大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・52『オブリビオン』

2016-10-04 05:55:05 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『オブリビオン』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。



 映像良し、アイディア…う~ん、悪くはない。

 原案は、コシンスキー監督(TRON/Regacy)のグラフィックショートノベル(恐らく制作プロモ用に作られた?) デザインは極めてシンプルで徹底的に機能的、リアルな造形です。
 ただ、食い足りない。殊に普段からアニメの描く未来絵図に浸っている我々日本人を唸らせるには3つも4つも仕掛け不足。
 初めに説明される2077年の世界感が180度覆されるのだが、これじゃ足りない。日本のSFの優れているのは、180度から更に進み 359度…あと1度で元に戻る、そこで地平線がひっくり返る。世界は円ではなく、あるいは螺旋であったり 球体であったり、後1度の先は虚空に落ち込んだりする。日常、こんなひねたストーリーに触れていると180度の世界感は途中経過にしか過ぎず『これで終わりなん?』と感じてしまう。
 ならば、せめてキャラクターのドラマを見せて欲しいが…その部分が不足している。監督の感性なのか(トロンでも同じように感じた)映画化プレゼンを受ける連中の意識が古いのか(あり得る、今50台後半以上、漫画と言えばアメコミが限界の世代)のいずれか。
 40年前に『starwars』で我々の度肝を抜いた力を今のハリウッドに期待しても無理と言うものでしょう。これなら、ディックの長編やハインラインを最新のデザインで丁寧に作る方がよほどワンダーな映画になる。前半、荒廃した地球上で孤独な作業に明け暮れる一組の男女が描かれるが、この部分が長すぎて、この後の世界の真相が一枚ずつ剥がれて行く部分が駆け足過ぎる。しかも、伏線をすっ飛ばして設定があやふやになっており、後からの一言二言で納得しろと言う作り方はいかがな物かいな?
 SFの内容をバラすほど無粋な事もあるまい、この先はご覧になった方の判断にお任せいたします。

 本年は、これに続いて「壊滅後の地球」テーマの作品が知る限り3本あります。果たして納得いく映画がありますやら……この作品に限らないのですが、最近のハリウッド作を見ていて 思うのが……アメリカ人が『特攻』を認めはじめてるなぁって事です。前大戦中、日本軍の特攻は米軍にとって恐怖の作戦だったのですが、戦意萎縮を恐れた米軍はそれを否定、戦場PTSDと同じく無かった事として扱われてきました。今や、どちらも情報としては公開されていますが、ドラマの中では無視されて来ました。核兵器の影響が過小評価されるのと同じ理屈です。それが、9・11以降 違う評価に成って来ていると感じられるのは私だけなんでしょうか。ただ、彼らには『特攻』の精神がまだ判らないか、直視したくないのかのどちらかで……なら、如何なる絶体絶命の窮地からでも笑って生還するハリウッドの脳天気を大切にしたほうがええのんちゃいましょか?
 私には本作ラストでジュリアがジャックを見て そして浮かべる微笑みの方が、よっぽど不可解です。こんな書き方だと、見に行きなはれと勧めるようなもんですかねぇ。アハハハハ〓


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