サッカー日誌 / 2008年02月09日


流れから得点できない理由


岡田ニッポン、W杯への初戦(中)

W杯アジア3次予選 日本代表 4対1 タイ代表
(2月6日・埼玉スタジアム)

★得点はセットプレーから
 ワールドカップ・アジア3次予選の第1戦で、日本の4得点のうち3点は、セットプレーからだった。勝てばいい試合だから、どんな形であっても点を取れればいい。岡田監督が「セットプレーからなら点をとれる」と考えて準備したのはいい。
 しかし、相手によっては、コーナーキックやフリーキックから点をとるのが難しいこともある。相手の守りを攻め崩して得点する必要もある。そういうパスをつなぐサッカーのほうが、見ている者にとっても楽しい。「流れの中から点をとれない」のは、日本代表チームの課題として残った。
 4点のうち勝ち越しの2点目は、山瀬功治が左サイドから、ドリブルで相手を抜きながら持ちこみチャンスを作り、大久保嘉人が決めたものだった。これは個人の力が相手の守りの乱れを誘ったゴールである。
 
★クロスの精度が低い
 流れのなかからゴールが生まれない理由の一つは、ゴール前へあげるクロスパスの精度が低いことである。
 相手が下がって守っているときに、正面から攻め込むのは難しい。そこで、後方から、あるいはサイドからゴール前へボールを放り込む攻めが多くなる。タイとの試合でも、左サイドの駒野友一、右サイドの内田篤人が、サイドからゴール前へパスを上げる攻めを試みた。しかし、それが味方にぴしゃりとは届かない。
 もともと、相手はゴール前の守りを厚くしている。ゴールキーパーもいる。だからパスが通りにくいのは当然である。それだけに、味方にぴったり渡る精度の高いパスを出す必要がある。ところが、フリーキックやコーナーキックと違って、動きながら、相手の妨害を受けながらプレーするときには、いいパスが出せない。

★組み立て能力を生かしていない
 パスをつないで攻める場合には、中盤からいいパスを出す能力が必要である。現在のサッカーは中盤でもチェックがきびしいから、ゆうゆうと攻めを組み立てるわけにはいかない。チェックを受けながらも、すばやくボールを扱い、適切な攻めを選択する必要がある。
 ボールを扱うテクニックでは、いまの日本のプレーヤーのレベルは、アジアのなかでは、かなり高い。問題は適切な攻めを選択する判断力と味方を動かすリーダーシップである。
 日本の勝ち越しゴールのときは、中盤の鈴木啓太が、左に出た山瀬にパスを出したところからチャンスになった。パスの組み立てと個人のドリブルが結びついた。
 攻めを組み立てる能力が乏しいわけではない。能力のある選手はいるのだが、それを生かすようなサッカーが求められていないのではないか。
 流れのなかのゴールを求めるなら、そういう個人のインテリジェンスを発揮させるサッカーが必要である。
 
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サッカー日誌 / 2008年02月08日


快勝を高く評価できるか?


岡田ニッポン、W杯への初戦(上)

W杯アジア3次予選
日本代表 4対1 タイ代表
(2月6日・埼玉スタジアム)

★結果はよかった
 岡田武史監督のワールドカップへの初戦は、のちになって、どのように思い出されるだろうか。
 勝ち点3という結果は、もちろん記録に残る。内容よりも結果が求められる公式戦である。いいスタートだったことは確かである。
 埼玉スタジアムの空から降りつづけた雪を、たぶん忘れないだろう。大屋根の内側に静かにおりてくる白い小雪の底で熱い戦いが続いた。暑い国から来たタイの若者たちの健闘が印象的だった。
 岡田監督の用兵と指揮が、よい思い出になるかどうかは、少なくとも3次予選が終わってみなくては分からない。岡田監督は、この試合に勝たなければならないと同時に、今後につながる試合をしなければならない立ち場だった。
 
