サッカー日誌 / 2009年08月26日


オールスター・ゲームの良さを考える


JOMO CUP批判は見当違い

★「真夏の球宴 何のため?」
 Jリーグ対Kリーグのオールスター・ゲームJOMO CUPについて、新聞に見当違いの批判が載っていた。ことさらに企画の足を引っ張るような論評で、友人の一人は「サッカー協会首脳の意向を反映した記事じゃないのか」と深読みしていた。
 ものごとには利点も難点もあるが、その記事は、オールスター・ゲームの利点には触れないで、難点だけを、あげつらっている。そのうえ論旨も表現も見当違いである。
 たとえば「日韓対決とうたっても、しょせんは、お祭り。代表戦やチャンピオンズ・リーグには真剣度で及ばない」と書いている。
 このイベントはもともとエキジビション、つまり「お祭り」である。タイトルをかけた「対決」ではない。それを代表の公式戦やACLのようなタイトルをかけた試合と比較するのはスタートでフライングをしている。

★お祭りの良さを楽しむ
 お祭りにはお祭りの良さがあり楽しさがある。
 8月8日に仁川(インチョン)で行われたJOMO CUPでは「お祭り」の良さを十分に感じることができた。ぼくは地下鉄で競技場に行き、試合の前後にスタジアムの周りを一周し、試合中にはバックスタンドにも行って雰囲気を観察した。地下鉄の駅から出てくるお客さんも、韓国各地からバスでやってきたサポーターも、夏休みの「お祭り」を楽しんでいた。また、新しいファンを開拓しようというKリーグの熱意も感じることができた。
 大会当局の用意したメディア・バスでソウルから往復し、記者席で観戦し、メディアセンターのなかだけで仕事をしたのでは、お祭りを楽しむ大衆に触れることができない。
 サッカーのまわりには、さまざまな社会と文化がある。遮眼帯をかけた競走馬のような狭い視野で「勝負」だけを見るのでは、サッカーの広さと深さを理解することはできない。

★日韓サッカーの新しい形
 オールスター・ゲームは、スター選手のすぐれたテクニックや判断力を楽しむ試合で、勝負が主眼ではない。だから、守りを固めて相手の良さを殺したり、ファウルの危険を冒して無理をしたりすることはない。シーズン半ばの中断期間を利用してのエキジビションだから、お互いにケガをしないように、させないように注意もする。
 だからこそ、スター選手たちはのびのびと自分の得意なプレーを披露することができる。そこに、オールスター・ゲームのおもしろさがある。
 仁川のJOMO CUPは、日韓両国のファンが、それぞれ相手の国のリーグと選手を知る機会になった。さらに、相手の国と社会と文化の理解を助ける機会にもなった。これは日韓サッカーの新しい形だった。
 難点だけあげつらって、利点に目を向けないようでは進歩はない。


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サッカー日誌 / 2009年08月16日


JOMO CUP と日韓サッカーの情熱と友情


韓日サッカー交流セミナー
(8月8日・仁川文化芸術会館会議場)

★新しい日韓関係を求めて
 JOMO CUPの韓国開催を機会に、インチョン(仁川)で「サッカーの日韓関係」をテーマにしたセミナーを開いた。関西大学と宮崎公立大学の学生がゼミ旅行の一環として計画したイベントに「ビバ!サッカー研究会」も協力した形だった。
 韓国側から東亜日報のペ・クギン(克仁)記者と南ソウル大学のオ・イルヨン(呉一英)教授、日本側から朝日新聞の中小路徹記者、それに司会を兼ねて関西大学の黒田勇教授が壇上にあがった。
 サッカーの日韓戦については、過去には特別な思いがあった。「これだけは負けられない」という対抗意識が燃え盛っていた。しかし、J対Kのリーグ・オールスター試合、JOMO CUPは、ちょっと違う。Jリーグ選抜に韓国の選手が加わったりするからである。これは新しい日韓関係を象徴するものといえるだろうか。そういうこともテーマの一つに考えた。

