サッカー日誌 / 2012年08月12日


さわやかな「なでしこ」の銀


ロンドン五輪テレビ観戦記(11)

女子決勝
日本 1-2 米国
(8月9日 ウェンブリー:NHK総合)

★世界一の価値は下がらない
 「なでしこJapan」は銀メダルに終わった。マスコミが「金メダル」への期待を過大に煽っていたので、落胆した人が多かったかもしれない。
 しかし、ぼくは次の点を強調しておきたい。
 オリンピック2位は、前年のワールドカップ優勝の価値を傷つけるものではない。
 ワールドカップは16チームで争われた。オリンピックの女子は12チームである。また、今回は世界3強の一つであるドイツは出場していなかった。つまりオリンピックよりワールドカップのほうが優勝するためには難しい大会なのである。
 日本のマスコミでは、オリンピックが非常に大きく扱われる。しかし多くのスポーツで「実力世界一」を決めるのは、オリンピックではなく世界選手権である。女子サッカーでも、2011年のワールドカップのタイトルが、2012年のオリンピックの金メダルよりも価値があると、ぼくは考えている。

★金に値するいさぎよい敗者
 決勝戦で敗れたあと「なでしこ」の選手たちのさわやかな態度に、心を打たれた。
 終了の笛が鳴った直後は、多くの選手がグラウンドに崩れ落ちて涙を流した。ぎりぎりに戦いで力尽きたのだから、当然のことだろう。
 しかし何人かの選手たちは、米国の選手に歩み寄り、健闘を讃え、金メダルを祝福した。海外のクラブでいっしょにプレーした仲間もいる。相手の選手は、良きライバルであると同時に、良き友人なのである。国際レベルに育っている選手たちのマナーは、すばらしい。
 表彰式には全員が笑顔で、前の選手の肩に手をかけて列を作って出てきた。
 ロッカールームで「最後は笑顔で終わろう」と話しあって銀メダル授与に出てきたのだという。
 すばらしい! 「良き敗者は金に値する」。

★金と銀との分岐点
 試合内容を客観的に分析することも必要だろう。
 「最初の10分を凌ぐのがカギだ」と、ぼくは考えていた。というのは、前年のワールドカップのとき、米国は前半と後半の最初の10分間にスピードを生かして総攻撃をかけていたからである。
 今回は米国のメンバーは一部変わっている。監督も「やり方を変える」と語っていた。しかし、ぼくは「立ち上がり勝負は変わらないだろう」と見ていた。
 前半8分に、米国は右サイドから突破して先取点をあげた。これが金と銀の分岐点だったと思う。
 前半27分ごろ、米国がハンドリングの反則をしたように見えた。しかし主審は見逃した。PKになれば同点のチャンスだった。試合のあとで「なでしこ」は、この判定について、まったく苦情を述べなかった。
 みごとである、フェアプレーの金メダルだった。

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サッカー日誌 / 2012年08月10日


永井で勝負、決勝進出ならず


ロンドン五輪テレビ観戦記(10)

男子準決勝
日本 1-3 メキシコ
(8月7日 ウェンブリー:TBS系、NHK-BS1)

★ケガを押しての先発起用
 男子準決勝の先発メンバーに永井謙佑が入っているのを知ったとき、ちょっと驚いた。3日前の準々決勝で先制点をあげた直後、左太ももを痛めて退場、ひざが十分には曲がらないほど痛みがあり、関塚隆監督は前日に「出場は無理だろう」と言ったという報道だったからである。
 完全に回復したのなら「バンザイ」である。監督の前日の発言は「敵の目をくらますための煙幕」だったのかもしれない。
 しかし、回復は十分でないがプレーはできるという判断で、無理をさせたのかもしれない。「永井に勝負を賭けた」ことも考えられる。
 試合が始まってみると、テレビの画面で見る限り、永井はちゃんと走っていた。スピードはいつもほどではなく、動きの切れが悪いようにも見えたが、これは相手にもよることであり、連戦の疲労もある。他の選手にも疲労がめだった。

