンピックの男子サッカーも価値がある。
 女子の場合はフル代表の争いであり、また女子のワールドカップの声価は、まだ確立されていないから、オリンピックのサッカーの決勝は、世界一を決める試合として価値がある。また、テレビで世界中に中継されるメリットも大きい。
 男子の場合は、オリンピックはU-23の代表にオーバーエージ3人までを加えられるという変則的なチームの競技会だから、ワールドカップのような魅力はないと思っていたが、ちょっと見方が変わってきた。

★若いチームの魅力
 23歳未満の選手たちも、みなヨーロッパでプレーしているプロだから、通常の個人技術ではひけはとらない。ただワールドカップには豊かな国際経験を持つスーパースターがいて、円熟した戦術能力を組み合わせたチームプレーを見せてくれる。
 オリンピックには、それがないと思っていたが、今回はアルゼンチンがメッシのような若い才能を、オーバーエージ枠で参加したリケルメが生かしてチームとしても高いレベルの試合を展開した。アルゼンチンにも、相手のナイジェリアにも、すばらしい才能の選手が勢ぞろいしていた。この両国は若い才能の宝庫である。
 若いチームの魅力もある。17日間に6試合の連戦である。決勝戦はカンカン照りだった。
 後半はリードされて必死に反撃するナイジェリアと逃げきろうとするアルゼンチンの体力、気力の限界に近い死闘だった。若さを傾けた懸命さがテレビ中継からも伝わってきた。

★逆襲速攻のみごとな決勝点
 アルゼンチンが連覇を決めた1点は後半12分である。ナイジェリアが後半の立ち上がりに勝負をかけて攻めに出ていたとき、センターサークルの自陣側外まで下がっていたメッシの前に、競り合いのこぼれ球が出た。その瞬間、左後方にいたディマリアがスタートを切った。メッシはすばやくボールをさばいて走り出たディマリアの前方にパスを出した。ディマリアは約70メートルを駆け上がってドリブルした。ペナルティエリアのすぐ外から、飛び出してくる相手ゴールキーパーの頭を越すループシュートでゴールを奪った。
 ボールを奪った瞬間に速攻のスタートを切った判断のすばやさ、パスとシュートの技術、駆け上がったディマリアのスピード。3拍子そろった決勝点だった。
 あまりの暑さに、前後半にそれぞれ1回、主審が給水タイムをとった。これも、珍しい出来事として記録に留めておこう。

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サッカー日誌 / 2008年08月25日


実力伯仲、楽しめた女子決勝


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(9)
女子決勝 米国 1対0(延長)ブラジル
8月21日、北京工人体育場

★米国連続の女王、ブラジルまた惜敗
 北京オリンピックの女子決勝は期待通りの好試合だった。タイプの違う両チームだが実力伯仲、ともに持ち味を十分に発揮してプレーした。
 延長にはいって米国が前半6分にロイドの強烈な左足ミドルシュートで決勝点を挙げ、オリンピック2連覇を果たした。4年前のアテネの決勝も同じカードの決勝で延長戦だった。ブラジルは、2大会連続の惜敗である。
 テレビに映った限りでは、スタンドを埋めた観客は、熱戦を楽しんでいるようだった。すばらしいスポーツの、すばらしいカードが、オリンピックの「お祭り」の雰囲気にマッチしているようだった。
 テレビの中継も十分に楽しめた。プレーしている選手の名前を、アナウンサーが次つぎに言おうと努力してくれていので、試合の様子が分かりやすかった。

★テレビでよく分かるブラジルの個人技
 ブラジル選手のテクニックのすばらしさは、テレビだからよく分かったと思う。
スタンドで見ているときは、一人の選手だけ注目しているわけではないから、こまかい動きを見損なうことがある。また、現代のサッカーは変化が速すぎて、見ているほうの目がついていけないことがある。
 テレビでは、ボールを持っているプレーヤーを集中して映すことがあるし、好場面はいろいろな角度からスロービデオで再現してくれるから、個人のテクニックのすばらしさが強く印象づけられる。
 「女性のペレ」と言われているという背番号10のマルタのドリブルやシュートは、テレビでみると「すごいな」と感嘆するばかりだった。
 ブラジルは前半30分過ぎからエンジンがかかり始め、後半は優勢に攻めていた。

