ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 




曙ハウス。文京区根津2-21。2000(平成12)年5月3日

不忍通りの1本東の裏通りにあった古い木造二階建て下見板張りのアパート。2006年2月に取り壊されるまでは、根津の名物建築だった。
『不思議の町 根津』(森まゆみ著、ちくま文庫、1997年)に、根津の曙ハウスは動坂町にあった金の星ハウスと同じく斎藤佐次郎が建てたと聞いて、金の星社と斎藤のことを調べて載せている。金の星社は現在も台東区小島にビルを構えて児童書を中心に本を発行している会社である。当書によると、関東大震災後の大正14年に動坂町に近代的アパート「金の星ハウス」を建築、金の星社をそこに移転する。昭和に入ると大正期の童話・童謡ブームは去り、児童雑誌「金の星」も昭和4年、11巻第7号で終刊になる。事業を縮小して単行本などでしのぐが、昭和5年に根津片町の曙ハウスに移転し、苦難の時代をそこで過ごした。昭和7年に下谷区二長町に移転した、という。
この経過を読むと、斎藤は昭和5年に曙ハウスを建てて移転した、というより、金の星ハウスを売り払って、すでに建っていた曙ハウスに移った、とも考えられないだろうか?
また、入り口上の看板は1985年ころには「ハ」の字しか残されていなくて、判読に苦労した、と書いてある。そして『谷中・根津・千駄木』20号〔1989年7月〕に「「ハ」の字だけだったのに、なぜか最近修復された」という記事を載せている。



左:1992(平成4)年4月29日、右:2000(平成12)年5月3日

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