★2つの選択肢
 しかし、現地からの報道によれば、永井のケガは回復不十分だったらしい。
 回復不十分であったのだとすれば、ここでは2つの選択肢がある。
 一つは、無理をしてでも先発起用し、これまでに勝ち続けてきた「永井のスピードを生かすサッカー」を続けることである。ケガで十分に力を発揮できない心配はあるが、ここで負ければ金メダルに挑戦することはできないのだから、永井の太ももが、さらに悪化する恐れがあっても「まず準決勝で勝負」である。関塚監督は、それを選択した。
 もう一つの選択は、永井が回復途上であれば、この試合は休養させ、決勝戦で永井を完全な状態にして「金メダル勝負」をすることである。永井抜きで準決勝を戦うリスクを冒しても、次の決勝戦のことを考えるわけである。これは「決勝勝負」である。

★永井抜きの編成はできないか?
 第2の選択をするのであれば、永井なしで勝つ可能性があるチームを準決勝に出す必要がある。
 前線は大津祐樹を軸に、杉本健勇、宇佐美貴史を生かして、準決勝を戦える編成ができなかったのだろうか、と考えた。
 しかし「永井抜きで勝てるチームを編成するのは無理」と関塚監督は判断したのだろう。
 最初の20分は日本のリズムだった。12分に短いパスをうまくつないで攻めこみ、大津の先制点が生まれた。
 しかし、その後はメキシコのリズムになり31分にコーナーキックから同点にされた。
 勝負を分けたのは後半20分の失点である。
 ゴールキーパーの権田修一が取ったボールを、手で扇原貴宏にパスした。受けた扇原にメキシコの選手2人が寄せ、ボールを奪って攻めこんだ。一瞬の集中力の緩みをついたメキシコが「うわて」だった。

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サッカー日誌 / 2012年08月09日


「なでしこ」守備奮戦の裏側


ロンドン五輪テレビ観戦記(9)

女子準決勝
日本 2-1 フランス
(8月6日 ウェンブリー:日本テレビ系、NHK総合)

★心を打った守りの死闘
 女子の準決勝、日本の守りに心を打たれた。
 終始、フランスの攻撃に押し込まれながら、粘り強く跳ね返し続けてリードを守って決勝進出を果たした。中盤の澤穂希の要所を抑えて身を挺した動き、ゴールキーパー福元美穂の再三の好守が、とくにすばらしかった。
 マスコミは「粘りのなでしこ」「くじけないなでしこ」とほめ言葉を並べた。ぼくも力を振り絞った死闘に感動した。
 しかし、日本の戦いぶりを冷静に振り返ってみることも必要だろう。
 テレビで観戦しながら思ったのは、まず「なでしこ」の疲れである。
 現地でテレビ解説をしていた川上直子さんは「コンディション的には、日本のほうがいい」とコメントしていた。
 しかし、中継画面で見た限りでは、フランスも疲れてはいたが、日本の疲れのほうが大きいように思った。

★オリンピック日程の不合理
 宮間あやからのパスがつながらない。阪口夢穂の守りがファウルになる。これは周りの他のプレーヤーの疲れも影響しているのだろうと思った。疲れは足の筋肉だけでなく、脳の中の判断力にも影響している。
 疲労の第一の原因は中2日の連戦にある。これはオリンピックが不合理なスポーツ大会であることに原因がある。
 オリンピックは2週間余りの期間に終えなければならないから日程に制約がある。
また大会全体の規模が大きくなり過ぎているためにスポーツごとに参加人数を制限している。サッカーの場合は1チーム18人である。だから選手起用も思うようには行えない。
 そういうわけで、いいコンディションで試合ができない。これは選手とチームだけの問題ではない。
 相手チームにとっても同じことである。双方に、いい条件で試合をさせたいものである。

★戦略は適切だったか?
 そういう状況を踏まえたうえでの話だが、「なでしこ」の戦略は適切だっただろうか?
 ほとんど0に近かったチャンスのなかで2回のフリーキックを得点に結び付けたゴールはみごとだった。
 しかし、2対0とリードしたあとの戦い方に疑問がある。
 8~9人のプレーヤーが下がりきっての守り、懸命に跳ね返したが、そのボールは、中盤でほとんど相手に拾われた。
 ときに、そのボールが味方に渡っても、すぐ前線の空いたスペースにボールを出そうとした。しかし、味方は守りに追われていたので、そのスペースに走り出ているプレーヤーはいなかった。ここは、前線で、しっかりボールをキープしてリードを守るべきだったのではないか?
 相手がペナルティキックを外すという幸運もあった。
 フランスの懸命の攻めもすばらしく、記憶すべき好勝負ではあったが、名勝負とは言えなかった。