★2002年から変わった
 朝日新聞の中小路記者は「2002年のワールドカップ共催以後、明らかに雰囲気は変わった」と報告した。日本では「韓流ブーム」で韓国の文化に親しみを持つ人が増え、韓国側も日本を過剰に意識することがなくなった。韓国のメディアは「以前は自国を日本と比較して論ずることが多かったが、いまでは欧米と比べて、あるいは世界のなかでの韓国の位置を見るようになった」という。
 その結果、サッカーの日韓戦は特別のものではなくなった。それはいいことだが、日韓戦への関心が低くなったのは「ちょっと寂しい気もする」と、中小路記者は語った。
 東亜日報のペ・クギン記者も同じ見かただった。そして「これからはアジアのなかでの日韓関係を考える時代だ」と指摘し、その中で「お互いに違うことを認めたうえで、交流と競争をすることが発展につながる」と述べた。

★日韓のクラブによるリーグも
 南ソウル大学のオ・イルヨン教授は、韓国のサッカーの歴史を紹介し、将来に向けての提案をした。そのなかでKリーグのクラブが、現在の企業依存の体質を抜け出し、地域に密着したものに変わる必要があると述べた。それはJリーグがめざしているものと同じであり、KとJがそういう文化を共有したうえで、クラブの交流を強化することによって「新しい市場開拓につながる可能性がある」と指摘した。
 関西大学の黒田教授は「日韓のサッカーが成熟した関係に進んでいる」と簡潔にまとめた。最後にビバ!サッカーを代表して、ぼく(牛木)が「中国を含めた三国リーグを展望し、その一歩として日韓リーグをめざすことを考えよう」と締めくくった。
 詳しい内容は、いずれ「報告書」がまとまったら改めて紹介したい。後援のKリーグの関係者も10人参加して、なかなか有意義な試みだった。

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サッカー日誌 / 2009年08月15日


日韓サッカー関係の変化と成熟


JOMO CUP 韓日リーグ・オールスター
(8月8日・仁川ワールドカップ競技場)
Kリーグ選抜 1対4(前半0-1)Jリーグ選抜

★意外な盛況、インチョンの球宴
 JOMO CUP が、韓国のインチョン(仁川)で行われた。前年から衣替えしたJリーグとKリーグのオールスター対抗戦である。前回は東京の国立競技場で行われたが、今回は韓国に会場を移しての開催となった。
 「スタンドは、がらがらだろうな」とぼくは予想していた。韓国ではプロ野球人気が高くなって、Kリーグは観客が少ないと聞いていたからである。それに冠スポンサーは日本企業である。ファンの日韓対抗意識も薄くなっている。盛り上がる要素はあまりないと考えたわけである。ところが案外……。
 地下鉄の「文鶴競技場駅」を出ると、食べ物やお土産グッズの屋台が立ち並んで、なかなかの「にぎわい」である。年配のファンもいる、家族連れもいる、仲良くお手々をつないだ若いカップルもいる。スタンドの入りは38,500人という発表だった。

★試合展開は一方的に 
 スタジアムの外にバスがたくさん並んでいた。プレートや張り紙を見るとKリーグ・クラブのある都市からサポーターを運んで来たらしい。Kリーグや広告会社が観客動員に奮闘したのだろうと推測した。
 会場の雰囲気は夏の「お祭り」にふさわしかったが、試合は両チームとも結構、勝負にこだわっていた。Jのオリヴェイラ監督(鹿島)は、先発のトップにジュニーニョ(川崎)とマルキーニョス(鹿島)のブラジル勢を並べ、中盤は日本代表の顔触れで構成した。前半14分に中盤の中村憲剛(川崎)からのパスを受けマルキーニョスが先制点。監督の狙い通りである。後半14分にはディフェンダーのイ・ジョンス(李正秀)(京都)がセットプレーの機会に前線に出て、こぼれ球を拾い、巧みにマークを外して2点目をあげた。
 Kリーグの1点は4-0となったあとのPKである。予想外の一方的な展開だった。

★韓国人の李正秀がJ側でMVP
 イ・ジョンスは、大会のMVPに選ばれた。試合の流れを決めるゴールを挙げ、守りでも活躍したのだから当然だろう。
 試合のあと帰りのお客さんで混雑する地下鉄の駅で、日本人を見かけると「イ・ジョンス、サンガ、サイコー(最高)」と叫んでいるファンがいた。
 イ・ジョンスは、前年はKリーグのスウォン(水原)の選手として韓国側からJOMO CUP に出場し、今回は移籍した京都サンガの選手として日本側から出場した。
 韓日対抗として自国のチームを応援しながらも、韓国人選手が日本側に入って活躍していることに、ファンは違和感を感じていない。スタープレーヤーとしての活躍を喜んでいる。日本のスタイルのサッカーに適応して活躍した韓国選手と、それを楽しむファンに、日韓サッカー関係の変化と成熟を感じることができた。


