サッカー日誌 / 2011年11月27日


アウェーのバーレーン戦評価


ロンドン五輪アジア最終予選C組
U-22 バーレーン 0-2 日本
(11月22日 マナマ=テレビ朝日)

★勝ち点3に意味あり
 日本のオリンピック・チームにとって、バーレーンで行われた試合は、それほど難しいものではなかった。レベルの差は明らかで、アジア予選C組は日本とシリアの争いに絞られているからである。確実に勝ち点をあげることだけが課題だった。勝ち点3をあげたのだから、それでいい。
 日本の試合内容は良くなかった。2点はいずれも、相手ゴールキーパーの拙守につけこんだものである。動きは重く、鋭さがなかった。中盤のパスもゴール前へのクロスも正確さを欠いた。
 不慣れな土地での試合。旅の疲れがあり、時差があり、グラウンドが悪かった。アウェーだから、やむを得ない。
 相手の反撃を食い止めた守りのほうを評価したい。

★出場機を生かした大津と扇原
 この試合の日本はベストメンバーではなかった。清武弘嗣と原口元気がフル代表にとられ、主将の山村和也が左足小指にひびが入っていること(左足第5中骨亀裂骨折)が分かり、チームを退いていた。チームにとっては痛手である。
 しかし、代わって出場する選手にとっては、力を示す機会だった。
 攻撃の左サイドで起用された大津祐樹は前半終了間際の1点目をあげた、ドイツのボルシア・メンヘングラッドバッハ所属で、ただ一人、欧州組から召集することができたプレーヤーである。得点をあげただけでなく、しばしば攻めの起点になるプレーをしていた。
 ボランチで起用された扇原貴宏は、後半22分に左からのクロスをあげ2点目の起点になった。しばしば中盤の組み立ての起点になっていた。
 新しい戦力の活躍は、若い選手層の厚みを示すものだった。

★バーレーンのサッカー
 バーレーンは、攻めで決定的な形は作れなかったが、前半は風上から縦へ長いパスを出して、鋭い攻めこみも見せた。前半40分ごろに、左サイドのマルードのミドルシュートが
左ゴールポストを叩く場面もあった。チーム力には差があるが、個人としては能力のある選手もいる。
 リードされると、後半には乱暴な反則で守ろうとするプレーが目に付き、イエローカードが続き、最後にはレッドカードも出た。頑張っているところを間違った方法で示しているのではないか? サッカーにお金を出してくれている人たち(パトロン)がいて、その人たちへの義理だてではないか? そう思った。ただし、これはぼくの憶測である。
 テレビで見たところ、スタンドには地元の観衆はほとんどいなかった。日本人のサポーターばかり映っていた。



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サッカー日誌 / 2011年11月26日


中村和彦さんの異色の本


『アイ・コンタクト もう一つの なでしこジャパン』
 (岩波書店 2011年10月 1800円+税)

★聴覚障害者の日本代表
 『アイ・コンタクト もう一つの なでしこジャパン』は、異色のノンフィクションである。取材が徹底している。構成にくふうが凝らされている。一気に読ませる。そして心を揺さぶられる。
 サッカーの本だが、サッカーだけの本ではない。人間を描いた本である。最近にないノン・フィクションの傑作だ。
 著者の中村和彦さんは映画監督だ。聴覚障害者のサッカー日本代表を描いた「アイ・コンタクト」(2010年)は山路ふみ子映画福祉賞を受賞した。
 この本は、映画「アイ・コンタクト」を制作するために取材した内容がもとになっている。「映画の中では表現しきれなかったこと」を、文章という別のメディアで伝えている。本のために新たに追加取材もしたという。

★徹底した取材、冷静な視線
 中村さんは「ろう(聾)者」という言葉を使っている。その「ろう者」サッカーの女子日本代表チーム編成が2006年11月に始まった。2009年9月に台北で開かれるデフリンピックに参加するためである。
 中村さんは、そのチームを大会が終わるまで3年がかりで取材した。声が聞こえない選手たちをインタビューするために手話を学ぶことから始め、一人一人の選手の家族にも話を聞き、ときには練習ゲームに「手伝いのプレーヤー」として加わっている。
 チームに入り込んで、ときにはその一員として密着取材しながら、視線は撮影カメラのファインダーを覗いて見るように冷静である。
 ボールを蹴った経験のない者もいるメンバーが日本代表として成長し、チームとしてまとまっていく姿を暖かく見守りながら、しかし客観的に観察している。