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サッカー日誌 / 2012年08月07日


関塚戦略の成功でベスト4


ロンドン五輪テレビ観戦記(8)

男子準々決勝
日本 3-0 エジプト
(8月4日 マンチェスター:日本テレビ系、NHK総合)

★予想を上回る活躍
 日本男子のオリンピック・チームがベスト4に進出した。予想を上回る活躍である。
 オリンピックが始まる前に、ぼくの主宰する「ビバ! サッカー研究会」の7月例会で、男女サッカーの予想をした。グループリーグの成績、日本の最終成績、ベスト4の顔ぶれ、優勝チームの予想を書いて提出してもらった。大会後に的中者に賞品を出す。
 ぼく自身の予想は、男子は2勝1敗、グループ2位でベスト8進出、準々決勝で敗退というものだった。しかし、初戦でスペインに勝った時点で、すでに「外れ」だった。
 ぼくの予想が外れた第1の原因は、関塚隆監督の戦略を見誤まったことだろう。
 初戦の対スペインで勝負することは想定していたが、勝つことは「想定外」だった。実際には、スペインに勝ち、グループ1位でベスト8に進出した。

★戦い方も予想外
 準々決勝の相手がエジプトだったのは「幸運」だったと言えるかもしれない。ぼくの予想では、相手はブラジルだった。
 しかし、こういう組み合わせになったのは、初戦のスペインと勝負して勝ったからである。ここは「関塚プラン」を評価したい。
 戦い方も、ぼくの想定外だった。
 大会前の強化試合のときなどの記者会見で、関塚監督は、一体感、躍動感を強調し、「前へ、前へ」と攻めるサッカーをめざす口ぶりだったので、自分の理想とするサッカーを選手に押し付けるのではないか、と思った。
 実際には、しっかりした守りを基礎に、スピードを生かした逆襲速攻でゴールを狙った。
 中盤右サイドの清武弘嗣、トップ下の東慶悟を軸にし、永井謙佑と大津祐樹をトップでうまく使い分けた。
 選手の特徴を生かした、いい戦い方だった。

★「44年前」とは別の成果
 オリンピックの男子サッカーで、日本がベスト4に進出したのは、1968年のメキシコ・オリンピック以来である。それで新聞では「44年ぶり」が見出しになった。
 間違いではないが、ぼくの感覚では適当ではない。
 というのは、44年前と現在では、まったく事情が違うからである。
 1968年のオリンピックは、アマチュアリズムに縛られていた。そのためハンガリーなど社会主義国以外は、プロのトップクラスは出場しなかった。ただし「23歳未満+3人のオーバーエージ」という制限はなかった。
 だから1968年と2012年を単純に比較することはできない。メキシコ大会銅メダルはもちろん歴史に残る成果だった。
 今回のベスト4はプロレベルの選手を含むチームを破っての成果で、別の意味で評価されていい。
 しかし、歴史に残るのは、次の準決勝に勝ったときだろう。

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サッカー日誌 / 2012年08月06日


「なでしこ」の勝因は守備の総合力


ロンドン五輪テレビ観戦記(7)

女子準々決勝
日本 2-0 ブラジル
(8月3日 カーディフ:NHK総合)

★ベスト4進出の要因
 「なでしこJapan」は準々決勝でブラジルに勝ってベスト4に進出した。結果をみれば2対0の完勝だが、内容は押されながらの形勢をしのいでの辛勝だった。
 日本の2得点が、ともにみごとなものだったので、マスコミは、ゴールをあげた大儀見優季と大野忍をクローズアップするだろうと思った。しかし、ベスト4進出のもっとも大きな要因は「守備の総合力」だったと思う。
 特定の個人の守りがよかったということではない。ゴールキーパーも、守備ラインも、中盤も、前線も、それぞれ、すばらしい守備をした。それ総合して守りが成功した。
 立ち上がりの20分間、ブラジルは激しく動き、スピードを生かして、日本を押し込んだ。
 何度もあったピンチをしのいだのは、ゴールキーパーの福元美穂だった。ブラジルの放り込みによる強攻を、きわどいパンチングで何度も防いだ。