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サッカー日誌 / 2009年08月13日


国際親善大会参加の意味と収穫


U-20スウォン国際大会最終日
(8月6日 韓国・スウォン)
エジプト 1対0 南アフリカ
韓国 2対1 日本

★韓国ユースが優勝、日本は3位
 4チームが参加したスウォン(水原)の国際ユース大会は、最終日に韓国が日本を破って優勝した。日本は1勝2敗で3位だった。
 若い世代の招待親善大会だから順位はそれほど重要でない。問題は参加したチーム、あるいは選手それぞれが何を得たかである。
 日本以外の国は、9月下旬からエジプトで開かれるU-20のワールドカップに参加する。監督としては、そのための代表チーム作りの一環である。選手たちにとっては、代表に残れるかどうかテストされる場である。監督にとっても、選手にとっても、この大会に参加する意味は、かなり、はっきりしている。モチベーションがある。
 しかし、日本はワールドユースのアジア予選で負けているので、エジプトの大会には出場できない。参加する意味が明確でない。

★強い相手との国際試合の経験
 「現在のU-20は、2年後のロンドン・オリンピックをめざす年代だから、その強化のため」というのが、日本サッカー協会の方針である。しかし、スウォンの大会に出たチームが、そのままオリンピックをめざすわけではない。ほかにも今回は参加できなかった有力候補がいたようだし、新たに出てくる可能性も大きい。今回は「オリンピックをめざすチーム作りのため」というよりも「若い選手が国際経験を積む機会」と考えたほうがいい。
 最終戦で韓国に敗れたあと、岡田監督は「この1週間で選手たちが伸びてきたという手ごたえを感じている」と語った。選手たちは、ほとんどがJリーグ所属だが、レギュラーとして試合には出ていない。強く、激しい相手との試合の経験がほとんどないから、力強いエジプトや韓国の選手との争いはいい経験になっただろう。こういう経験を、一握りの五輪代表候補だけでなく、多くの若いプレーヤーに積ませられるといい。

★Jリーグ所属の韓国選手が活躍
 韓国との試合で、日本は前半の早い時間帯に2点を取られた。10分に後方からの長い正確なパスが前線にぴたりと合った。決めたのは大分トリニータのチョイ・ユンハンである。28分にはアルビレックス新潟のチョ・ヨンチョルが右サイドで日本のディフェンダーを一発でかわして決定的なチャンスを作った。2点ともJリーグ所属の韓国人選手が重要な役割を果たした。Jリーグが韓国の若手を育てているのだろうか?
 中盤は、ほとんど日本が支配していた。シュート数は20対13で日本が多い。しかし大迫勇也(鹿児島城西出、鹿島)らが積極的にシュートしながら、厳しく体を寄せて守られると枠をとらえきれない。後半7分に河合陽介(藤枝東出、慶大)が1点を返しただけだった。
 多くの観客がスタンドを埋め、日韓戦らしい雰囲気があって好試合ではあった。

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サッカー日誌 / 2009年08月09日


若い世代の親善試合で知る個人の資質


U-20スウォン国際大会第1日
(8月2日 韓国・スウォン)

韓国 4対0 南アフリカ
エジプト 1対0 日本

★サッカーの基盤を知るために
 韓国に「スウォン国際ユース(U-20)蹴球大会」を見にきた。韓国が3カ国を招待して開いた若い世代の親善大会である。
 韓国入りは、JOMO CUP 日韓リーグ・オールスター試合(8月8日、インチョン)の機会に企画したシンポジウムのためだが、少し早めに来て、スウォン(水原)で、この大会を見ることにした。
 タイトルが重要な大会ではない。各国ともベストメンバーを揃えて参加しているわけではない。チームとして十分に準備をしてきているわけではない。それは承知の上である。
 しかし、若い世代の代表チームが、あまり訓練されないで参加するから、それぞれの国の選手個人の資質や個性の特徴が比較的「ありのまま」に試合に表れて、その国のサッカーの基盤を知るために役立つのではないかと考えた。

