サッカー日誌 / 2016年01月17日


東福岡のトリックFK 


高校選手権決勝
東福岡 5対0 国学院久我山
(1月11日・埼玉スタジアム=日本テレビ系)

★初めてみたパターン
 高校サッカー選手権の決勝戦で、東福岡が後半2分に、フリーキックから2点目を挙げた。
 このフリーキックは、初めてみたトリックプレーだった。
 東福岡が、ゴール正面でフリーキックを得た。
 相手の守備の壁の前に、東福岡のプレーヤーが3人並ぶ。
 ゴールキーパーの視野をふさいで、ボールが見えないようにする手である。
 東福岡は、さらに、キッカーの前に3人がゴールを背にして肩を組んで並んだ。
 二重の「視野ふさぎ」だが、このままではキックの邪魔になる。
 しかし、フリーキックを蹴る直前に、この3人が、肩を組んだまま、ゴールを背にして後ろ向きに後退し、4歩目で頭を下げてしゃがみこんだ。
 その頭上を通したフリーキックがゴールに突き刺さった。

★苦い経験を取り込む
 セットプレーからの攻めは、どのチームでも工夫しているが、このパターンはユニークだと思った。
 ところが…。
 これは、東福岡のオリジナルではないらしい。
 東福岡は、前年8月の高校総体準決勝で、立正大淞南(島根)にこのトリックプレーを決められた。その苦い経験を取り込んだのだという。
 やられて「口惜しい」と思っただけでなく、その口惜しさから学んで、自分たちの武器にした。
 そういう前向きの取り組みが実ったという話に感心した。
 また、東福岡は、決勝戦の前日に、このトリックプレーを繰り返し練習したという。
 翌日の決勝戦で、ゴール正面からのフリーキックのチャンスがあるかどうかは分らない。しかし、その可能性を想定して練習したという話にも感心した。

★チームとしての奇策
 友人に教えられて知ったのだが、このプレーは、インターネットを通じて、世界中に伝えられたらしい。
 ヨーロッパやアフリカの国で見た人の感想がネット上に掲載されている。
 「あんな、手の込んだことをするのは、日本人くらいのものだろう」という書きこみもあった。
 ただし、フリーキックからの「トリック」は、外国でも、いろいろ工夫されている。
 1974年、西ドイツ・ワールドカップの2次リーグ、ブラジル対:東ドイツの試合で、東ドイツの守りの壁の間にブラジルの選手1人が割り込み、キックの直前に前に倒れた。そこで生まれた80センチほどの隙間を通して、リベリーノがシュートを決めた。リベリーノ個人の正確なキックを生かした有名なフリーキックである。
 これに対して、東福岡のは「チームとしての奇策」として永く記憶されることになるかもしれない。


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サッカー日誌 / 2016年01月05日


みごとなCKからの決勝点



 明けまして、おめでとうございます。
 83歳の年齢(申年)相応にですが、元気です。
 今年もよろしく。
 牛木素吉郎


天皇杯決勝 ガンバ大阪 2対1 浦和レッズ
(1月1日・調布味の素スタジアム=NHK総合テレビ)

★まれに見る好試合
 2015年度天皇杯決勝は、まれに見る好試合だった。
 というのが、ぼくの感想だが、実は、この試合を現場では見ていない。テレビで見ての感想である。
 試合は、東京調布市の味の素スタジアムで行われた。
 味の素スタジアムは、ぼく(牛木)の家のベランダから見える。歩いて20分ほどの距離である。
 にもかかわらず、見に行くことができなかった。
 取材登録の期限を忘れたためである。年齢相応以上の頭の衰えである。
 それでも、入場券を買えば見ることができるだろうと思っていたのだが、入場券は売り切れだった。
 というわけで、スタジアムの近くにいながらテレビ観戦となった。
 現場で見られなかった「負け惜しみ」だが、テレビで見たために、かえってよく分かったところもある。

★パターンによる攻め
 たとえば、後半8分の、ガンバ大阪の勝ち越し点である。
 右コーナーキックを、遠藤保仁が蹴り、パトリックがみごとなシュートで決めた。
 あらかじめ決められていたパターンによる攻めが、あざやかに的中したのだと思う。
 それが、はっきり分かったのは、テレビのスロービデオで繰り返し映し出されたからである。
 パトリックは、ゴール前できびしくマークされていた。
 しかし、遠藤がコーナーキックを蹴る瞬間に、するするっと動いて「空いたスペース」に出てフリーになった。
 「空いたスペース」は、偶然に生まれたものではない。
 守備ラインから進出していた今野泰幸が、守りをブロックしてスペースを作ったのである。
 そこへ、遠藤の蹴ったボールが、ぴたりと落ちて、パトリックのボレーシュートが決まった。

★密着マークの裏をつく
 キックの正確な遠藤、ポジション取りのいい今野、シュート力のあるパトリック。それぞれの特徴を、うまく組み合わせたセットプレーだった。
 セットプレーからのパターンによる攻めは、どのチームでも試みているが、これほど、みごとに決まるのは珍しい。
 あらかじめ決めたパターンを練習していても、実戦では、相手の守り方によって、動きを工夫しなければならない。
 浦和が、パトリックと今野をマンツーマンで密着マークしてきたのを利用して、その裏をついたガンバの選手たちのプレーがみごとだった。
 このあと、浦和の猛反撃でスリリングな試合になった。
 浦和のシュート数は合計20本。ガンバが守りきって、2年連続の日本一になった。
 2016年が、コーナーキックからの、みごとなパターンによる攻めで始まったことを記憶しておこうと思う。


