巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
雪国…………?
川端康成はうる憶え、ノーベル賞の『雪国』もロコに言われて――あぁ、そんなのあったか――という程度。
そのせいか、突然ワープしたそこは、深々(しんしん)と雪が降るだけの一面の雪原。
ただ、ロクなもんじゃないという気持ちはあって、右の耳に手をかざす。
シュッ! カキーーン!
衝撃が二つ。
前方から光の速度かと思うようなものが飛んできて、とっさに右耳の如意(高松塚で青さんからもらった武器)を取り出し、弾き返しながら左に移動!
弾き返したそれは、ブーメランのようにクルクル回って20メートルほど先で目の高さに静止……あ……高松塚の宝剣!?
宝剣に気づくと、それを中段に構えるユリアが実体化した。
「フフ、岬じゃ、これでクソババアの右腕を切り落とせたんだけどね……お前も力を付けたもんだ」
「その剣は高松塚の青さんが言っていた宝剣でしょ、さっさと返しなさいよ!」
「いやなこった。これは魔封じの宝剣、魔法少女にも有効だってことは、こないだの戦いで分かったからね。さっさと宝剣の錆になっておしまい!」
ガキーン!
剣が唸ると同時に衝撃、ユリアは剣を振りかぶると同時に距離を詰めてくる! わたしは、それを辛くもはじき返して、全速力で駆けるしかなかった。駆けて駆けて、ユリアとの位置を変えることだ。位置と距離が変われば、勝機が見えてくる。
しかし、逃げても走っても、走っても躱しても、この雪国は延々と雪原が続く!
カキーーン! ガキガキ! シュイ―ン! ガキーーン!
打っては離れ、離れては打って、それを何べん繰り返しても、雪原は続いていく……この雪国って……なんなの!?
「ここは世界最大の雪国さ」
「世界最大の雪国?」
シュイ―ン! ガキーーン!
「シベリアよ」
「シベリア!?」
そうだ、ナースチャがシベリアという言葉に青くなっていた。
カキーーン! ガキガキ!
「そうよ、シベリアというのは永遠の流刑地! 川端の雪国を知らないから、その言霊にシベリアを結び付けてあげたのよ、時司巡はここで果てるの、このソビエトのユリアの力に屈してね!!」
ガキガキ! シュイ―ン! ガキーーン!
「くそ!」
ユリアの打撃斬撃はことごとく躱せる……んだけど、こちらの打撃も届かない!
シュイ―ン! ガキーーン! ガキガキ! カキーーン!
ウウ……どうやら技能は互角。
ガキーーン! ガキガキ!
しかし、スタミナというか耐久力は、ユリアの方が勝っている。
あの炎熱の万博でも涼しい顔でソ連のコンパニオンをやっていた。岬の戦いでも、戦艦石見やアキラの介入で敗退したとはいえ、わたしとお祖母ちゃんを相手にしつこく攻撃を加えて来た。
このままじゃ、スタミナ負けしてしまう(-_-;)。
シュイン! ズザザザザ!
一撃を躱して、雪原を地上スレスレに飛んで逃げる。
いっそ、急上昇して逃げようかという気持ちが起こる。地上スレスレでは、いつ地面に接触するか分からず、すごいストレス。
でも、上昇すればユリアは下の方からも攻撃できて、逃げの姿勢でいる限りアドバンテージはユリアにある。
ああ、視界の縁が暗くなってきた……ちょっとヤバイ、宝剣奪還どころじゃない。
え?
狭まった視野の端っこに三角のサンドイッチが見えてきた……なんでサンドイッチ? そうか、お祖母ちゃんは夕べのサラダをパンに挟んで三つも食べていた。年寄なのに、しっかり食べるんだとか思ってた。
わたしは、いつものように生協のクロワッサンをコーヒー牛乳で流し込んだだけ。
だから、サンドイッチの幻影。
それは、よく見るとカステラみたいなパンの間にアンコが挟んである。
――食べて!――
思念が飛び込んできて、口元までやってきたそいつをひとカブリ!
シャララン彡☆彡☆
星くずのエフェクトがしたかと思うと、公民館の結婚式場、そのスタッフ控室。
「間に合ったあ(;'∀')!」
だれか抱き付いてきたと思ったら、巫女服のスセリビメ、いや、御神楽采女さん!
「た、助かった……んですよね?」
「そうよ、雪国のフレーズで引っ張られたのよ、あのロシア女に!」
「あ、ありがとうございます」
「わたしの力では、あそこまでは飛んでいけなかったから、あれで助けられたらって……うまくいってよかった!」
「あの、甘いサンドイッチはなんだったんですか?」
「シベリアよ」
「シベリア?」
「日本独自のサンドイッチ、さっきのはコシアンだったけど、羊羹を挟んであるのもあるっていうか、そっちが正統シベリアなんだけどね、とっさのことに間に合わなかった」
「あはは……なんかダジャレの世界ですね(^_^;)」
「駄洒落は言の葉、思いを籠めれば武器にも助け舟にもなるのよ」
「そうなんだ」
「宝剣は残念だったけど、また、なにか方策はあるでしょ」
「そうですね……て、あ、学校始まっちゃう!」
ええと、宮之森行きのバスは……とっさに控室の時刻表。
「なに言ってんのよ、グッチの力ならひとっ飛びでしょ」
え、あ、そうだった。
そして、学校を念じると、あっという間に学校にワープ。
いきなりクラスの自分の席にワープしたものだから、すぐ後ろのロコをビックリさせてしまった(^_^;)。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
- ユリア ナースチャを狙う魔法少女
- 安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- 妖・魔物 アキラ 戦艦石見(アリヨール) 藍(アオ、高松塚の采女)
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人







