小悪魔マユの魔法日記・80
『期間限定の恋人・12』
『期間限定の恋人・12』
暗証番号を入れなければ開けないファイルが一つだけあった。
それが、まさにその8桁……。
8桁の数字を入れエンターキーを押した……数秒して父が画像になって現れた。
――ハハ、見つかってしまったな。もう見つかった……やっと見つかった……どっちだろう?
多分やっとだと思う。
美智子のことだから、わたしの部屋はしばらく手を付けないで、そのままにしているんじゃないかと思ってる。
だから、これを見つけたということは、わたしの部屋を他の目的に使う必要が出てきたことだろう。
どうだい、それも美優が必要になったからだと……当たったかな?
美優は自分の部屋を持っているから、この部屋の使い道は……お母さんを助けて店の手伝い。
そして、そんな美優を助けてくれる素敵な男性が見つかったから。お父さんは、そう思っている。
美優は、一人っ子で優しい子だから、きっとそうだと思っているよ。もし違っていたら、腹を抱えて笑ってくれ。
店は、繁盛しているだろう。美智子はバブル真っ最中でも下手に仕事を広げたりはしなかった。
堅実に店を守り、マスコミ関係の仕事も確実に取り込んでいる。
HIKARIプロの事務所移転と拡張にも目を付けている。わたしも、あそこは先物買いとしては狙い目だと思う。
ヒカリミツルはビートたけしと同じくらい奇行の多い人だが、しっかりした経営戦略を持っている。
彼は、芸能界……古いなあ、エンタテイメントの世界に、新しいスタイルを提示してくるだろう。
それが、まさにその8桁……。
8桁の数字を入れエンターキーを押した……数秒して父が画像になって現れた。
――ハハ、見つかってしまったな。もう見つかった……やっと見つかった……どっちだろう?
多分やっとだと思う。
美智子のことだから、わたしの部屋はしばらく手を付けないで、そのままにしているんじゃないかと思ってる。
だから、これを見つけたということは、わたしの部屋を他の目的に使う必要が出てきたことだろう。
どうだい、それも美優が必要になったからだと……当たったかな?
美優は自分の部屋を持っているから、この部屋の使い道は……お母さんを助けて店の手伝い。
そして、そんな美優を助けてくれる素敵な男性が見つかったから。お父さんは、そう思っている。
美優は、一人っ子で優しい子だから、きっとそうだと思っているよ。もし違っていたら、腹を抱えて笑ってくれ。
店は、繁盛しているだろう。美智子はバブル真っ最中でも下手に仕事を広げたりはしなかった。
堅実に店を守り、マスコミ関係の仕事も確実に取り込んでいる。
HIKARIプロの事務所移転と拡張にも目を付けている。わたしも、あそこは先物買いとしては狙い目だと思う。
ヒカリミツルはビートたけしと同じくらい奇行の多い人だが、しっかりした経営戦略を持っている。
彼は、芸能界……古いなあ、エンタテイメントの世界に、新しいスタイルを提示してくるだろう。
話が、仕事っぽくていけない。
一つ心配事……お父さんの家系はガンに罹る者が多い。親父も祖父さんもそうだった。
まさか三代続くとは思わなかった。お父さんの数少ない、でも大きな見込み違いだった。
美優がお母さんの血を多く受け継いでいることを願っているよ。
でも、検診はしっかり受けてな……ええと、このドロシーの胸像の下のロゴに暗証番号……。
ハハ、ばかだな。見つけたから、これを見てるんだよね。
ドロシーのお下げを両方いっしょに四回叩くと……ほら、『オーバーザレインボー』が聞こえる。
これを見ている美優とお母さんが、虹の彼方に着いていることを願っているよ。
あ、もし、美優の彼がこれを一緒に見ていたら……二人のことをよろしく――
そこで、父はバイバイと手を振った。そして……『オーバーザレインボー』がステレオになった。
「こんな男で……こんな事情で申し訳ありません」
黒羽が、ドロシーの胸像を手に、二人の後ろに立っていた。
「英二さん……」
「一応、声はかけたんですけど、無断ですみません。お父さん、素敵な人だったんですね」
「あ……この部屋、黒羽さんに使っていただこうと思って、美優といっしょに片づけていて」
「今度の新曲、勝負なんでしょ!?」
「うん。ありがたく使わせてもらうよ、今週いっぱい。しかし、本当にお父さんは先見の明だな」
「夢ばっかり、思いこみの強い人だったから」
「いいえ、このお店のことも、うちの事務所のことも、ちゃんと見通していらっしゃる。それに、なにより、病気のこと、ちゃんと気にかけていらっしゃって、その甲斐あって、美優ちゃんも、早期治療でこんなに元気になったじゃないか」
「ハハ、そうよね。お父さん大したもんだ。ね、お母さん!」
「ハハ、そうよね」
三人の明るい笑い声が部屋に満ちた。
美優の命は、あと六日と三十分……にしちゃいけない。美優の体の中でマユは決心した。
まさか三代続くとは思わなかった。お父さんの数少ない、でも大きな見込み違いだった。
美優がお母さんの血を多く受け継いでいることを願っているよ。
でも、検診はしっかり受けてな……ええと、このドロシーの胸像の下のロゴに暗証番号……。
ハハ、ばかだな。見つけたから、これを見てるんだよね。
ドロシーのお下げを両方いっしょに四回叩くと……ほら、『オーバーザレインボー』が聞こえる。
これを見ている美優とお母さんが、虹の彼方に着いていることを願っているよ。
あ、もし、美優の彼がこれを一緒に見ていたら……二人のことをよろしく――
そこで、父はバイバイと手を振った。そして……『オーバーザレインボー』がステレオになった。
「こんな男で……こんな事情で申し訳ありません」
黒羽が、ドロシーの胸像を手に、二人の後ろに立っていた。
「英二さん……」
「一応、声はかけたんですけど、無断ですみません。お父さん、素敵な人だったんですね」
「あ……この部屋、黒羽さんに使っていただこうと思って、美優といっしょに片づけていて」
「今度の新曲、勝負なんでしょ!?」
「うん。ありがたく使わせてもらうよ、今週いっぱい。しかし、本当にお父さんは先見の明だな」
「夢ばっかり、思いこみの強い人だったから」
「いいえ、このお店のことも、うちの事務所のことも、ちゃんと見通していらっしゃる。それに、なにより、病気のこと、ちゃんと気にかけていらっしゃって、その甲斐あって、美優ちゃんも、早期治療でこんなに元気になったじゃないか」
「ハハ、そうよね。お父さん大したもんだ。ね、お母さん!」
「ハハ、そうよね」
三人の明るい笑い声が部屋に満ちた。
美優の命は、あと六日と三十分……にしちゃいけない。美優の体の中でマユは決心した。