★テレビでは分かりにくい米国の守り
 ブラジルの攻めはドリブルをまじえ、しなやかで力強い。これを米国はよく組織された守りでしのいで0対0に持ちこたえた。
 しかし守りの良さは、テレビでは分かりにくい。ブラジルの攻めが鋭いから、それを防いだゴールキーパーの奮戦はよく分かった。また1対1の守りは映像に出てくるから、ある程度分かる。しかしグループによる守りは画面では分かりにくい。
 米国の4人のディフェンダーが横一線に並んでいる画面がちらっと見えた。「米国は浅い守備ラインなんだな」と想像した。一人ひとりの判断力がよく、チームとしてよくまとまっている守りだろうと思う。
 押されぎみだった後半、40分過ぎから米国は攻勢に出た。相手の疲れを待って最後に一気に勝負。そういう試合運びのうまさもあるように見えた。


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サッカー日誌 / 2008年08月23日


「なでしこ」敢闘、メダルは逃す


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(9)
女子3位決定戦 日本 0対2 ドイツ
8月21日、北京工人体育場

★ベスト4進出を高く評価
 女子は3位決定戦でドイツに敗れ、メダル獲得はならなかった。米国、ブラジル、ドイツの女子3強の実力は一段上であり、結果は順当なところである。
 メダルは取れなかったが、「なでしこ」の健闘はよかった。
 開幕前に「女子の予想は決勝トーナメント進出、目標はベスト4進出」と考えていた。多くのマスコミはメダルを期待する書きぶりだったが、ぼくは「メダルが目標」とは書かなかった。ベスト4進出も、そう簡単ではないと考えていたからである。
 結果はぼくの想定通りになった。目標を達成できたことを評価したい。
 ベスト4進出までの経過は想定通りではなかった。初戦でニュージーランドと引き分けたのは誤算である。準々決勝の相手が中国だったのは幸運である。しかし、勝負に誤算や幸運はつきものだ。結果だけではなく戦いぶりが良かったことを讃えたい。

★大型の相手に敢然と立ち向かう
 ドイツは大型で力強い選手を揃えている。体力勝負では勝ち味はない。
 日本は、中盤でのきびしいチェックで、相手の長いパスの出所を制約し、ボールを取ったら、すばやくつないで攻め込んだ。そういう「日本スタイル」の戦法で前半は、何度かチャンスを作っていた。大型で強力な相手に敢然と立ち向かい、自分たちのサッカーを展開したプレーぶりが、さわやかだった。後半なかばにリードを奪われたあとも、がっくりくることなく、最後まで力を尽くして戦い抜いた姿も感動的だった。
 ドイツは守りが堅かった。また試合運びがよかった。前半は力をセーブし、後半にチャンスを見つけると力強い攻めをすばやく、繰り出した。
 後半24分の先制点と42分のダメ押し点はともに後半14分に交代出場したバイラマイだった。日本の疲れが出るところで新戦力をつぎ込んだ交代策が成功した。

★頂上は見えたがルートは見えない
 「なでしこ」が善戦してベスト4に進出したので、テレビのアナウンサーが「世界の頂上が見えましたね」とコメントしていた。
 はるか麓でうろうろしていたころから見れば、速い速度で登ってきて頂上を望める地点まで来ている感じはある。しかし、頂上へのルートが見えているとはいえない。
 今回の「なでしこ」は、少数精鋭に国際経験を積ませた集中的な強化策が実ってできあがったチームだった。ベテランが適材適所で生かされ、完成度の高い、バランスの取れたチームだった。しかし、これから大きく伸びる要素は感じられなかった。
 世界の頂上に立つためには、米国の選手層の厚さや、ブラジルの個性的なテクニックやドイツの体力に対抗できなければならない。今までの登りかたが、これから頂上までの、険しい未知のルートで通用するようには思えない。

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サッカー日誌 / 2008年08月22日


「なでしこ」に高い米国の壁


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(8)
女子準決勝 日本 2対4 米国
8月18日・北京工人体育場