★中盤がマルタを抑える
 ブラジルのエースは攻撃的プレーヤーのマルタである。2006年度から5年連続でFIFAの世界最優秀選手に選ばれている。すばやいテクニック、スピードのあるドリブル、鋭いシュート力で、現在でも世界のNo.1だろう。
 そのマルタを日本はほとんど最前線に進出させなった。これは阪口夢穂、澤穂希の中盤プレーヤーの功績である。
 マルタは最前線でボールを受けたときのすばやいテクニックとシュート力が、もっとも威力がある。しかし、この試合では中盤に下がって、守りと攻めの組み立てに追われていた。
 川澄奈穂美など前のほうのプレーヤーも、労を惜しまずに相手を追った。
 テクニック、判断力、集中力、労働量が、チーム全体で一つにまとまった。
 ブラジルはボール支配率では64%、シュート数では21対10と圧倒したが、ゴールをあげることはできなかった。

★コンディショニングがカギ
 試合後にテレビのアナウンサーから「組織的な守りがよかったですね」と水を向けられて、佐々木則夫監督は「組織的というより、闘志の守備ですよ」と答えていた。
 日本のスポーツが、むかしから好きな「精神力」を強調する表現である。
 しかし、闘志を燃やすだけでは戦えない。
 脳の中を働かせ、手足を動かすためには、気力と体力の回復が必要だ。
 準決勝まで中2日。オリンピックの短期決戦では、肉体的にも精神的にも、コンディショニングがカギである。
 日本の先取点は前半27分。中盤左サイドのフリーキックから澤-大儀見とつないだ。追加点は後半28分、大儀見から大野への長いパスによる逆襲速攻だった。
 どちらも2人の一瞬の判断がぴたりと合い、テクニックがすばやく発揮された攻めだった。

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サッカー日誌 / 2012年08月04日


男子第3戦 関塚監督の大胆な用兵


ロンドン五輪テレビ観戦記(6)

男子D組 日本 0-0 ホンジュラス
(8月1日 コベントリー:NHK-BS)

★準々決勝に備え主力温存
 男子の第3戦で、関塚隆監督は先発メンバーを前の試合から5人入れ替えた。
 オリンピックの登録選手数は18人である。ゴールキーパーを除くと予備メンバーは6人しかいない。第1戦で1人、ケガをしているので最大限の入れ替えである。
 第2戦が終わった時点で、すでにベスト8進出が決定していた。だから、第3戦で必勝を期さなければならないわけではない。
 次の準々決勝に備えて主力の体力を温存し、さらに控えメンバーにオリンピックの雰囲気を体験させる意味がある。
 「なでしこJapan」も第3戦で、先発をゴールキーパーを含め最大限の7人入れ替えた。ただし、女子の場合は、ベスト8が決まっていただけでなく、次の対戦相手を考えて、グループ2位で終わりたいという思惑もあった。
 男子の関塚監督の立場は違う。

★メンバーを落として1位狙い
 男子の場合は、グループ1位でベスト8に進出するのが望ましかった。2位だと準々決勝の相手が、優勝候補のブラジルになるからである。第3戦を引き分けても1位になるのだが、敗れると2位になる。一方のホンジュラスは、敗れるとモロッコ対スペインの結果によっては失格する。
 つまり、日本は引き分け以上を狙う必要があり、ホンジュラスは引き分けが絶対に必要だった。
 攻めに出てくるであろう相手に、メンバーを落として、なおかつ1位を狙おうとするのは、かなり大胆な用兵である。
 結果として関塚用兵は成功した。日本はグループ1位で進出し、準々決勝の相手はエジプトになった。
 「なでしこJapan」の場合とくらべると、準々決勝の相手を選ぼうという狙いは同じだが、1位をめざしたのは「2位狙い」だった女子とは違う。
 ただし、最後は双方とも「引き分け狙い」のようにみえた。

★吉田麻也が殊勲者
 とはいえ「負け」のリスクを冒して主力を休ませながらグループ1位を狙ったのは、メダルをめざしての大胆な賭けだった。準々決勝で勝負してベスト4に出なければ「メダル」の可能性はないからである。関塚ジャパンは、最善を尽くした戦いでグループリーグを1位で突破した。
 オーバーエージ枠で守りを補強したのが正解だった。3試合で失点0である。センターバックのリーダー、吉田麻也がグループリーグの殊勲者である。
 攻めは2点に留まった。第1戦、スペインとの試合ではコーナーキックからの1点。第2戦、モロッコとの試合では、逆襲速攻からの永井謙佑の1点である。
 男女のグループリーグを通じて思ったのは、世界の各地域のレベルが上がっていることである。男子D組では中米のホンジュラスとアフリカのモロッコが優勝候補のスペインに善戦し、スペインはグループ最下位になった。