★映画とサッカーの手法で構成
 この本を途中から読み始めてはいけない。映画を途中から見始めるべきではないのと同じである。最初から読んでもらうように、きちんと計算された構成になっている。 
 まず、サッカーと音について、また「ろう者」についての簡潔な導入がある。読み進むにつれて、登場人物とその背景に引き込まれる。終わりに近くなると思わず涙があふれてくるクライマックスがある。そして最後に、サッカーについて、身体障害について、また人生について考えさせられてENDマークになる。
 章建ての構成はサッカーの試合を模してある。選手紹介、選手入場、キックオフ、ハーフタイム、後半。そして延長戦がある。
 文章でなければ表現できない内容を、映画とサッカーの手法でまとめたすばらしい本である。

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サッカー日誌 / 2011年11月17日


ピョンヤンの試合、戦い方評価


ワ-ルドカップ・アジア3次予選
 北朝鮮 1対0 日本
(11月15日 ピョンヤン金日成競技場=TBSテレビ)

★見どころは勝敗より「戦い方」
 ピョンヤンで行われたワ-ルドカップ2014のアジア3次予選、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)対日本の試合は、勝敗にほとんど意味はなかった。日本は最終予選進出が決定済みで、北朝鮮は失格が決定済みだったからである。
 日本の多くの人に関心があったとすれば、日本代表チームの22年ぶりのピョンヤン訪問を北朝鮮が「どのように受け入れるか」だっただろう。TBSテレビが生中継したので、ある程度はそれを窺うことはできた。ただし競技場内だけである。
 そうではあっても、サッカーの試合だから、技術、戦術面の見どころはある。
 北朝鮮チームは、地元の大観衆に囲まれて日本を相手に、むざむざと負けるわけにはいかない。日本のほうは、タジキスタンから北京経由で乗り込んで遠征の疲れもある。
 それぞれ、どういう戦い方をするかには、興味があった。

★北朝鮮の意外な交代策
 前半35分に北朝鮮は意外な選手交代をした。トップのチョン・テセに代えて、20歳の若手、パク・ソンチョルを出したのである。それまで0対0ではあったが、北朝鮮が積極的に攻めて優勢であり、チョン・テセは鋭いミドルシュートを放つなど活躍していた。交代の狙いが分からなかった。
 ところが、そのあと、北朝鮮の攻めが鋭さを増した。右サイドから攻め込み、コーナー近くからのクロスにパク・ソンチョルが走り込んで、あわやと思わせるシュートを放った。
 日本の左サイド、伊野波と岡崎の守りの甘さをついたものだった。
 ただし、この攻めはゴールには結びつかなかった。パク・ソンチョルの走りこみは鋭かったが、一点で合わせるシュートは、なかなか正確にはいかないものである。
 後半4分の北朝鮮の1点は、フリーキックからヘディングをつないだものだった。

★ザックの常識的用兵を評価
 1点をリードされた日本は、後半16分に中村憲剛を引っ込め内田篤人を出し、システムを4:4:2から3:4:3に変えた。ザッケローニ監督は、攻撃に出なければならない状況で、自分の代名詞になっている3:4:3の使い方の一つを示したわけである。勝敗が重要ではない試合だから試みることができたのかもしれない。ともあれ、この作戦も効果はなく0対1で敗れた。北朝鮮が後半32分に1人、レッドカードで退場になったが、つけこむことはできなかった。
 ザッケローニ監督は、先発メンバーを4日前のタジキスタンとの試合の先発メンバーから6人変えた。勝敗が重要でない試合で新しいメンバーの組み合わせを試み、控え選手に経験を積ませるのは常識的な策である。結果も内容も「良かった」とは言えないが、相手が勝負にこだわってくる雰囲気にのまれずに、冷静な戦い方を選んだことを評価したい。