★国内の競技人口に差
 ベスト4に進出した日本女子チームは、準決勝で米国に敗れた。1次リーグの第2戦でも0対1で負けている。通算で3引き分け18敗。米国には1度も勝ったことがない。
 日本の女子が米国の壁を乗り越えられないのはなぜか?
 基本的には、国内の競技人口の厚みの差だと思う。
 米国では、、ぼくの見聞した限りでも、40年以上前から女子サッカーが普及していた。「危険が少なく運動量が多い戸外のチームスポーツ」として、中流階級の家庭で女の子にやるように薦めているという話だった。
 女子サッカーのワールドカップが行われるようになり、オリンピック競技に採用されると、すぐに世界のトップに躍り出たのには、そういう背景があった。
 米国に比べると、日本の女子サッカーは歴史も浅いし、選手層も薄い。
 
★前半のうちに逆転される。
 準決勝の点差は開いたが、内容は押されっぱなしではなかった。立ち上がりは、日本のほうが元気なように見えた。17分に先取点。右コーナーキックからの攻めで、相手がクリアしたボールを近賀が拾って右からミドルシュート、ゴール前で大野が止めて蹴りこんだ。近賀の力強い運動能力、大野の確実なシュート力など、得意な場面では日本の個々の選手の能力も見劣りはしない。
 しかし、リードを守れたのは40分までだった。41分には右からのドリブルによる攻め込みに守りが引き寄せられ、44分には左からドリブルでゴール正面前まで持ち込まれた。
 厚い選手層の中からはいあがってきた選手たちと、虎の子のように大事に育ててきた選手たちの争いだから、体力的にも、技術的にも差がある。その差を運動量とグループによる守りで埋めなければならないのだが、大会5戦目で日本のほうが疲れが目立っていた。
 
★試合運びの巧みな米国
 体力も技術も、米国のほうが上であることは明らかだったが、チームとしての試合運びも、米国は巧みだった。
 リードされても、落ち着いて日本のサイドを狙って繰り返し攻め込み、前半の残り5分に、日本選手の疲労が見え始めると、たたみかけるように速い攻めを仕掛けた。
 後半は米国はボールをキープして日本を振り回し、米国は後半26分と38分に2点を追加した。
 日本選手は、これまでになく足が止まっているように見えた。疲れが出るとパスの精度も落ちてきた。
 「なでしこ」としては精一杯の戦いだったと思う。善戦したが決勝進出に値する力は、まだない。

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サッカー日誌 / 2008年08月16日


「なでしこ」4強進出、みごとな立ち直り


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(7)
女子準々決勝 日本 2対0 中国
8月15日・秦皇島

★テレビに映らない功労者
 日本の女子サッカーが、北京オリンピックのベスト4に進出した。すばらしい。
 グループ・リーグ初戦でニュージーランドに引き分けたときは「これはダメだ」と思っていたが、みごとに立ち直った。
 準々決勝では、地元の中国よりも日本の選手のほうが元気だった。中2日の試合が続いているのだから、どのチームも疲れがたまっているはずである。しかし、開幕前の準備と開幕してからの体調管理が成功して、大会のなかばにコンディションのピークをもってくることができたのではないか。
 そうだとすれば、功労者はテレビの画面には登場しない人たちかもしれない。つまりフィジカル・トレーナー、あるいはフィジカル・コーチといった人びとである。こういう人たちは、どのチームにもいて、裏で「スポーツ科学」のメダル争いをしているわけである。
 
★日本に理想的な試合展開
 準々決勝は、日本にとって理想的な試合展開になった。
 前半は、まだ疲労が表に出てきていないから、お互いに動きがよく、きびしく守っている。そのときに相手を攻め崩すのはむずかしい。コーナーキックやフリーキックからのほうがチャンスがある。
 前半15分に宮間の正確な左コーナーキックを生かして、澤がみごとなヘディングによる先取点を挙げた。他の選手が二アに相手を引き付ける動きをして、澤のゴール前への飛び込みを助けていた。おそらくは練習していたパターンの一つである。
 リードされた中国は前がかりにならざるを得ない。日本はその裏側を狙う。後半35分に逆襲から大野がドリブルで攻め込み、こぼれ球を拾った永里のシュートで追加点をあげた。中国選手の労働量が落ちるにつれて日本選手のテクニックのよさが生きてきた。
 
