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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

真夏ダイアリー・20『ちょっと不思議なクリスマスパーティー』

2019-09-25 06:24:14 | 真夏ダイアリー
真夏ダイアリー・20  
『ちょっと不思議なクリスマスパーティー』      
 
 

 省吾の家には、シャレじゃないけど正午に集まることになっていた。
 
 正午前にいくと、もう四人が集まっていた。ホストの省吾、ゲストの玉男、柏木由香、春野うらら。
 
 由香とうららは緊張していた。無理もない、つい三日前にオトモダチになったばかり。
 わたしも付き合いは長いけど、省吾の家に来たのは初めてだ。玉男は何度か来たことがあるのだろうか、自分の家のようにリラックスし、なんとエプロン掛けながら省吾のお父さんのお手伝い。
 
「すまんなあ、玉男君。大したことは出来んが量だけは多いものでなあ」
 作務衣姿のお父さんが、玉男といっしょに料理を運んでいる。
「いいえ、いい勉強になります」
「玉男、ずっと手伝ってたの?」
「うん、蕎麦打ちと天ぷらだって聞いて、朝からお手伝い」
「言ってくれたら、わたしたちも手伝ったのに。ねえ」
 由香と、うららは、ちょっと困ったような笑顔で応えた。
「なんか、とっても本格的で、わたしたちなんかじゃ役に立ちそうにないんで……中村クンは、なんだか、もうプロって感じ」
 そう言って、食器なんかを並べる役に徹している。
「いや、玉男君が是非にって言うもんだから手伝ってもらったんだけどね、蕎麦打ちも、天ぷら揚げるのも、なかなか大した腕だよ」
 こんなイキイキした玉男を見るのは初めてだった。
「オレも、タマゲタよ。オヤジはお袋にも手伝わせないんだぜ」
「一目見て筋がいいのは分かったからね。渡りに船だったよ。蕎麦の打ち方は信州蕎麦だとわかったけど、なんで、こんなに上手いのか聞いても内緒だった」
「おじさんだって、内緒なんですもん。お互い職人は手の内は明かしませ~ん」
「はは、わたしのは、ただの趣味だから。まあ、クリスマスには似つかわしくないメニューだけど、ゆっくりやってくれたまえ。といっても蕎麦は、すぐに食べなきゃ、味も腰も落ちてしまうからね」
「じゃ、天蕎麦ってことで」
 
「「「「「いただきまーす!」」」」」
 
 五人の声が揃った。
 
 ズルズル~とお蕎麦。パリパリと江戸前の天ぷら。天ぷらは冷めないように、ヒーターの上に乗せられていた。その間に、蕎麦掻きや蕎麦寿司、茶碗蒸しなんかが運ばれてくる。
 で、一時間ほどでいただいちゃった。
 
「すまんね、わたしの趣味を押しつけたみたいで」
「いいえ、とってもおいしかったです」
 Xボックスのダンスレボリューションでもりあがり、カラオケで高揚し、GT5ではわたしの一人勝ち。
「やったー!」
 と、ガッツポーズしていると、なんだか静か……。
「あれ?」
 四人とも、座卓や、畳の上で寝てしまっていた。窓の外はいつのまにか雪になっている。
 
「そろそろいいかなあ」
 
 省吾のお父さんが入ってきた。
「真夏さん、あなたを見込んで頼みがある……」
 おじさんが、かしこまって正座した……ところで意識が飛んだ。
 
 グワー、ガッシャンガッシャンというクラッシュの音で目が覚めた。
 
「バカだなあ、真夏、運転しながら寝てらあ」
「あはは……」
 みんなに笑われた。
「お父さんは?」
「オヤジなら出かけたじゃんか」
「え……」
「それにしても、よく降るなあ……」
 
 雪だけは、さっきと同じように降り続けていた。
 
「なんだか、こうやって見てると、雪が降ってるんじゃなくて、この部屋がエレベーターみたいに上に昇っているような感じがするわ」
 うららが、そう言うと、なんだか妙な浮揚感がした。
「ほんとだ、なんだかディズニーランドのアトラクションみたい……」
 由香が続けた。
「じゃあ、このファンタジーなムードの中でプレゼントの交換やろうか」
 みんなが300円のプレゼントを出して、省吾が番号のシールを貼った。
「どうやって決めるの?」
「くじびき」
 省吾があっさりと言った。
「でも、それだったら自分のが当たっちゃうかもしれないじゃん」
「それは、それでいいじゃん。それも運のうち。どうしても気に入らなかったら、交換ということで」
 
 で、クジを引いた。四人は、それぞれ他の人のが当たったけど、わたしは自分のを引いてしまった。
 そう、あのラピスラズリのサイコロ(PSYCHOLOという微妙な発音はできなかった)
 
「なんだ、自分のが当たったの、替えたげようか?」
 玉男が縫いぐるみを撫でながら言った。
「ううん、これも運。これね、思った通りの目が出るんだよ」
「ほんと!?」
「好きな数字言って」
「じゃ、七」
「ばか、サイコロに七はないだろ」
 玉男がバカを言い省吾にポコンとされ、由香とうららが笑った。
「じゃ、六でいくね……」
 出た目は一だった。
「あれ……じゃ、もっかい。三ね」
 出た目は四だった。
「なんだ、普通のサイコロじゃないか」
「でも、買ったときは出たんだよ」
「真夏、これ、どこで買った?」
「渋谷のハチ公前」
「なんだ、路上販売か。そりゃイカサマだな」
「でも……いいよ。わたしが引いて当たったんだから」
 
 昨日から今日にかけての不思議を感じながら、とりあえず楽しいクリスマスパーティーは終わった……。
 
 
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