★「すばやさ」のない南アフリカ
 初日の第1試合は、日曜日の午後5時半から。韓国が4対0で南アフリカに完勝した。南アフリカのセラメ・レトソアカ監督は「海外のクラブに行っている選手もいて、ベストメンバーから8~9人欠けているんだ」とぼやいていた。長旅の影響もあるだろう。
 地元の韓国は、大学生、Kリーグ、それに海外に出ている選手などの混成である。Jリーグ・クラブ所属が5人、フランスとスペインのクラブ所属が各1人含まれている。監督はホン・ミョンボだ。
 韓国の得点は、FKからのボールをヘディングで決めた1点のほかは、後方からの長いパスで南アフリカの浅い守備ラインをついたものだった。ディフェンダーの間へ走りこむ選手へ長いパスが正確に合った。南アフリカの選手は足技がよく、短いパスをつないで攻める。しかしアフリカ西海岸の国の選手のような速筋性の「すばやさ」はないようだった。

★「速筋型」のエジプト
 第2試合は午後8時から。韓国のサポーターは帰ってしまって「スウォン・ワールドカップ競技場」の広大なスタンドには、豆をまいたほどの観衆しかいない。
 日本は後半13分に1点を失って敗れた。シュート数はエジプト11に対して日本10とほぼ互角だったが、前半のなかばからはエジプトが主導権をとって攻勢だった。
 アラブ系のエジプト人は速筋型のようである。チャンスと見るとすばやくダッシュして、奔放にドリブルで攻め、思い切りのいいシュートを放つ。決勝点はトップ下の選手がドリブルで攻め込んでシュートしたのを、ゴールキーパーがはじき、逆サイドから詰めていた選手が叩き込んだもの。得点者は、その直前に交代出場したストライカーだった、
 日本U-20の監督は、A代表と同じ岡田武史。試合後、立ち話の記者会見で「日本の選手たちはよくやったが、思い切りって決められない」とAの場合と同じような話だった。

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サッカー日誌 / 2009年08月05日


自己主張が乏しい日本のユース


U-20スウォン国際大会第2日
(8月4日 韓国・スウォン)

日本 6対2 南アフリカ
韓国 1対0 エジプト

★未来につながるプレーを
 韓国・スウォン(水原)の国際ユース大会第2戦で、日本は6対2で南アフリカに勝った。若い世代の親善大会だから勝敗は重要でない。6点取ったからといって高く評価はできない。2点を失ったからといって落胆する必要もない。
 問題は一人一人の選手が未来につながるようなプレーを見せたかどうかである。勝手の違う相手にぶつかっても、しっかりした技術と戦術能力を発揮できたかどうか? これからも、ますます伸びていくことを予感させるような力強い姿勢で戦ったかどうか? そこらあたりを見極めたい。
 岡田監督は第1戦とはメンバーをがらりと変えた。連れてきた19人を全部使って、それぞれの選手を見極めようということだろう。高校選手権で活躍した大迫勇也(鹿児島城西、鹿島アントラーズ)と河井陽介(藤枝東、慶大)が先発である。

★日本の得点の大半はFKから
 個人の技術と戦術能力の点では、日本の選手たちは参加4チームのなかでは、いちばんである。大迫も河井も、そのほかの選手も、外国のスタジアムで、のびのびとプレーしていた。しかし、その技術や戦術能力が必ずしも結果には結びついていない。
 南アフリカから挙げた6点のうち4点はフリーキックからだった。これは南アフリカの守りに問題があった。南アフリカは第1戦で、浅い守備ラインを韓国に突かれて4点をとられたためか、大迫には守備ラインのプレーヤーのうちの一人を、下がり気味の位置の河井には中盤のプレーヤーをマンマークでつけて、厳しく守ろうとした。そのために、自陣ペナルティエリア近くでのファウルが多かった。
 日本には、フリーキックからなら力強く巧みなキックをする選手がおり、セットプレーの訓練もきちんとやっている。そこからゴールが生まれた。

★1対1の「力強さ」で劣る
 日本の若い選手は、うまくて賢い。劣っているのは1対1の力強さである。
 フリーキックからなら妨害する相手が近くにいないから、そのうまさ、賢さを発揮できる。だが、相手の妨害が厳しくなったとき、自分一人の力で突破しようとする強引なプレーは少ない。自己責任でリスクを冒すよりも、チームとして確実にプレーを選ぼうとする。
 第2試合の韓国対エジプトは、互角の守り合い、攻め合いだった。0-0のまま後半なかばを過ぎると、選手たちは「おれが、おれが」とばかり、強引なドリブルで攻めようとしはじた。結局、終了近くに、韓国の選手がペナルティエリアにドリブルで攻め込んだのをエジプトの選手が2人がかりで防ごうとしてPKを取られて決着した。
 若い世代を伸ばすには、強引な個人プレーをする選手を引き立ててやることも必要なのではないか?