★澤を中心に気力充実
 体力と技術で上回ることができたうえに、気力も日本のほうが充実していた。その中心は澤だろう。テレビの画面に大写しになる澤の表情はすばらしかった。緊張して集中している間も、余裕を持って周りを見ていることがうかがわれた。張り詰めた試合を続けていて、点をあげたときに喜びを爆発させる姿もよかった。
 他のスポーツでメダルをとった選手がインタビューで「多くの方のご協力のおかげです」「皆さんの応援に感謝しています」と答えているのを見ると、その礼儀正しさに感心しながらも、わざとらしさを感じる。しかし、女子サッカー選手のようすは、懸命に戦いながらも、のびのびと楽しそうである。
 澤を中心にチームの雰囲気が、ますますよくなっているのではないか。体力、技術、気力の3拍子揃ったベスト4だと思う。

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サッカー日誌 / 2008年08月15日


「反町ジャパン」敗退の根本的な理由


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(6)
男子第3戦 日本 0対1 オランダ
8月13日・瀋陽

★監督優先は世界には通じない
 「反町ジャパン」という呼び方に反対する意見がある。監督の名前に英語の国名をつけるのは「もともとラグビーの真似」だからというのだが、「反町ジャパン」に関しては、ぴったりの呼称ではないかと、ぼくは思っていた。
 「日本人にあったサッカーはこうあるべきだ」という考えが監督にあり、それにそってチーム作りをするからである。極端に言えば監督のが考え先にあり、それにチームが続くわけである。
 「そういうチーム作りでアジアでは勝てる。しかし、世界の強い相手には通じない」と、ぼくは考えていた。そう書いたこともある。
 今回のオリンピックの結果は、ぼくの予想通りになった。
 アジア予選では勝ったが、オリンピックの本番では3戦全敗で敗退した。
 
★勝つためには現実から出発を
 勝つためには理念を追うよりも現実から出発しなければならない。「現在の日本には、こういういい選手がいるから、その選手を生かせるチームを作る」という考え方である。
 1960年代に日本を指導したクラマーさんのやり方がそうだった。八重樫茂生の才能を見抜いて、八重樫を核にチームを作ることを考えた。1964年に釜本邦茂が登場すると、杉山-釜本を武器にした。それが1968年メキシコ・オリンピックの銅メダルになった。こういう事情は中条一雄著『デットマール・クラマー、日本サッカー改革論』(ベースボール・マガジン社刊)を読めば分かる。
 ただし「オリンピックでメダルをとる必要はない。サッカーはU-23の大会なのだから、若手育成の場であればいい」と考えるのなら、話は別である。そうであれば、経験を積ませるために、将来性のある若手だけでチームを作るのも、一つの考えである。
 
★PKをとられて敗戦は当然
 男子サッカーの第3戦は、7日間に3試合の連戦で、双方に疲れが目立ち、いい試合にはならなかった。日本はすでにグループリーグ敗退が決まっている立ち場だったが、オランダはベスト8進出がかかっていたにもかかわらず元気がなかった。
 結果は後半28分のPKで決まった。
 ペナルティエリアの中で、本田圭佑が相手のドリブルを止めようと併走しながら左腕を伸ばして、相手の胸のあたりのシャツをつかんで引っ張っり倒した。その映像が、ビデオで繰り返し映った。NHKテレビの解説者が「本田は相手よりも前に出ているから反則ではない」と妙な解説をしていたが、とんでもない。
 テレビで見たところでは、非紳士的な反則による得点機会阻止で、退場になってもおかしくない場面だった。こんなレベルでサッカーを論じているようでは、世界では勝てない。

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サッカー日誌 / 2008年08月13日


「なでしこ」大逆転5つの要因


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(5)
女子第3戦 日本 5対1 ノルウェー
8月12日・上海

