REオフステージ (惣堀高校演劇部)
146・どれが伊藤香里菜や? 啓介
ええ……どれが伊藤香里菜や?
放課後の屋上に来てみると、十人ちょっとの先客がおって、その全てが女子!
ベンチに腰掛けてスマホをいじってるやつ、本を読んでるやつ……なにやら楽し気に喋ってるやつ……ボーっと金網の外の景色を眺めてるやつ……昼に食べ損ねたんか弁当を食べてるやつ……友だち同士で喋ってるやつ……いろいろ。
たまたまなんか、そういう傾向なんか、完全に女子の憩いの場。
ああ、思い出した。
まだ演劇部に入部したての頃、三年の先輩らと発声練習をしにきたことがある。あの時は吹部も練習しとって男子が二人ほどおったけど、いまは、その吹部もおらへん。気象天文部というのもあって、あそこも活動場所は屋上のはずやけど、マイナーなクラブやから潰れてるんかもしれへん。
とにかく、今の屋上は全員女子。
そして、そのうちの五人がツインテール。
一人は友だちと喋っとおるさかい、除外して、残りの四人のうちの一人。
セーヤンが写真見せてくれてたから見当はつくと思たんやけど、ピンボケやったし、これは分からへん。
おーい、伊藤香里菜!……叫ぶわけにもいかへん。
ジロジロ見てるわけにもいかへんので、金網の外に目を向けると本館前の時計塔が約束の時間を5分超えてるのを示してる。
あ……ひょっとして担がれた?
いまごろ、友だちらとスマホをズームにして「アホが、その気になって待っとおる(*`艸´)」と笑っとおるのかもしれへん。なんせ、この本館の屋上は北館からも南館からもお見通しや。
あ……なんか、キョドってるねんやろなあ、チラチラこっちを見てる奴もおる。
時計塔を見ると、もう十分以上も経ってしもてる。
これはいったん戻るか。一階降りた階段のとこで待っててもいっしょやろし。
そう思って、回れ右すると足早に階段室の方に向かった。
ドシン! キャ! ウワ!
開け放たれた扉から出ようとしたら、思い切りぶつかってしもた!
後ろ手ついて倒れてるのはロン毛の女生徒。
「ご、ごめん!」
「こ、こっちこそ……あ、ああ、小山内先輩!」
「え、ええ?」
「遅れてすみません、伊藤香里菜です(#>д<#) !」
ロン毛がワタワタと顔を真っ赤にする。
は……?
すぐには分かれへんかった。
☆彡 主な登場人物とあれこれ
- 小山内啓介 演劇部部長
- 沢村千歳 車いすの一年生
- 沢村留美 千歳の姉
- ミリー 交換留学生 渡辺家に下宿
- 松井須磨 停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
- 瀬戸内美春 生徒会副会長
- ミッキー・ドナルド サンフランシスコの高校生
- シンディ― サンフランシスコの高校生
- 生徒たち セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口 織田信中 伊藤香里菜
- 先生たち 姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉美乃梨(須磨の元同級生) 大久保(生指部長)
- 惣堀商店街 ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