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サッカー日誌 / 2011年11月14日


タジキスタンのサッカー


ワ-ルドカップ・アジア3次予選
タジキスタン 0対4 日本
(11月11日 ドゥシャンペ=フジテレビ)

★日本が最終予選に進出
 ワ-ルドカップ2014のアジア3次予選で日本が最終予選進出を決めた。
 タジキスタンと北朝鮮を相手のアウェー戦が連続して行われ、まずタジキスタンに勝ち、同じ日にウズベキスタンがホームで北朝鮮に勝って、日本とウズベキスタンのグループ2位以内が決まった。
 日本対タジキスタンの試合はレベルの差が明らかだったので、勝負そのものには、それほど関心はなかった。ただ、ザッケローニ監督の選手起用と用兵には興味があった。トップに誰を起用するか、控えメンバーをどう活用するかに注目していた。
 長身のハーフナーを先発でトップに起用したのは相手とグラウンド状態を考えてのことで予想通り。後半に交代出場させた前田遼一と清武弘嗣が追加点に絡んだのは試合の状況を見ての用兵的中。納得できる。

★タジキスタンという国
 テレビ観戦していて「現地に行ってみたかったな」と思った。試合を生で見たかったわけではない。タジキスタンという国とその風土とサッカーに関心を持ったのである。
 民族的にも政治的にも入り組んだ歴史を持つ国らしい。旧ソ連邦で独立したのは1991年である。国土は山に囲まれた山岳地帯だという。そういう国で、サッカーの組織はどうなっているのか、これから、どのように発展して行くのか。そのあたりを知りたいと思った。
 民族的、人種的に多様性があるのであれば、サッカーにとっては悪くない。いろいろなタイプのプレーヤーが生まれてくる可能性がある。
 クラブとリーグなどのスポーツの組織は、旧ソ連の諸国と似ているのではないだろうか? これは今後、調べてみたい。
 テレビで見たところ観客はかなり多かった。ここでも、サッカーは大衆のスポーツに違いない。

★潜在能力は悪くない
 代表チームとしてのレベルは、周辺の他の国と比べても、やや落ちるようだが、選手の潜在能力は悪くない。この試合で強烈なロングシュートを試みた場面が何度もあった。前半ポストを叩いたり、バーをかすめたりして、日本がひやりとさせられた場面もあった。
 これから、タジキスタンのサッカーを良くするには、どうすればよいか?
 ぼくは半世紀近く前に、ドイツのクラマー・コーチが日本のサッカーに残した「提言」を思い出した。
 正確なプレー、芝生のグラウンド、数多くの国際試合の経験、すぐれたコーチ、しっかりした組織 ―― である。
 ドゥシャンペ中央スタジアムのピッチが悪いと心配されていたが、50年前の日本のスタジアムに比べるといいほうだ。この国のサッカーは「これから」である。



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サッカー日誌 / 2011年11月03日


大迫勇也のMVPに「?」


ヤマザキナビスコ・カップ決勝
鹿島アントラーズ 1対0(延長) 浦和レッズ
(10月29日 東京・国立競技場=フジテレビ)

★赤に染まったスタンド
 今回のヤマザキナビスコ・カップ決勝をテレビ中継で見ていて「無理しても国立競技場へ行くべきだった」と悔んだ。スタンドは双方のサポーターが着ているチームカラーのシャツでまっ赤に燃えている。プレーヤーが激しい闘志でぶつかり合っている気迫がブラウン管からも伝わってくる。「これはスタジアムの熱気を楽しむべき試合だ」と思った。
 テレビ中継で見た限りでは「好試合」とはいえなかった。鹿島はボールを支配して優勢だったが攻めきれない。浦和は守り一方で逆襲は時たまである。
 守りが見どころの試合だったのかもしれないが、守りの良さはテレビの画面ではよく分からない。スローの再生はほとんどファウルで守る場面である。合わせて8枚のイエローが出た。双方1人ずつ退場になり後半35分からは10人対10人になった。延長前半14分に鹿島が決勝点をあげて、やっと決着した。

