サッカー日誌 / 2011年07月16日


日本スポーツ史の「なでしこ」評価


女子ワールドカップ観戦日誌(22)

7月15日(金) 
試合なし

★「本当の世界一」争い
 「なでしこジャパン」の決勝進出は、サッカーだけでなく日本スポーツの歴史全体からみても最高の出来事である。
 サッカーのワールドカップは、ほかのスポーツとは違って、プロもアマチュアも参加する「世界選手権」である。ほかのスポーツでは、世界選手権以外の国際大会を「ワールドカップ」と称しているが、サッカーのワールドカップは本当の「世界一のタイトル」を争う大会である。タイトルの重みが違う。
 チームスポーツで、日本が世界一になった例としてはバレーボールがあるだけである。女子ではオリンピックで2度、世界選手権で3度の金メダル獲得がある。男子はオリンピックで1度、金メダルを獲得している。しかし、いずれも1970年代まででアマチュアだけの大会だった。また、バレーボールの世界的な普及度が低い時代だった。

★歴史は古く、普及度は高い
 世界的にはメジャーなスポーツとはいえないバレーボールでも、30年以上にわたって世界一争いから遠ざかっている。そのなかで「なでしこ」がワールドカップの決勝に進出したのは、日本の女子スポーツにとって、また日本のチームスポーツにとって、歴史的なできごとである。
 ぼく自身は、長い間「サッカーは男のスポーツ」という考えにとらわれていて、女子サッカーについて不勉強だったが、今回の女子ワールドカップを取材して、女子サッカーの歴史が古く、また欧州と米国での普及度が高いことを改めて知った。各国のメディアガイドを読み、準決勝と決勝の間の休日にフランクフルト市内の書店で女子サッカーの本を買ってパラパラッとめくってみた程度の知識だが、日本では女子スポーツについて、いや、スポーツの歴史について、ほとんど知られていないように思う。

★選手の自主性を尊重
 1960年代に新聞社のスポーツ記者として、女子バレーボールを取材したことがある。
 1964年東京オリンピックの大松博文監督は日紡貝塚のチームを主力に「おれについて来い」をモットーに厳しい練習でチームを金メダルに導いた。
 その次の山田重雄監督は綿密な練習スケジュールで日立武蔵を主力にチームを作り上げ、1968年メキシコ・オリンピックで銀メダルを獲得した。
 今回「なでしこジャパン」の佐々木則夫監督は、まったくタイプが違う。監督がチームを作り上げるのではなく、いろいろなクラブ出身の選手たちが、自分たちのイニシアティブでチームをまとめ、監督はそれを助けて、試合の用兵で手腕を発揮している。「おれについて来い」は遠い昔である。
 それが成功した点でも「なでしこ」の決勝進出は画期的だった。


「なでしこジャパン」を応援するフランクフルト市内の屋台の日の丸。



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サッカー日誌 / 2011年07月16日


米国の武器はスピードと多様さ


女子ワールドカップ観戦日誌(21)

7月14日(木) 
試合なし

★「高さ」というより「パワー」
 準決勝の日本の試合が13日の午後8時45分から始まる前に、午後6時からボルシアメンヘングラッドバッハで行われた試合で米国がフランスを3対1で破った。この試合をフランクフルトのメディアセンターのテレビで見た。そのあと日本がスウェーデンを破り、決勝戦のカードは、日本対米国になった。
 米国先発メンバーのゴールキーパーを除く平均身長は1m69cm。大型だが必ずしも「高さ」にものをいわせるチームではない。特徴はプレーヤーが疾走するスピードとキックの強さにある。武器は「パワー」である。
 もちろん「いざ」となると「高さ」もある。前線のワムバックは身長1m81cm。準々決勝のブラジルとの試合では、延長戦終了寸前に同点ゴールをヘディングで決め、PK戦に持ち込んだ。

★いろいろなタイプ、いろいろな攻め
 米国の攻め方はいろいろだ。
 準決勝のフランスとの試合。前半9分の1点目は「スピード」を生かした攻めで、オライリーの攻めこみからチェニ―が決めた。
 後半、1対1とされたあと、30分の勝ち越し点は、コーナーキックからワムバックのヘディングだった。これは「高さ」を生かした得点である。
 後半37分の3点目は、フランスの浅い守備ラインの間を通すスルーパスに合わせてモーガンが走り抜け、飛び出したゴールキーパーの頭越しに浮かせて決めた。「技あり」のゴールだった。
 トップは長身、31歳のワムバックと1m63cm、小柄な24歳のロドリゲスのコンビである。いろいろなタイプのプレーヤーがいて、いろいろな攻めができるのが面白い。

★試合開始直後の速攻
 試合が始まって15分以内の先制速攻にも注目したい。グループリーグ第2戦、コロンビアとの試合の先取点は12分だった。準々決勝のブラジル戦では開始2分に速攻を決めた。準決勝、フランス戦の先制点は9分だった。相手を研究して、あらかじめ攻め手を考え、相手がまだ試合になじまないうちにぶつけてみる。そういう攻めをしている。
 守りは、体力にものをいわせる激しい当たりが目立った。グループリーグ第3戦でスウェーデンに1対2で敗れたが、この2失点はPKとFKからだった。準々決勝の2失点ではブラジルの個人技と駆け引きの巧さを防ぎきれなかった。準決勝の1失点は、フランスのサイドからのクロスが直接ゴールにはいったものだった。
 守りが弱いとはいえないが、守りより攻めのチームである。
 優勝をめざして、よく鍛えられ、よく準備されている。


米国チームのハンドブックの表紙。



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