★準備と用兵はよかった
 結果がよかっただけでなく、岡田監督の試合への準備と試合中の用兵も合格点だった。
 オシム監督が病に倒れたあとを受けて、オシム監督のチームの幹を残しながら、少しづつ自分の枝を挿し木した。
 大久保嘉人を復帰させてトップ下に使うことを試み、山瀬功治を活用して新しい攻め方を加えた。若い内田篤人の登用もまずまずだった。それぞれ試合で役割を果たした。
 セットプレーからの得点を狙い、2日間の非公開練習で徹底的に練習させた。4得点のうち2点がフリーキックから、1点がコーナーキックからだった。タイの守りを破るために効果的な準備だった。
 選手交代も成功した。クロスの精度が低いので「ゴール前に目標がないからではないか」と長身の巻誠一郎を入れたら、ヘディングの得点が生まれた。
 
★タイには三つの不運
 タイには不運が重なった。逆にいえば岡田監督は幸運にめぐまれた。
 タイの不運の第一は、選手が揃わなかったことである。ベストの顔ぶれのなかから、7人が抜けたという。4人が警告累積で出場停止だった。マンチェスター・シティに行っている3人は呼び戻せなかった。2人は直前にけがをした。
 タイの不運の第二は天候である。南国の選手たちが、寒さや雪にびっくりしたのは、もちろんだ。そのうえ、降り続く粉雪がとけて芝生が濡れ、パスのボールが速く走った。タイでも雨は多いが、芝生が深いので、ボールの走りが速くなることはないという。
 そして第三に、後半18分に2枚目の警告で退場者が出たことだ。反則を重ねたのだから不運とはいえないが、誤算ではあっただろう。
 日本快勝の評価は、タイの不運を割り引いて考えなければ、なるまい。
 
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サッカー日誌 / 2008年02月03日


岡田監督、強化2試合の評価


日本代表 3対0 ボスニア・ヘルツェゴビナ代表
(1月30日・国立競技場)

★選手にのびのびやらせたら?
 岡田武史新監督の日本代表強化試合第2戦は快勝だった。第1戦に比べると、選手たちがのびのびとプレーしているようにみえた。
 チリとの第1戦のときは「密集突破を試みよ」と岡田監督に言われたので、選手たちが短いパスこだわったと、新聞には書いてあった。第2戦のあとの記者会見で、岡田監督は「ぼくは、ショートパスだけをやれなんて、言ってませんよ」と反論したが、これは記者の書きかた、ききかたの言葉じりをとらえた言いわけである。少なくとも、第1戦では岡田監督の考えが選手たちに、しっかり伝わっていなかったことになる。
 第2戦では「選手たちが自分たちで対応してくれた」と岡田監督は話した。
 それでいい。選手たちが自分たちの判断で、のびのびとプレーを選択するように仕向けることが、この段階では重要である。岡田監督は、ちょっと軌道修正をしたようだ。

★当面はオシムの遺産活用が安全 
 ワールドカップ・アジア3次予選の第1戦(2月6日、対タイ)まで、準備期間はあまりない。ここは、オシム前監督がまとめたチームを活用するのが安全である。若手の内田篤人以外は、オシム当時のメンバーをそのまま使った。これは正しい選択だった。
 オシム一家のメンバーは、チームとしてまとまっている。溶け込んでいないのは、新しく加わった監督である。新監督が選手たちの信頼を得てチームを掌握するには、時間がかかる。だから当面は、できるだけ選手たちに自由にやらせて、ポイントだけアドバイスする程度にとどめるのがいい。
 第2戦では、そうなったようにみえた。
 点差は3対0と開いたが、楽な展開だったわけではない。後半23分にコーナーキックを生かして1点を取ったのが効いた。このコーナーキックは岡田監督のパターンだろう。