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サッカー日誌 / 2012年08月03日


女子第3戦 引き分け狙いの問題点


ロンドン五輪テレビ観戦記(5)

女子F組 日本 0-0 南アフリカ)
(7月31日 カーディフ:TBSテレビ)

★スポーツの精神に反する?
 女子グループ・リーグの第3戦で「なでしこJapan」が、後半の途中から引き分け狙いの試合をした。グループリーグで2位になったほうが、準々決勝の組み合わせの都合がよくなる。1位にならないために、勝ちにいかなかったのである。
 サッカーでは、よくあることで、オリンピックでも、ワールドカップでも、ときどきある。
 一方で、こういう戦略は「スポーツの精神」に反するという意見がある。
 「なでしこ」の試合の翌日に、バドミントンの女子の試合で、似たようなケースがあり、こちらは国際バドミントン連盟が、関係した中国と韓国の選手を失格にした。
 勝負を争うスポーツなのだから、勝とうとしないのは「スポーツの基礎」を危うくする。この考えは正論だろう。
 オリンピックの開会式でも選手の代表が「全力を尽くして競技することを誓います」と宣誓していた。

★後半に方針変更
 「なでしこJapan」の場合は、同じ時刻に行われているスウェーデン対カナダの試合結果とのからみがあるので簡単ではなかった。
 スウェーデンが、開始早々に2対0とリードしたという情報が入ったので、日本は、積極的な攻めを前半は続けたのだろう。日本とスウェーデンは、ともに1勝1引き分けだが、得失点差でスウェーデンが1位にいる。日本がゴールをあげて勝っても、グループ2位に終わることができる。
 しかし、後半になって、スウェーデン対カナダが2対2になったという情報が入った。日本が勝ってスウェーデンが引き分けだと日本がグループ1位になってしまう。
 そこで、佐々木則夫監督は、後半の途中から「引き分け狙い」に方針を変えたのだろう。
 後半13分に川澄奈穂美を交代出場させたとき「点を取らないように」という趣旨を伝えたという。

★メダルをめざす戦略
 「なでしこJapan」が、わざと引き分けたのは、準々決勝で米国あるいはフランスと当たるのを避けるためである。
 準々決勝で当たることになったブラジルも優勝候補だが、日本にとっては「やりやすい相手」だという判断である。これが、吉とでるか凶と出るかは、やってみないと分からない。
 「スポーツの精神」に則って、小細工をするべきではないというのは正論である。しかし、上位をめざして戦う戦略としては、やむを得ないのではないかとも思う。
 グループ1位だけを準決勝に出すようにすれば、こういう問題は起こらない。競技方式が悪いという考えもある。
 「金メダルを目標にしているのなら、どこかの段階で強敵に勝たなければならない。準々決勝で当たっても、決勝で当たっても同じではないか」という考えもある。しかし、オリンピックでは、色は違っても「メダル」が評価されるので、ベスト4には残りたい。これも人情だろう。

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サッカー日誌 / 2012年08月02日


チーム編成と用兵の成功


ロンドン五輪テレビ観戦記(4)

男子D組第2戦 
日本 1-0 モロッコ
(7月29日 ニューキャッスル:NHK-BS)

★ベスト8進出決まる
 男子の日本は、第2戦でモロッコに勝ち、ベスト8進出を決めた。まずは、第一関門突破である。
 2連勝できた要因は、まず「チーム編成」の成功、つまり選手の選び方が的中したことである。
 男子のオリンピック・チームの選手を選ぶのには、頭の痛い問題がいくつもあった。
 第1に中1日の試合が続く過密日程にもかかわらず、選手数が18人に制限されている。
 サッカーの国際大会では、1チーム23人は欲しい。紅白試合ができる人数で、ゴールキーパーを3人選びたい。
 しかし、オリンピックでは、参加選手団の総数が1万人を超える。そこで巨大化を抑えるために、各競技の選手数を制限している。競技の必要よりも、オリンピック全体の都合を優先している。
 そのために、思うように選手を選べない。

