宇宙戦艦三笠・15
修一が三回目のアクビをしたら、いっしょにオナラが出てしまった。
最初トシがクスっと笑い、ややあって美奈穂、樟葉へと伝染するころには爆笑になってしまった。ただ船霊のみかさんはニコっとしただけである。
ヘラクレアを出てから一週間がたっていた。その間、三笠は、ただ星たちがきらめく宇宙を走っているだけだ。
ヘラクレアを出てから一週間がたっていた。その間、三笠は、ただ星たちがきらめく宇宙を走っているだけだ。
要するに退屈なのである。
三笠は21世紀の概念では、そんなに大きな船ではないが、たった四人(みかさんを入れて五人)の乗組員には広すぎた。各自自分のキャビンは持っているが、ブリッジに集まることが多くなった。ほとんど真っ暗な星空とはいえ、やっぱり外の景色が見えることは、単調な宇宙旅行の慰めであるようだ。
「……東郷先輩のオナラ、初めて聞きました」
やっと笑いの収まったトシが言った。
「……東郷先輩のオナラ、初めて聞きました」
やっと笑いの収まったトシが言った。
「そうね、あたしも小学校以来だな。保育所の頃はしょっちゅうだったけど」
「みんな退屈そうだから、一発かましたんだ!」
「ハハハ、でもオナラ一つで、ここまで笑えるんだ!」
美奈穂が、収まらない笑い声のままで言った。
「みかさん、ヘラクレアを出てから亜光速でしか走ってないけど、みんなに先越されないないかなあ」
「早いだけが取り柄じゃないの。ゲームで言えばRPG、経験値を積んでおかないと、ゲームはクリアーできないわ」
「例えば、ヘラクレアみたいな?」
「そう、あそこでテキサスに出会えて、ヘラクレアさんに会えたことは大きいわ」
「どんな意味で?」
みかさんは、しばらく考えた。みかさんは神さまだから、考えている姿もさまになる。こういうことでは自信のある樟葉でも見とれてしまった。
「……悲しい思い出も、大事に守っていれば、美しいものになって、その人の精神を高めてくれる」
「え、あのヘラクレアのオッサンが?」
「娘さんの魂を悲しませずに記憶し続けるのには、あんなオッサンの姿がいいのよ。辛い思い出も大事にしていれば、良い光になるわ」
「みかさんが言うと、なんだかとても良いことのように思えるわ」
「修一君のようにはいかないけどね」
みんなが笑った。
「どうせ、オレは屁をかますぐらいしか能がないよ!」
みんなが、いっそう笑う。みかさんは、いいクルーだと思った。少し何かを足せば……みかさんも、そこまでは分からない。
光子レーダーが、なにか発見したアラームを発した。
「みんな退屈そうだから、一発かましたんだ!」
「ハハハ、でもオナラ一つで、ここまで笑えるんだ!」
美奈穂が、収まらない笑い声のままで言った。
「みかさん、ヘラクレアを出てから亜光速でしか走ってないけど、みんなに先越されないないかなあ」
「早いだけが取り柄じゃないの。ゲームで言えばRPG、経験値を積んでおかないと、ゲームはクリアーできないわ」
「例えば、ヘラクレアみたいな?」
「そう、あそこでテキサスに出会えて、ヘラクレアさんに会えたことは大きいわ」
「どんな意味で?」
みかさんは、しばらく考えた。みかさんは神さまだから、考えている姿もさまになる。こういうことでは自信のある樟葉でも見とれてしまった。
「……悲しい思い出も、大事に守っていれば、美しいものになって、その人の精神を高めてくれる」
「え、あのヘラクレアのオッサンが?」
「娘さんの魂を悲しませずに記憶し続けるのには、あんなオッサンの姿がいいのよ。辛い思い出も大事にしていれば、良い光になるわ」
「みかさんが言うと、なんだかとても良いことのように思えるわ」
「修一君のようにはいかないけどね」
みんなが笑った。
「どうせ、オレは屁をかますぐらいしか能がないよ!」
みんなが、いっそう笑う。みかさんは、いいクルーだと思った。少し何かを足せば……みかさんも、そこまでは分からない。
光子レーダーが、なにか発見したアラームを発した。
ブリッジが活気づいた。
「焦点を合わせて、解像度をあげて」
修一が言うと、樟葉がレーダーを操作した。ボンヤリした画面がくっきりしてきた。
「あ、ボイジャー……!」
みかさんが感動の声を上げた。
「ボイジャーって?」
美奈穂が素朴な質問をした。
「1977年に打ち上げられた人工衛星です。太陽系を飛び出した、たった二つの人工物の一つです」
トシが、意外な知識を披歴した。
ボイジャーは、三本のアンテナとテレビの衛星放送用のアンテナのようなものでできていた。
「あれは、一号ね。二号は……近くにはいないようね……」
「あ、解像度が落ちてきた」
樟葉が慌ててレーダーを操作しはじめた。
「……違うわ、変態し始めてる」
「変態!?」
「メタモルフォーゼ……変身することよ」
ボイジャーは5分ほどかけて変態した……その姿は、栗色のショ-トヘアーの女の子だった。
「焦点を合わせて、解像度をあげて」
修一が言うと、樟葉がレーダーを操作した。ボンヤリした画面がくっきりしてきた。
「あ、ボイジャー……!」
みかさんが感動の声を上げた。
「ボイジャーって?」
美奈穂が素朴な質問をした。
「1977年に打ち上げられた人工衛星です。太陽系を飛び出した、たった二つの人工物の一つです」
トシが、意外な知識を披歴した。
ボイジャーは、三本のアンテナとテレビの衛星放送用のアンテナのようなものでできていた。
「あれは、一号ね。二号は……近くにはいないようね……」
「あ、解像度が落ちてきた」
樟葉が慌ててレーダーを操作しはじめた。
「……違うわ、変態し始めてる」
「変態!?」
「メタモルフォーゼ……変身することよ」
ボイジャーは5分ほどかけて変態した……その姿は、栗色のショ-トヘアーの女の子だった。
「ちょっと男子は向こう向いてて」
みかさんが優しく言った。トシと修一は、すぐに理解した。女の子は裸だった。
「……いいわよ」
男子二人が振り返ると女の子は、黒字に赤い花柄のワンピに黒のスパッツ姿になっていた。意識はないようだ。
「面舵二十度、ボイジャーの回収に向かう」
修一が、そう言うと、樟葉はレーダーを睨みながら、ゆっくりと舵を切った。
みかさんが優しく言った。トシと修一は、すぐに理解した。女の子は裸だった。
「……いいわよ」
男子二人が振り返ると女の子は、黒字に赤い花柄のワンピに黒のスパッツ姿になっていた。意識はないようだ。
「面舵二十度、ボイジャーの回収に向かう」
修一が、そう言うと、樟葉はレーダーを睨みながら、ゆっくりと舵を切った。