★相手の守りの変化をつく
 ボスニア・ヘルツェゴビナは下がって厚く守っていた。しかし先取点を取られると守りが乱れた。原因は、一つには攻めに出るほかはなくなったこと、もう一つは長旅の疲れで体調がよくなかったことだ。
 横一線の浅いラインになった守備の裏側をついて日本は2点を加えた。後半38分の2点目は、第2線から走り出た山瀬功治に大久保がいいパスを出した。交代出場した幡戸がオフサイド気味の位置にいて「おとり」になっていた。43分の3点目は、幡戸がヘディングで落とし、これも後方から走り出た山瀬が決めた。
 相手の守りの変化をすかさずついた攻めだった。これが、選手の好判断によるものか、岡田監督の狙い通りだったのかは分からない。ともあれ、いい形で点を取れたのはよかった。
 ボスニア・ヘルツェゴビナは旧ユーゴスラビアの共和国の一つである。「東欧のブラジル」といわれた技巧派の国の選手たちに比べて、日本選手はテクニックも戦術的判断力も上だった。日本のサッカーのレベルも上がったものだと古いサッカー記者としては、ちょっと感慨があった。


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サッカー日誌 / 2008年02月02日


三賞は外国人監督と女子ベレーザ


2007年度ビバ!サッカー大賞(下)

★敢闘賞に浦和オジェック監督
 2007年ビバ!サッカー表彰の敢闘賞には浦和レッズのオジェック監督を選んだ。理由は過密日程を果敢に戦い抜いたことである。
 国内ではJリーグがあり、ナビスコカップがあり、天皇杯がある。そこにアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)が入り、さらにクラブ・ワールドカップが加わった。しかも、主力選手は日本代表に選ばれていて疲れ果てて戻ってくる。
 浦和のフロントは、過密日程に備えて、2チームを編成できるほどの補強をしてくれた。しかし、オジェック監督は、ケガ人以外は、レギュラークラスをほとんど変えずに戦った。「チームのまとまりを壊したくない」という理由だった。信念をもって挑んだことに敬意を表する。
 「でも結局、ACL 以外はとれなかった」という批判はある。だから「敢闘賞」である。

★技能賞は鹿島オリヴェイラ
 技能賞には鹿島アントラーズのオリヴェイラ監督を選んだ。
 就任1年目でJリーグに優勝し、天皇杯もとった。シーズン初めは、チームを掌握できないで苦しんでいたのに、シーズンが終わってみると、ちゃんと結果を出していた。
 Jリーグの昨シーズンの序盤戦に鹿島の試合を見に行ったことがある。ガンバ大阪を迎えてのホームゲームだった。若手選手が多く、外人選手はチームになじんでいなかった。0対1とスコアは惜敗だったが「前途多難だな」と思った。開幕2連敗でサポーターが荒れた。そのあと3試合連続引き分けだった。
 新しい監督が自分の色を出してチームをまとめるには時間がかかる。しかし、サポーターは待ってくれない。それを乗り越えて、若手を育て、守りを鍛え、チームをまとめた。
 2007年は外国人監督が成果を出した年だったのかな? いや、今回に限らないか!
 
★女子の4冠に殊勲賞
 ビバ!サッカーの表彰では初めて女子を対象にし、殊勲賞を出すことにした。4冠をとった日テレ・ベレーザである。
 元日の国立競技場で、天皇杯決勝の前に女子全日本選手権の決勝が行われ、ベレーザがTASAKIを2対0で破って優勝した。この年度、なでしこリーグ、なでしこリーグカップ、なでしこスーパーカップと合わせ全タイトル完全制覇である。全日本選手権は無失点。いい選手を育てているだけでなく、チームとして完成している。
 男子にめぼしい業績がないから女子に目を向けたら、はなばなしい成果があったわけだ。1981年に読売クラブの女子チームとして創設されて以来、27年にわたる女子サッカーへの貢献と輝かしい戦績を考えると「大賞」に選んでもおかしくない。
 長年にわたって、女子サッカーを無視してきた「差別」を深く反省している。

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