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サッカー日誌 / 2009年08月04日


差別発言に厳しく対処を


J2 東京ヴェルディ 1対2 ヴァンフォーレ甲府
(7月22日 味スタ)

★レアンドロ激昂事件
 東京ヴェルディのレアンドロが突然、激昂した事件があった。1対2でヴェルディが甲府に敗れた試合の終了直後、フィールド中央に選手たちが集まったときに、主審がレアンドロにイエローカードを出した。そのあと暴れ出そうとして同僚に取り押さえられたのである。警告は主審に「ロスタイムが短すぎる」と文句を言ったためだったが、レアンドロが怒りだしたのには別の原因があった。
 レアンドロが「切れた」のは、警告を受けた直後に、甲府の杉山新選手が「差別用語」を使って悪口を言ったためだった。レアンドロはそう主張している。
 「サル(猿)」という意味のポルトガル語を浴びせられたのだという。「サル」は、ブラジルでは「黒人」をあざける言葉として使われているという。
 甲府側は「そんなことはない」と反論している。

★カタコトのポルトガル語で悪口?
 記者席から双眼鏡で見たところ、レアンドロの怒りようは尋常ではなかった。顔面蒼白。目は引きつっていた。ヴェルディの同僚たちが数人がかりでけんめいに抱えて止めたので、甲府の選手に殴りかかることはなかったが、明らかに憤激していた。
 甲府の選手が「人種差別」のつもりでののしったとは、ぼくには考えられなかった。日本では皮膚の色による差別や悪口は一般的ではないからである。一方、レアンドロが激昂する背景は想像できた。欧米での差別の実情を知っているだろうからである。日本語を十分には理解できないために、レアンドロが誤解したのだろうと、そのときは推測した。
 ところが、である。友人が次のような見方を教えてくれた。
 「ブラジルに短期間行ったときに覚えたカタコトの悪口を、面白半分で、よく分からずに使う選手がいるんですよ」

★熊本対甲府戦にも前例
 外国人に「バカ」「アホ」など、よくない言葉を教える人がいる。また教えられた外国人が無邪気に連発する例がある。それと似たようなものかな、とも思った。
ところが、である。実は前にも、熊本-甲府戦で「同じ問題が起きた」ことがあったという(7月25日付朝日)。
 同じクラブの選手が繰り返し同じ問題を起こしているのだとすれば見過ごすことはできない。同じ言動を繰り返す選手やクラブに対して厳しく対処し、人種差別や民族差別は国際的にも社会的にも重大な問題であることを、選手たちに十分に認識させる必要がある。
 Jリーグは、発言の証拠が残っていないからとして、今回は処分を控え、差別的な言動をしないよう通達を出すに留めた。しかし、今後も繰り返されるようだったら、サッカー界から追放するぐらいの厳しい処分が必要である。


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サッカー日誌 / 2009年08月02日


サッカー少年を「すくすく」育てる


ビバ月例会
7月18日・東京工科専門学校東中野

★ビバ仲間の出版記念シンポ
 ビバ!サッカーのメンバーで、新進のスポーツライターである鈴木智之さんが、書き下ろしの著作を初めて出版した。『サッカー少年がみるみる育つ! 有名校・強豪チームの現場に学ぶ超効果的指導法』(出版芸術社、1,200円+税)である。
 そこでビバ!サッカー研究会の7月例会は、出版記念のミニ・シンポジウムとした。
 パネリストは、柏レイソル強化部長の小見幸隆さん、東京都サッカー協会少年連盟技術指導副部長の藤原和彦さん、それに著者の鈴木智之さんである。
 本の副題を見ると「強いチームを作るため」の指導法がテーマだと思われる。つまり高校選手権の上位に進出するような有名校チーム、あるいはプロ選手を育成するJリーグのユースチームが、どのような指導をしているかを学んで、サッカー少年が「みるみる育つ」方法を知ろうという狙いのようである。