★本番用に新たに編成
 人数が制限されているために、アジア予選でがんばってくれた選手の多くを選ぶことができない。これは、日本的な人情としては辛いところである。
 また、アジア予選では呼ぶことができなかった欧州組を、本番では加えたい。
 また、3人まで認められている24歳以上のオーバーエージ枠を、アジア予選では使わなかったが、本番で勝つためには使いたい。
 そうすると、オリンピックに参加するチームは、2年間の予選を戦ったチームとは、かなり違う顔ぶれになる。
 テレビの中継でNHKのアナウンサーが、関塚隆監督へのインタビューで「2年がかりで作りあげたチーム」という表現を使っていた。
 しかし、オリンピック・チームは「2年がかり」で作りあげたのではない。新たに編成されたチームである。

★オーバーエージの補強が当たる
 日本男子は、このような困難のなかで代表選手を選んだ。ほかの国にも同じような困難があったはずである。その困難切り抜ける段階で、すでに勝負が始まっている。
 日本がよかった点が、いくつもある。
 一つは、アジア予選の段階での選手起用にこだわらずに、本番参加チームを編成したことである。2年がかりで「一つのチーム」を作り上げるのではなく、参加する時点で可能なベストの顔ぶれを選んだ。
 オーバーエージ枠の人選が適切だった。吉田麻也、徳永悠平と守りを補強したのが正解である。とくに吉田の初戦と第2戦での守りは2連勝の原動力だった。
 攻撃では、トップの大津祐樹と永井謙佑を活用して、守りからの逆襲速攻を武器にした。モロッコ戦の後半39分、清武弘嗣-永井とつないだ決勝点が、それを象徴している。
 ベスト8が決まり、準々決勝が勝負どころとなった。

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サッカー日誌 / 2012年08月01日


女子第2戦 佐々木監督の交代策


ロンドン五輪テレビ観戦記(3)

女子F組
日本 0-0 スウェーデン
(7月28日 コベントリー:NHK総合)

★今後に備えた澤交代
 女子の第2戦、後半14分に澤穂希が交代で退いた。スウェーデンとの対戦で0対0。日本の攻めの形がよくなってきた時点である。
 なぜ中心選手の澤を引っ込めたのか?
 澤のプレーは良かった。前線へアイデアのある浮き球のパスを出す攻めもあり、相手のパスを読んで先回りしてつぶす守りもあった。初戦と同じように攻守の「かなめ」だった。
 それでも「この交代はありだな」と思った。
 理由の一つは、疲れが見えていたことである。いいプレーをしていたが、技と判断が、やや遅くなっていた。中盤でボールを持ったが、パスを出すところがなく、もたついて相手にボール奪われ、ピンチを招く場面もあった。
 他の選手たちにも疲れが見えていたが、澤は最年長の33歳である。疲れがたまらないうちに、早めに休ませたのだろうと思った。

★岩渕投入で勝ちに行く
 澤交代が妥当だと思ったもう一つの理由は、好調だと伝えられていた田中明日菜にチャンスを与えたことである。
 今後の試合を考えると、次の試合でも澤を休ませて、準々決勝以降に備える手がある。そこで田中を使うのであれば、あらかじめオリンピックのグラウンドと雰囲気に慣れさせておくのも、一つの手である。
 後半36分に次の選手交代があった。
 トップの大野忍に代えて、岩渕真奈が出た。
 岩渕はユースのころから注目されていた19歳である。これまでも、しばしば途中出場でゴールをあげている。
 「佐々木監督は勝ちに行ったな」と思った。
 後半の追加時間に入ってから、安藤梢を入れてトップの大儀見優季と代えた。
 解説の川上直子さんが、こうコメントした。「フレッシュな選手で前線からディフェンスですね」。

★守りのための前線強化
 前のほうへの新戦力投入が攻めのためとは限らない。「前線での守りの強化という狙いもある」と教えられた。
 この試合、中盤は日本が支配し、いい形の攻めも多かったが、シュートが弱かった。一方、スウェーデンは、守りを固めながらも、走力を生かした1~2人の逆襲し、シュート数は互角だった。
 日本が失点をしないですんだのはセンターバック、とくに岩清水梓の奮闘のおかげである。
 守りのメンバーにも疲れは見えていたが、守りは組織が重要なので、コンビネーションを変えたくない。だから前のほうの選手交代で守りを強化する。「なるほど」と思った。
 互いにチャンスがあり、ピンチがあるスリリングな攻防のすえ0対0の引き分け。日本は次の南アフリカとの試合に勝つか引き分ければ、ベスト8進出が決まる。しかし、グループ1位か2位かは自力では決まらないことになった。

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