渡り廊下の四階部分には屋根が無い。
建築費節減のために一階は素通し、四階は手摺だけの青天井。
午前中に雨が上がって、青空が見えてきたんで、教室移動に四階の渡り廊下を三人で歩いてた。
建築費節減のために一階は素通し、四階は手摺だけの青天井。
午前中に雨が上がって、青空が見えてきたんで、教室移動に四階の渡り廊下を三人で歩いてた。
「やっぱり晴れてんのがいいね!」
「やっぱ、お日様浴びてセロトニン増やさなきゃね!」
「ほんまやね!」
スミレヒメノホッチの三人は、スキップでもしそうな勢い。
そこに、木枯らしの予告編のような突風が吹きあがって来た。
キャーーー!
三人仲良く悲鳴を上げて、ガードしたのはスカート。
勉強道具を抱えていたけれど、女子の一大事。派手に捲れ上がることだけは防いだ。
そやけど、弛んだ両腕の間から、授業で使うコクヨのファイルが吹き飛ばされてしまった!
「危なかったーー」
さすがは弓道部。すみれ一人だけは吹き飛ばされずに済んだ。
「どないしょ、次の授業でいるで!」
次の現代社会はプリント授業で、ファイルがないと話になれへん。万一無くなってしもたら、来るべき期末テストの勉強もでけへん!
「あ、拾ってくれたみたいよ!」
「あー、それ、あたしの!」
「やっぱ、お日様浴びてセロトニン増やさなきゃね!」
「ほんまやね!」
スミレヒメノホッチの三人は、スキップでもしそうな勢い。
そこに、木枯らしの予告編のような突風が吹きあがって来た。
キャーーー!
三人仲良く悲鳴を上げて、ガードしたのはスカート。
勉強道具を抱えていたけれど、女子の一大事。派手に捲れ上がることだけは防いだ。
そやけど、弛んだ両腕の間から、授業で使うコクヨのファイルが吹き飛ばされてしまった!
「危なかったーー」
さすがは弓道部。すみれ一人だけは吹き飛ばされずに済んだ。
「どないしょ、次の授業でいるで!」
次の現代社会はプリント授業で、ファイルがないと話になれへん。万一無くなってしもたら、来るべき期末テストの勉強もでけへん!
「あ、拾ってくれたみたいよ!」
「あー、それ、あたしの!」
叫んだ声に振り仰いだのはマッタイラ。あたしらに気が付いた感じやけど、なんか(しもた!)いう顔してるのが、四階からでも分かった。
「ここに置いとくから、取りに来い!」
それだけ言うと、ファイルをベンチの上にオキッパにして行ってしまいよった。
「なんのイケズや!」
そない吠えながらも、三人で地上の中庭にまで下りる。
あ、あれや!
ベンチの上にファイルを見つけて……あれぇ!?
あたしのんはあったけど、姫乃のファイルが見当たらへん。
「ここに置いとくから、取りに来い!」
それだけ言うと、ファイルをベンチの上にオキッパにして行ってしまいよった。
「なんのイケズや!」
そない吠えながらも、三人で地上の中庭にまで下りる。
あ、あれや!
ベンチの上にファイルを見つけて……あれぇ!?
あたしのんはあったけど、姫乃のファイルが見当たらへん。
「おかしいなあ……」
すみれが率先して探してくれた。
ベンチの下から植え込みの中まで探したけど見つからへん。
ベンチの下から植え込みの中まで探したけど見つからへん。
「マッタイラは、二人分置いてたわよね?」
「そう見えたんやけど、やっぱりイケズかなあ……」
「どうしよう……」
「俺は、二冊とも置いた!」
マッタイラに確認すると、マッタイラには珍しく、胸を張って言い張った。
「そやかて」
「もう授業始まるわ。姫乃はあたしのん見せたげるから」
現社の移動教室では、すみれと姫乃は隣り合わせなんで、机を引っ付けて一時間をしのいだ。
六列ある席で、二人だけが席を引っ付けてるので、姫乃は居心地悪そうにしてた。
横目でマッタイラをジト目で見てみる。
パチコーン!
木村に、頭をシバカレて、立場なさげなマッタイラ。
イタズラやったら、こっち見てニヤニヤしてるか、不自然に無関心を装うか。
あの感じでは、マッタイラはほんまに知らんような感じや。
「阿田波さん」
落ち込んでる姫乃を真ん中にして教室に戻る途中、後ろから声を掛けられた。
「そう見えたんやけど、やっぱりイケズかなあ……」
「どうしよう……」
「俺は、二冊とも置いた!」
マッタイラに確認すると、マッタイラには珍しく、胸を張って言い張った。
「そやかて」
「もう授業始まるわ。姫乃はあたしのん見せたげるから」
現社の移動教室では、すみれと姫乃は隣り合わせなんで、机を引っ付けて一時間をしのいだ。
六列ある席で、二人だけが席を引っ付けてるので、姫乃は居心地悪そうにしてた。
横目でマッタイラをジト目で見てみる。
パチコーン!
木村に、頭をシバカレて、立場なさげなマッタイラ。
イタズラやったら、こっち見てニヤニヤしてるか、不自然に無関心を装うか。
あの感じでは、マッタイラはほんまに知らんような感じや。
「阿田波さん」
落ち込んでる姫乃を真ん中にして教室に戻る途中、後ろから声を掛けられた。
「これ、阿田波さんのでしょ?」
振り返ると、ミス高師浜と誉も高き、二年生の立花優花先輩が、ファイルを差し出しながら立っていたのだった。