★意欲と体力の勝利
 女子の日本はグループリーグの最終戦でノルウェーに大勝、ベスト8(決勝トーナメント)に進出した。
 前半27分に1点先取されたが、前半のうちに追いつき、後半に4点をあげた。この大逆転を生んだ要因はいろいろ考えられる。
 第1は意欲である。日本は引き分けでは脱落する。勝ち点3を狙うほかはない立ち場だった。ノルウェーは、すでに勝ち点6をあげ、ベスト8進出が決定している。勝利への意欲には大きな差があった。
 第2は体力だった。中2日の連戦の3戦目。どちらも疲労がたまっていたはずだが、日本の選手は疲れを見せず、ノルウェーは後半に動けなくなった。日本のコンディション作りがうまくいったのだろう。事前の準備の勝利である。

★技術を発揮した多彩なゴール
 第3は技術である。日本の選手たちのボール扱いが巧いのには驚いた。「なでしこ」のパスの精度が低いことを心配していたが、この日はパスがよくつながった。また積極的なドリブルで相手をかわす場面も多かった。
 初戦のニュージーランド戦では緊張しすぎ、2試合目の米国戦では相手のプレッシャーに押されて、テクニックを発揮できなかったが、相手の守りに厳しさがないとのびのびとプレーできる。速さと強さに問題はあるにしても、ボール扱いは巧みである。
 前半31分の同点は、中盤右サイドから左サイドへとパスをつなぎ、宮間からの低いクロスに近賀が飛び込んで合わせたゴール。後半6分に中盤のフリーキックを起点に勝ち越し。7分に大野のドリブルシュートで勝ち越し、25分にはゴールマウスの密集地帯で複雑なパスをつないで澤のゴールと、得点のパターンも多彩だった。

★追い、囲み、拾う守り
 第4は守備である。中盤で相手を2人、3人で取り囲んで守る集中守備が機能していた。こぼれ球もよく拾った。追い、囲み、拾う3拍子が揃っていた。ノルウェーの強シュートもあったが多くは枠外。危うい場面にゴールキーパーの好守やゴール内からの近賀のヘディングのクリアなど見せ場もあった。
 第5は環境だ。会場が秦皇島から上海に変わり、暑さはそれほどでないように見えた。試合前に1時間ほど雷雨があったというが、芝生はしっかりしていた。いずれも、パスをまわして走る日本に有利な状況だっただろう。
 女子は12チームのうち8チームが決勝トーナメントに進出できたのだから、グループ3位での進出では成果としては十分ではない。初戦に敗れて望みが薄くなっていたのを、しのいだのはよかったが、目標は地元中国を破ってのベスト4進出である。

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サッカー日誌 / 2008年08月12日


男子敗退は2種類のはやさの違い


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(4)
男子第2戦 日本 1対2 ナイジェリア
8月10日・天津

★単一性のナイジェリアに敗れる
 「多様性」の反対が「単一性」だとすれば、ナイジェリアは単一性のチームである。
 選手全員が体質的にも、文化的にも、ほぼ似ているように見える。
 第1戦の相手の米国チームには、いろいろな人種といろいろな文化が入り混じっていたが、ナイジェリアのチームは対照的に単一性だ。この国はニジェール川をはさんで北はアラブ系でイスラム教文化、南は黒人でキリスト教と原始宗教の入り混じった文化の住民に大別できる。しかし、サッカー選手はみな南部の黒人である。
 単一性の国の選抜チームで、選手たちがそれぞれ個人としてのよさを発揮できれば、鋭い、端的な強さが生まれる。
 日本のサッカー男子は、第1戦では多様性の米国に敗れ、第2戦では単一性のナイジェリアに敗れた。2試合目で、決勝トーナメント(ベスト8)進出の望みはなくなった。

★筋肉と判断力の速さ
 ナイジェリア選手の特徴は、筋肉の速さと強さではないだろうか。すばやく、強く収縮する速筋(白筋)繊維の割合が多いのではないか? 陸上競技でいえば短距離型である。
 そういう速筋性の特徴を組み合わせることのできる場面が生まれれば、爆発的な攻撃力を発揮する。
 ナイジェリアの2得点には、その武器が生きていた。後半13分、後方でボールを奪うと、すばやくドリブルで攻めあがり、ゴール前で日本のディフェンダーを背にしてくるりとかわす場面を2人が連続して作ってラストパスを出し、先取点をあげた。
 2点目は後半29分、これも逆襲からだった。スピードに乗ったドリブルで攻め込み、クロスを通して速攻を決めた。
 筋肉の速さだけでなく、相手のスキにすばやくつけこむ判断の速さも組み合されていた。