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サッカー日誌 / 2016年01月02日


新国立競技場、今後の問題(7)


日本のスポーツの未来像

設計・施工案を最終決定
(12月22日・関係閣僚会議)
「未来へ手渡す会シンポ」
(12月23日・東京信濃町)

★「作らない」という選択肢
 「神宮外苑と国立競技場を未来へ手渡す会」のシンポジウムの最後にフロアから次のような質問が出た。
 「新国立競技場を作らないことはできないのか?」
 東京オリンピックのために神宮外苑にスタジアムを作らなければならない。
 作れば、神宮の景観と環境が損なわれる。
 神宮外苑にスタジアムを作らないで、東京オリンピックを開くことはできないのか?
 そういう趣旨の質問だったのだろうと思う。
 この質問に対する回答を、ぼくはすでに、このブログに書いている。
 東京オリンピックの陸上競技は、東京都調布市の「味の素スタジアム」で行う。
 開閉会式は、後楽園の屋内ドームで行う。
 そういう案である。

★「牛木案」採用の可能性は?
 国立競技場の跡地は空き地のままにしておいて、将来、都市公園にするか、スポーツセンターにするかの検討は、東京オリンピックの後まで、時間をかけて議論する。
 調布の味の素スタジアムに、仮設スタンドを増設する必要があるが、2019年ラグビー・ワールドカップの開幕試合でこのスタジアムを使うことになっている。スタンド増設は、一石二鳥である。
 オリンピックのための工費は、大きく節約できる。
 技術的には、今からでも、じゅうぶん、間に合う。
 工費についても工期についても、まったく問題がない。
 しかし、この合理的な「牛木案」が採用される見込みは、ない。
 なぜなら、東京オリンピックを神宮外苑を中心に行うことが、大前提として、日本のスポーツ界や文部科学省、東京都の関係者の頭にこびりついているからである。

★陸上競技センターに
 「牛木案」は日本のスポーツの未来像と結びついている。 調布市の「味の素スタジアム」を、東京オリンピックのときに陸上競技場として使うだけでなく、オリンピック後に 「陸上競技センター」として残そうというアイデアだからである。
  オリンピック後も、陸上競技のいろいろな国際、国内競技会を、調布市の味の素スタジアムで行なう。
 陸上競技の常設トレーニングセンターとして、指導者を配置し、合宿所を設ける。
 ほかのスポーツでも、同じような未来図を考える。
 そういう構想である。
 シンポジウムで「新国立競技場を作らないことはできないのか?」という質問が出たので、ぼくは、すぐ手を挙げて、以上のような「牛木案」を説明しようとした。
 ところが、会場借用の時間が切れて、シンポジウムが打ち切られてしまった。
(この項終わり)

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サッカー日誌 / 2016年01月01日


新国立競技場、今後の問題(6)


変化に応じられる作りを

設計・施工案を最終決定
(12月22日・関係閣僚会議)
「未来へ手渡す会シンポ」
(12月23日・東京信濃町)

★100年以上、使える?
 新国立競技場の設計・施工案に採用された大成建設の会長が「100年以上、使えるものを作りたい」と述べたという。
 読売新聞のインタビューに答えた記事で読んだ。
 いい材料を使い、手間をかければ、耐久年数の長い鉄筋コンクリートの建造物ができる。
 「経費を惜しまずに頑丈な建造物にする」とい意味だろう。
 しかし、新国立競技場は、建造物として長持ちすることが重要ではない。
 スポーツ施設として役立つことが重要である。
 いま、多くの建造物が建てかえを迫られているのは、鉄筋コンクリートの耐用年限が過ぎているためばかりではない。
 いろいろな設備が、時代の変化に追いつかなくなっている問題がある。たとえば、インターネットの時代に適応できないというようなことである。

★情報技術への対応
 サッカーの試合で、ゴール裏で新聞社のカメラマンが写真を撮っている。
 ワールドカップのような国際大会では、カメラマンがシャッターを押したと同時に、本社に電送される。
 ゴール裏のカメラマン席に、インターネットの端末が配線されているのである。
 かつては、撮影したフィルムを現像し、焼付けし、電送するための暗室設備が必要だった。水道や電気の設備が欠かせなかった。
 現在は、そういう設備は必要ない。
 必要なのは、十分な容量のインターネットの配線である。
 マスコミの取材では「ミックスゾーン」の問題がある。競技のあと、取材者が選手に接触できる場所である。
 1980年代にはじまった取材方法だが、その後に作られたスタジアムや体育館でも、そういう取材に対応できる構造は工夫されていない。

★社会の変化への対応
 女性の観客が急増している。女性用のトイレを多くして欲しい。
 スポーツイベントの商業化が進んだ。スポンサーのためのVIP席を用意して欲しい。
 こういう要求が、IOCやFIFAから出されている。
 新国立競技場は、こういう社会的変化にも対応できる作りを考えるべきだと思う。
 100年先まで持ちこたえる耐久性よりも、10年先の変化に応じられる柔軟性が求められる。 
 ハードよりもソフトである。
 とはいえ将来の変化を読むのは難しい。
 どんな新しい技術が生まれ、世の中がどう変わるかは、予測困難だから、頑丈であるよりも作り変えやすいほうがいい。 
 石を積み上げた「万里の長城」よりも、木造で千年の長寿を保っている「法隆寺」のほうが望ましいのではないか?



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