★少年指導の目的は何か?
 ただし、本の内容は必ずしも、そうばかりではない。有名チームの指導者の話を聞いて少年指導に役立つ考え方を紹介しているが、勝てるチームを作るためだけ、あるいはプロ選手を育てることだけが目的ではない。結果として、将来、プロ選手や日本代表選手が出てほしいという願いはこめられているが、少年たちにいい技術を身につけてもらうことがまず、少年サッカー指導の目的である。
 「みるみる育つ」という題名も、誤解を招きそうである。子どもの成長の速さに目をみはることがあるのは確かだが、急速に伸ばすための特効薬があるわけではない。ここに書かれていることは、むしろ常識的な、着実な考え方である。
 子どもたちは「みるみる」育てるのではなく「すくすく」と育ててほしい。つまり急いで教え込むのではなく、ゆっくりと健全に伸ばしてほしい。

★小学生年代では遊ばせろ
 こういうことを含めて、少年サッカーの指導には、いろいろな問題がある。小学生年代でエリートを集めて集中強化をするシステムは効果があるのか? 全国大会は必要なのか? 熱心すぎる親の介入にどう対処するか? などなど。
 ミニ・シンポジウムでは、こういう問題のいくつかが取り上げられた。
 小見幸隆さんは読売クラブ(現ヴェルディ)で中学生年代の北沢豪や菊原志郎を指導した当時の体験を語った。藤原和彦さんは小学校教育の現場の経歴を踏まえながら協会のトレセン・システムを解説した。いずれも興味深いお話だった。詳しい内容は、まとめて別の形で紹介しようと考えている。
 一言だけ、ぼくの考えを述べると「小学生年代では、楽しく遊ばせるのがいちばん」である。ただし、遊ばせるためにも、指導者には見識と指導技術が必要である。


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サッカー日誌 / 2009年08月01日


「スポーツ基本法」制定への諸問題(下)


実務上の要請にこたえるために

スポーツ法学会専門委
(7月4日 岸記念体育会館)

★問題解決の拠りどころが必要
 「日本スポーツ法学会」のメンバーには弁護士が多い。創立当初は大学教員が大部分だったのだが、プロ野球やJリーグで選手の代理人を務める弁護士が出てきてから様子が変わってきた。これも時代の流れである。
 そういう弁護士は、スポーツに関する実務を取り扱っているから「スポーツ基本法」制定についても実務上の要請を持っている。つまり、仕事をするうえで「実際に困っていること」があり、それを解決するための「拠りどころ」を新しい法律に求めたいと思っている。「基本法」だから抽象的な内容になるにしても、実務からかけ離れたものでは困る。
 一例として学校の運動部の「連帯責任」問題が話題になった。
 ある高校の野球部員が暴行傷害のような犯罪をおかしたとき、その高校の野球部が出場停止処分になった。一人の部員の犯罪のために他の部員も処罰された形である。

★連帯責任は「スポーツ権」の侵害
 「個人責任」であるはずの犯罪で、関係のない部員が、「連帯責任」だとしてスポーツに参加する権利を奪われた。だからといって訴訟を起こそうとしても、ぴったり当てはまる法律の条文がない。憲法で保障されている人権を侵害されたということはできるが、スポーツをする権利が基本的人権として規定されているわけではない。そこで、スポーツに参加する権利を「スポーツ権」として明記しようという議論である。
 この問題を裁判で実際に解決しようとしているわけではないだろう。しかし、新しい法律で、こういう連帯責任を問う処罰は違法であることを認識させれば、大会主催者もそういう処罰はしないようになるだろう。
 国民はひとしく、スポーツに参加する権利を持っており、その権利をほしいままに奪うことはできない。そのことを明確に方向づけする必要がある。

★競技団体とのかかわり
 基本的な問題の一つは、競技団体と個人とのかかわりである。
 スポーツの競技団体は、独占事業体といっていい性質を持っている。たとえば、高校の野球部は高等学校野球連盟(高野連)に加盟していなければ甲子園をめざすことはできない。高野連に属さない仲間を集めて別に大会を開けばいいという議論は現実的でない。そのため、高野連の方針には理不尽でも従うほかはない。サッカーの場合は、もっと明確で日本サッカー協会に属していないとFIFAからも締め出される。
 競技団体のほしいままな統制を防ぐためにも、法による基準が必要だということになるが、それが国際的基準と食い違うと、法律は簡単には改正できないだけにやっかいだ。
 ほかにも、いろいろな問題はある。日本スポーツ法学会が、それを洗いざらい取り上げて議論しようとしているのは有意義だと思った。

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