ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 





東京大学理学部旧1号館。文京区本郷7-3
1988(昭和63)年11月6日

安田講堂の裏側に「新1号館西棟」を新築するために、旧1号館の西側が取り壊されたのは1994年で、12階建ての新1号館西棟が完成したのが1998年2月である。次いで西棟の東に10階建ての「新1号館中央棟」が2005年2月に竣工する。この時点では旧1号館は東側の、元の1/3ほどになってしまっていた。そのまま保存されるのかと思っていたが、2013年12月に取り壊されてしまい、2017年11月には地上6階建ての「東棟」が完成した。
旧1号館は『日本近代建築総覧』では「東京大学理学部1号館、建築年=1916(大正15)年、構造=RC3~4階、設計=岸田日出刀/小野薫」。関東大震災で倒壊した理科大学本館の跡地に建設された。その本館は化学東館のような外観だったらしいから山口孝吉の設計だったと思える。
旧1号館の平面は中庭のある長方形で、4つの角は内側に矩形に切り取って外観に変化をもたらしている。外観は岸田がドイツ表現主義を指向したデザインと言われる。どういうことかというと、『収蔵庫・壱號館>東京大学理学部旧1号館』に述べられている。なお、4階部分は1965年の増築。
小野薫(1903-1957年)はウィキペディアによると、「架構力学理論の研究者であり、難解な構造力学の分野を平易に紹介。戦前は満州で建築教育に携わり、戦後は東京大学および日本大学において後進の育成に当たった」「1926年(大正15年):東京帝国大学工学部建築学科卒業、同大学営繕課」。旧1号館では構造設計を担当したのだろう。
それにしても表現主義の建築物がなくなってしまったのは残念だ。

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