★1次リーグ敗退は当然の結果
 速筋は長い間、力を出し続けることはできないから、絶え間なく攻め続けることはできない。守りを固め、ゆっくりしたペースでエネルギーを蓄えておいて、相手のスキを見つけたら一気に力を出さなければならない。スキにつけこむすばやさも必要である。
 速さで劣る日本は、逆に攻め続けて相手を疲れさせ、厳しく守って相手にチャンスを与えないようにしなければならない。
 しかし、90分間、ゆるみなくプレーし続けるのは難しい。ナイジェリアは、日本のわずかなミスとゆるみに、すかさず、つけ込んで2点をあげた。2対0となったあと、日本は後半34分に1点を返したが、同点、逆転に持っていく力はなかった。
 B組の中で、日本の力が劣っていることは分かっていた。サプライジングを期待したが、相手がスキを与えてくれないで、こちらがミスをしたのだから敗退は当然の結果である。

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サッカー日誌 / 2008年08月11日


強敵をおそれなかった「なでしこ」


北京五輪サッカー、テレビ観戦記(3)
女子第2戦 日本 0対1 米国
8月9日・秦皇島

★戦いぶりは評価したい
 「強敵と見て恐れず」という言葉がある。なでしこジャパンの第2戦の戦いぶりは、この言葉のようだった。敗れたけれども戦いぶりは評価したい。
 相手の米国は前回の優勝国、今回も優勝候補である。劣勢は覚悟のうえだっただろうが、恐れることなく、正面から堂々と取り組んだ。
 引いて守りを固めても、相手の強攻に90分間、耐えつづけることは難しい。守りからの逆襲を狙っても、相手の技術、走力が上なら、そうそうはチャンスはない。守備策をとっても勝てる可能性は低い。
 「なでしこ」たちは、前線から2人がかり、3人がかりでプレスをかけて相手のミスを誘い、つけこむスキができれば、すかさず走りこんで、すばやいパスで攻めようとした。そういう、自分たちのやってきたサッカーでチャレンジした。
 
★米国の一人一人の強さと巧さ 
 それでも、前半27分に1点を失った。左からのクロスを約20㍍の強烈なミドルシュートで決められた。ちょっとした守りのコンビの乱れをつかれて左サイドのディフェンダーのコックスに左隅に走り込まれた。米国はそのチャンスを強シューターのロイドがものにした。米国の一人一人の選手の強さと巧さが、日本の「チームによる守り」の一瞬の乱れをついた。
 リードされても「なでしこ」はくじけなかった。最後まで勝利の可能性を信じて戦った。その敢闘精神を評価したい。
 シュート数は23対10で米国が圧倒していた。しかし、23本のシュートを浴びながら、失点を1に食い止めた守りを評価したい。日本の10本のシュートうち、ゴールの枠内に飛んだのは6本だったが、それだけのチャンスを作ったことを評価したい。
 
★ベスト8進出は困難に 
 ボール支配率は、米国が53%、日本が47%だった。
 こういう数字が示しているのは、試合前から分かっていたことではあるが、米国の力が上だということである。一方、テレビの映像からの印象は、幸運に恵まれれば、日本に勝つ可能性もあった、ということである。
 第1戦が引き分けだったため、この試合は捨て身でかかるほかはなかったということもあるが、「強敵と見て恐れず」に戦ったのはよかった。しかし結果には結びつかなかった。
 1引き分け1敗で「なでしこ」のベスト8進出は、非常に難しくなった。
 おそらく、大会前の監督の算用は、第1戦のニュージーランドに勝ち、続く米国戦で幸運に恵まれれば、望みが開けるというところだっただろう。だが、第1戦で「弱敵と見て侮らず」という格言の後半部分を忘れていたのが痛かった。

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