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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・298『ツナカン、殿下を発見する!』

2025-04-18 15:44:59 | 小説4
・298
『ツナカン、殿下を発見する!』 ツナカン 




 見つけたっス!!


 月餅屋の方から飲茶の店に歩いてくる二人連れ。一人は小柄な女性士官。その横をゆったり歩いてくる中肉中背、一見モブキャラだけど、その悠然とした歩きっぷりは毎日ヒンメルのプロムナードデッキで見かけた殿下そのものっス!

 距離150 方位角315 速度毎時4キロで我が方に接近しつつあり!

「小梅ネーサン、店を頼むっす!」

「え、あ、ちょ!」

 陳列棚を一跨ぎ、人混みの中を全力疾走……した時には、女性士官が殿下の腕を引いて、向こうも背中を向けて全力疾走っス!

 くそ、ここで逃すわけにはいかねえっス! ツナカン、一世一代の追跡劇!

 チ!

 どこから湧いたか、SPやら大統領警護隊やらのモブどもが立ちふさがるっス!

 SPとか警護隊とか言っても私服っス。さすがに中南海、あちこちに私服で忍んでやがったっス! 
 二三人そういうのが混じってるのは気づいて居たっス。なんせ中南海、大統領以下、政府要人の家やら官舎やらがいっぱいあるっスからね。ところが立ちふさがったのは、店の客やら店番の婆さん、それに冷やかしのJKまでがSPっス。

 そうか、中南海は漢明政府の中枢、そこを一部とはいえ広場を解放してるのは、そう言うことだったっス。

 諜報やセキュリティーを配置して、警備の充実を図りながらの世情観察、情報収集。街中に諜報を放つよりも、街を身近に引き寄せた方が早い。いうなればリトマス試験紙、炭鉱のカナリア。むろん世情の全てが分かるはずもないっスけど、オープンマインドな大統領の姿勢をアピールすることにもなるっちゅう一石二鳥っス!

 さすがは劉宏大統領、ちょっと舌を巻くっス。

 ウウ、ざっと20人のセキュリティー……普通の通行人に出店仲間もいっぱいいるし、『姉妹公司』の看板張ってるし、荒事はNGっス!

 グヌヌヌ…… 

 けっきょく追いきれなかったっス(-_-;)。

 しかし、中南海、それも瀛台(えんだい)に殿下が居ることは確定っス!

 このツナカンのスキルなら、目標が確定なら、侵入することは難しくないっス。

 問題は侵入した後、殿下を連れ出さなきゃならないことっス。 


 ツナカンの勘……殿下は、高い確率で記憶を失っておられるっぽいっス。


 あの悠然として歩まれる姿は、いかにも成治天皇の五世孫。ヒンメルのプロムナードデッキを散歩されていた時のまんまっス。
 ココちゃん、いや、心子内親王殿下をお救いするために1号艇をブッ飛ばした時の殿下はヒンメルのベテラン顔負けの敏捷さだったっス。殿下の瞬発力は、このツナカン、いやうちの船長(アルルカン)に並ぶかもっス。

 しかし、

 女性士官がこっちに気づいて手を引っぱった時、殿下は狼狽えておられたっス。腰が引けていたっス。たしかに、このツナカンの顔も姿も目に入っていたはずなのに、なんか街中でゴリラを見るような目だったっス(-_-;)。

「猫猫……あんた、何者なのよ(ಠ△ಠ)?」

 店に戻ると小梅ネーサンがウロンな目で自分を見るっス。

「え、あ……」

 ごまかそうと思ったっスけど、小梅ネーサンの人柄の良さに付け込むのは、もう限界と感じたっス。

「実は、人を探しに北京に来たっス。自分のミスで、ある人を行方不明にしちまって、その人が大統領が保護されてるって情報知って、探っていたっス」

「ええ( ゚Д゚)!?」

 小梅ネーサンが後ずさったっス。

「あ、絶対悪いことじゃないっス。自分は、ある人の部下で、その人は、そのある人の大事な客人だったっス。そのぉ……」

 これ以上喋っては、小梅ネーサンを巻き込んでしまうかもっス。

「しばらく店を見ていてもらえないっスか。あ、いや、小梅ネーサンが迷惑なら畳んでもらってもいいっスけど」

「う~~~ん……」

 眉根を寄せ、唇をΣにして腕組みの小梅ネーサン。

「まぁ、いいわ。そう長くは無いけど、商売通じてあんたの人柄も分かってるし、もうしばらくはやってあげる。でも、ここが狙われたり203(アルバイサン)に迷惑かかるようなことがあったら、すぐに畳んで、警察にでも公安にでも垂れ込んじゃうからね」

「あ、それでいいっス。ぜったい、このままにはしないっスから!」

「とにかく気を付けてね、猫猫……ていうのも偽名なんだろうけど」

「ごめん、ネーサン。ことが済んだら必ず挨拶に来るっスから」

 小梅ネーサンの返事も待たずに出店を離れたっス。

 このあと、中南海の警備が厳しくなるのは目に見えてるっス。その前に勝負っス。自分は、戦災孤児だったガキの頃みたいに物陰を忍びながら突き進んだっす!



☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 少将           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

 

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