★興梠慎三が殊勲者
 疑問に思ったのは、鹿島の大迫勇也がMVPに選ばれたことである。
 唯一のゴールを決めたのは大迫だが、得点場面だけについていえば、殊勲者は興梠慎三である。左サイドでボールを奪い、田代有三に渡して左隅に走り込んで折り返しを受け、大迫がファーポストのほうへ動くのをよく見てラストパスを出した。大迫はただ蹴り込むだけだった。延長戦から出場した田代を使い、自分のアイデアと走りで突破口を開いた。オリヴェイラ監督の選手交代策を生かした攻めだった。
 大迫は最初から最後まで、何度もチャンスを作り、チャンスにからんだ。ドリブルで攻めこみ、ゴール前でパスを受け、下がってスルーパスも出した。しかしゴールに結びつけることはできなかった。相手がきびしく守っているからではあるが、大迫はそれを切り崩すプレーヤーへの成長を期待されている。そういう意味で「あと1歩」だった。

★チームの軸は小笠原満男
 鹿島は延長前半の終りごろまで100分以上、優勢に試合を進めながら、浦和の守りを攻め崩せなかった。そう考えると「攻め」のプレーヤーにMVPを求めるのが、そもそも無理である。しかし、テレビは大迫に焦点を合わせて中継しようとしていた。また翌日の新聞は、どれも大迫をヒーローとして取り上げていた。そこのところが「?」である。
 チーム全体のバランスの良さ、あるいはチームワークが鹿島の良さだったのであれば、主将で中盤の小笠原満男に焦点を当ててもいい。後半、浦和のエスクデロの突進を、小笠原がディフェンダーとのコンビで食い止めた場面が2度はあった。
 ともあれ「点をとったらMVP」は安易すぎる。「しょせんMVP選びはマスコミ向けの宣伝材料だから……」という考えがあるにしても ―― である。



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サッカー日誌 / 2011年11月01日


女子サッカー振興策


ビバ!サッカー研究会10月例会
(10月28日 東京・東中野テラハウス)

★クラマーさんの忠告
 ビバ!サッカー研究会10月例会のテーマは「なでしこJapan再総括」だった。このところ、ずっと「なでしこ」を取り上げ続けている。
 9月に来日したクラマーさんは、なでしこJapanについて「すばらしい試合を見せて勝利した。心から頭が下がる。優勝してフェアプレー賞も受けた。勝つことも重要だが、勝ち方も重要である」と褒め称えた。
 そして、こう付け加えた。「勝利の喜びはいつか終わるが人生はさらに続く。次のことを考えなければならない」
 なでしこブームに浮かれていないで、日本の女子サッカーの未来にむけて行動し始めなさい。そういう警告である。
 そこでビバ10月例会では「女子サッカーの未来」を考えることにした。

★小学生年代への普及
 女子サッカーはまだまだ普及度が低い。底辺を広げることをまず考えなければならない。
 そのためには、まず女の子にサッカーの楽しさを知ってもらうことが必要である。
 サッカー協会では、小学生の年代では女の子を男の子の少年チームに加えることを勧めている。それも一つの考え方で悪くはない。いまの「なでしこ」の多くが、小学生のころは男の子といっしょにプレーしている。
 でも、ふつうの女の子にいきなり「男の子のなかに入れ」といっても無理なのではないか。小学生のときに男の子といっしょにやっていた「なでしこ」は、たいていお兄ちゃんに連れられてサッカーを始めている。
 小学生の女の子を対象に、週1、2回の「少女サッカー・スクール」を、すべての地域で開くことからはじめるのが普及の早道ではないだろうか。

★ボールに触る機会を
 ビバ10月例会では会員の上野直彦さんに話をしてもらった。上野さんは女子サッカーを取材し続けているライターで、いま「なでしこ」の川澄奈穂美の本を執筆中である。
 川澄選手はお父さんが体育の指導者で、娘をサッカーに導いた。
 お父さんはマニュアル本が大嫌いで、教科書通りに教えることはしないで、もっぱらボールに数多く触らせるようにしたという。
 これも重要なポイントである。少女スクールの狙いは、サッカーを教え込むことではなくて、ボールを扱う楽しさを知る機会を提供することである。
 女子サッカーの振興のためには、ほかにも、いろいろ考えなければならない問題がたくさんある。
 それを一つずつ、地道に考えて実行して行きたいと考えている。


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